8月31日(水)

きょう一本化へ再協議 

 県教委「9月2日」期限明示

県から教科書の一本化に向けた再協議を求められたあと、記者会見する玉津教育長=30日午後、市教委
県から教科書の一本化に向けた再協議を求められたあと、記者会見する玉津教育長=30日午後、市教委

竹富町教育委員会が育鵬社の中学校公民教科書を不採択とすることを決めた問題で、教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)は31日午後、役員会を開き、教科書の一本化に向けて再協議する。玉津教育長が30日明らかにし、報道陣に対し「教科書を1種に絞ることが役員会で求められている。しっかり結論を得たい」と強調した。県教育委員会は同日、3市町の教育委員会に対し、9月2日までに合意形成を行い、同一の教科書を採択して報告するよう指導した。

 県教委が教科書一本化の期限を明示したことで、石垣市、与那国町と竹富町が異なった教科書を採択した異常事態は、収拾に向け大詰めを迎える。

 役員会は3市町の教育で構成する。31日には、玉津教育長と与那国町の崎原用能教育長が、竹富町の慶田盛安三教育長に対し、答申を順守するよう求めると見られる。

玉津教育長は「(教科書採択は)法に基づいての作業なので、従っていただけるように話をまとめたい」と述べ、竹富町教委は臨時会を早急に開き、教科書採択をやり直すべきだと強調した。

役員会での再協議には、当初、難色を示していた崎原教育長も同意したという。玉津教育長は、31日の役員会について「民主主義のルールに従って会を運営する」とも述べた。

協議会は23日に育鵬社の公民教科書を選定し、石垣市教委、与那国町教委は26日に答申通り教科書を採択している。竹富町教委は27日に不採択を決め、他社の教科書を採択した。

竹富町教委に決断迫る

 異常事態の収拾目指す2市町

 教科用図書八重山採択地区協議会の役員会が31日に開かれ、教科書の一本化に向けた再協議が行われることが決まった。3市町で採択した教科書が異なる現状は、教科書無償措置法に違反する異常事態。協議会の答申と異なった教科書を採択した竹富町教育委員会には、異常事態の収拾に向け、採択のやり直しという決断が求められることになる。


 教科書無償措置法で「採択地区」(八重山地区)内では同一の教科書を採択するよう定められている。にもかかわらず、竹富町教委は27日、全会一致で育鵬社版の不採択を決め、教育委員会の意思が協議会に優先するという考えを示した。


 一方、石垣市、与那国町は、協議会の答申を順守して教科書を採択しており、協議会の決定や採択を覆せるだけの法的問題は現在のところ見当たらない。両市町が竹富町教委の主張を受け入れ、採択をやり直すことは「有り得ない」(市教委幹部)と見られる。


 竹富町が2市町の説得に応じず、育鵬社版の不採択を主張し続ける場合、同法による教科書の無償配布を受けられなくなり、理論的には、教科書を独自予算で購入することになる。この場合、町民の税金が投入されるため、町には町民を納得させられる説明責任が生じる。政治問題化も招きかねない。


不採択の根拠となっている協議会調査員の調査報告は、保守系教科書の採択に反対する団体パンフレットからの引用が多数判明しており、どこまで信頼性を主張できるかも疑問だ。不採択に固執することが「苦しい戦い」になるのは避けられないと見られる。


「領土問題が一番のポイント」

 育鵬社版投票で嫌がらせも 学識経験者の委員証言

 教科用図書八重山採択地区協議会の学識経験者の委員は30日、八重山日報社の取材に応じ、公民教科書は育鵬社版に投票したことを明らかにし「領土問題(の記述)が一番のポイントだった」と強調した。委員名と投票先が複数のマスコミで暴露されたことで、育鵬社版に投票した委員に対する嫌がらせが起きていることも同委員の証言で分かった。


同委員は「今、中国に尖閣諸島を取られると、次は八重山、沖縄全体を取られる。中国はそういう国だ」と警戒。「領土を守るには実効支配しかない。保守も革新もない。それが私の信念」と訴えた。


 育鵬社版に投票したことが広まり、外出先で知人から「どんな顔でここに来たのか」と罵倒される嫌がらせを受けたという。同委員は「ぼくは、人に後ろ指をさされることはしていない」と力説した。


 協議会会長の玉津博克石垣市教育長は、委員名を非公表とし、教科書を無記名投票で選定する理由として、保守系教科書に対する猛烈な反対運動を挙げていた。委員名と投票先が明らかにされたことで、懸念された事態が現実化したと言えそうだ。


 育鵬社版では、尖閣諸島問題について、日本固有の領土であることや、中国の領有権主張に根拠がないことなどを詳しく記述している。従来使用されていた東京書籍版では「日本の領土ですが、中国がその領有を主張しています」という記述だった。


 教科書を選定した23日の協議会では、無記名投票の結果、公民教科書は育鵬社版5票、東京書籍版3票だった。


 

8月30日(火)

「一本化」指導へ  

 2市町、条件付きで再協議容認

 竹富町教育委員会が、育鵬社の中学校公民教科書を不採択とすることを決めた問題で、教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長は29日、県教育委員会の指導を前提に、協議会役員会での再協議に応じる考えを示した。崎原用能与那国町教育長は「(竹富町が)役員会で決めたことには従うという確約がないと意味がない」と述べ、竹富町が役員会での結果に従うことが、再協議の条件になると強調した。県教委は、3市町教育委員会から正式な報告が上がる30日以降、教科書の一本化に向けた指導に入ると見られる。



