9月1日(木)

「不採択」見直しめぐり平行線

 石垣・与那国「答申に従うべき」

 「合意形成された」と竹富難色

竹富町教育委員会が育鵬社の中学校公民教科書を不採択とすることを決めた問題で、教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)は31日、市教委で役員会を開き、竹富町教委に対し、協議会の答申に沿って、育鵬社の教科書を採択するよう要請することを決めた。竹富町の慶田盛安三教育長は納得せず、役員会での決定を受け入れない考えを示し、両者の言い分は平行線をたどった。これを受け役員会終了後、玉津教育長は、事態打開に向け「県の指導を受けて、協議会の8人の委員で再協議し(答申を)再確認することも有り得る」と述べ、再協議の可能性に含みを持たせた。

 


玉津教育長は、協議会で再協議する場合でも、役員会で承認を得ることが必要という考えを示している。今後の県の指導によっては、再度役員会が招集される可能性もある。

 

県教委義務教育課は取材に対し「2日が報告期限なので、回答を待って対応したい」と述べ、当面は事態を見守る考えを示した。

 

期限までに教科書が一本化できなかった場合は「いろいろな可能性を含めて協議をすることになると思う」と述べるにとどめた。

 

役員会は3市町の教育長で構成。玉津教育長は、竹富町教委が協議会の答申に従わず、育鵬社版以外の教科書を採択したことについて「答申に沿った形で公民教科書の採択をお願いしたい。法治国家である以上は当たり前の仕事だ」と採択のやり直しを要求した。

 

竹富町教委が採択をやり直した場合、文科省への報告期限である31日付に決定をさかのぼらせることも提案した。

 

慶田盛安三竹富町教育長は「(竹富町は)教育委員5人で合意形成されたので、仮に再度、教育委員会を開いても厳しい話だ」と反論。崎原用能与那国町教育長は「協議会の決定を順守してもらうことが(事態打開の)近道だ」と竹富町教委に決断を求めた。

 

慶田盛教育長の賛同が得られないまま、玉津教育長、崎原教育長は、竹富町教委に対し、答申に沿って教科書を採択するよう求める要請書を提出する方針を決定。役員会は約1時間で終了し、協議会事務局の市教委は同日付で要請書を作成、竹富町教委に届けた。

 

慶田盛教育長は役員会後、報道陣に対し「(採択のやり直しを)あえて議題に上げることは、まずない」と、協議会の要請に否定的な考えを示した。

「権限」めぐり激論

 教科書選定と採択 3教育長

 育鵬社の中学校公民教科書が竹富町教育委員会で不採択になったことをめぐり、31日に開かれた教科用図書八重山採択地区協議会の役員会。協議会の答申に沿った採択のやり直しを求める玉津博克石垣市教育長、崎原用能与那国町教育長と、採択の権限は教育委員会にあるとする慶田盛安三教育長が激論を交わした。

 


 「教科書を採択する権限は教育委員会にあるが、選定する権限は協議会にある」と玉津、崎原両教育長。「教育委員会で何でも決められるなら、協議会を立ち上げる必要はない」(崎原教育長)と、教育委員会と協議会の役割分担を強調した。


協議会の答申に従わず、あえて他の教科書を採択した竹富町教委の判断の妥当性を問うためだった。


これに対し、慶田盛教育長は「教科書の採択権者は教育委員会」と強調。3市町の教育委員全員で教科書を選定し直すよう求めたが、規約に規定がない突然の提案だったため、玉津、崎原教育長は「別の場所で話すべきだ」取り合わなかった。


玉津、崎原教育長は、教科書無償措置法に違反し、八重山地区が教科書を一本化できなかった場合、3市町とも「竹富町のおかげで、教科書の無償給付が受けられなくなる」(崎原教育長)などと懸念。慶田盛教育長は「財源に関することを、断定的に言うのは大きな問題だ」と猛反発した。


慶田盛教育長はまた、協議会での選定のあり方について「教科書の専門家である調査員(教員)が推薦していない教科書が、採択されたことの客観的な説明がない」と、再び問題視。「理由を解明するためにも協議会を開いてほしい。(竹富町が)教育委員会を再度開いても、納得できる説明ができない」と訴えた。


これに対し、崎原教育長は「推薦に上がらなかったものを選んで何がおかしいのか」と反論。逆に、竹富町教委で協議会委員でもある教育委員が、育鵬社版の不採択を提案したことについて「協議会の委員自らが採択するなと提案することは、協議会を愚弄(ぐろう)している」と強く批判した。

9月2日(金)

「子どもにふさわしい教科書を」

 住民の会、育鵬社採択に抗議

 歴代教育長が共同代表を務める「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」は8月29日、「育鵬社公民教科書の採択に抗議し、撤回とやり直しを求める」抗議文を石垣市教育委員会(仲本英立委員長)に提出した。

 

 この中では「なぜ、調査員が推薦していない育鵬社が選定されたのか」という質問に対し、八重山採択地区協議会から納得のいく説明がなく「調査員や教育現場の声を軽視するもので、到底容認できるものではない」としている。


 協議会の玉津博克会長が委員の1人に、歴史教科書は帝国書院に投票するよう依頼したとする新聞報道を挙げ「疑惑や不正がある協議会運営」と批判。育鵬社公民教科書の採択の撤回と再審議、「子どもにふさわしい教科書」の採択を求めている。

9月3日(土)

「要請に効力なし」

 県教委が見解

 県教育委員会義務教育課の担当者は2日、取材に対し、教科用図書八重山採択地区協議会が竹富町教育委員会に答申通りの教科書採択を求めたことについて「協議会は審議会であり、諮問に対して答申する機関。採択権限は市町村教育委員会にある」と述べ、要請文には効力がないという見解を示した。


 ただ、教科書の一本化に対し、県があいまいな態度を取り続けていることに対し、市教委からは「県の指導力不足が問題だ」と批判する声が上がっている。今後の県の対応しだいでは、両者の溝が深まる可能性もある。

9月4日(日)

教科書問題を読み解く

 本質は「自衛隊問題」

 教科書問題に対する一般住民の関心は高いものの「では、どう思いますか」と聞くと「何が問題になっているのか分からない」と答える人が多い。教科書の話というと何となく難しい気がして、議論は教育の専門家に任せましょう―という風潮すら感じる。


 しかし教科書問題の本質を読み解くと「教科書問題」は「自衛隊問題」にほかならないと気づく。教科書をめぐる攻防は「自衛隊の存在をどう考えるか」「八重山への自衛隊誘致を認めるか」という問題と底流でつながっているのだ。


 反対派から問題視されている育鵬社の公民教科書。「自衛隊は日本の防衛には不可欠な存在であり、また災害の救助活動などの面でも国民から大きく期待されています」「戦後の日本の平和は、自衛隊の存在とともにアメリカ軍の抑止力に負うところも大きいといえます」と自衛隊の役割を積極的に評価している。


 一方、八重山採択地区協議会の調査員(教員)が推薦し、竹富町教育委員会が採択した東京書籍版は「平和と安全を守るためであっても、武器をもたないというのが日本国憲法の立場ではなかったという意見もあります」とあり、自衛隊が憲法違反だとする指摘に重点を置いているようにも読める。


 調査員の報告書を読むと、育鵬社、自由社版がふさわしくない理由として「軍事力に頼らない平和への努力や、憲法9条が果たしてきた役割がほとんど記述されていない」「自衛隊による軍事抑止力を強調し、憲法9条を改正する方向へ誘導するような内容」などと、自衛隊についての書き方が槍玉に上がっていることが分かる。


この報告書の指摘は、育鵬社、自由社版の採択に反対する団体のパンフレットから丸写した文章であることが判明。報告書としての信頼性が揺らいでいるのだが、それは別にしても、両社の教科書に反対する人が、イコール自衛隊に批判的な人だという図式は見える。


