8月24日(水)

厳しい「かん口令」敷く

 神経質になる委員

 教科用図書八重山採択地区協議会では、選定した教科書について、委員に厳しい「かん口令」が敷かれた。報道陣の取材に対し、会場から出た委員の多くは「何も話せない」「会長に聞いてほしい」と無言を通し、会長の玉津博克石垣市教育長は記者会見で「せんさくせず、協議会が(採択後に)公表するまで待ってほしい」と公表を求める報道陣の要求を突っぱねた。


 ある委員は「話せないということを協議会で確認してある」の一点張り。別の委員は記者に対し「私たちが情報源だと言われている。近づかないでください」と声を荒げるなど「情報管理」に神経質になっていることをうかがわせた。


 教育長の記者会見中に、インターネットで県紙が第一報。各社の記者は情報の確認に追われた。コメントを求める記者に対し「(育鵬社の教科書に対する)抗議行動ではないか。公表もしないのに情報が漏れたのはおかしい」(市議会の伊良皆高信議長)と憤る関係者もいた。


選定手法、大きく転換  

 協議会、自主性を堅持

 教科用図書八重山採択地区協議会が、育鵬社版の公民教科書を選定した。育鵬社、自由社の教科書に対する反対行動が過熱する異常な状況下、委員は最後まで自主性を堅持して判断した。玉津博克教育長は記者会見で「およそ2ヵ月、委員はしっかりと教科書を研究し、調査員(教員)の報告書を読んだ」と、委員が主体的に議論したことを強調。教科書選定が、調査員が絞り込んだ教科書が、事実上そのまま選定されてきた従来のあり方とは、大きく転換したことを印象づけた。


 調査員が各社の教科書を順位づけする従来の選定手法を改めたことについて、沖教組や退職教員などからは「教員の意見を最大限尊重する選定方法に戻すべきだ」と猛烈な反発の声が出た。


 ただ、調査員の順位づけでは、育鵬社、自由社の教科書が上位に評価される可能性はゼロに近く、順位づけの制度そのものが、両社の教科書が選ばれることに対する歯止めになっていた。


 これに対し玉津教育長は、両社の教科書も含め、文科省の検定に合格した教科書は「横一線」と指摘。教科書選定手法の改革を通じ「協議会が自らの責任と権限で判断する本来のあり方」を模索した。


 これに対し、慶田盛安三竹富町教育長が「協議会を私物化している」と憤るなど、玉津教育長の改革に対する評価は二分した。


ただ育鵬社、自由社に対する反対キャンペーンは、マスコミを巻き込んで大々的に展開された。玉津教育長は、本来は秘密であるはずの委員に対する、直接的な「説得工作」があったことも明かす。こうした状況に「常軌を逸している」という批判の声も出た。


 育鵬社の公民教科書は、尖閣諸島問題などの記述が充実している特徴がある。昨年9月の中国語船衝突事件を受け、尖閣諸島問題に対する住民の意識は高まっており、同社の教科書を受け入れやすい素地は整っていたと見られる。


一方、沖縄戦の集団自決の記述が問題になった歴史教科書の選定には「県民の反発が強過ぎた」という指摘もある。関係者から「バランスの取れた選択」「痛み分け」という評価の声が出たのも、そうした事情を反映している。


騒動を通じて、教科書に対する一般住民の関心は急速に高まった。批判の集中砲火を浴びた玉津教育長は「教科書採択についての知識、仕組みを分かっていただいたことは本当にうれしい」と騒動を前向きに評価した。


1種絞り込み「事実と違う」

 住民の会が反論

昨年以前の教科書選定で、調査員(教員)が教科書を1点に絞って答申していたことについて、歴代教育長が共同代表を務める「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」は23日、委員宛ての要請書で「事実と違う」と反論した。


 文書では、昨年の調査委員(調査員)から「答申は1位から6位までなどの順位をつけて出した」 との証言が得られたと強調。「協議会の責任、権限があいまい」(玉津博克石垣市教育長)という事実は存在しない、としている。


 自らも昨年の調査委員を務めた沖教祖八重山支部の上原邦夫執行委員長は「教科書の順位を1位から6位までつけてある資料が手に入った。(事務局の)教育委員会が、協議会に1つしか報告していないというのは絶対に有り得ない。報告するのが常識だ」と述べ、調査員が推薦する教科書を1点に絞り込んでいたという市教委の発表は「うそだと思う」と憤った。


尖閣問題詳しく記述

 自衛隊の役割積極評価  育鵬社版

 来春から使用される中学校の公民教科書に選定された育鵬社の教科書。尖閣諸島をはじめとする領土問題の記述が充実しているほか、自衛隊の役割を積極的に評価するなど、安全保障問題についても現実を反映した内容。従来の東京書籍版とは大きく視点が異なっている。


 尖閣諸島問題について育鵬社版は①日本の領土である②1970年代、周辺海域で有望な油田が確認されて以来、中国が自国の領土だと主張し始めたーという経緯を開設している。


 外務省のウェブサイトからの引用で、中国の主張が「国際法上有効な論拠とは言えません」と明確に反論しているのも特徴。


 東京書籍版は「日本の領土ですが、中国がその領有を主張しています」と簡潔な記述にとどまっていた。


 安全保障の分野で育鵬社は、自衛隊について「日本の防衛では不可欠な存在」「災害時の救助活動などの面でも国民から大きく期待されています」などと肯定的に記述。


 これに対し、東京書籍版は「平和と安全を守るためであっても、武器を持たないというのが日本国憲法の立場ではなかったかという意見もあります」と自衛隊違憲論に言及していた。


育鵬社は「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を発行していた扶桑社の子会社。


採択阻止へ示威行動 

 「住民の会」など会場周辺に集結

「子どもと教科書を守る住民の会」などが示威行動をした=23日午後
「子どもと教科書を守る住民の会」などが示威行動をした=23日午後

教科用図書八重山採択地区協議会が中学校教科書を選定した23日、会場の市教育委員会前では、自由社と育鵬社の教科書採択に反対する住民など約100人が詰め掛けて集結、プラカードを掲げて採択祖阻止をアピールする示威行動をした。


歴代教育長が共同代表を務める「子どもと教科書を考える住民の会」のほか、退職教員や労組関係者、沖縄本島からの参加者もいた。大きな混乱はなかったが、周辺は緊迫した雰囲気に包まれた。


 参加者のプラカードの内容は「自由社、育鵬社版採択しないで」「日本軍の集団自決強制を免罪する教科書」「子どもたちの未来をつぶすな」など。


 協議会開会直前、住民の会の仲山忠亨共同代表が協議会の公開を要請。メンバーの1人が中に入り「八重山の教育史に禍根を残さない答申を」と題した協議会委員宛ての要請書を事務局の市教委に渡した。


 参加者で、退職教員の富里八重子さん(72)は、両社の教科書が、集団自決と日本軍の関係について触れていないとして「ありのままの歴史を子どもたちに伝えることが、将来、しっかりした子どもたちを作るために大事。良くないことでも赤裸々に、事実は事実として認めるべきだ」と主張した。


 退職教員の宮良順一郎さん(61)は「調査員が推薦していない教科書まで対象にして、無記名投票するのは民主主義からも論外だ。現場の教員が調査した内容は最大限に尊重されなくてはならない」と話した。


 

高揚感に満ちた玉津氏

 慶田盛氏は険しい表情

 3時間半に及んだ教科用図書八重山採択地区協議会。終了後、「いい審議ができた」と高揚感に満ちた表情を見せた会長の玉津博克石垣市教育長に対し、育鵬社、自由社の教科書選定に一貫して反対してきた慶田盛安三竹富町教育長は「足取りが重い。結果は言わない」と険しい表情を見せた。


 玉津教育長は記者会見で「(一般住民が)教科書採択というのは、こういうふうに選ばれていくものだと、いろんな意味で教科書について関心を寄せて頂いたことには、本当に感謝している」と、住民に教科書についての関心が深まった意義を強調。


 その上で「選ばれた教科書が、子供たちの授業で大いに活用されて、子どもたちの学力や人間力が伸びることを心から願っている」と期待した。


 会場から出たとたん、大勢の報道陣に取り囲まれた慶田盛教育長は、うつむいたまま竹富町教育委員会に向かった。「選定結果はどうだったのか」という報道陣の問いに「会長から聞いてほしい」と言葉少なだった。


自治体では全国7番目 

 育鵬社選定の八重山

 今年度の中学校教科書選定作業で、育鵬社の教科書が選定されたのは八重山地区が全国の自治体(地域)では7番目になる。


 全国ではこれまでに、栃木県大田原市、神奈川県藤沢市、横浜市、東京都大田区、同武蔵村山市が育鵬社の歴史、公民を、大阪府東大阪市が公民を、それぞれ選定している。


 東京都立中高一貫校10校では同社の歴史、公民を、神奈川県立平塚中等教育学校では同社の歴史を選定している。


現場からは「拒否反応」 

 校長会も不安隠さず

「公民」教科書に育鵬社版が選定されたことを受け、23日、学校現場からは「教科書をすんなり教えることはできない」などと「拒否反応」や不安感を訴える声が出た。


現場の教員として、選定された教科書で子どもを指導することになる沖教組八重山支部の上原邦夫執行委員長。「育鵬社は歴史より公民のほうがひどい。国民主権、平和主義、人権尊重という憲法の原則から見て問題がある。この教科書をすんなり教えることはできない」と拒否反応を示す。