 協議会規約では、教育委員会の決定が協議会の答申と異なる場合は、県教委の指導を受け、役員会で再協議できると定めている。


 役員会は玉津教育長、崎原教育長、慶田盛安三竹富町教育長の3人で構成。石垣市、与那国町は協議会の答申に従って、育鵬社版の採択を決めているため、多数決を取ると、協議会の答申を「追認」することになる可能性が強い。


玉津教育長は取材に対し、役員会での再協議について「県の指導が大前提」と強調。ただ「むやみやたらな指導では困る。結論を出さないと、再協議に応じる意味がない」と述べ、役員会で再協議する場合でも、明確な結論を出すべきだという考えを示した。


崎原教育長も同日の取材に対し、竹富町教委の不採択決定を「ルール違反」と批判。「再協議しても、竹富町が『役員会で押し切られた』と言って(育鵬社版を)不採択にしたら、同じことの繰り返しになる。意味がない」と強調。役員会の決定に従うという竹富町教委の「確約」を求めた。


当初、役員会の招集を求める考えを示していた慶田盛教育長は、同日の取材に対し「県がどういう指導助言をするかによって、再協議が必要かどうか決まる」と指摘。竹富町教委から招集は求めず、県の指導を待つ考えを示した。再協議で育鵬社版の採択が決まった場合の対応については「仮定の話はできない」とした。


また「調査員が推薦していない教科書が、なぜ上がるのか」と協議会に対する不信感をあらわにし、育鵬社版の採択に反対する考えを改めて示した。


県教委義務教育課の担当者は取材に対し「採択地区(八重山地区)内の教科書は同一の教科書を使用するというスタンスは変わらない。(1自治体だけ別の教科書を使用することは)想定していない」と述べた。


低評価突出する保守系教科書 

 調査研究のあり方に一石

 来春以降使用される中学校教科書を選定する教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克教育長)に提出された調査報告が、保守系教科書の採択に反対するパンフレットから多数引用されていた問題は、調査員(教員)の調査研究のあり方に一石を投じている。育鵬社の公民教科書選定に賛成したと見られる協議会委員からは「調査員は中立の立場で調査していない」と改めて批判が出る一方、教育関係者には「正しいことを言っているので問題ない」と擁護する声もある。


 ▽低評価が突出

 調査員の報告書が協議会に提出されたのは8月1日。6月28日から1カ月余りの「調査研究」の成果だった。


報告書を読んだ協議会委員の崎原用能与那国町教育長は、保守系教科書の採択に反対する団体が町教委に送ってくる要請文と、報告書の文言が「そっくり同じ」だと気づいた。


 「調査員が最初から、育鵬社、自由社の教科書を採択させないために動いた。7社の教科書が横一線ではなかった。中立の立場で調査していない」。崎原教育長は、調査員の「調査研究」を痛烈に批判した。


 歴史、公民教科書は7種類あるが、自由社、育鵬社版以外の教科書は、調査員のつけたマイナス意見が多くても2項目。それに対し、自由社版には7項目、育鵬社版には14項目のマイナス意見が付き、プラス意見はない。異様なほどに低評価が突出している。


 26日の教育委員会では、委員から「それほど問題がある教科書だとは思わない」という趣旨の発言が出た。調査員との認識のギャップはあまりにも大きい。


 2005年の中学校教科書選定では、社会科の保守系教科書は扶桑社版のみだったが、当時の順位付けでも扶桑社版は最下位で「ランク外の扱いだった」と玉津教育長は明かす。


 ▽「引用」追及せず

 別の協議会委員は、育鵬社の教科書に対するマイナス点として挙げられた「言葉と写真がイメージとしてつかみにくい」「天皇の写真の掲載が多すぎる」という指摘を「調査員の主観が多い」と疑問に感じていた。


さらに「憲法9条を改正する方向へ誘導するような内容」「子どもの権利を尊重する視点に欠ける」といった内容の核心部分に触れるマイナス意見が、反対派パンフレットからの引用だったことについて「委員は報告書をもとに、真剣に考えている。引用が本当だとすると、委員をばかにしていないか」と憤った。


ただ、調査員を任命した玉津教育長は「調査員はみんな力のある先生。非難はできない。何とか励まして頑張ってもらう」と話し、引用問題を追及しない考えを示した。現場の教員の感情に配慮したものと見られる。


▽「正しいことを言った」

調査員の報告書は本来、公表されることを前提としていない。教科書問題に対する高い関心を踏まえ、協議会は報告書の公表を決めたが、昨年までは公表を求める声もなかった。露骨な引用の背景に、こうした事情を指摘する声もある。


ただ育鵬社、自由社の採択に反対する人たちからは、報告書の内容を擁護する声が根強い。ある学校関係者は「県民、市民誰もが報告書の通り感じている。(一般人の感情から)そう逸脱していない。正しいことを言って、どうして悪いのか」と本紙報道を疑問視する。


「子どもと教科書を考える住民の会」メンバーのある退職教員は「教員は、戦後の沖縄の状況を良く分かっているので、スタンスはみんな同じだ。文章の表現を丸ごと(パンフレットから)持ってきたのはちょっとまずいが、考えの真髄は変わらない」と話し、保守系教科書に対する批判の内容は、教員の共有認識だという考えを示した。


報告書の内容が他人の引用であっても、規約違反などの問題は生じないのも事実。文部科学省も「調査員が調査研究した結果なのであれば問題ない」との考えを示している。


29日の竹富町教委でも、報告書を問題視する意見は出なかったばかりか、育鵬社版を不採択にする根拠として、報告書が改めて引用されたほどだった。


玉津教育長は「今後こういうことがないように、調査研究のあり方を確立すべきだ」と話すが、教科書問題の焦点は、すでに竹富町の不採択の是非に移った。引用問題は「うやむや」のまま置き去りの方向へ進んでいる。


「調査員」の職務は? 