事実、八重山で育鵬社、自由社版に対する反対運動を繰り広げている人たちは「反自衛隊」を訴える人たちとぴったり重なる。反対派が2日に開いた集会の決議文でも「自衛隊の存在についても最近の先島への自衛隊配備問題を見越してか、それを教育の場に持ち込み、戦争を容認する子どもたちを育てる」と育鵬社版を非難する一節があった。


教科書問題の議論を分かりにくくしているのは、自衛隊の評価をめぐる考え方の違いが、実は最大の論点だということが、覆い隠されているからだ。


この日の集会では、教科書問題について「調査員が推薦しない教科書が選定されたから問題」「育鵬社版は教材としてふさわしくない」という議論がメイン。それでは、一般住民には手の届かない議論になりかねない。まさに「何が問題なのか分からない」という話になってしまう。


与那国町では自衛隊の基地建設計画が本格化し、石垣島、宮古島でも自衛隊配備計画が取り沙汰されるなど、自衛隊をめぐる議論は、八重山の住民にとってもはや避けられない。


尖閣諸島をめぐる中国などとの摩擦、東日本大震災で自衛隊が示した存在感も、議論の必要性を後押しする。


防災訓練で自衛官が続々石垣入りした中で、教科書問題がヒートアップしたのは、いかにも象徴的だ。


教科書問題と自衛隊問題は切っても切り離せない。一般住民がより良く教科書問題を理解し、自分たちの問題として考えるには、そうした視点も必要になる。                                             (仲新城誠)

9月6日(火)

「法律の根拠ない」

 開催疑問視する声も

 3市町の全教育委員13人で組織する八重山教育委員協会の臨時総会が8日に開催されることが決まったが、識者からは「法律の根拠がない会議を招集すること自体が法律違反だ」と開催の意義を疑問視する声が上がっている。委員の意見がどこまで集約できるのかも未知数で、事態打開のめどが立たないまま、時間だけが費やされる状況になりかねない。


 自由社版歴史教科書の代表執筆者で、教科書採択の制度に詳しい拓殖大の藤岡信勝客員教授は「法治国家なので、すべての決定は法律に根拠がないといけない。(教科書採択に)法律的な根拠がない組織が、どんな会合を開こうと無効だ」と指摘。


臨時総会での事態打開に期待感を示す県教委の姿勢も「(本来なら)県は竹富町を指導するべきだ。行政の中立性を侵している」疑問視する。

 

 招集権者の仲本委員長自身が育鵬社の教科書採択に強く反対しており、同協会の招集には、育鵬社版採択の白紙化を狙う意図があると取り沙汰される。「そういう目的で教育委員を集めて議論することにも問題がある」と強調した。


 一方、竹富町教委からは「教科書の採択権者は教育委員会」「全教育委員が集まり、意見を出し合うだけでも意味がある」と臨時総会開催を積極的に評価する意見が出ている。3市町での教科書採択をめぐる議論から推定すると、育鵬社版に反対する委員は過半数を超す。


 ただ、与那国町の崎原用能教育長のように臨時総会の開催そのものに反発する委員もおり、具体的な教科書名を挙げて一本化の論議ができるかどうかさえ不透明だ。


県教委のあいまいな態度に不信感を強める市教委幹部は「最終的には国の判断を仰がない限り、決着しないのではないか」という見通しを示した。

9月8日(木)

全委員で合意形成模索

 きょう教委協会総会

 教科書問題で、3市町の全教育委員13人で組織する八重山地区教育委員協会(会長・仲本英立石垣市教育委員長)の臨時総会が8日、市教委会議室で開かれる。議題は「教科用図書採択の早期実現」。公民教科書で、育鵬社版を採択した石垣市、与那国町教育委員会と、東京書籍版を採択した竹富町教育委員会の「一本化」が実現できるかが焦点。


 ただ全会一致での合意形成を図るのは困難視されており、育鵬社版の是非について、踏み込んだ議論ができるかどうかも不透明な状況。県教委は同協会で教科書を一本化するよう求めているが、教科書の選定権、採択権のない同協会で合意形成を図ることそのものを疑問視する声がある。


 臨時総会に先立ち、県教育委員会が求めた3市町教育委員長による話し合いも行われる。


 市教委は、採択地区(八重山地区)内で同一の教科書を使用するよう求める教科書無償措置法と、教科書の採択権は教育委員会にあるとする地方教育行政法のいずれが優先するかを県教委、文部科学省に問い合わせていたが、文部科学省は7日までに「どちらかが優先することはない」と回答した。文科省も3市町で協議し、意見を統一するよう求めたという。

 

9月9日(金)

育鵬社逆転不採択  東京書籍に一本化  

 全教育委員で多数決

竹富町教育委員会が育鵬社の公民教科書を不採択とし、石垣市、与那国町教委と判断が異なった問題で、3市町の全教育委員13人 は8日、市教委で教科書採択に向けた会議を開き、多数決で3市町とも育鵬社版を不採択とすることを決定。育鵬社版に代わり、東京書籍版を採択した。県教育 委員会義務教育課の狩俣智課長らがオブザーバーとして会議を指導し「ここで話し合ったことは拘束力がある」と明言した。しかし、八重山採択地区協議会の答 申に従い、正規の手続きで育鵬社版を採択した石垣市、与那国町教委の決定覆されたことに、両市町は強く反発している。

 

市教委の玉津博克教育長は会議終了後、報道陣に対し「決まったことに法的根拠はない」と疑問視。最終的に、文部科学省の判断を仰ぐ考えを示した。

 

 この日はまず、同協会の臨時総会が開かれ、会長の仲本石垣市教育委員長が、全教育委員13人で教科書を一本化する採択会議を開くよう提案。県教委の狩俣課長も「教育委員には責任と義務がある」と、この場で採択するよう求めた。

 

 これを受け、3市町の教育委員はそれぞれ別個に集まって検討し、竹富町教委は提案通り賛成、与那国町教委は「合意を前提」に、市教委は「(育鵬社版の)採択の意見は曲げない」という条件で、それぞれ賛成した。

 

 臨時総会は終了し、そのまま教科書採択に向けた会議に移行。しかし、育鵬社版の採択をめぐって委員の意見が大きく割れたため、仲本委員長に代わって議長役になった竹盛洋一竹富町教育委員長が「この状況では、合議(全会一致)では決められない」として多数決を提案。

 

玉津教育長、崎原用能与那国町教育長は「数の暴力だ」などと強く反発し、退席した。玉津教育長は休憩後、説得に応じて席に戻ったが、裁決には加わらないと宣言した。

 

 多数決の結果、議長役の竹盛氏を除き、市教委の仲本委員長、嵩田美代子委員、竹富町教委の慶田盛教育長、大田綾子委員、石垣石垣安信委員、内盛正聖委員、与那国町の入慶田本朝政委員が育鵬社版の「不採択」と、東京書籍版の「採択」に賛成。7対4で決定した。

 

教科書攻防約6時間、「強引」結末

 多数決に崎原氏反発  「公正な目で」訴え届かず

多数決による決定に抗議し、退席する崎原教育長=8日午後、市教委
多数決による決定に抗議し、退席する崎原教育長=8日午後、市教委

教科書採択をめぐり、8日午後2時から始まった3市町の全教育委員13人による攻防は、休憩を挟み、午後7時40分過ぎまで6時間近くに及んだ。教科書採択のルールにのっとって決まった石垣市、与那国町の採択が覆されるという不可解な結末。「多数決」で決めることそのものを「多数決」で決めるという強引な手法に、崎原用能与那国町教育長が「与那国町の委員は少ない。明らかに不利な状況で採決するのはおかしい」と、憤然として席を立つなど、今後に大きなわだかまりを残した。会場には、育鵬社版に反対する「子どもと教科書を考える銃民の会」メンバー約50人が傍聴に詰め掛けた。

 

 議論は、全教育委員13人の話し合いの場で、教科書の採択を決めることの是非から始まった。「採択の一本化に向けた協議の場にしたい」と八重山教育委員協会会長の仲本英立石垣市委員長。県教委の狩俣智義務教育課長が発言を求め、賛意を示した。