調査員が育鵬社の教科書を推薦していなかったことについて「これこそまさに、現場の教員の意見をぜんぜん参考にしていないやり方。玉津教育長の改革は(つくる会系の)教科書を採択するためのやり方だったことが証明された」と語気を強めた。


今後の対応については「別の資料を持ってくるなど、八重山の社会科の先生みんなで考えなくてはならない」という考えを示した。


 八重山地区中学校校長会の新田健夫会長は「教科書選定に当たっては、日ごろ子どもと接している調査員の意見を尊重するよう求めたが、聞き入れられず正直驚いている」と強調。


その上で「子どもたちに納得の行く説明をお願いしたい。学力向上に向け同一ベクトルでまい進している中、現場が混乱しないか憂慮される」と不安感を隠さなかった。


8月23日(火)

「手続きに問題ない」

 教科書選定で中山市長

 石垣市の中山義隆市長は22日、教科書選定問題について「いろいろ意見があると思うが、教育長が採択地区協議会の会長として行っている改革は、役員会や臨時総会で承認されている。手続きについては、今の時点では特段問題はない」と述べた。八重山日報社の取材に答えた。


 自由社、育鵬社の教科書については「協議会が決めること」と述べるにとどめた。両社の教科書に対する反対運動が激化していることには「委員には本来、もう少し静かな環境で判断してもらうほうが良かった」という考えを示した。


調査員の「1種絞り込み」

 採択協、選定方法改めず

記者会見で、2005年の県教育庁の指導文書を公表した玉津教育長。左は前花教育部長=22日午後、市教委
記者会見で、2005年の県教育庁の指導文書を公表した玉津教育長。左は前花教育部長=22日午後、市教委

 教科書選定問題で、県教育庁義務教育課が2005年3月、各地区の採択地区協議会と教育委員会に対し、調査員(教員)が推薦する教科書を1点に絞り込んで協議会に報告することがないよう、是正を指導していたことが22日分かった。八重山採択地区協議会は同年7月の中学校教科書選定作業で、調査員が教科書を1点に絞って報告する方法を改めておらず、事実上、指導を無視した形になっている。八重山以外の各地区では今年度、調査員が教科書を2~3点に絞り込んで協議会に報告する方法を採用している。

 


教科書は協議会が選定するが、調査員が1点だけに絞り込んで報告した場合、事実上、調査員が選定することになる。協議会会長の玉津博克石垣市教育長は「協議会の権限や責任があいまいになる」と批判している。


県教育庁の指導文書は今月19日に見つかり、玉津教育長が22日の記者会見で公表した。


指導文書は05年3月4日付。①調査員による教科書の「1種絞り込み」を是正し、全社の教科書について報告書を作成した上で順位づけすること②情報開示に備えるため、地区採択協議会や教育委員会議の議事録を作成することーなど6項目を求めている。


八重山採択地区協議会の調査員(当時は調査委員)は同年7月12日、協議会の諮問を受け、推薦する教科書を答申したが、答申書では「採択教科書」が1点にだけ絞り込まれて記入されていた。


県教育庁の指導文書には、当時の担当課長などが回覧したことを示す印鑑が押されていたが、教育部長や協議会会長の教育長の印鑑がなく、指導文書が教育長まで回覧されていなかった可能性も出てきた。


 指導文書で求めている協議会の議事録作成についても「議事録が不存在」(玉津教育長)のため、公表が不可能になっている。


 玉津教育長は今年の中学校教科書選定作業で、調査員による教科書の順位づけそのものを廃止した。記者会見で「一連の改革は、すでに県教育庁が05年にお墨付きを与えていた」と強調。「私が行ってきた(教科書選定作業の)改革の正当性が証明されたものだと信じている」との見方を示した。


 指導文書で県教育庁が、調査員による教科書の「1種絞り込み」を戒める一方、順位づけを容認している点については、教科書を複数推薦させる制度の導入で「調査員の意見は、順位をつけなくても十分吸い上げられる」と述べた。

 


きょう中学校教科書選定 

 「つくる会系」反対過熱 

 教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克教育長)は23日午後、来春以降使用される中学校教科書を選定する。反対運動が激化している自由社、育鵬社の歴史、公民教科書が選定されるかどうかが焦点。


 玉津教育長は22日の記者会見で、自由社などの教科書に反対する人が、本来は秘密であるはずの委員の自宅に訪れ、両社の教科書を選定しないよう要求する事例があったことを明らかにした。


採択環境は騒然としており、玉津教育長は「こういう状況にはしたくなかった」と懸念を示した。


 今回の教科書選定では、昨年の小学校教科書選定まで行われていた調査員による各社の教科書の順位づけは廃止。代わりに、複数の教科書を推薦させる制度を導入した。


 選定方法は委員8人による無記名投票。調査員が推薦したもの以外も含めて選ばれる可能性がある。


 玉津教育長は大きな騒動となった今回の教科書選定問題について、現在の心境を報道陣から聞かれ「教科書採択についての知識を、住民にしっかり分かっていただけたことはうれしい」と述べた。


8月22日(月)

自由社、育鵬社版が焦点

 採択可否は教育委員会判断  中学教科書あす選定

 教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)はあす23日、来春以降の中学校教科書を選定する。自由社、育鵬社の社会科教科書が選定されるかどうかが焦点。反対運動が激化する中、国が求める静かな採択環境にはほど遠い状況になっており、委員の公正中立がどこまで確保されるか懸念する声もある。協議会の選定後、石垣市教委と与那国町教委は26日、竹富町教委は29日に、それぞれ最終的な採択の可否を決定する。



 協議会は午後から開かれ、委員8人(3市町教育長、3市町教育委員代表、PTA代表、学識経験者)の無記名投票で教科書を決定する。


 各教科3人ずつの調査員(教員)は、各社の教科書を調査研究し、すでに報告書を協議会に提出している。従来の調査員による順位づけは廃止され、代わりに調査員が複数の教科書を「推薦」する制度が導入された。


社会科では「つくる会」系の教科書は推薦されていないと見られる。昨年までは調査員が絞り込んだ教科書1点がそのまま選定、採択されるシステムだったが、今年は協議会が調査員の意見に拘束されないため、自由社、育鵬社の教科書が選定される可能性はある。


自由社、育鵬社の教科書に反対する革新系団体や労働組合、歴代教育長が共同代表の「住民の会」などは、マスコミを巻き込んだ激しい反対運動を繰り広げている。両社の教科書を採択しないよう求める協議会宛ての要請文も殺到。採択環境は騒然としている。


「住民の会」は23日、協議会会場前で座り込みなどの示威行動を行うことも検討している。玉津教育長はこうした動きについて、21日までの取材に対し「中立的で自由な意見を出せる協議会の運営をしたい。採択は静かにさせてほしい」と懸念を示した。


 また、玉津教育長は23日の協議会の運営方法について①会議の公開・非公開②無記名投票の可否③選定後の議事録公表④委員の氏名公表―について、それぞれ委員に諮る考えを示した。


ただ玉津教育長としては、委員の構成中立な意見表明を確保するためだとして、協議会の傍聴は認めない方針。


選定された教科書についても、1990年の文部省(当時)通知で「採択の公正確保の観点から、採択終了後とすることが適当」とされていることから、3市町教育委員会での採択終了まで公表しない考えを示している。


 

8月21日(日)

「集団自決に軍命ない」

 歴史に愛情深める教育を  藤岡氏インタビュー

自由社版の教科書を前に、教科書について自らの考えを語る藤岡会長=19日午前、八重山日報社
自由社版の教科書を前に、教科書について自らの考えを語る藤岡会長=19日午前、八重山日報社

 自由社、育鵬社の教科書に対する反対運動が繰り広げる中、「新しい歴史教科書をつくる会」会長で、自由社版の中学校歴史教科書代表執筆者でもある藤岡信勝氏(拓殖大客員教授)に19日、八重山日報社が単独インタビューし、批判に対する反論を聞いた。内容の詳細は次の通り。


 ―自由社版の教科書では、沖縄戦の集団自決について、旧日本軍の関与に触れていないという批判があるが。


 「全く成り立たない批判だ。私は6年間、定期的に沖縄入りして調査し、何人もの人にインタビューした。集団自決を軍が命令した事実は全くない。


 (教科書は)座間味島の役場に勤めていた宮城初枝さんの手記をもとに記述した。宮城さんは自決の理由を米軍に問われ『米軍に対する恐怖心』と答えている。


座間味島では、住民が集団自決用の手榴(りゅう)弾を下さいと日本軍に懇願に行ったが、隊長は拒否し、集団自決のため集まった村人を解散させている。渡嘉敷島では、集団自決を知った日本軍の隊長が『早まったことをした』と嘆き、衛生兵を派遣して治療に当たらせた。


 宮城さんの証言によれば、当時の村の重役が遺族の補償金を得るために一計を案じ、集団自決に軍命があったような報告書を作った。それが今日まで尾を引いて、軍命という話が残っている。集団自決を日本軍に関係づけて語るのは、もうやめたほうがいい」