 パンフ引用でクローズアップ

 教科書選定問題で、教科用図書八重山採択地区協議会の「調査員」の存在が、改めてクローズアップされている。調査員の職務や、調査員が協議会に提出した報告書の内容についてまとめた。


市教委によると調査員は「だいたい10年以上の中堅クラス」の現場教員。協議会役員会で選任され、1教科当たり3人が会長から任命される。


 規約では、調査員の任務は「教科書の調査研究を行い…調査研究の結果を報告する」とある。協議会委員は、調査員の報告を資料の一つとして、教科書を選定する。


 今回の教科書選定で、協議会は6月28日、調査員に委嘱状を交付。社会科の調査員3人は、同日から7月29日までに9回の会合を開き「公民」「歴史」「地理」「地図」の教科書を選定。8月1日に調査報告書を提出した。


 調査報告書には、教科書の「内容」「形式」のほか「その他」として①教育基本法や学習指導要領の目標と内容に照らし合わせてどう記載されているか」②沖縄戦や八重山との関連事項についてどう記載されているか」「その他」について書く欄がある。


 自由社、育鵬社以外の教科書を見ると「その他」欄に書き込まれているのはほとんどがプラス意見。マイナス意見は、多い社でも2項目しかなかった。

それに対して育鵬社版には14項目、自由社版には7項目のマイナス意見が列挙され、プラス意見は1項目もなかった。


現在のところ、育鵬社版では5項目、自由社版では6項目の意見が、保守系教科書の採択に反対する団体が5月に発行したパンフレット「子どもに渡せない教科書」から引用されていたことが分かっている。


調査員は報告書で「特徴・特色のある教科書」「調査員が推薦したい教科書」を複数記入する。今回の報告書から新たに導入された制度で、いずれも東京書籍と帝国書院が選ばれていた。


 昨年までは、調査員が各社の教科書に「順位付け」をした上で、協議会に対し、第1位の教科書を「採択教科書」として協議会に答申。協議会では「採択教科書」を承認するかどうかが議題だった。


市教委は、事実上、調査員の調査研究の段階で教科書が選定され、協議会では実質的な審議は行われていなかったとしている。


 

8月28日(日)

竹富町、育鵬社の「公民」拒否 

 東京書籍版を採択 教育長、協議会役員会を要求へ 

竹富町教育委員会の臨時会で、育鵬社の公民教科書採択に反対する慶田盛教育長(左)と大田委員(27日午後)
竹富町教育委員会の臨時会で、育鵬社の公民教科書採択に反対する慶田盛教育長(左)と大田委員(27日午後)

 来春以降使用される中学校教科書の選定問題で、竹富町教育委員会(竹盛洋一委員長)は27日、八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)が答申した育鵬社の公民教科書を不採択とし、答申にない現行の東京書籍版を採択した。委員5人の全会一致。石垣市、与那国町は前日に育鵬社版を採択しているため、3市町で、竹富町だけ異なった教科書を採択する異例の事態になった。慶田盛安三教育長は、協議会の役員会で教科書選定を再協議するよう求める考えだが、玉津教育長は応じない見通し。関係者は、県教育委員会が指導に乗り出す事態を想定している。

 


 この日の町教委臨時会では、大田綾子委員が、育鵬社版を不採択とし、協議会での無記名投票で次点だった東京書籍版を採択するよう求める緊急動議を提案した。


 大田委員は理由として、育鵬社版は調査員(教員)が推薦していないことや、調査員の報告書で、さまざまな問題点が指摘されたことを挙げた。


 委員から異論はなく、育鵬社版の不採択と東京書籍版の採択が決定した。

 臨時会終了後、慶田盛教育長は報道陣に対し、育鵬社版が不採択になったことについて「うれしい」と満足げ。「役員会の招集を申し入れる。県の指導助言を受けて、協議会を持ちたい」と、協議会の再開を求めていく考えを示した。


竹盛委員長は「協議会の役員会がどうなるか、県の指導がどうなるのか見守りたい。私たちは、いい教科書を選択したと自信を持っている」と述べた。


 協議会規約では、教育委員会の決定が協議会の答申内容と異なる場合「県教育委員会の指導・助言を受け、役員会で再協議することができる」と規定している。


 これに関し、玉津教育長は「協議会は、基本的に3市町教育委員会への答申をもって役割を終了した。再協議することは毛頭考えていない」と再協議を拒否。教科書を3市町で統一するため、県教委が竹富町を指導することになるという見通しを示している。


「再協議」見通せず 

 混迷の度深める教科書問題

 竹富町教育委員会が育鵬社の公民教科書採択を拒否し、教科書選定問題は混迷の度を深めてきた。町教委は今後、独自の教科書を使用することも視野に「徹底抗戦」の構えだが、法律上の問題をクリアできるのかという疑問も残る。教科書採択の期限は8月31日。教科書の一本化に向け、週明け早々にも県教育委員会が指導に入る可能性が高い。