 

 多数決の是非も議題に。石垣市の徳松節子委員は、すでに市教委が採択作業を終えていることを挙げ「多数決の原理を超えている。こういうところで、一つにまとめるということに大きな無理がある」と疑問視。

 

 崎原教育長が「(与那国町は)多数決では負けるからやらない」と多数決に反対すると、住民の会メンバーが、どっと大きな笑い声を上げた。

 

一方、竹富町の慶田盛安三教育長は「協議会の役員会でも多数決だった」、大田綾子委員は「県の指導でも、多数決での採択は認められている。多数決も民主主義だ」と主張。議長役を交代された竹盛洋一竹富町教育委員長も「もう合議(全会一致)は有り得ない。八重山の子どもたちはどうなるのか。一刻も早い採択をしなくてはならない」と多数決を求めた。

 

玉津教育長が「各教育委員会の独立権の侵害だ」と気色ばむと、慶田盛教育長が「何を侵害するのか」とさえぎった。

 

 竹盛氏は、多数決を取るかどうかを採決。反発した玉津博克石垣市教育長、崎原教育長が退席する中、多数決で「多数決」が決まった。

 

 育鵬社版の是非については、与那国町の具志堅学子委員が「子どもたちに渡せない悪い教科書なら、どうして県も国も認めたのか。公正な目で見てほしい」、石垣朝子委員も「現代社会の見方や道徳の観点から、私は育鵬社のものがいいと思った」と訴えた。

 

一方、大田委員は「調査員の先生の調査資料を大切にしたい」、慶田盛委員が「調査員が推薦してない教科書が上がってきたことの客観的な説明がない」と批判。従来と同様に、調査員が育鵬社版を推薦しなかったことが改めて問題視されただけで、教科書の内容に踏み込んだ討論はなかった。

 

疑問多い多数決

 「なし崩し」の不採択決定

 採択地区協議会の答申に従って採択するというルールを順守した市教委、与那国町教委の決定が覆され、答申を拒否した竹富町の決定が結果として優先される事態。育鵬社版の「逆転不採択」を決めた8日の会議には、識者から「採択をひっくり返すために、あとからルールを作るのは違法だ」という指摘が上がるなど「なし崩し」的な結論は、重大な疑問を残した。

 

 決着の方法として多数決が採用されたが、人口で10倍以上の格差がある石垣市と竹富町の委員が同数の5人。一方で与那国町は3人しかいない。

 

単純に委員の頭数で決定する方法は不平等との指摘を招きかねず、与那国町の崎原用能教育長は「与那国町の委員が少ないと分かりながら多数決に持っていくのは、どういう魂胆か」と、議事運営に猛然と抗議した。

 

採択地区協議会、市教委で育鵬社版を選定、採択した際も多数決だったが、協議会規約や市教委会議規則では、議事がまとまらない場合は採決することを定めている。この日の会議は「多数決を多数決で決める」という問答無用にも近い方法だった。

 

教科書の内容について議論が深まらず、十分な説明責任も果たされないまま「なし崩し」的に多数決で議論が進だ。

 

自由社版歴史教科書の代表執筆者で、拓殖大客員教授の藤岡信勝氏は「(石垣市、与那国町の)採択事務に違法性がない限り、それをひっくり返すために、あとからルールを作るのは違法だ。会議で何を決定しようと、すでに採択事務は完了している」と疑問視。

 

「石垣市、与那国町教委が教育委員会を開き、会議は無効だと決議すればいい。申告されれば文科省も判断せざるを得ない。会議自体が無効だ」という見解を示した。 

 

県教委、会議を主導

 「ごり押し」批判も

会議で発言を求める県教委義務教育課の狩俣課長(中央)=8日午後、市教委
会議で発言を求める県教委義務教育課の狩俣課長(中央)=8日午後、市教委

 中学校公民教科書で、育鵬社版の不採択と東京書籍版の採択を決めた8日の会議には、県教育委員会義務教育課の狩俣智課長ら、県教委から4人がオブザーバーとして出席。たびたび発言を求め、事実上、会議を主導した。教科書採択の法的根拠がないと指摘された会議が一転、「採択会議」になったのは、県教委の「お墨付き」が大きい。ごり押しを認めたとの批判も招きそうだ。

 

 県教委は7日に作成した文書で、教科書を採択する法的権限がない3市町の教育委員全員の会議について、3市町教育委員会の了解のもと、採択権限のある会議に位置づけることができる―という見解を示した。

 

 8日の会議で狩俣課長は「教育委員全員が参加している、この形が(採択には)最も望ましい。もし協議ができないと、県として招集をしなければいけなくなる」と言い切り、採択権限を公認する形になった。

 

 採択地区協議会が育鵬社版を選定する答申を出したことについては「答申はあくまで答申。各教育委員会を拘束しない。答申と異なる教科書であっても、一本化していればいい」と強調。「ここ(会議)で決めたことには拘束力がある」と念を押した。

 

 玉津博克石垣市教育長が「協議会では、あらかじめルールを決めて教科書選定を協議する。この場で採択するなら、各教育委員会が合意しなくてはならない」とただすと「ここでルールを決めればいい。協議をしないという選択肢はない」と、この場での採択を強く要求。「協議の方法は、この場で多数決で決めてほしい」とも述べ、多数決での決着を決定づけた。

 

 玉津教育長が「私たちは協議会の答申に基づいて採択しているので、何ら違法性はない」と、なおも難色を示すと「事実誤認だ。採択が異なれば協議しなくてはいけない」と突っぱねた。

 

 八重山教育事務所の宮良学所長は、地区小・中校長会とPTA連合会が調査員(教員)の意見を尊重することを求める要望書を出したことを挙げ「教育は保護者、学校、地域の信頼があって成り立つ。校長会、PTAの主張を、各委員がどう判断したか聞きたい」と、育鵬社版の教科書採択に反対する考えを示唆した。

 

「正義が勝った」

 育鵬社不採択に安堵

会議を傍聴する住民の会メンバー=8日午後、市教委
会議を傍聴する住民の会メンバー=8日午後、市教委

 全教育委員会の会議で、育鵬社版の不採択などが決まったことを受け、同社版の採択に反対してきた関係者からは、一様に安堵の声が上がった。

 

議長役を務めた竹富町の竹盛洋一教育委員長は「多数決は残念」と、多数決が最後の手段であったことを強調し続けた。「喜びとかは別にない。教科書採択が困難な状況に陥ったことをお詫びしたい。指導していただいた県教委に感謝したい」と息をついた。

 

八重山地区教育委員協会の臨時総会を招集した石垣市の仲本英立教育委員長。「現場の(教員の)声が反映された。いい採択ができた」と語った。

 

会議が終わると同時に、傍聴に詰め掛けた子どもと教科書を考える住民の会のメンバーから、大きな拍手が沸き起こった。仲山忠亨共同代表は「正義は勝つと感じた。この問題は、決して八重山だけの問題ではない。全県の人々の支援の中で(育鵬社版を採択した市教委、与那国町教委が)追い詰められたのは当然だ」と胸を張った。

 

八重山地区PTA連合会の平良守弘会長は「私も採択地区協議会の委員だが(育鵬社版を選定した)説明責任が果たされていない」と指摘。今回の会議で「子どものための教科書が選ばれて良かった」としながら「退席した石垣市、与那国町の教育長の態度は好ましくない。教科書の内容についても、もっと議論してほしかった」と注文をつけた。

 

「文科省の判断仰ぐ」

 決定無効主張する玉津教育長

全教育委員による会議に先立ち、文科省に提出した要請文を報道陣に読み上げる玉津教育長=8日午後、市教委
全教育委員による会議に先立ち、文科省に提出した要請文を報道陣に読み上げる玉津教育長=8日午後、市教委