 ―自由社の教科書には、米軍基地に関する記述が少ないという批判もある。

 「米軍基地のことは書いてある。どういう観点から書くかが問題。日本の安全保障で、沖縄が引き受けている比重が大きいことを正しく認識させることが、当然の前提だ」


 「(中学生には)国民としての自覚を育て、この国を守り、受け継いでいくためにふさわしい知識、教養を身につけてほしい。そのために安全保障問題については、中学生といえども基本的なことを学ばないといけない」


 ―沖教組などは、沖縄で社会科の教科書を選ぶ基準として、集団自決や米軍基地についての記述充実を求めている。


 「あまりに視野が狭い。地元の問題がどう記述されているかは一つの参考になるが、それを踏み絵にするような論の立て方は不適切だ。それは歴史や公民のごく一部だ」


 ―そもそも、どういう狙いで「新しい歴史教科書」を書いたのか。

 「歴史教育は、ご先祖さまの歩んだ道を今の子どもたちが正しく学び、未来に生きる勇気を与えるものでなくてはならない。


 文科省の学習指導要領では、わが国の歴史に対する愛情を深めさせることを求めている。子どもたちが日本に生まれてよかったと思えるように、感動できる教科書が、指導要領にもかなう。


 歴史の問題点は専門家の研究の対象としては成り立つが、中学生段階で教える歴史は、ご先祖さまの歩んできた苦労、努力、成果だ。すばらしい歴史を私たちは受け継いできた。そのおかげで、私たちの存在と生活があることを、肯定的に描くことはとても大事だ」

 

久松五勇士「大事なエピソード」 「素人」こそ広い視野で判断 

 

 ―自由社版の教科書には、宮古と八重山にかかわる「久松五勇士」のエピソードが大きく扱われているが。

 「日論戦争時、宮古の漁師が日本人として初めてバルチック艦隊に出会った。5人の若者が決断して、くり船を宮古から漕ぎ出し、石垣島の通信施設に伝えた。日本の危機を救おうという気持ちが、人間の肉体的な限界を超えた奮闘になった。日本人として感謝し、誇りにするべき歴史だ。

名もない国民の働きが、近代日本を成功させた原動力になったというイメージを伝えたかった」


 ―戦前の教科書でも紹介されていたが。

 「大事なエピソードが忘れられていた。それを広く日本の中学生の常識にしたい」


 ―現在、一般的に使われている教科書の、どこが問題なのか。


 「日本という国を大事にするという考え方が薄い。(例として、日露戦争に関する記述では)国民がひどい目にあったことだけを強調しようとしている。国民が犠牲を払ったことは否定しないが、日露戦争に敗れていれば、日本はロシアの属国になっていた可能性が高い。


 そういう国家存亡の危機にあったことを正しく書かず、断片的な国民の犠牲だけをクローズアップして書くのは、わが国の歴史を正しく愛することにならない。


 80年代の教科書からは、日本はアジアに対して悪逆非道な振る舞いをしたという『加害』が言われだした。事実に基づかない話があまりにも多く、自虐的に日本をおとしめる目的で、教科書を作っていると言わざるを得ない」


 ―具体的には、何が日本をおとしめる記述なのか。

 「従軍慰安婦の問題は1990年に起こった。韓国で、日本に対する裁判の原告を集める中心になった人物がいる。この人物は、日本相手の裁判でお金がもらえると話し、準備金と称してお金を集めていたが、今年4月に、詐欺罪で韓国の警察に逮捕された。従軍慰安婦の話は、詐欺師が日本政府からお金を取るための一つのビジネスだった。


 それが愚かにも96年の検定を通り、全社の教科書に従軍慰安婦と強制連行の話が載った。

 私たちは、この話がうそだと批判し、それが直接のきっかけになって、中学校の教科書を書くようになった。現在の教科書では、従軍慰安婦のことは1社も書いていない。歴史が創作されたことが明らかになった」


 ―八重山の教科書選定問題をどう思うか。

 「(自由社、育鵬社の教科書を批判する)極端な主張がクローズアップされている。ごく普通の人たちの感覚が覆い隠されているように感じる。突出した意見だけをとらえるのではなく、もっとバランスの取れた報道が望ましい」

 ―八重山では、教員が事実上、教科書を選定してきたプロセスが問題になっている。


 「教科書に詳しいから先生が選べばいい、というのは俗論だ。専門家は今までの慣習にどっぷりつかり、とかく視野が狭くなる。

(日本の教育委員会制度のモデルになった)米国では、レイマンコントロール(素人統制)と言って、素人(しろうと)のほうこそ広い視野から、より良い方針を考えることができるという理念がある。細部は分からなくても、大局的に判断できるのが教育委員だ。


 調査員の専門性と教育委員会の判断が組み合わさって、より良い教科書が選定できるというのが(日本の)制度であり、賢く運営する必要がある」


 ―自由社の教科書は他社からの年表の流用や誤字の問題が指摘されている。

 「ミスはお詫びしないといけないが、来年4月から使用する教科書では作り直す。誤字を直してもらえるのはありがたいことだ」


 

8月20日(土)

2社の教科書反対で緊急声明

 あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク(反基地ネット)は19日、「日本軍による『集団自決』の強制を否定する自由社・育鵬社の歴史・公民館教科書の採択に反対する緊急声明」を発表した。


 声明では、玉津教育長が「教科書は感情で書くものではない」と述べたことに「詭弁を弄して、2社の教科書を正当化している」と批判。2社の教科書を採択するために「中山市長、玉津教育長らは独善的手法に訴えて採択を強行」しようとしていると訴えている。


「感動できる教科書を」 

 つくる会藤岡会長反対運動は「議論が一方的」

 「新しい歴史教科書をつくる会」会長で、自由社版の中学校歴史教科書代表執筆者でもある藤岡信勝氏(拓殖大客員教授)は19日、滞在先の石垣市内で八重山日報社のインタビューに応じた。同社版の教科書を採択しないよう求める運動が強まっていることについて「議論が非常に一方的だ」と批判した。【インタビュー詳細は21日付に掲載】


 同社版の教科書について「文科省の学習指導要領では(歴史教育に)わが国の歴史に対する愛情を深めさせることを求めている。子どもたちが日本に生まれて良かったと思えるように、感動できる教科書が、指導要領にもかなう」と強調した。


 沖縄戦の集団自決に関する記述で、日本軍の関与に触れていないと批判されていることについては「6年間、定期的に沖縄入りして調査し、何人もの人にインタビューした。集団自決を日本軍が命令した事実は全くない」と強調。

 

沖教組などが、教科書を選ぶ基準として集団自決や米軍基地についての記述充実を求めていることについて「あまりに視野が狭い。それを踏み絵にするような論の立て方は不適切だ」と批判した。


 八重山では、教員が事実上、教科書を選定してきたプロセスが問題になっているが「教科書に詳しいから先生が選べばいい、というのは俗論だ。専門家は今までの慣習にどっぷりつかり、とかく視野が狭くなる」と指摘。教育委員会が大局的に判断するべきだという考えを示した。


教科書問題の報道について「(自由社版などの教科書を批判する)極端な主張がクローズアップされて記事になっている。突出した意見だけをとらえるのではなく、もっとバランスの取れた報道が望ましい」と要望した。


8月19日(金)

教科書は誰が選ぶのか

教科書選定問題について語る玉津教育長=18日午後、市教委
教科書選定問題について語る玉津教育長=18日午後、市教委

 「教科書を個人の思惑で採択しようとしている」「教科用図書八重山採択地区協議会を独断で運営」―と連日、教員経験者などから批判の集中砲火を浴びる協議会会長の玉津博克教育長。「教員だけで事実上、教科書が決められる」という従来の教科書選定作業を改革しようとしたことで「悪役」にされた、とかつて報道陣に語った。


 今回の教科書選定問題では、保守系の自由社、育鵬社の教科書を選定することの是非だけが論議の焦点になっている。「教科書は誰が選定するのか」という玉津教育長の問題提起が、住民にほとんど理解されていないようだ。


昨年の小学校教科書選定作業では、現場の教員である「調査員」3人が、各社の教科書を調査研究して1点に絞り込み、協議会に「採択教科書」として答申していた。


協議会で、他の教科書についても検討したことを示す資料は見当たらない。答申された教科書が、そのまま採択された。


「現場の教員の声を尊重するなら当然」という意見もありそうだが、果たして、これがあるべき姿なのか。


 沖教組の山本隆司中央執行委員長は16日の記者会見で「現場の先生が教科書を絞り込むと、自由社、育鵬社の教科書は上位にはたぶん入らない。ランク外になる可能性がある」と述べた。


教員が調査員である限り、沖縄戦の記述が他社と違っていたり、自衛隊(軍隊)を積極的に評価する保守系の教科書は当然低く評価される、と受け取られる発言だ。


こうした認識は「住民の会」をはじめ、玉津教育長を批判する人たちの間で当たり前のように共有されている。


だが、それでは調査員が予断を持って教科書を「調査研究」していることにならないのだろうか。保守系の教科書に対しては「集団自決の事実をゆがめる」「周辺諸国の脅威をあおり、侵略を正当化する」という批判があるが、それを最終的に判断するのは協議会ではないか。


少なくとも昨年の小学校教科書選定の手法は「教員の言いなり」だった可能性が高く、少数の人たちの意見がノーチェックで通る危険性をはらんでいた。今年の教科書選定では、何らかの改善は必要だったはずだ。