 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律では「採択地区内」の市町村の教育委員会は、同一の教科書を採択しなければならないとされている。


 竹富町だけが「離脱」し、独自の教科書を使用する場合、生徒は同法に基づく教科書の無償配布を受けられなくなる。理論的には、町は独自予算で教科書を購入することになるが、町民の税金を投入することになるため、町民への説明責任が問われる。


 慶田盛安三教育長は27日、この点について報道陣に「(独自予算での教科書購入は)財政的なことがあるので、軽はずみには言えない」と明言を避けた。

 採択地区内からの離脱が、そもそも法律的に可能かという議論もある。


「新しい歴史教科書をつくる会」会長の藤岡信勝拓殖大客員教授は「一自治体が離脱するというのは、法的には有り得ない。法治国家なので、決められたルールに従わなくてはならない」と指摘する。


「竹富町の離脱を認めると、自前で教科書を買おうという例がたくさん出て、教科書採択制度そのものが成り立たなくなる。万が一、県教委が竹富町の言い分を認めても、直ちに文科省の指導が入るだろう」と見る。


逆に、八重山採択地区協議会の決定が覆る可能性はあるのか。玉津博克石垣市教育長は、協議会の結論が変わることは有り得ないとして、竹富町が再協議を要請しても応じない構え。県教委が指導に入った場合でも、再協議が行われるかどうかは見通せない。町教委がどこまで主張を押し通せるのか、来週前半にも山場を迎える。


教育長「子どもに与えない」

 育鵬社不採択 徹底抗戦 

竹富町教育委員会臨時会の終了後、育鵬社の公民教科書を「子どもたちに与えるものではない」と語る慶田盛教育長(27日午前)
竹富町教育委員会臨時会の終了後、育鵬社の公民教科書を「子どもたちに与えるものではない」と語る慶田盛教育長(27日午前)

 教科用図書八重山採択地区協議会の答申を拒否し、育鵬社の公民教科書を不採択とした27日の竹富町教育委員会臨時会。前日の石垣市教委とは対照的に、委員5人の間に意見の対立はなく「現場の教員が推薦していることを重要視したい」(竹盛洋一委員長)と、答申されなかった現行の東京書籍版を採択した。「育鵬社の教科書は、どう考えても子どもたちに与えるものではない」と報道陣に語る慶田盛教育長。育鵬社版の排除へ「徹底抗戦」の構えだ。

 


 臨時会で、協議会委員の慶田盛安三教育長は、育鵬社版を選定した協議会での議論について報告を求められ「協議会は会長(玉津博克石垣市教育長)の独善で進められてきた」と強調。


その上で「調査員から推薦が上がったものを、本来ならその通りに選ぶべきだ。(育鵬社版は)不当な選定だ」と訴えた。


 同じく協議会委員の大田綾子委員も、育鵬社版が「原発の危険性に触れられていない」「男女差別について記述や資料はない」などとする調査員の報告書を読み上げ「(育鵬社版は)全く適切ではない」と断じた。


 その上で、調査員が報告書で推薦する東京書籍版を採択するよう提案。全会一致で承認された。


 一方、育鵬社版と同様に、調査員が推薦していないにもかかわらず選定された「技術・家庭」(家庭分野)の開隆堂版については「課題がないことを確認した」(大田委員)として、答申通り採択された。


大田委員は「開隆堂は(推薦はされなかったが)調査員が選んだ『特色ある教科書』には入っている。(育鵬社版を不採択にしたこととの)一貫性はある」と説明した。


 

9割が自由社、育鵬社に反対 

 協議会などに要請文

 教科書選定問題で、石垣市教育委員会と八重山採択地区協議会宛てに656通の要請文が送られ、うち9割に当たる596通が自由社、育鵬社の教科書に反対する意見だった。市教委が26日明らかにした。


8月27日(土)

教科書攻防2時間  

 委員長、採択阻止に動く  「住民の会」詰め掛け緊迫

 育鵬社の公民教科書をめぐり26日、石垣市教育委員会では、委員5人の攻防が約2時間半続いた。仲本英立委員長が採択阻止に動き、答申にない教科書の選定を検討するよう求めるなど、審議は荒れ模様。会場には採択に反対する「子どもと教科書を考える住民の会」のメンバーら約40人が傍聴に詰め掛け、休憩中には委員に野次を浴びせるなど、騒然とした雰囲気に包まれた。

 


 仲本委員長は「現場の先生が推薦しない本が選定されることに憤慨している」と、委員長でありながら早々に反対の立場を表明。育鵬社版が「憲法9条の改正を誘導している」などとする調査員の報告を挙げ「八重山にふさわしい教科書と言えるのか」と採択拒否を主張した。


  さらに「協議会の少数意見も組み入れる形で決めてはどうか」と述べ、答申にはない教科書の名前を挙げて、2種類の中から選定するよう提案。「答申を承認す るか、しないかだ」とたしなめられると「(教科書を選定した)協議会の委員が、本当に信頼できる人材なのか」と言い放った。傍聴する住民の会メンバーから は、まばらな拍手が起こった。