 8日に開かれた3市町教育委員全員の会議で、育鵬社版公民教科書の不採択などが決定したが、石垣市教育委員会の玉津博克教育長は「このような協議のあり方については疑義がある」と、会議の決定を認めない方針を示した。会議に先立ち、同日付で文科省に対し、県の指導は「不当介入であり、違法」と訴える要請書を送付しており、最終的には同省の判断を仰ぐ。

 

 玉津教育長は会議終了後「私たちは法に従って教科書を選定し、与那国町とともに採択した。すべての作業は完了し、何ら瑕疵(かし)はない」と強調。「私たちの決定を変えることができるのは、私たちだけだ」と述べ、市教委で承認されていない育鵬社版の不採択や、東京書籍版の採択は無効だという見解を示した。

 

 会議で玉津教育長は、事態の打開策として竹富町に対し、育鵬社版を採択し、副読本として自費で東京書籍版を購入してはどうかと提案。文科省の見解でも認められているとしたが、慶田盛安三竹富町教育長は、提案を一蹴した。

 

 会議が多数決を採用したことに抗議し、いったんは退席したが「地方教育行政法で、教育長はすべての会議に出席を義務付けられている」と説得され、席に戻った。

 

9月10日(土)

「逆転不採択」は無効

 2市町教委、改めて見解  県教委の「不当介入」指摘

 育鵬社の中学校公民教科書が3市町教育委員の多数決で逆転不採択となった問題で、石垣市教育委員会の玉津博克教育長は9日、取材に対し「私たちの採択権を 完全に奪われた。きのう(8日)の会議は違法であり認められない」と述べ、育鵬社版の不採択と東京書籍版の採択は無効だという見解を重ねて示した。与那国 町の崎原用能教育長も同じ考えで一致。両市町は今後、文部科学省に決定の不当性を訴え、3市町教育委員の会議を主導した県教育委員会の責任を追及する構え だ。


 8日に開かれた3市町教育委員会の会議で、市教委は「(育鵬社版の)採択の意見は曲げない」、与那国町は「全会一致が前提」という条件で採択に向けた協議入りを認めた。しかし、実際には県教委の主導のもと、いずれの条件も多数決で「なし崩し」になっている。


 県教委は7日に作成した文書で、採択に向けた協議入りの条件は「3市町の了解」だと明記していた。


 この点について玉津教育長は9日、条件が無視されたことを挙げ「3市町の間で了解は成立していない」と指摘。崎原教育長も「教育委員会の決議(条件)を受け入れずに、強引に採択協議をした。違法性がある」と強調した。


 県教委の一連の指導について玉津教育長は「全く予想外の不当介入。彼ら(県教委)が主導して(3市町教育委員の)会議を作っていったのは明らかだ」と述べた。市教委はすでに8日、県教委の不当介入を訴える要請文書を文科省に送付している。


 各都道府県は16日までに教科書の需要数を同省に報告しなければならないが、市教委、与那国町教委はすでに育鵬社版の需要数を県に報告している。

 

今後、東京書籍版に変更して報告し直すよう県教委から指導が入る可能性があり、市教委は、その時点で決定の無効を確認するためのアクションを起こすことを検討している。


教育長不信任提案へ

 野党、教科書問題で

 教科書問題で、石垣市議会の野党連絡協議会は9日、玉津博克教育長の不信任決議案を9月議会に提出する方針を固めた。最終本会議に提出する方向で調整する。野党議員の一人は「八重山の教育を混乱させた張本人」だと玉津教育長を非難した。


 議会に教育長の解任権はないため、不信任案には法的拘束力はないが、野党として抗議の意思を世論にアピールする狙いがある。


一方、与党は玉津教育長が進めている教科書選定作業の改革に理解を示しており、不信任案が提案されても否決に回ると見られる。


 9月議会は12日に開会し、一般質問は26日から4日間行われるが、野党の1人は「今議会は『教科書議会』になる」と断言。教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津教育長)が教科書を選定した手続きに問題があるとして、玉津教育長に集中砲火を浴びせる構え。

育鵬社不採択は無効

 幸福実現党など要請

 幸福実現党八重山後援会の砂川政信支部長らが9日、石垣市教育委員会を訪れ、8日に行われた教育委員会の教科書採択協議で、育鵬社の中学校公民教科書が不採択になったこといついて「協議自体が不当であり、当然結果も無効」だとする要請文を提出した。


 要請文では、八重山採択地区協議会の答申に従わず、育鵬社版を不採択にした竹富町教育委員会に対し、県教委が「適切な指導を行わず、協議会の正式な決定を無効にするかのような提案を行った。法と民主主義を踏みにじる暴挙」と指摘。


 協議会の選定について「竹島や尖閣諸島などの領土の記述を明記した育鵬社の教科書を採択したことは、正しい判断」と支持した。


 要請文を提出したのは同後援会のほか、恵隆之介拓殖大客員教授と、八重山の教育向上支援の会(嵩原淳会長)、八重山の自由を守る会(新里卓代表)など4団体。

9月11日(日)

「協議は無効」国、県に通告 

  市2市町教委、逆転不採択で

 育鵬社の中学校公民教科書が逆転不採択となった問題で、石垣市教育委員会の玉津博克教育長、与那国町教育委員会の崎原用能教育長は10日までに、3市町教育委員の協議は無効だと通告する文書を県教委、文科省に送付した。

 

 市教委の文書では、全教育委員の協議について「採択に関する業務はすべて完了したことを踏まえ、今後一切変更のないことを確認して協議に臨んだ」と強調。

 

「協議は県教育委員会主導のもと、各教育委員会の了解を得ることをせず多数決を前提に進められた」ため、協議について定めた教科書無償措置法の条件を満たさず、無効だと結論づけた。

 

 与那国町教委の文書でも、町教委が全員一致の合意を条件に協議入りしたことを挙げ、多数決による協議の結果を無効だとしている。

 

 玉津教育長は「県が文科省に、協議入りは3市町教委の了解済みだと報告したと聞いた。それは違うということを文科省に報告した」と述べた。

「不当介入」に抗議

 父母の会が県教委に

 正しい教科書を推薦する父母の会(友寄永三代表)は10日、育鵬社版公民教科書が逆転不採択になった問題で、県教育委員会に「不当介入」があったとして、抗議書を大城吉三郎教育委員長、大城浩教育長、狩俣智義務教育課長に送付した。

 

 抗議書では、3市町教育委員の協議を主導した県教委の行為について、竹富町教委の側に立つような行為を露骨に行ったと指摘。「越権行為」「民主的に決まった議決を強引に覆した」と批判している。


9月12日(月)

逆転不採択の現場①

 「数の力」背景に押し切る 

  県教委も援護射撃  2教育長、必死に抵抗 

 育鵬社の中学校公民教科書を逆転不採択とした8日の全教育委員13人による「採択協議」。6時間近くに及ぶやり取りから、「育鵬社不採択」に向け、事実上協議を主導した県教育委員会と、数の力を背景に押し切ろうとする教育委員8人、必死に抵抗した玉津博克石垣市教育長ら教育委員5人の攻防が見えてくる。逆転不採択の現場を再現する。

 

 玉津教育長「県教育庁義務教育課の指導自体が不当介入であり、違法であります」


 攻防は3市町の全教育委員会で構成する「八重山地区教育委員協会」の臨時総会という形で始まった。しかし、それに先立ち、玉津教育長は、県教委の「不当介入」を文科省に訴えた要請書を報道陣に朗読、機先を制した。要請書は同日午前、送付したばかりだった。

 

開会直前、オブザーバー参加した県教委の狩俣智義務教育課長があいさつに立った。

 

 狩俣義務教育課長「県教委には公正適正な採択をしていただく立場で、交通整理をする法的な役目がある。教科書が3市町で一本化できていない。ここで統一をしてもらいたい」

 

 教科書無償措置法13条4項によって、3市町は「協議」し、同じ教科書を使用しなくてはならない。

 