保守系の教科書の是非や、玉津教育長の改革が妥当かどうかは別にしても、昨年の教科書選定作業の検証が、マスコミを巻き込んだ今回の「教科書選定問題」からは、すっぽり抜け落ちている。こうなると、教育長は「悪役」以外の何者でもなくなる。


 18日、記者と再びこの話題になった玉津教育長は「悪役を引き受けるのは(教科書選定作業の)改善をするため」と重ねて強調。「でも、本物の悪人は悪役にはならないよね」といたずらっぽく言い添えた。

                            (仲新城誠)


8月18日(木)

採択協は説明責任を 

 校長会長「事態を憂慮」

 八重山地区中学校校長会(会長・新田健夫大浜中校長)、小学校校長会(会長・石垣安志新川小校長)は16日、来春以降使用される中学校教科書の「採択に関するお願い」と題する文書を教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)に提出し、教科書選定の説明責任を果たすことなどを求めた。校長会が教科書採択に関して要望書を提出するのは初めて。

 


新田会長は17日、取材に対し「冠鷲プロジェクトも軌道に乗りつつあり、学力向上にまい進する矢先に、教科書問題が出てきて憂慮している」と語った。


 地区校長会の要望事項は、教育現場で日々取り扱う教科書の採択にあたって①教科に精通している調査員の意見を尊重すること②公平性、透明性に留意し、説明責任を果たすことーの2点。


 新田会長によると、地区校長会は教科書選定問題が頻繁に報道されるようになったことを受け、今月4日と15日の役員会で対応を協議。16日に3市町の校長会長を加えた拡大理事会を開き、要望書を取りまとめた。


 メンバーからは、協議会の公開と、委員それぞれが推薦した教科書の公表を求める声などがあったという。


 新田、石垣両会長は同日、市教委を訪れて要望書を提出。前花雄二教育部長、崎山晃学校指導課長が対応した。要望に対し、前花部長らは、玉津教育長が進めている教科書選定プロセスの改革について理解を求めたという。


 新田会長は17日、取材に対し、協議会への要望事項について「子どもたちにも、なぜこの教科書を選んだのかと説明できるようにしてほしい」と説明責任の重要性を強調。また「調査員(教員)はプロだ。意見を尊重するのは当然のことだ」と述べた。


教科書選定に当たっての要望として「県民は沖縄戦で苦労してきた。学校現場を混乱させるような教科書を採択することは極力避けてほしい」と述べ、名指しは避けたものの「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社、自由社の教科書を採択しないよう暗に求めた。


選定日に示威行動検討

 2社の教科書採択に反対

写真 ガンバロー三唱する参加者たち=17日夜、大川公民館
写真 ガンバロー三唱する参加者たち=17日夜、大川公民館

来年度の八重山地区の教科書採択問題で、「子どもと教科書を考える市民集会」(主催・子どもと教科書を考える八重山地区住民の会)が17日夜、大川公民館で開かれた。郡内から350人(主催者発表)の住民らが参加し、新しい歴史教科書をつくる会系の育鵬社版、自由社版の教科書の選定・採択に反対する集会決議を採択した。住民の会は今後、教科書用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)に対して協議会委員の公表を求めるほか、採択の行われる23日にはプラカードや座り込みなどを行う考え。

 


同日、主催者である住民の会共同代表の仲山忠亨氏は「立派な教育を受けるには、条件を整えることが必要。子どもたちは教科書を通して学び、人格を形成していく」と、教科書採択に現場の教諭の声を反映させるべきとした。


 市民集会では、渡嘉敷島で起こった集団自決の生存者である古川嘉勝氏と、琉球大学准教授の山口剛史氏が講演を行った。


古川氏は7社の中学校歴史教科書での「集団自決(強制集団死)」「南京事件」「従軍慰安婦」の内容比較を示し、当時6歳だった自身の体験した集団自決について語った。「日本軍の配備と住民への手りゅう弾配布がなければ、集団自決は起こらなかった」とし、「当時の教育を復活させてはいけない」と強調した。


山口氏はこれまでの教科書問題について説明。つくる会系の教科書での年表盗用について挙げ、「教科書検定制度そのものが公正公平で行われているものではない」と指摘。


また、つくる会系の教科書を採択するマニュアルがあることも紹介し、「教育行政を変える動きは全国で起こっている。子どもたちのためになるのか、チェックして意見すべき」とした。


市民の意見発表では、沖教祖の上原邦夫さん、高教組の上原均さん、女性代表の中村恵美子さん、保護者代表の仲舛健さんがそれぞれ意見を述べた。このうち、仲舛さんは「採択以前に協議会の運営に疑念を持つ。子どもたちには正しい方法で選ばれた教科書で真実の沖縄戦を学び、世界に羽ばたいてほしい」と訴えた。


 決議文では、これまでの八重山地区の教科書採択での経過に触れ、問題点を指摘。「子どもたちに誤った歴史観をもたせる育鵬社版、自由社版の歴史・公民の教科書の選定・採択に断固反対する」と訴えている。


 最後は参加者全員でガンバロー三唱し、気勢を上げた。


 

8月17日(水)

「市政交代が原因」  

 教科書問題で沖教組

 沖教組八重山支部の上原邦夫執行委員長は16日の記者会見で、八重山の教科書選定問題の原因について「市政が変わったためだと思う」という見方を示した。


 石垣市では昨年、16年ぶりの保守市政が誕生した。上原委員長は「教育委員を推薦するのは市長」と述べ、教育委員会が市長の意向に沿った動きをしていると推測した。


 また、昨年、尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件を挙げ「尖閣問題をきっかけに、領土問題が書いてある教科書(自由社、育鵬社版)がいいという意見が出てきたのだと思う」と指摘した。


改革の狙いは何か

委員入れ替え、無記名投票 「つくる会」系めぐり賛否 玉津教育長

 来春以降の中学校教科書を選定する教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)で、玉津教育長が進めている改革の狙いは何か。焦点になっている「新しい歴史教科書をつくる会」系の歴史、公民の教科書に対する考え方は。玉津教育長と反対派の発言などを対比させながら、討論形式で改めてまとめた。


 ▽委員の入れ替え

 ―6月27日の協議会臨時総会では、協議会の委員から3市町教育委員会の担当職員や補助職員を外し、3市町の教育委員各1人と、学識経験者を加える規約改正が行われた。狙い。


 玉津教育長の主張「職員は事務方に徹するべき。(職員に代わって)教育委員、学識経験者を入れることで、視野が広く、質の高い論議ができる」


 子どもと教科書を考える住民の会の反論(村田栄正元教育長)「指導主事は事務方ではない。現場を指導したり、研修させたりする仕事で、市が高い給料を払って来てもらっている人。(玉津氏は)現場の職務すら知らない教育長だ」


 同会の大浜敏夫事務局長の反論「8人の委員には、全く現場教員の経験のない人もいる。9教科の教科書を絞り込みするのは、物理的に無理ではないか」


玉津教育長の再反論「教科書をできるだけ多く読むことができる方を入れないといけない。だから事務方は外した。時間的に余裕があり、教科書に造詣が深く、識見の高い人に読んでもらうことで、さらに幅の広い判断ができる」


▽順位付けの廃止

―玉津教育長は、調査員(教員)による各社の教科書の順位付けを廃止したが、狙いは。


玉津教育長の主張「教員が順位付けすることが問題ではなく、教員が選んだ教科書が、そのまま採択されることが問題だ。従来は、教員の順位付けが拘束性を持っていた。教員だけで教科書を選ぶのではなく、協議会の責任と権限で選ぶべきだ」


住民の会の反論(発表文書より)「子どもの実態をよく知っているのは教員。玉津氏は学校現場の実態、教員の果たす役割を軽視し、教育委員と協議会を重視・偏重した、あまりにも行政的発想の発言」


玉津教育長の再反論「委員は調査員の報告と照らし合わせて判断する。調査員の気持ちをくみ取るためにも、調査員には教科書を複数推薦させる」


▽無記名投票

―決定方法を無記名投票としたが、狙いは。


玉津教育長「無記名投票にすることで、委員がきちんと意見を表明できる。記名投票にすることで、周囲を見て、右に行こうか、左に行こうか、ということになる。協議会としての意思が大事だ」


住民の会の反論(発表「(文書より)「協議会委員として行使した権限に対し、責任を負うのは当然。協議会を隠れみのにした委員の責任逃れは許されない」


▽「つくる会」系教科書

―「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社、自由社の教科書に対する考え方は。


玉津教育長の主張「文科省の検定を通った教科書は問題ない」


住民の会の反論(発表文書より)「沖縄戦の集団自決について、旧日本軍の強制・誘導などの関与が全くなかったような記述になっており、県民にとって到底容認できない。教科書としてまったく不適切」


玉津教育長の再反論「集団自決に関する県民感情はよく分かるが、教科書は感情で書くものではない。文科省が認めた教科書を使うなというのは、思想信条の自由の観点からも、私の口からは言えない」