 審議は進行せず、いったん休憩に。そのとたん、住民の会メンバーからは次々と野次が飛び始め、中には採択に賛成する委員の個人名を挙げて非難する声も。玉津教育長が「心の平安が乱される」と野次を制止するよう求めたが、仲本委員長は「休憩中だから」と応じなかった。


 再開後も審議は一進一退を続け、たまりかねた委員からは「堂々めぐりだ。意見は出尽くしている」(石垣氏)と指摘も。仲本委員長はようやく、無記名投票を実施することに同意した。


 3対2で採択が決まると、住民の会メンバーからは失望のため息が広がった。

会場から退席後、住民の会メンバーは一斉に報道陣に囲まれ、現在の心境を語った。


大浜敏夫事務局長は、八重山日報社の記者を手で制し、近づかないよう要求。記者が「取材を拒否するということか」と聞くと「そうだ」と答え、八重山日報社の取材には応じない考えを示した。


一 方、会場には教科書採択に賛成する傍聴人の姿も。「正しい歴史教科書を推薦する父母の会」代表の友寄永三さんは「育鵬社版の悪いところが一方的に宣伝され ているが、全国的には、どんどん認められている。尖閣諸島の問題もきっちり書いてあり、石垣にとってもいい教科書だと思う」と喜んだ。


育鵬社教科書の不採択を要請 

 竹富町民の会が 慶田盛教育長へ

※拒否を求め、要請書を提出した町民の会の仲村会長ら=竹富町教育委員会=
※拒否を求め、要請書を提出した町民の会の仲村会長ら=竹富町教育委員会=

中学校社会科公民で育鵬社の教科書が採択されたことから、竹富町の子どもたちに真理を教える教科書の採択を求める町民の会(仲村貞子世話人代表)は26日、竹富町教育委員会を訪れ、慶田盛安三町教育長に不採択の要請を行った。


仲村代表は「子どもらが(戦争体験した)我々と同じ道を歩むのかと不安で、協議会の結果にワジワジしている」と、教科書の不採択を求めた。

 慶田盛町教育長は「協議会の結果には残念で、言葉にできない。皆さんの要望に沿えるように努力したい」と述べ、27日の会議を公開で実施することが望ましいとの考えを示した。


 町民の会は、採択協議会の一連の流れを「国家主義の色彩を帯びた教科書の道筋を付けるもの」と断言し、調査員の推薦外の教科書が採択されたことは公正・公平さを欠くものと指弾した。


 同会は、現場教師の声を勘案した協議会を公開し、公明正大の採択を求め、「戦前回帰の道を拓く教科書の採択は断固拒否する姿勢を堅持してもらいたい」と要請した。


 竹富町教育委員会での会議は29日予定を台風の影響で27日に繰り上げて実施。

15教科の各教科について1項目ずつ採択・不採択かを協議する。


慶田盛教育長は、育鵬社版の不採択を求め、県の指導・助言を受け、再度の協議会開催を模索している。


八P連に抗議 教科書問題で「父母の会」

 正しい歴史教科書を推薦する父母の会(友寄永三代表)は26日、育鵬社の教科書採択に反対する要請行動を展開した八重山地区PTA連合会(平良守弘会長)に対し「急きょ役員だけで決定するのは、一般会員を無視した行動であり、納得できない」とする抗議文を提出した。


 役員が「自衛隊を容認しているような教科書は納得いかない」と発言していることに対し「自衛隊は憲法でも容認されているし、東北大震災でも大活躍した。自衛隊に対して否定的な教科書がいいなどというのは個人の主張」と抗議している。


「調査の名に値せず」

 教科用図書八重山採択地区協議会の調査員が提出した報告書で、育鵬社、自由社に関する意見に、特定団体のパンフレットの引用が多数あることが判明し、関係者からは26日、「調査の名に値しない」などと批判の声が出た。


 協議会委員の1人は「もし本当に引用だとすると、自分たちの意見でもないものを持って来て、審議しろというのは論外ではないか。委員の皆さんにも失礼だ」とあきれた表情。「本当に教科書を調査しているのか」と疑問符をつけた。


 協議会会長の玉津博克石垣市教育長は「あってはならないこと。協議会は、調査員が真剣に調査研究したものと判断している」と重い口調。「育鵬社については、協議会でも調査員の意見に疑問符がついた。調査員の偏った判断ではなくて、識見の高い委員による判断を、私は良しとしたい」と強調した。


 ただ、大部分の調査員が真剣に教科書を調査研究しているとし「(問題があるのは)一部の教科書についてだと思う」とした。


 調査員の報告書で批判の対象とされた自由社版の代表執筆者で、拓殖大客員教授の藤岡信勝さんは「反対派の書いた文章を丸写しでは、調査の名に値しない。自主性、主体性はどこにもない」と指摘。「調査員は、反対派の言う通りに書けという圧力の中で書かされているのではないか」と推測した。


育鵬社「公民」採択決定

 石垣市と与那国町 きょう竹富町も判断

 石垣市教育委員会(仲本英立委員長)、与那国町教育委員会(入慶田本朝政委員長)は26日、 教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)が選定した育鵬社版の中学校公民教科書を、答申通り採択した。市教委では委員から強い異論 があり、5人の無記名投票の結果、3対2の多数決で採択が決まる異例の展開になった。竹富町教育委員会は台風接近のため当初の予定を繰り上げ、27日に採択の可否を決定する。

 


 協議会の答申によると、育鵬社の公民教科書の選定理由は①内容の説明に妥当性があり、領土問題がしっかり扱われていて、八重山地区の教科書にふさわしい②改訂教育基本法の主旨を反映している―などとされている。