正式な「協議」の場である採択地区協議会はすでに、育鵬社版の公民教科書を選定し、3市町教育委員会に答申している。市教委、与那国町は答申通り育鵬社版、竹富町は答申に従わず東京書籍版を採択した。

 

解決策は①教科書採択のルールにのっとり、竹富町を指導して答申に従わせる②新たな「協議」の場を設定して採択をやり直す、の2案。

 

狩俣課長の発言は、県教委が②を採用し、この場が教科書を一本化するための「協議」の場であることに「お墨付き」を与える意味があった。

 

仲本英立石垣市教育委員長「8月31日に採択協議会も終了し、これは大変なことだ、八重山の子どもたち、学校の管理運営はどうなるのかと思った。八重山高校3年生が八重山毎日新聞に出した投稿で『子どもは親の背中を見て育つ。情報公開、説明責任を果たす真の民主主義の姿を見せてほしい』という記事を書いたことに感動し、勇気をもらった」


冒頭のあいさつから、育鵬社版教科書の不採択を訴える高校生の新聞投稿を引き合いに出す仲本委員長。

 

仲本氏は臨時総会の招集権者。臨時総会の招集が、育鵬社版教科書を採択した石垣市、与那国町教育委員会の決定を覆す狙いだったことを、濃厚にうかがわせる発言だった。

 

崎原用能与那国町教育長「この場を教科書無償措置法13条4項の協議として位置づける根拠は何か。採択協議会とは別に協議会を設置するのか」

 

 仲本委員長「そういう方向性が見えたらいいと話をしただけだ」

 崎原教育長「県の資料によると、3教育委員会が認めたときにしか協議できないことになっている。勝手に、この会合で多数決できるものではない」

 

県教委は前日の7日に作成した文書で、教科書採択をやり直すための「協議」は、3市町教委の了解が必要だと明記していた。玉津教育長も発言を求めた。

 

玉津石垣市教育長「教科書無償措置法13条4項に定める協議は、採択地区協議会で、しっかり議論して結論を出している。残念なことに竹富町教委が、自分たちで教科書の選択までやって、東京書籍を採択したことは由々しき事態だ」

 

慶田盛教育長「石垣市教育長の話は許されない。非常識な話はするな。採択権は教育委員会にある」

 

竹富町教委が協議会の答申に従う理由はないと、声を荒げて反論する慶田盛氏。玉津教育長はなお食い下がる。

 

玉津教育長「採択権者(竹富町教委)が、答申と違う採択をするから問題になっている」

 慶田盛教育長「答申には法的拘束力はない」

 

ここで県教委の狩俣義務教育課長が、慶田盛氏を「援護射撃」する。

 

狩俣課長「地区採択協議会は3教育委員会の諮問機関。(答申には)拘束力はない」

慶田盛教育長「分かりましたか」

 

苦笑して引き下がる玉津教育長。仲本委員長は会を進行した。

 

仲本教育長「教育委員13人がそろっている。この場を採択の一本化に向けた協議の場にしていきたい」

 

 慶田盛教育長「教育委員協会は閉めて、教科書を一本化する協議会に切り替えたほうがいい」

 

ここで狩俣課長が「指導助言」に立った。

 

狩俣課長「異なった採択をした場合は協議を行う。この場を、協議を行う場にしていただきたいというのが県教育委員会の指導助言だ」


 仲本委員長「臨時総会は閉じます。閉会のあいさつをお願いします」

 

 入慶田本朝政与那国町教育長が閉会のあいさつをして、臨時総会は終了した。

 

 仲本委員長「(引き続き)この場を教科書一本化に向けての協議の場とします」

 

一方的に宣言する仲本委員長。すでに終了した3市町の公民教科書採択が白紙化され、全教育委員13人による新たな「採択協議」が始まろうとしていた。


教科書問題追及へ

 県教委の「介入」問題視

 教科書問題で、自民党が県教委の「不当介入」を追及する動きを見せ始めている。関係者によると、衆院文部科学委員会でも自民の議員がこの問題を取り上げて質疑する見通しで、玉津博克石垣市教育長は「舞台を国、県に移して戦いは続く」と「育鵬社版不採択」の無効を訴え続ける構え。


 この問題では、義家弘介参院議員が7、8の両日、文科省幹部に法解釈を照会。①教育委員会の教科書採択は原則として、採択協議会の答申に基づいて行われるべきで、答申には法律的に整合性がある②8日の会議を教科書採択に向けた協議の場とするには、3市町教委がそれぞれ合意することが前提③県教委が主体的に協議の場を設置することはできないーという趣旨の確認書を取り、市教委に送付している。


9月13日(火)

教科書問題説明へ

 玉津氏、きょう自民部会出席

 自民党が八重山の教科書問題を追及する構えを見せていることを受け、玉津博克石垣市教育長は13日上京し、同党政務調査会文部科学部会と「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の合同会議に出席し、教科書問題について説明する。


 採択地区協議会の答申に従った市教委、与那国町教委の採択が、県教委の主導のもと、教育委員全員の協議で覆された経緯について、自民は「重大な関心を抱いている」とされ、玉津氏に説明を求めている。


 玉津教育長は、各教育委員会の独立権が侵害されたとの見解を示しており「ルール破りは民主主義の根幹を揺り動かすことになる。今回の事態を認めれば、教育委員会制度そのものが崩れていく」と危機感をあらわにした。


逆転不採択の現場②

 「最も民主的な協議の場」ちらつく多数決カード

 育鵬社版に嫌悪感あらわ

 市教委、与那国町教委はすでに、採択地区協議会の答申に従った教科書採択を終了している。新たな「採択協議」は認められないと、玉津教育長が反論した。

 

玉津教育長「(この場を)教科書無償措置法の協議会にするには、各教育委員会がお互い合意しなくてはならない。(各教委で)3つに分かれて話し合いをしま しょう。文科省のある課長補佐からの情報だが、協会を協議会に変える場合は、それぞれの教委が合意した上でないとできないという回答だ」


慶田盛教育長「(教育委員が)全員集まっているから協議の場だ」

 

 強く協議入りを求める慶田盛教育長を、狩俣課長が再び「援護射撃」する。

 

狩俣課長「ここに3教育委員会の全委員がそろっている。最も民主的な協議の場だ。ここで話し合いをしていただきたいというのが県教委の希望だ」

 

 育鵬社版の採択に賛成した市教委の徳松節子委員が異議を挟む。

 

徳松委員「私たち(市教委)は2時間近く議論を重ねて採択した。それが最終のものだと思っている。民主主義は多数決の原理だと思うが、今回は多数決の原理を 超えて、それぞれの主義主張が出た。こういうところで一つにまとめましょうということに対して、最初から大変無理があると思う」

 

 異論があるにもかかわらず、仲本委員長は、なおも協議入りに固執する。

 

仲本委員長「この場を13人の委員の責任と英知によって、協議の場とすることについて、採決に持っていきたい」

 

 早くも「多数決」のカードをちらつかせる仲本委員長。崎原教育長、玉津教育長が猛然と抗議する。

 

崎原教育長「竹富町のように、協議会では多数決で負けたから、帰って覆すという民主主義がどこにあるのか」


玉津教育長「すでに8月31日で協議会の業務は終了している。今後、協議会を開くことには賛成できかねる。仮に協議会をやるのなら、これは各自、教育委員会に持ち帰って、13人の場を協議会にするかどうか、改めて話し合いをやるべきだ。県教委のご意見もうかがいたい」

 

狩俣課長が「指導助言」に立つ。

 

狩俣課長「3教育委員会には協議をする責任と義務がある。ぜひ協議してほしい。全員が参加しているこの形が最も望ましい。もし協議ができないということであれば、県として招集しないといけなくなる。そういう事態は避けたい」

 

県教委による教育委員の「招集」まで持ち出し、協議入りを迫る狩俣課長。協議は休憩に入った。

 協議の再開後、議長役は竹盛委員長に交代する。委員が一人ひとり意見を述べる。

 