「沖縄戦の実相重視を」

 教科書採択で協議会に要請  沖教組委員長

教科書採択についての要請書を玉津教育長に手渡す山本委員長=16日午後、市教委
教科書採択についての要請書を玉津教育長に手渡す山本委員長=16日午後、市教委

 沖教組の山本隆司執行委員長は16日、石垣市教育委員会を訪れ、教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克教育長に対し「より正しく沖縄戦の実装を記述してある教科書の採択」などを求める要請書を提出した。


 山本委員長は要請後の記者会見で「新しい歴史教科書をつくる会」系の自由社、育鵬社の教科書について「先生は『教科書にうそが書いてある』といわざるを得ない。採択されると、学校教育や教科書に対する信頼性が落ちる」と指摘。


 沖縄戦の集団自決に軍が関与した記述を教科書に復活させるよう求めた、昨年の県民大会について「一体何だったかということになり、大会が地に堕ちることにならざるを得ない。全国に恥をさらす結果になる」と述べ、2社の教科書を採択しないよう改めて求めた。


 望ましい教科書として、集団自決に関する記述が充実している現行の帝国書院版を挙げた。


 沖教組八重山支部の上原邦夫執行委員長は、2社の教科書が採択された場合「高校入試で(八重山地区の)子どもが不利にならないか」と懸念した。


 山本委員長は、玉津教育長への要請では、2社の教科書についての直接的な言及は避けた。教育長は報道陣に対し「非常に紳士的な要望だった」と話した。


 

規約逸脱の可能性も

 昨年は調査員が「選定」か

 昨年行われた小学校教科書の選定作業で、教科用図書八重山採択地区協議会の調査員(教員)が、選定すべき教科書を1点に絞り込んで、協議会に答申していたことが分かった。調査員が事実上、教科書を選定していた実態をうかがわせている。沖教組の山本隆司執行委員長は16日、今後事実確認するとした上で「もしそうであれば問題だと思う」との見解を示した。調査員には、規約にない「採択調査委員」という名称が与えられるなど、昨年の教科書選定作業が、規約を逸脱していた可能性も浮上した。


 玉津博克教育長は「現場の教員だけで教科書が決まるのは問題」だとして、調査員が各社の教科書を「順位付け」することを廃止。調査員に複数の教科書を推薦させる制度を導入している。昨年までの教科書選定作業の実態は、教育長の主張を裏付けるものになりそうだ。


 昨年の教科書選定作業では、9教科で3人ずつの教員が、教科書の調査員(当時は調査委員)として協議会会長から任命された。


 調査員は協議会の「諮問」を昨年6月24日に受け、教科書を調査研究して、同14日に「答申」した。協議会に提出された答申書には「平成23年度使用小学校教科用図書採択について」というタイトルがついている。しかし、当時の規約では、調査員に対して「諮問」「答申」するという形式は規定されていない。


 答申書は「採択調査委員」3人の連名になっており「採択教科書」の欄に絞り込んだ教科書1点を記入。その下には「採択理由」の欄があり、その教科書を選定した理由を記す書式になっている。


 「採択調査委員」「採択教科書」「採択理由」という書式も、調査員に採択権限を与えたかのような印象を持たれかねない。


 沖教組の山本委員長によると、他地区では調査員が教科書を2~3点に絞り込んだ上で、協議会に判断を委ねている。山本委員長は16日の記者会見で「教科書を1つに決める権限は現場の調査員にはない。今後調べてみるが、もしそうであれば問題だと思う」と述べた。


協議会は昨年7月20日に教科書を選定したが、当日の資料では、議案は教科書の「選定」ではなく、調査員が絞り込んだ教科書の「承認」となっていた。


教科書選定の担当課である市教委学校指導課は、昨年とは担当者が交代している。崎山晃課長は昨年の答申書の書式について「どうしてそうなっているのか分からない」と話している。


 玉津教育長による教科書選定作業の改革では、調査員に教科書を複数推薦させるが、協議会委員は推薦に拘束されずに教科書を選定できる。他地区では、調査員が絞り込んだ2~3点から教科書を選定しており、八重山地区とは違いがある。

 

8月16日(火)

「静かな環境」にほど遠く

 教育長に「集中砲火」 

教科書問題のコラージュ。左上が玉津教育長、右が育鵬社、自由社の教科書、下が「住民の会」のメンバー。
教科書問題のコラージュ。左上が玉津教育長、右が育鵬社、自由社の教科書、下が「住民の会」のメンバー。

 教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)が来春以降の中学校教科書を選定する23日まで1週間になった。「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社、自由社版の歴史、公民の教科書が選定される可能性をめぐり、マスコミを巻き込んだ反対運動は激化。国会でも八重山の教科書選定問題が取り上げられるなど「採択環境」は騒然としている。国が求める「静ひつな採択環境」とは、ほど遠い状況になりつつある。

 


 ▽話題持ちきり

 石垣市内のホテルで8日夜に開かれた県議会議長の出版祝賀パーティ。出席者の男性は「どこのテーブルに行っても、話題は教科書で持ちきりだった」と話す。教科書選定に対する住民の関心はかつてなく高まっている。


 「何よりも静かな環境で、というのが私の願い。23日の協議会のときに、周囲で騒ぎになるのは避けたい」。玉津教育長は、教科書選定問題の過度なヒートアップを懸念する。


 7月中旬に「教育長が役員会を経ずに調査員を委嘱」と報道されて以来、歴代教育長が共同代表を務める「子どもと教科書を考える八重山住民の会」が立ち上がり「つくる会」系教科書反対の火の手が一気に上がった。


「あまりにも独断専行」「恣意(しい)的、強引な協議会運営」「県の教育史上、こんな混乱があったのか」―。反対派からは、教科書選定プロセスを見直した玉津教育長の改革に痛烈な批判が飛び交う。呼応するように、マスコミでも連日、住民の会などの主張を引用する形で、教育長批判が紙面を賑わせるようになった。


市議会野党が県教育委員会に直訴する事態になり、問題は一気に政治闘争色を増した。県教育委員会は協議会に対し、委員に学校関係者を追加するよう要請。衆院では保守系議員が、県の要請を「不当介入」と指摘するなど、騒動は国会にも波及した。


▽猪突猛進

一連の改革については、協議会の委員からも「事前に説明がなかった」と苦言を呈する声が上がるなど、教育長の猪突猛進になりがちな性格を指摘する声は多い。


玉津教育長を招き、事情を聞いた市議会与党連絡協議会の砂川利勝会長は「筋道をしっかり正せば問題はなく、混乱も起きない」と要望。改革には理解を示しながら、教育長に慎重さを求めた。


ただ、教科書採択は原則として4年に1度。周囲の批判にもかかわらず、任期中に改革に着手するには、このタイミングしかなかったという事情も見え隠れする。


▽「悪役引き受ける」

批判のボルテージが上がる中で「ワンマン教育長」というイメージは増幅される一方。玉津教育長は「新聞はセンセーショナルな見出しをつけ、悪役を登場させようとしている。(私は)中身を見ないでレッテル張りされている」と、報道陣に不信感をぶちまけた。


だが、改革に対する賛否は別にしても、教科書選定に対する住民の関心がかつてなく高まった事実は否めない。「住民には、教科書問題を自分の問題のようにとらえていただけるようになった。そのためなら、私は悪役でも引き受ける」。そう話す教育長は、さばさばした表情に変わった。


 ▽「採択環境」騒然

 文部科学省は来春以降の教科書採択について、4月7日付で各都道府県教育委員会に通知し「静ひつな採択環境を確保し…外部からの働き掛けに左右されることなく、採択権者の権限と責任におけて公正かつ適正な採択がなされるよう、適切に対応」することを求めた。


 しかし、教科書選定問題のこれまでの経緯を振り返っても、協議会を取り巻く「採択環境」は、静ひつとはほど遠い。


 文科省は協議会などの会議を公開とすることも認めているが、玉津教育長は「自由で中立的な意見を保障するために非公開、無記名投票にした」と強調、協議会の委員名も公表しない方針を示す。


ただ、協議会の委員名は、教科書選定問題に関心を持つ人の間では、すでに公然の秘密と化している。「つくる会」系の教科書が選定される可能性をめぐり、一部では「票読み」もささやかれ始めた。


玉津教育長を批判する側も「異常な状態であり、望ましくない」(野党市議)と眉をひそめる。自由で中立的な意見がどこまで保障されるのか、疑問視されかねない状況になりつつある。


8月11日(木)

「県は不当介入」 

 八重山の教科書選定問題で指摘

衆院文部科学委員会で質問する古屋氏(衆院ホームページより)
衆院文部科学委員会で質問する古屋氏(衆院ホームページより)

 衆院文部科学委員会で10日、古屋圭司氏(自民)が教科用図書八重山採択地区協議会の教科書選定問題を質問し、県教育委員会が協議会委員の追加などを求めたことについて「明らかに不当介入だ」と追及した。古屋氏はこの問題の調査を要求し、高木義明文科相は「実態をしっかり把握したい」と述べた。


 古屋氏は協議会の現在の構成メンバーについて「極めてバランスの取れた人選だ」と評価。


県教委が選定の延期と委員の追加を求めたことについて「法律上の権限を越えた介入。採択権者の市町村教育委員会の権限を侵している。特定の教科書を攻撃している外部勢力に応じた」と批判した。


その上で「(県教委の要求が)適切な助言だったのか調査してほしい」と述べ、調査報告を委員会に報告することも求めた。文科相は「調査が終わればそのようにしたい」と応じた。