これに対し、仲本委員長と嵩田美代子委員が「現場の先生が推薦しない教科書が選定されることに憤慨している」(仲本氏)などと採択に強く反対した。

 一方、玉津教育長、石垣朝子委員、徳松節子委員は「言われているほどすごく(問題が)あるとは感じない」と、答申通り採択することを求めた。


 与那国町教委では委員3人から異論はなく、採択が決まった。


  竹富町教委では、慶田盛安三教育長らが育鵬社版の採択に反対する考えを示しており、不採択となる可能性が取り沙汰されている。「義務教育諸学校の教科用図 書の無償措置に関する法律」では「採択地区内」の市町村の教育委員会は、同一の急オ箇所を採択しなければならないとされている。


 協議会事務局の市教委によると、竹富町教委が不採択を決めた場合には、3市町教委が協議して意見を取りまとめることになる。県教委の指導が入る事態も予想される。


反対派パンフ「丸写し」も  

 育鵬社、自由社の調査報告

 中学校教科書の選定作業で、八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の調査員(教員)が提出した育鵬社、自由社版公民教科書の報告書の意見に、保守系教科書の採択に反対する団体が作成したパンフレットからの引用があることが26日分かった。「丸写し」と思われる部分も多く、調査員が事前に、特定の団体の主張から強い影響を受けて調査研究に臨んだ可能性をうかがわせている。協議会関係者からは、中立性や客観性の観点から疑問の声が上がっている。

 


 調査員は現場の教員が1教科ごとに3人任命され、合議制で教科書を調査研究し、結果を協議会に報告することとされている。


調査員が協議会に提出した報告書では、育鵬社版の教科書の問題点として14点を指摘。このうち少なくとも5点は、保守系の教科書採択に反対する団体「子どもと教科書全国ネット21」(東京都)が5月に発行したパンフレット「子どもに渡せない教科書」から引用されていた。


具体例を見ると、調査員の報告書で、育鵬社版が「軍事力に頼らない平和への努力や、憲法9条が果たしてきた役割がほとんど記述されていない」「自衛隊による軍事抑止力を強調し、憲法9条を改正する方向へ誘導するような内容」といった指摘は、ほぼ同一の文言がパンフレットにも掲載されている。


原発について、報告書では育鵬社版の「二酸化炭素をほとんど出さず、原料となるウランを繰り返し利用できる利点があります」という記述を引用し「原発問題に矛盾を抱えている」と批判。一方、パンフレットでも、同じ記述を引用した上で「危険性について…極めて抽象的で短い表現しかない」と結論づけている。


報告書では、育鵬社版が職場の男女格差、子どもの権利についての視点がないと批判しているが、パンフレットでも同じ理由で育鵬社版を批判しており、文章もほぼ同一だった。


自由社版の公民教科書に対する報告書も、問題点として指摘した7点中、6点がパンフレットからの引用だった。


23日の協議会では、調査員が提出した報告書を基礎資料に、教科書選定のための論議が行われた。


調査員が推薦した教科書には育鵬社版は含まれておらず、23日の選定作業では、協議会は独自の判断で育鵬社版を選定した。


8月26日(金)

マスコミVS玉津教育長 

「一方的な報道」に懸念も

保守系教科書に反対する「子どもと教科書を考える銃民の会」の仲山共同代表を囲む報道陣=23日午後、市教委前
保守系教科書に反対する「子どもと教科書を考える銃民の会」の仲山共同代表を囲む報道陣=23日午後、市教委前

 来春以降使用される中学校社会科の「公民」教科書に育鵬社版が選ばれたことをめぐり、マスコミを巻き込んだ反対運動が過熱している。新聞は選定の約1カ月前から猛烈な批判報道を展開。教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)が進めている改革の意義についてはほとんど報道されていない。識者は「新聞社は賛成、反対双方の意見を書かなくてはいけない」と一方的な報道に懸念を示す。


 ▽報道されず

 「説明責任の重さを受け止めて、しっかり取材に対応してきたが、新聞社によっては、思うように私の説明が市民や県民に届かない」。22日の記者会見で玉津教育長は、自らが進めてきた改革の意義が報道されないことに対する「やるせなさ」を訴えた。


 玉津教育長は、教科書が事実上、現場の教員によって選定されてきた実情を問題視。2005年には各地区に対し、県の是正通知があったことを明らかにするなど「教科書は誰が選ぶのか」という問題提起に努めてきた。


 一方、マスコミの多くは保守系の教科書が選定される可能性を懸念。教科書選定方法の改革を進める玉津教育長を「強引」と批判しており、玉津教育長の主張はほとんど報道されていない。両者の姿勢が全くかみ合わない状況が続いている。


保守系教科書への反対運動を展開する市民団体も連日の投稿で、マスコミを「活用」。教科書選定後は、保守市政の誕生による八重山の「右傾化」を指摘するなど、政治問題化をあおるような報道も出現した。


「マスコミを選別したいくらいだ」とこぼしていた玉津教育長だが、各社の取材依頼には「真意を伝えたい」とすべて応じた。しかし記者会見では「取材先の伝えたいことを、正確に伝えることがあなた方の仕事だと思う」と口調を荒げる場面もあった。