崎原教育長「今回に限り、竹富町が協議会の答申を受け入れなかったことが疑問。復帰後、ずっと答申案の通りやっている。文科省も静ひつな環境の中で、他人の 圧力に屈しない判断をしなさいといっている。(竹富町は)まともに判断したとは思えない。世間の圧力でそういう結果になった。外部の圧力ではなく、子ども たちの目線で判断してもらえるか聞きたい」

 

 育鵬社版教科書は、文科省の検定をパスした7社の教科書のうちの1冊だ。与那国町の具志堅学子委員、石垣市の石垣朝子委員は、育鵬社版教科書を擁護する。

 

具志堅委員「『この教科書は子どもたちに渡せない』というが、なぜ国も県も認めて、この地区に来たのか。公正な目で見てほしい。私自身は、協議会の答申が民主主義の結果だと思っている。それを重視してほしい」


 石垣委員「市教委で2時間余に及ぶ話し合い合いをし、結論が出た。一生懸命やって採択したものを、ノーと言うことはできない」

 

 竹富町の内盛聖正委員が、育鵬社版に反対意見を述べる。

 

内盛委員「文科省が認めているのに何の問題があるのか、一つだけ言う。育鵬社の公民に『私たちは両親のもとに生まれ育ち、家族の一員として助け合いながら生活を営んでいます』とある。本当にそうでしょうか。違いますよね。片親の家庭もある。さびしくなる子もいませんか」


崎原教育長「両親から生まれないで誰から生まれるのか。ばかなことを言うな」

 

 強引な論理に、崎原教育長が思わずあきれ声を上げる。内盛委員は別の角度から、育鵬社版が協議会で選定されたことに異論を唱える。

 

内盛委員「どういう経緯で育鵬社の本が上がり、どういう議論があったか、きょうまでに説明があっても良かった。調査員の推薦がない本が議題に上がったのはどういう経緯なのか。説明してほしい」

 

竹富町の大田綾子委員は、現場教員である協議会の調査員が、育鵬社版を推薦しなかったことを指摘。育鵬社版の採択に反対する。

 

大田委員「子どもたちに恥じることのない説明責任を持ちたいと常に思っている。調査員の先生の調査資料を大切にしたい。それが現場の先生に指導意欲、子どもたちに学ぶ意欲をつけることだと信じて教科書を選んできた」

 

協議会委員でもある大田委員はさらに、協議会での選定の内幕も明かす。

 

 大田委員「私は協議会で、歴史と地理の教科書について、かなりの時間とエネルギーをかけて発言してきた。その発言が公民の中にも生きてくると信じていた。しかし、それが覆されてしまった。公民が選ばれたときは、ショックで血の気が引いて、体が震えるほどだった」

 

育鵬社版への嫌悪感をあらわにする大田委員。批判は、他の委員からなおも続く。


9月14日(水)

育鵬社不採択の協議無効  

 中川文科相が見解示す

 沖縄県石垣市と与那国町、竹富町からなる「教科用図書八重山採択地区協議会」が選定した育鵬社の公民教科書が一転「不採択」とされた問題で、中川正春文部科学相は13日、不採択となった8日の「新たな協議の場」について、「協議が整っていないと考えざるを得ない」として、無効と明言した。「新たな協議の場」が効力を持つ前提の3教委の合意ができていないと判断した。

 

 一方、文科省と沖縄県教委は13日の自民党の部会で、一連の経過を報告した。部会では文科省の「無効方針」や育鵬社の教科書を選定した八重山採択地区協議会の選択の経緯に法的問題はなく、協議会の決定事項のみが現状では有効との見解が示された。

 

 沖縄県教委は「無効方針」の前提に立ち、地区内を同一教科書にするよう求めた無償措置法に違反する状態の解消に向け、指導に乗り出す考えを表明した。

 

 ただ、出席議員からは、これまでの協議会側への指導をめぐり、県教委の指導に疑問が続出。教科書採択をめぐる地方教育行政法と教科書無償措置法の法令解釈で、文科省の見解との食い違いや矛盾が次々と明らかになり、再三追及された。

 

 今後、地区内で教科書一本化を図る必要性があるとの認識では国と県は一致したが、具体的な収拾策について明言を避けたため、会議はたびたび紛糾。部会は違法状態を招いた竹富町に、国や県が正常な指導をするよう決議した。(産経新聞)

「合意」と「多数決」はき違え

 強引手法が裏目に

 中川正春文科相が、8日の全教育委員会による協議の決定は法的に無効だったという見解を示した。育鵬社版公民教科書の採択を覆すため、反対する教育委員らが、採択とは無関係な組織である「八重山教育委員協会」を持ち出した強引な手法が裏目に出た形だ。協議入りの前提だった3市町教育委員会の合意も得られないまま、協議にお墨付きを与えた県教委の「指導助言」も、改めて批判を招きそうだ。


 3市町で採択した教科書が異なった場合は、再協議して一本化しなくてはならない。採択地区協議会の規約で定められた役員会での再協議のほかに、改めて採択機関を設置するためには「3市町の合意が前提」というのが、そもそもの文科省、県教委の見解だった。


 見解によると、市教委、与那国町教委の合意が得られない以上、3市町の全教育委員会が集まっても法的な採択機関にはならず、協議は無効になる。

 

 育鵬社版の採択を覆す隠れみのとして「八重山教育委員協会」の臨時総会を開いて全教育委員を招集し、ただちに採択に向けた協議に切り替えるという手法にも疑問が残る。

 

全教育委員の協議では「合意」を「多数決」とはき違え、あらゆる決定を数の力で押し切った。この手法がまかり通れば、今後、協議会の答申や教育委員会の採択は、時の多数派によって、どのようにでも覆すことができる。「悪しき前例」となる可能性があった。

 

県教委もこうした手法を追認する一方的な「指導助言」で、不当介入と批判される結果を招いた。

 

 8日の全教育委員の会議では、市教委は「(育鵬社版の)採択の結果を変えない」、与那国町教委は「全会一致」をそれぞれ条件に、採択に向けた協議入りを認めた。

 

しかし、竹富町の教育委員らが「最終的には多数決しかない」と主張し、市教委、与那国町教委の条件を無視。県教委が「ここで話したことは拘束力がある」などと反論を封じた。

 

市教委、与那国町教委は10日、文科省と県教委に文書を送付し、協議は無効だと通告。玉津博克石垣市教育長が「教育委員会の独立権を侵害された」と主張するなど、教科書問題は、かえって混迷を深めていた。


育鵬社版の採択指導を 

 自民部会、文科省に要請

八重山の教科書問題で開かれた自民党文部科学部会と歴史教育を考える議員の会の合同会議(13日午後)
八重山の教科書問題で開かれた自民党文部科学部会と歴史教育を考える議員の会の合同会議(13日午後)

 八重山地区の教科書問題で、自民党文部科学部会(下村博文部会長)と「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の合同会議が同党本部で開かれ、竹富町が育鵬社の公民教科書を採択するよう、文部科学省と県教委に指導を要請することを決めた。


 参加した議員からは、竹富町が採択地区協議会の答申に従わなかったことについて「石垣市、与那国町は法の手続きにのっとって採択したのに、竹富町は採択しなかった」「(竹富町の採択を認めると)協議会の決定に不満な人は、全部ひっくり返していいことになる。協議会は必要なくなる」と批判の声が相次いだ。


 県教委の狩俣智義務教育課長は、協議会の答申が現在も有効であることを認めた上で「3教委の採択が一本化できるよう、引き続き指導助言したい」と表明。文科省の担当者は、教科書採択の一本化に向けて「どういうことが可能か検討したい」と述べた。

 

 自民は3市町の教育長に出席を要請したが、玉津博克石垣市教育長のみ応じた。

 玉津教育長は、8日の協議を「意味の分からない会議」と断じ「協議会は法的に何の問題もなく結論を出した。竹富町はぜひ答申に沿って、3度目の採択をお願いしたい。文科省、県教委は法に沿った指導をしてほしい」と訴えた。