山中伸一初等中等教育局長は「最終的には協議会の責任と権限で(教科書選定が)行われることが一番重要だ」と述べた。


 

現委員8人で教科書選定 

 臨時総会で変更動議否決  23日に結論、審議非公開

教科用図書八重山採択地区協議会の臨時総会終了後、記者会見する玉津教育長=10日午後、市教委
教科用図書八重山採択地区協議会の臨時総会終了後、記者会見する玉津教育長=10日午後、市教委

 教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の臨時総会が10日、市教育委員会で開かれ、協議会委員に校長代表を加える動議を賛成少数で否決した。これで、来春以降の中学校教科書は現在の委員8人で選定することが確定した。選定期日は23日。審議は非公開で行われる。協議会は選定した教科書を3市町教育委員会に答申し、最終的には、それぞれの教育委員会が採択の可否を判断する。

 


 事務局の市教委によると、臨時総会では委員の1人が「協議会の責任の質を高めるために、学校関係者を入れてはどうか」と、校長代表を委員に追加する規約改正の動議を提出した。


 挙手による採決が行われたが、出席者7人中、賛成は動議提出者の1人だけだった。


 協議会の決定方法については、多数決で決めるとする規約改正を行った。可否同数の場合は再投票し、なお可否同数となった場合は、3教育長で構成する役員会で決定する。


 玉津教育長は臨時総会後の記者会見で、23日の教科書選定について「意見の中立性を保ち、自由な雰囲気で言えるようにするためにも非公開、無記名投票にした」と重ねて表明。


 選定した教科書、審議の議事録については、23日の選定時ではなく、3教育委員会での採択が終わったあと公開する方針を示した。


 臨時総会には、歴代教育長が共同代表を務める「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」のメンバー多数が傍聴を求めて訪れたが、会合の冒頭で、審議を非公開とする方針を確認した。


 協議会委員は3市町の教育長、3市町の教育委員各1人、学識経験者、PTA代表の計8人で構成している。


 県教育委員会(県教育庁)は協議会に対し、委員に校長代表と3市町教育委員会の指導主事の課長を加えるよう要請していたが、9日の役員会では委員の追加について合意できなかった。


 

8月10日(水)

択協の委員追加見送り 

 役員会で意見分かれる

役員会後、記者会見する玉津教育長(中央)、慶田盛教育長(左)、崎原教育長(右手前)=9日午後、市教委
役員会後、記者会見する玉津教育長(中央)、慶田盛教育長(左)、崎原教育長(右手前)=9日午後、市教委

 来春以降の中学校教科書を選定する教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の役員会が9日、市教育委員会で開かれ、委員を追加する規約改正を見送った。役員間で意見調整がつかず、取りまとめを断念した。10日の協議会臨時総会で報告する。委員の構成メンバーをめぐっては、県教育庁が3日、協議会に対する要請文書で、校長会の代表と3市町教育委員会の指導主事を追加するよう求めていた。

 


 役員会の結果を受け、臨時総会で事務局の市教委は、委員を追加する規約改正を提案しない。ただ委員が、規約改正の動議を提出する可能性は残る。最終的に教科書が現在の8人の委員で選定されるかどうかは、まだ流動的な要素がある。


 役員会は玉津教育長、慶田盛安三竹富町教育長、崎原用能与那国町教育長の3人で構成。県が要請した規約改正について、崎原教育長は拒否、慶田盛教育長は受け入れを主張した。


玉津教育長は、校長会代表のみ追加を認め、指導主事については「絶対に受け入れられない」と拒否した。3人の意見調整がつかないまま、午後3時に始まった役員会は3時間半に及んだ。


 役員会後の記者会見で玉津教育長は、県教育庁の要請について「こういう指導が適切かどうか、疑問がある」と述べ、八重山教育事務所が「指導文書」ではなく「要請文書」を出したことを疑問視。「(要請であれば)聞かなくてもいいのではないか」と述べた。


崎原教育長は「協議会のメンバーは学識経験が豊富だ。改めて委員を入れる必要はない。(県教育庁は)指導はできないのに、要請という形で責任を押しつけようとしている」と指摘。教科書選定プロセスに対する県教育庁の介入を批判した。


唯一、県教育庁の要請受け入れを主張した慶田盛教育長は「校長や指導主事が委員に加われば、教材の研究を充実できる」と理解を求めた。


8月9日(火)

教科書選定に要請文100通

 全国に反響 9割が「つくる会」系に反対

石垣市教育委員会に寄せられた教科書選定についての要請文(8日午後)
石垣市教育委員会に寄せられた教科書選定についての要請文(8日午後)

 教科書選定問題で、教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)事務局の市教育委員会には、8日までに全国から100通余りの要請文が送 られた。9割が自由社、育鵬社を名指しし、両社の教科書を採択しないよう求めている。残る1割は、圧力に屈せず選定プロセスの改革を続行するよう玉津教育 長を激励する内容。要請文が「殺到」していることについて市教委は「冷静に受け止めて判断する」(前花雄二教育部長)としている。


 要請文は封書、はがき、電子メールなどで寄せられ、発送元は石垣市や竹富町のほか、沖縄本島、東京都、大阪府、埼玉県、香川県など。教科書選定問題の反響が全国に及んでいることをうかがわせている。


  9割は自由社、育鵬社の教科書について「誤った歴史を子どもたちに意図的に教える」「国民意識に反し、非常に問題が多い」などと指摘。「(両社の教科書を 採択すれば)万死に値する」、「地上戦のあった本島の悲劇を、他人事として見ているのか」「県民自ら、再び戦場の渦に巻き込まれるようなことはしないで」 「八重山だけの問題では済まない」という訴えもあった。


 両社の教科書採択に反対する要請文の中には、同一の様式で組織的に書かれたと思われるものも多数見られた。


 残る1割は「教員の意向だけで決まる従来の採択の仕組みこそ、民意を入れない非民主的な運営」「(玉津教育長の)改革を支持します」などという内容。


多くが本土からで、県教育庁が協議会の運営に介入したという本土紙(産経新聞)の報道が影響したようだ。「地元議会の抗議、マスコミの反対キャンペーンは不当な干渉」「負けないで」という激励文も目についた。



8月8日(月)

採択協の追加が焦点 

 あすの役員会が山場

市立図書館で開かれている教科書展示会で、各社の教科書に見入る玉津教育長(4日午後)
市立図書館で開かれている教科書展示会で、各社の教科書に見入る玉津教育長(4日午後)

 来春以降に使用する中学校教科書の選定問題で、教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)は9日、役員会を開き、協議会委員を追加する規約改正を審議する。協議会が「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書を選定する可能性が焦点になる中、委員の構成は選定の行方に大きな影響を及ぼす。22日に予定されている選定を前に、役員会が大きな山場になりそうだ。

 


 ▽「つくる会」系の教科書

 歴代教育長が共同代表を務める「住民の会」の大浜敏夫事務局長は6日の記者会見で、教科書選定の際は「他県と違い、近現代の沖縄史の記述が大事」と述べ①沖縄戦の集団自決に対する旧日本軍の関与②基地問題―などを重視するべきだという考えを示した。


市教委によると、現在、八重山で使用されている歴史、公民の教科書の出版社は、少なくとも1997年以降変わっていない。2社の今年度の記述では、旧日本軍が県民を殺害したことを明記し、自衛隊については憲法違反の指摘があることに力点を置く。


従来の教員主体の教科書選定が「住民の会」の主張に近い観点から行われてきたことをうかがわせている。


一方「つくる会」系の育鵬社、自由社の教科書は、生徒に対し、日本の伝統や文化に誇りを持たせることを狙いとしており、沖縄戦では、旧日本軍の加害行為についての記述はない。自衛隊や日米安保については必要性を強調している。


教科書選定のプロセスが変わったことに、住民の会が「今までにない教科書を持ってこようとしている、と思うのが社会の常識だ」(6日の記者会見)と反発するのは、従来のプロセスだと「つくる会」系の教科書が選定される可能性はゼロに近かったためだ。


 ▽協議会委員の追加

協議会は6月の総会で、教員である指導主事を含む3市町教育委員会の職員を委員から外した。委員には、他に現職の教員はいないため、教員の影響力は弱まった形になった。


玉津教育長は「協議会の責任と権限で教科書を決定するという本来のあり方に近づく」と強調する。


こうした動きに市議会野党が反応。県教育庁に対し、協議会を指導するよう直訴した。事態を重視した県教育庁も教科書選定のプロセスに介入。八重山教育事務所は3日、協議会委員に校長会の代表と、指導主事である担当課長を入れるよう要請した。


仮に校長と3市町教育委員会の指導主事の4人が委員に入れば、協議会で教員の影響力が著しく強まる。教科書選定の行方に大きな影響を及ぼすのは必至だ。


県教育庁の要請について玉津教育長は「どうして協議会の構成メンバーに手を突っ込んでくるのか」と疑問視。役員会では委員追加の当否が議論されるが、結論によっては、玉津教育長による教科書選定プロセスの改革が、無に帰しかねない状況だ。


8月7日(日)

「教員の順位付けがベター」

 教科書選定で住民の会

 歴代教育長が共同代表を務める「子どもと教科書を考える八重山住民の会」は6日、大浜信泉記念館で記者会見し、教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克教育長の教科書選定に対する見解に反論する文書を公表した。