▽賛成、反対の両論を

玉津教育長や、育鵬社版の教科書に対する批判報道が激化している現状を、放送大学客員教授の徳松信男さんは「新聞社は賛成、反対の両論を書くべきだ」と疑問視する。


従来の教科書選定の問題点や、育鵬社版の教科書の長所に一切触れない報道について「新聞社が世論を誘導しているように感じられ、公正中立を欠いている」と冷静な対応を求めた。


育鵬社版が選定された背景となった保守市政を批判する論調については「市長が変われば教育長が変わるのは当たり前。何を追及しようとしているのか分からない」と首をかしげた。


教科書採択の反対運動と報道が連動して過熱する沖縄、八重山の現状に、取材で来島したある本土紙の記者は「異常だ」とあきれた表情を見せた。


育鵬社選定に反対  

 八P連が異例の要請

前花教育部長に、育鵬社の教科書を採択しないよう求める要請書を手渡す八P連の城間副会長=25日午後、市教委
前花教育部長に、育鵬社の教科書を採択しないよう求める要請書を手渡す八P連の城間副会長=25日午後、市教委

 中学校社会科の「公民」教科書に育鵬社版が選定されたことを受け、八重山地区PTA連合会(平良守弘会長)は25日、石垣市教育委員会(仲本英立委員長)に対し、育鵬社版を採択しないよう要請した。PTAが教科書選定に直接異議を挟むのは異例。選定翌日の24日の役員会で急きょ決定したが、波紋を広げそうだ。


 要請書によると、23日の教科用図書八重山採択地区協議会では、「公民」「家庭」の2分野で、調査員(教員)が推薦しなかった教科書が選定された。

このうち公民の育鵬社版については、調査員の報告書で「表紙の日本全体図の写真で沖縄県が他の写真でさえぎられている」「軍事力に頼らない平和への努力や憲法9条が果たしてきた役割がほとんど記述なし」「現在大きな問題になっている原発の危険性に何も触れられていない」などのマイナス面が指摘されている。


こうしたことを踏まえ「育鵬社については、教育委員会の中で採用しないように要望します」としている。


同会によると、役員会では、全会一致で要請書の提出が決まったという。

この日、城間喜美子副会長らが市教育委員会を訪れ、要請書を提出した。城間副会長は「自衛隊を容認しているような教科書で、他の教科書と比べて納得いかない点が多い」と育鵬社版に反対する理由を説明した。


8月25日(木)

採択後に議事録など公表 

 他人の主張妨害は「間違い」

 中学校教科書の選定から一夜明けた24日、教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長は八重山日報社のインタビューに応じ、協議会の議事録や、教科書を調査研究した調査員(教員)の調査報告書を、3市町教育委員会での教科書採択後に公表する方針を明らかにした。資料の公表によって、協議会に求められている説明責任を果たす意向。

 

 

 育鵬社、自由社の教科書採択に対する猛烈な抗議運動が展開されていることについては「主義主張は自由だが、他人の主義主張まで妨害することは根本的に間違っている」と指摘した。


 議事録などの公表については23日の協議会で諮り、承認を得た。委員による各教科書の評価や、無記名投票で得た票数などは、3市町教育委員会に対する答申の中で明らかにする。委員の氏名については公表しない。


 社会科の公民では県内で初めて「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書が選定された。


玉津教育長は、具体的な教科書名について言及は避けながら「沖縄の歴史教科書に対する思い、国境の島である八重山の思いを、委員全員が受け止めて出した結論。結果に自信を持っている。八重山の中学生が、正しい判断ができる大人になることを願う」と述べた。


竹富町教育委員会が、育鵬社の教科書採択を拒否する可能性が取り沙汰されていることいついては「協議会は3市町教育委員会への答申をもって役割を終了した。(協議会で)再協議することは毛頭考えていない。県教育委員会が指導することになるのではないか」との見通しを示した。


調査員が教科書を調査研究し、協議会に提出した調査報告書については「多くの調査員が、事実をしっかり書いているが、一部に自分の考えや意見を論評しているものがあった。今後こういうことがないように、調査研究のあり方を確立するべきだ」と問題提起。調査員による教科書の「絞り込み」の危険性に改めて警鐘を鳴らした。


「つくる会」系の教科書に対しては、マスコミを巻き込んだ猛烈な抗議行動が展開された。玉津教育長は、委員個人に対する「圧力」が多数あったと明かし「委員に対する圧力がないように、会議を非公開にしたり、無記名投票を行うなどの努力をしたが、遺憾だ」と語気を強めた。


協議会関係者が申し合わせに反し、育鵬社版の選定に抗議する目的で選定結果を漏洩(ろうえい)したと見られることについては「決まったことに従うのは民主主義のルールだ。憤りを感じる」と述べた。


「県民、国民への挑戦」

 育鵬社選定に撤回求める  住民の会

写真 抗議と撤回を求める声明を発表した、子どもと教科書を考える八重山地区住民の会=24日午後、市役所内記者クラブ室
写真 抗議と撤回を求める声明を発表した、子どもと教科書を考える八重山地区住民の会=24日午後、市役所内記者クラブ室

 歴代教育長が共同代表を務める「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」は24日午後、石垣市役所記者クラブ室で記者会見し、教科用図書八重山採択地区協議会における公民教科書の育鵬社の選定に対して、抗議と撤回を求める声明を発表した。

声明では、「調査員からの推薦もなかった教科書が選定されるのは全国でも例を見ない異常、異例の選定」として、「公民教科書の育鵬社版選定に強く抗議し、その撤回を求める」と訴えている。