 

下村部会長は文科省側に「竹富町に対し(協議会の答申に)従うよう、県教委を通じてしっかり指導してもらうことで、事態の収拾に乗り出してほしい」と求めた。


崎原氏「これが民主主義」 

 「とんでもない」と慶田盛氏

教科書問題で、文科省が8日の協議は無効という見解を示したことについて、与那国町の崎原用能教育長は「これが民主主義だ」と歓迎。「3教育委員会は独立した機関なので、全部で集まって数の力で決めるのは間違っている」と指摘し「教科書の選定権は採択地区協議会にある。県や文科省は(協議会の答申に従わなかった)竹富町を指導するべきだ」と強調した。


 育鵬社版の採択に強く反対してきた竹富町の慶田盛安三教育長は、国、県は竹富町を指導するべきとの意見について「協議会の答申には拘束力はない。竹富町に違法行為があるような言い方は、とんでもない話だ」と反論。文科相の発言については「県教委から話を聞かないうちは、何とも言えない」とした。


「育鵬社採択」で指導か 

 市教委は妥協案提示

 8日の採択協議を文科省が無効と判断したことで、教科書問題は、育鵬社の公民教科書を選定した採択地区協議会の答申を尊重する方向も含めて国、県が指導を再検討する見通しが強まった。ただ、竹富町教委が育鵬社版に強く反対していることから、市教委が協議で提案した「妥協案」が現実的な解決策として浮上しそうだ。


 県が国に教科書の需要冊数を報告する期限は16日とされており、8日の協議が無効だったことを踏まえ、3市町は残り3日間で教科書を一本化しなくてはならない。

 

 市教委の玉津博克教育長は協議で竹富町教委に対し、3市町がそろって育鵬社版を採択した上で、竹富町のみ、東京書籍版を自費で購入して使用する解決策を提示した。

 

 同様の事例は2005年、茨城県大洗町教委の教科書採択をめぐって起こった。文科省の下村博文政務官は衆院文部科学委員会で、自治体が副教材のような形で、採択地区の決定と異なった教科書を使用することは可能という見解を示していた。

 

 玉津教育長は協議で衆院文部科学委員会の議事録を全委員に配布。文科省見解を説明し「こういう形での解決策も必要ではないか。考慮していただければ一本化も可能だ」と提案した。

 

しかし、竹富町教委の委員は「竹富町だけの問題ではなく、沖縄の教育を揺るがす問題だ。竹富町だけ別の教科書を使って解決することはあってはならない。受け入れるわけにはいかない」(大田綾子委員)などと拒否した。


逆転不採択の現場③

 調査員意見は最優先か 意見言い合うだけの「協議」

  県教委、重ねて一本化迫る

 竹富町の慶田盛教育長が育鵬社版を批判する。

 慶田盛教育長「教科書を現実に使用する学校の意向はどうか。この点は調査員の調査結果だ。なぜ調査員に推薦されていない図書が上がってきたのか、客観的な説明がない」

 

地区小中校長会、八重山地区PTA連合会が育鵬社版に否定的な要請を行っていることを指摘。地域住民の声にも言及した。

 

慶田盛教育長「地域住民の意見は沖縄タイムス、琉球新報に載っている。育鵬社関係の教科書を採択した市教委をどう思うか。タイムスは56%、琉球新報は61・3%が反対している。半数以上が反対している。こういう状況を踏まえても、考えないといけないところがあるのではないか」

 

竹富町の石垣安信竹富町委員、与那国町の入慶田本委員長、石垣市の仲本委員長からも、育鵬社版の選定や、協議会の運営方法に対する批判が続出する。

 

石垣委員「公民の教科書だけ、調査員の推薦のなかったものが急に浮上して、育鵬社が採用された。協議会の規約が突然変更され、現場の経験ある職員が外されたことも疑問に思う」


入慶田本委員長「竹富町が悪者扱いされているが、私はそうではないと思う。原因を煮詰めていただいて、協議してほしい」


仲本委員長「現場の先生方、調査員が研究した図書が採択されていない。教科書を実際に使用する学校現場の意見が十分に反映されていたのか。PTAの要請にも十分に答えられていたのか。住民の世論調査が新聞で出ているが、もろもろの世論調査が十分に反映されているのか。この事実は無視できないと考えている」

 

石垣市の嵩田美代子委員も、ほぼ同様の論旨を展開する。

 

嵩田委員「何と言っても調査員が上げてこなかった教科書を協議会が採択したことが納得できない。玉津教育長は責任と権限という言葉をしきりに発するが、調査員が上げたものを選ぶという前提のもとの責任ではないか」

 

嵩田委員と竹富町の竹盛洋一委員長は、協議会の構成メンバーも疑問視する。

 

 竹盛委員長「協議会のメンバー8人の中に教育委員が6人いる。協議会は教育委員会の諮問機関であり、構成からして非常におかしい」

嵩田委員「3市町教育委員のメンバーが自分たちで諮問して、自分たちで答申を受けるという入口のところから、大変な迷路に入った。今一度、原点に立ち戻って協議しないと一本化は諮れない」

 

 「調査員の推薦がない教科書が選ばれた」という批判に玉津教育長が反論する。

 

玉津教育長「推薦なしの教科書を採択したという話があったが、第2回の協議会で、6人の委員が集まった中で、私は『拘束性を持たない推薦制を考えておりますから、そのうちにシステムを提示いたします』と申し上げている。協議会が自分の責任と権限で選ぶということをはっきり申し上げ、何ら反論がなかった」

 

育鵬社版を擁護する委員が、さらに反論に出た。

 

徳松委員「調査員の報告を尊重しなさいというが、報告書が、あるグループの反対意見とほとんど同じだとA新聞は書いている。私は実際に分厚い調査報告を見た。八重山の調査員はマイナスの意見ばかりで、どういうことか首をかしげていた。ある種の誘導があったのかと思うふしがある。調査員といえども、それぞれの主義主張がある。その中でしか調査はできない」

 

 市教委の石垣委員は「協議会に教育委員が入っているのはおかしい」という批判に反論する。

 

石垣委員「なぜ協議会の総会で(委員を入れ替える)提案があったときに議論しなかったのか。総会で通ったんですよ」

 

 委員全員が発言したが、お互いが意見を言い合っただけで、中身のある議論に発展しない。ここで竹盛委員長が提案する。

 

竹盛委員長「きょう、この13人の教育委員がいらっしゃる中で(教科書を)決めてほしい。ここで採択してはどうか」

 

 ここで玉津教育長は、義家弘介参院議員が文科省幹部から取った文書を読み上げる。文書によると、この場を教科書採択に向けた協議の場とするなら、3市町教委の合意が必要だ。玉津教育長は、義家氏の名前は伏せた。

ここで狩俣義務教育課長が発言する。

 

狩俣課長「(文書は)私たちが確認しているところと若干異なるところもあり、確認が必要だ」

 

狩俣課長はさらに、育鵬社版を選定した採択協議会の答申について説明する。

狩俣課長「採択協議会で出されたのは答申だ。答申はあくまで答申。各教育委員会を拘束しない。文科省からも、弁護士、行政法専門の大学教授にも確認している」

 

狩俣義務教育課長は、この場での採択協議入りを改めて迫る。

 

狩俣課長「各教育委員会が異なる採択をした場合は、協議しないことは許されない。残るのは協議の形態。委員長だけに一任してやるか、全委員でやるか、委員長と教育長でやるか。だいたい、こういったところだと思う。答申と異なる採択であっても、一本化していればいい。そのことは確認してほしい」

 

 この場で協議しないという選択肢はないと断言する県教委。育鵬社版を擁護する少数派の委員たちは追い詰められていく。

 

9月15日(木)