 会見した仲山忠亨元教育長や現職の教員は、玉津教育長が教員の意見に拘束されずに教科書を選定する意向を示していることについて「調査員(教員)のつけた順位を参考にして、その中から協議会の委員が選ぶのがベター。あまりにも現場の教員をないがしろにしている」などと批判した。


 

8月6日(土)

22日に教科書選定へ

 非公開、「自由な意思表明保障」

 教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)は、来春以降使用される中学校教科書を22日に選定する方向で調整している。副会長の慶田盛安三竹富町教育長からは、協議会を公開するよう求める声が上がっているが、玉津教育長は5日、取材に対し「委員の自由で中立的な意思表明を保障するために、公開はしない」と述べ、会議を非公開とする方針を示した。

 


 関係者によると、会議の公開・非公開をめぐっては、委員の間でも意見が分かれている。


慶田盛教育長は「委員の責任を明確化するべきだ」として、決定方法を委員の無記名投票とすることにも反対しており、各委員の選択を公表するよう求める考え。


玉津教育長は、協議会の選定を受けて教科書採択を最終的に決める市教育委員会の会議は、公開すると表明した。


 文部科学省は4月の通知で、教科書採択の会議について「会議の公開・非公開を適切に判断するとともに、公開で行う場合には傍聴に関するルールを明確に定めておくなど、適切な採択環境の確保」に努めるよう求めている。


沖縄の文化紹介に関心

 玉津教育長が教科書展示視察

真謝館長の案内で教科書展示会を視察し、教科書を手に取る玉津教育長=5日午後、市立図書館
真謝館長の案内で教科書展示会を視察し、教科書を手に取る玉津教育長=5日午後、市立図書館

 教科用図書八重山採択地区協議会の玉津博克石垣市教育長は5日、石垣市立図書館を訪れ、教科書展示会を視察した。


 来春から使用される予定の各社の中学校教科書が展示されている。玉津教育長は、首里城、沖縄そば、ゴーヤーなど、沖縄の文化を紹介した教科書に関心を示し「沖縄の子供達に関心を持たせるには非常にいい」などと話した。


 同展は31日まで。玉津教育長は「多くの住民に見てもらい、どんな教科書があるのか興味を持ってほしい」とアピールした。


8月5日(金)

教科書展示会始まる

 採択協「じっくり読んで」

教科書展示会の準備をする市立図書館職員(4日午後)
教科書展示会の準備をする市立図書館職員(4日午後)

 教科書選定問題で、住民の教科書に対する関心が高まる中、教科用図書八重山採択地区協議会は、来春から使用される各社の中学校教科書の展示会を5日から、石垣市立図書館で始める。31日まで。


 住民の関心の高まりに応えようと、同協議会として初めて企画した。

会長の玉津博克石垣市教育長は「住民に教科書をじっくり読んでいただきたい。(教科書選定問題が)話題になっているが、教科書を読まないと何も始まらないのではないか」と話している。


同協議会は22日か23日に教科書を選定する方向で調整している。



採択協の役員会延期

 台風9号接近で

 教科用図書八重山採択地区協議会は4日、台風9号接近で与那国町の崎原用能教育長が石垣入りできなくなったため、予定していた役員会を9日に延期した。


 県教育庁が要請した規約改正を審議する予定だった。



教育長の改革に「歯止め」 

 採択協の委員追加要請 教員の影響力回復図る

 県教育庁が八重山教育事務所(宮良学所長)を通じ、来春の中学校教科書を選定する教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の委員に校長と3教育委員会の担当課長を追加するよう要請した。要請に従って規約が改正されれば、協議会に、新たに教員が4人加わる可能性が高い。協議会から教員の影響力を排除しようとした玉津教育長の方向性にはストップがかかる。協議会では教科書を無記名投票で選ぶことを決めているため、教科書選定に向けた、協議会内の「力関係」も変わってくる。

 


 玉津教育長と関係部課長は4日、県教育庁の要請への対応を前日に引き続き協議。玉津教育長は取材に対し「協議会の構成メンバーを変更するのは重要なことだ。県の指導なら粛々と受けるが(要請なのか指導なのか)不明瞭になっている」と述べた。


 玉津教育長が「要請」か「指導」かにこだわるのは、協議会の構成メンバー変更が、県教育庁の「圧力」であることを明確化させたい思いがあるためだと見られる。


 玉津教育長は「教員だけで教科書を選定するのは問題」だとして、教員である調査員が各社の教科書を順位付けし、1位の教科書を協議会に報告する従来のシステムを廃止。調査員の報告はあくまで参考とし、協議会が報告に拘束されずに教科書を選定できるようにした。


 6月の規約改正で、委員の構成メンバーは3市町教育委員会の教育長、教育委員代表、学識経験者、PTA代表の8人に。従来入っていた3教育委員会の担当職員は外れた。


 これに対し、八重山教育事務所の要請文書では、協議会に校長代表と、3市町教育委員会の「指導課長」を加えるよう求めている。指導課長は、通常は教員が務める指導主事を指すと見られる。仮に校長代表1人と3市町の指導主事3人が委員に加わると、協議会メンバー12人中4人が教員で占められることになり、教科書選定に教員の意見が反映されやすくなる。


 玉津教育長は、校長を委員に加えることには前向きな姿勢だが、3市町の担当課長については「事務方は委員に入れないというのが、組織の最初からの方針」と難色を示す。教員の影響力を排除しようとした当初の方向性が、規約改正によって損なわれるという危機感もあると見られる。


 一方、協議会副会長の慶田盛安三竹富町教育長は「協議会には校長会の代表、指導主事を入れ、PTA代表も増やすべきだ」と述べており、教員の意見を最大限尊重するよう求めている。9日に開かれる役員会では、規約改正をめぐり両者が対立する可能性もある。


8月4日(木)

「異常な運営手法」

 野党市議団、協議会への指導を要請

野党市議団が教科用図書八重山採択地区協議会への指導・助言を宮良所長に要請した=3日午前、八重山教育事務所
野党市議団が教科用図書八重山採択地区協議会への指導・助言を宮良所長に要請した=3日午前、八重山教育事務所

 石垣市議会の革新系野党議員6人が3日、八重山教育事務所を訪れ、教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長が「異常な運営手法」で不信を招いているとして、同協議会に指導・助言するよう求める要請書を提出した。要請書は3市町の議会議員10人の連名。


 石垣三雄氏は「教科書はあくまで子どもたちのもの。大人の考えを入れるべきではない。(玉津教育長の運営手法が)公正公平ではなく、子どもたちの人格を否定することにつながる」と訴えた。


 大浜哲夫氏も「すべてが玉津教育長の規則破り、独断専行だ」と強調した。

 宮良学所長は「公正、適正な教科書が、ルールに基づいて採択されることを期待している。八重山郡民、県民すべてが納得できる採択ができるように注目している」と述べた。


 また、協議会が4日に予定していた教科書選定を延期するよう要請したことについては「(選定が)拙速過ぎないかと判断した。八重山教育事務所として、もう少し慎重に議論を深めるようにお願いした」と説明した。


協議会は公開で

 慶田盛教育長が求める

 教科用図書八重山採択地区協議会副会長の慶田盛安三竹富町教育長は、会長の玉津博克石垣市教育長が無記名投票で教科書を選定する方針を決めたことについて「これだけ住民が関心を抱いており、委員はきちんと責任を持つべきだ」と指摘。協議会を公開し、各委員は自らの意見を公表するべきだという考えを示した。4日の役員会でも、協議会の公開を求める。


 教科書選定に対する外部からの圧力を避ける狙いから、現在、協議会のメンバーは公表されておらず、協議会は非公開で開かれる方針が決まっている。


4日に予定されていた教科書選定が延期されたことについては「(現在は)まだ適正、公正な採択ができる状況ではない。延期はいいことだ」と述べ、八重山教育事務所の要請を評価した。

 

教育長「納得できず」

 保守系市議は不当介入と批判

 八重山教育事務所が3日、教科用図書八重山採択地区協議会に対し、委員を追加するよう要請したが、協議会会長の玉津博克石垣市教育長は「指導なら受け入れるが、要請では納得できない」として要請文書の受け取りを拒否した。県教育庁が協議会の構成を変更するよう要請すること自体も異例で、保守系市議からは「不当な介入」という批判の声も上がり始めた。


 県教育庁は、市町村教育委員会の教科書採択の事務について指導、助言、援助を行うこととされている。ただ協議会の構成メンバーは、協議会を構成する各自治体の教育委員会が話し合い、自主的に決定している。


関係者によると、県教育庁は今回の教科書選定で、協議会の委員に校長や教育委員会の担当課長が入っていないことを憂慮。2日、八重山教育事務所を通じ、口頭で委員の追加と、4日に予定されていた教科書選定の延期を要請した。


ただ、協議会は6月の総会で規約を改正し、教育委員会の担当課長を「職員は事務方に徹してもらう」(玉津教育長)として委員から外したばかり。

玉津教育長は「事務方は委員には入れないというのが組織の最初からの方針だ」と強調。同事務所に対しても「どうして(県教育庁)義務教育課が協議会の構成メンバーに手を突っ込んでくるのか」と話したという。口頭で求められていた教科書選定の期日の延期が、要請文書に盛り込まれていないことにも不満の意を示した。