 


共同代表の仲山忠亨さんは、採択について「我々に対する背信行為だけでなく、県民、国民への大きな挑戦」と述べ、同社の教科書が日本国憲法や基本的人権などの権利を軽視し、沖縄の米軍基地に関して「全く触れられていない」と指摘。「5060年前にさかのぼる様な状況。速やかに撤回し、改めて採択すべきだ」と強調した。


 住民の会では調査員の推薦に関係なく、すべての教科書から無記名投票で採択する手法を「敗者復活戦」のようだとして「ルール違反だ」と強く抗議した。


共同代表の黒島精耕さんは「規約改正は育鵬社や自由社の教科書を選定するためのものだった」と批判。


沖教祖八重山支部の上原邦夫委員長は「調査員が提出した推薦書のように、協議会委員による推薦文があるのか公表してほしい」と訴えた。


また一連の問題について、「玉津博克石垣市教育長だけによる独走なのか、任命者の意図がないのか、何故このようなことになったのかを、メディアの力で解明してほしい」という追求を求める声もあがった。


 住民の会は同日、最終的に採択を行う3市町教育委員会の各教育委員に対して、同協議会で採択された育鵬社の公民教科書の不採択を求める要請書を、市内の委員には直接手渡し、離島地域の委員には郵送した。


 

8月24日(水)

育鵬社の「公民」選定

 「つくる会」系県内初  歴史は現行の帝国書院版

教科書選定後記者会見する玉津教育長=23日午後、石垣市教育委員会
教科書選定後記者会見する玉津教育長=23日午後、石垣市教育委員会

 教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長、委員8人)が23日、 市教育委員会で開かれ、関係者によると、来春以降使用する中学校教科書の「公民」で「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版、「歴史」は現行の帝国書 院版を選定した。「つくる会」系の教科書が選定されたのは県内で初めて。会場の外では「つくる会」系の教科書に反対する住民らがプラカードを掲げて示威行 動するなど、騒然とした中での選定になった。同日の記者会見で玉津教育長は「きちんと論議できた。心から喜んでいる」と述べた。


 

 協議会は非公開。午後3時に始まった審議は3時間半に及んだ。教科書の選定は9教科15種目すべてが無記名投票による多数決で行われ、玉津教育長によると、すべて1回の投票で決定した。


 「つくる会」系の育鵬社、自由社の教科書は、調査員(教員)が事前の調査で複数推薦し、協議会に報告した中には入っていなかった。委員が独自性のある判断をしたことになる。


 選定結果についてはいずれの教科についても公表しなかった。理由として玉津教育長は、採択後まで非公表とすることが望ましいとする文部省(当時)の90年の通知を挙げた。


 協議会は選定結果を3市町教育委員会に答申。石垣市と竹富町教委は26日、与那国町教委は29日に会合を開き、採択の可否を最終的に決定する。


 今回の教科書選定をめぐって玉津教育長は、教員が事実上、決定権を握っていた従来の手法を問題視。6月27日の協議会総会で規約を改正。従来のメンバーから3市町教育委員会の委員を外し、3市町の教育委員各1人と学識経験者を入れた。


 また、協議会の調査員による各社の教科書の「順位づけ」を廃止。複数の教科書を推薦させるが、委員は調査員の報告に拘束されずに教科書を選定できる手法を導入した。


 

ひとまず決着 「新しい国家観に期待」賛成派  

 反対派は「ごり押し」と批判

大勢のマスコミに囲まれて会場を出る慶田盛教育長=23日午後
大勢のマスコミに囲まれて会場を出る慶田盛教育長=23日午後

 新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書に対する激しい反対運動が展開される中、1カ月余りの攻防に23日、ひとまず決着がついた。中学校社会科の「公民」は育鵬社、「歴史」は帝国書院。関係者からは賛否の声が相次いだ。


 尖閣諸島などの領土問題の記述が充実している育鵬社の「公民」について、八重山漁協の上原亀一組合長は「尖閣の問題を、中学生にもしっかり教えてほしい。漁業関係者にとってはありがたい話」と評価した。


 ブログで教科書選定問題に対する意見を発信し続けてきた砥板芳行市議は、育鵬社版と帝国書院版の「使い分け」に「バランスの取れた選択ではないか」と評価。「育鵬社版は、国境の問題に関する記述が充実し、現実的な内容。国境に接し、尖閣諸島を行政区域に抱える石垣市、八重山ならではの選択結果だ」と話した。


 両社の教科書を組織として推薦していた幸福実現党の新里卓県本部副代表は「民主的に採択協議会が進んだことは評価されるべき。新しい歴史観、国家間に基づいた学校教育が行われ、八重山の教育が向上するように強く期待している」というコメントを発表した。


 これに対し「子どもと教科書を考える住民の会」共同代表の波平長吉元石垣市教育長は「育鵬社版は、県民の心を理解していない教科書」と肩を落とす。3時間半に及ぶ審議に「何かごり押ししたのか」と疑念を示し「教育委員会に採択しないように要請したい。戦いはまだまだこれからだ」と強調した。

 

 中山義隆石垣市長は「私は聞いていないのでコメントできない」と述べるにとどめた。竹富町議会の西大舛高旬議長は「元教育長が圧力団体のように抗議すること自体が問題だ」と「住民の会」の動きを批判した。