一方で、協議会役員の1人である慶田盛安三竹富町教育長は、担当課長を委員に加えることについて賛意を示しており、4日の役員会で議論になる可能性がある。


八重山教育事務所の要請について、砥板芳行市議は3日「地域性を無視した不当な介入ではないか。公正、適正な教科書採択のためには(地域の)方針を尊重するべきだ」と疑問視した。


「採択協に委員追加を」

 県教育庁、異例の要請  議論呼ぶ可能性も

 教育庁八重山事務所(宮良学所長)が、中学校教科書を選定する教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)に対し、委員に校長代表と教育委員会の担当課長を追加するよう文書で要請していたことが3日分かった。県教育庁が、協議会の構成を変更するよう要請するのは異例で、論議を呼ぶ可能性がある。宮良所長は「審議を深めるには(校長などが)入ったほうがいい」と説明している。協議会は4日に役員会を開き、委員の変更を審議する予定。当初、4日に予定されていた教科書選定は、20日以降に延期されることが正式に決まった。

 


玉津教育長は3日、取材に対し、同事務所の要請について「指導は粛々と受け止めるが、要請なら納得できない」と述べた。同事務所から送付を受けた要請書は受け取らず、指導文書を出すよう求める方針。


 協議会は従来、3市町の教育長、教育委員会職員、PTA代表9人で構成していた。玉津教育長は6月の総会で規約を改正し、委員の構成を変更。3市町の教育委員と学識経験者を新たに加え、教育委員会職員を外し、総勢8人とした経緯がある。


 同事務所は3日、協議会事務局の市教委に対し①協議会メンバーに校長、3市町教育委員会指導課長を新たに任命し、協議の充実を図る②議事録で、説明責任を果たせるようにする③3市町教育委員会が合意できるよう、規約に基づき十分に合意を求めるーことを盛り込んだ要請書を送付した。


 宮良所長は取材に対し「校長や担当課長は教科書について専門的な知識を持っているので(協議会に入れば)審議が深まる」と述べた。


 関係者によると、同事務所の要請は、県教育庁義務教育課の指示だと見られる。


同事務所の要請を受け、協議会は3市町教育長で組織する役員会で、今後の対応を話し合う。役員会で委員を追加する規約改正が決まれば、10日に協議会の臨時総会を開いて諮る考え。


調査員は、すでに1日、各社の教科書の調査報告書を協議会に提出している。協議会は、持ち越した教科書選定を22日か23日に行う方向で調整している。


 校長代表を委員に追加することについて玉津教育長は「以前から委員に加えることを考えていたが、学校の意見は調査員(教員)が吸い上げるだろうと判断していた」と前向きな考えを示した。ただ担当課長については難色を示しており、役員会で議論になる可能性がある。


8月3日(水)

調査員の意見尊重を

 採択協メンバーの見直し求める

インタビューに答える慶田盛教育長=2日午前、竹富町教育委員会
インタビューに答える慶田盛教育長=2日午前、竹富町教育委員会

  小、中学校の教科書を選定する教科用図書八重山採択地区協議会副会長の慶田盛安三竹富町教育長は2日、八重山日報社のインタビューに応じ、教科書選定のプロセスについて「調査員(教員)の調査報告を第一に尊重するべきだ」と強調。協議会メンバーの入れ替えなど、会長の玉津博克石垣市教育長による一連の改革 を「協議会の私物化ではないか」と厳しく批判した。

 


 ―これまでは、調査員が各社の教科書に順位付けしていたが、玉津会長は、協議会は調査員の判断に拘束されるべきではないと主張し、順位付けを廃止した。


 「これまでの方法の何が問題なのか。各教科の調査員は、ものすごく苦労して教科書をチェックしている。その意見を単なる『参考』として処理されると、調査員の苦労が無になる。何のための調査員なのか」


 「各社の教科書は9教科で60冊もある。協議会のメンバーがすべてを読むことはできない。調査員の意見は第一に尊重するべきだと強く言いたい」

「調査員の判断に協議会が拘束されるという言い方もおかしい。最終的に教科書を決定するのは教育委員会。調査員が決めるのではない」

 

 ―6月の協議会総会では、調査員を役員会で選任するという規約改正があったが、玉津会長は当初、他の2人の役員である竹富町、与那国町教育長に名簿を手渡したことで「承認されたと理解した」と主張していた。


 「資料を渡しただけで役員会が成立するのか。会議録もない。協議会の私物化ではないか」

 

 ―しかし慶田盛教育長は、7月26日の役員会で、6月にさかのぼって人選を承認した。

 「教員には、もう委嘱状も交付されている。今から調査員を外されると『不適格者』になってしまい、身分にもかかわる。(だから承認した)」

 

 ―玉津会長の方針で、協議会のメンバーに教育委員と学識経験者が加わり、教育委員会の職員が外れたが。


 「協議会には、教科書に造詣の深い人、学校現場で教科書を実践している人、校長会の代表を入れ、PTA代表も増やすべきだ。教育長や教育委員は、最終的に判断する立場にいるから入れるべきではない。今後、協議会の構成については、大いに議論しないといけない」


4日の教科書選定延期へ

 八重山教育事務所が要請 「適正、公正な採択望む」

自由社、育鵬社の「歴史」「公民」教科書
自由社、育鵬社の「歴史」「公民」教科書

 教育庁八重山教育事務所(宮良学所長)は2日、来春の中学校教科書を選定する教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克教育長)に対し、4日に予定していた教科書選定を延期するよう要請した。これを受け同協議会は、延期する方向で調整を始めており、3日、延期を正式決定する見通し。20日以降に持ち越される可能性が高い。宮良所長は取材に対し、延期要請の理由について「適正、公正な教科書採択が行われるかどうか注目している。十分に審議を深めるために要請した」と述べた。玉津教育長は「ノーコメント」としている。

 


 教科書採択をめぐっては、3市町議会の革新系議員有志らが3日、八重山教育事務所を訪れ、同協議会が「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書採択を目指しているとして、同協議会に指導・助言するよう求める予定になっている。


 これに先立ち、議員有志らは1日、県教育庁に対し、同協議会に対する指導・助言を求めた。


教科書選定の延期要請と、議員有志の動きとの関連性について宮良所長は「全く関係ない」と言明。「教科書を政治の争いにしてはだめだ。あくまで適正、公正かということを考えなくてはならない」と強調した。


延期要請を受け、同協議会事務局の市教委は、関係機関との調整などの対応に追われた。教育長室には前花雄二教育部長や関係課長らが慌しく出入りするなど、緊迫した雰囲気が漂った。


 教科書選定は8月中に行わなくてはならない。ただ今後、旧盆などの諸行事が入ってくるため、20日以降に持ち越される可能性が高まっている。

8月2日(火)

「教員だけで選定」は問題

 従来の教科書選定で指摘 “子どもに最善”真剣に議論を

インタビューに答える玉津教育長=7月20日、市教育委員会
インタビューに答える玉津教育長=7月20日、市教育委員会

 八重山地区の小中学校で使用する教科書の採択プロセスについて、教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長が改革を進めている。狙いは何なのか、八重山日報社は1日までに、玉津教育長にインタビューした。


 従来の採択プロセスは、何が問題なのか。


「これまでは、調査員に任命された教員が各社の教科書を順位付けし、選定すべき教科書を答申していた。答申を覆すには根拠が必要だ。協議会の委員はオール マイティではなく、必ずしも教科書に対する専門的な知識を持っているわけでもない。事実上、協議会は答申に拘束されてしまう」


「それでは、教員だけで教科書が決まってしまうことになる。調査員の判断が、協議会、教育委員会の判断になっているかも知れないことを懸念する」
「平成2年の文部省通知では『教職員の投票によって採択教科書が決定される等、採択権者の責任が不明確になることのないよう、採択手続きの適正化を図る』ことを求めている」


教科書選定作業で、教科用図書八重山採択地区協議会の調査員が各社の教科書を順位付けすることを廃止したが、その理由は。


 「調査員の順位付けそのものは問題ではない。それに拘束されるような協議会のあり方に問題がある。意識を変えようということだ」
 「調査員の判断に、協議会、さらには教育委員会の判断を加える。(今回の改革で)協議会の責任と権限で教科書を決定するという本来のあるべき姿に近づく」 

 「調査員の意見を吸い上げるため、教科書を複数推薦させる」
 

 教科用図書八重山採択地区協議会のメンバーから教育委員会職員を外し、新たに3市町の教育委員と学識経験者を加えた理由は。


 「教育委員に入っていただくことで、教育委員会に準じた、質の高い判断ができる。PTAの代表者には引き続き入っていただく。さらに学識経験者を加えて、メンバーを発展させた。開かれた採択を目指す」


 歴代教育長が共同代表を務める「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」が、保守系の出版社2社を名指しして、両社の教科書を採択しないよう要請した。教育長が保守系の教科書の採択を目指しているのではないかという観測が出ているが。


 「どの教科書を選定するかは今から決めること。そういう風評が出ること自体がおかしい」
 「協議会には、調査員の調査結果と情報提供を踏まえて、広い視野から、子どもたちにとって最もいい教科書は何か、真剣に審議してほしい」