逆転不採択の現場④

「多数決」の是非で紛糾

石垣、与那国は拒否 「決定この場で」迫る県教委

 竹盛委員長が、教科書の一本化へ、さらに議事を進める。

 

竹盛委員長「教育委員は基本的に合議で話をしようと言うのが基本だが、合議は難しい。ここで採択について決める、教科書を一つに絞ることを皆さんに諮っていいか」

 

玉津教育長が反対する。 

玉津教育長「協議会は、あらかじめルールを定めて協議するのが無償措置法の基本だ。最低条件は、各教委が合意することだ」

 

 ここで狩俣義務教育課長が玉津教育長に反論。協議は、県教委の事実上の「主導」が鮮明になってくる。

 

狩俣課長「協議は、あらかじめルールを決める必要はない。ここでルールを決めて話し合えばいい」

 

狩俣課長は、教科書採択に向けた具体的な協議の方法を提案する。

 狩俣課長「いろんな協議の仕方がある。教育委員長だけでやる方法、教育委員全員でやる方法。地教行法で教科書は教育長の専権事項ではなく、教育委員に専決権があるので、どうしても協議には教育委員長が入っていないといけないという判断を持っている。教育長だけの協議は考えていない」

 

教育長だけの協議だと、2対1で育鵬社版の採択が決まる。教育委員全員での協議、教育長と教育委員長の協議では、いずれも育鵬社版に反対する意見が多数だ。


狩俣課長は、なおも協議入りを迫る。

 狩俣課長「教育委員会で協議した結果、協議しないことにしました、と言うことは有り得ない。そこは誤解がないようお願いしたい」

 

竹盛委員長「ここは多数決で、協議の場とすることを決めたい」

 

崎原教育長が反対する。

 崎原教育長「法的拘束力もないのに、多数決で決めてどうするのか。世間受けを狙っているのか」


玉津教育長「(3市町教育委員会に)分けてください。採択を変えるか変えないか確認して戻ってくる」 

 

ここで玉津教育長は、3市町が育鵬社を採択したあとで、竹富町だけは副読本として東京書籍版を購入することを提案するが、竹富町の委員から「沖縄の教育を揺るがす問題だ。受け入れるわけにはいかない」(大田委員)と断られる。


議長役は仲本委員長に交代した。

 仲本委員長「堂々めぐりをしている状況だ。この場を協議の場として確認し、教科書を一本化したい。採決は挙手でお願いしたい」

 

いきなり多数決を持ち出す仲本委員長。崎原教育長、玉津教育長が抗議する。

 

崎原教育長「これは拘束力があるのか」

玉津教育長「法的根拠は何か」

 

ここで、狩俣課長が両教育長をけん制する。

 狩俣課長「協議は、しっかり最後までやってもらわないといけない。席を立つようなことがないようにお願いしたい。協議の仕方を決めてほしい。3つの教育委員会に分かれるなら、どういう形で協議するのか対案を出してほしい」

 

さらに狩俣課長は続ける。

 狩俣課長「協議の方法は、この場で多数決で決めていただかないといけない。ちゃぶ台を返さないで決めていただきたい」

 

 多数決での決着を容認する発言だった。

 ここで3市町教育委員会は、協議入りするかどうかを話し合うために、別々に会議を開くことになり、休憩に入る。


 協議が再開し、3教育委員長が報告する。

 

入慶田本委員長「(与那国町は)合意を前提に全員で決める」


仲本委員長「(石垣市は)採択の意見は曲げない。協議の形態についてはまとまらなかった」

 

竹盛委員長「(竹富町は)委員13人全員で(協議)という結果が出ている。全員で決めることでよろしいですね」

 

ここで、教科書採択に向けた協議入りに異議は出なかった。しかし条件として、与那国町教委は全会一致、市教委は育鵬社版を採択する意見は曲げないということを明言した。この条件が無視されたことが、のちに「協議は無効」だとする主張の根拠になる。

 

竹盛委員長「協議会の答申は育鵬社、竹富町は東京書籍。この2つについて、挙手して決めたい。よろしいですか」

 

いきなり多数決に持っていこうとする議事運営に対し、狩俣課長が止めに入る。

 狩俣課長「答申は生きているので、まず、答申の是非について確認をした上で、もし答申通りいかないのであれば、2番手(の教科書)はどうするのか議論してほしい」

 

ここで崎原教育長が「多数決」に異議を唱える。

 崎原教育長「与那国町は多数決ではないと条件を言っている。ぼくたちは3人しかいないので、多数決したら負ける。だから合議にしてくださいとお願いしている」


竹盛委員長「多数決は採択協議会でもやられたことだ。今の状況では合議は無理だ」

 

「多数決」を認めるかどうかをめぐり、協議は紛糾してくる。

 

崎原教育長「(与那国町教委の)人間が少ないと分かりながら、多数決に持っていこうとするのはどういう魂胆か。全体で多数決を取ると負ける。民主主義ではない」


玉津教育長「石垣市も、採択は曲げないと言っている。私たちは多数決は受けない」

 

慶田盛教育長が反論する。

慶田盛教育長「石垣だって多数決だった」

玉津教育長「それは、そういう規約を作ってやっているからだ」

 

あらかじめ決められた規約などに基づき、多数決を取った採択協議会や市教委と、何のルールもないところから始まったこの日の協議を同一視できないと玉津教育長は訴える。


9月16日(金)

逆転不採択の現場⑤

 「協議には拘束力」 県教委明言

 育鵬社の採択疑問視 玉津氏「多数決はいけない」

ここで竹盛委員長が、県教委に指導助言を仰ぐ。

 

狩俣委員長「全体で協議することは決まったので一歩前進。あと3段くらい階段を上ってもらわないといけない」

 

協議の進行を求める狩俣課長。さらに、育鵬社版の採択を疑問視するような発言が飛び出す。

 

狩俣課長「お願いしたいことは、文科省の通知には『地域において広く関係者の理解を求める』とある。皆さんは絶対的な権限があって参加しているのではない。関係者の意向をくみ取って自分自身の意見を出していただくということだ。学校現場、保護者、地域の意向はこうだ、と、それぞれ話をしてほしい」

 

 校長会やPTA、地域住民から育鵬社版の採択に反対する意見が上がっていることを念頭に置いた発言だ。宮良学教育事務所長は、さらに踏み込む。

 

宮良教育事務所長「校長会は調査員の意思を尊重してくれと言った。八P連も『つくる会』系の教科書採択には反対。教育は保護者、学校、地域の信頼があって始めて成り立つ。校長会、八P連の主張をどう各委員が判断したのか、そこを聞きたい」

 

 玉津教育長が反論する。

 

玉津教育長「教科書15種目のうち、2種目が調査員が推薦しなかった教科書が選定された。残り13種目は、何らかの形で教員の専門性に基づく調査報告書と複数推薦制を参考にした結論が出ている。教員、校長先生の思いも、十分選定に生かされている。何ら問題はない」

狩俣課長「今の考え方は誤認がある」

玉津教育長に再反論する狩俣課長。こうした県教委の姿勢を背景に、協議はさらに、育鵬社版に反対する委員に有利な情勢となっていく。

仲本委員長は、再び新聞の世論調査を持ち出す。

 

仲本委員長「沖縄タイムスの世論調査で育鵬社反対が56・2%。市、与那国町の教員が調査員推薦ではない教科書を採用したのに反対は61・3%。地域の実態も十分反映して尊重してほしい」

 

崎原、玉津両教育長が反論する。

 

崎原委員長「マスメディアを含めて不採択運動に走っている。世論、世論というが、世論づくりしているのは誰か。新聞が正論だと思ったら大変な間違いを犯す」

玉津教育長「公務員にとって大事なのは法律だ。世論ではない。世論は参考として聞くが、私たちは法に基づいてやることを確認しましょう」

 

協議はここで「多数決」の是非に再び戻る。崎原教育長が、多数決に反対する意見を述べる。

 

崎原教育長「合議制でやるなら協議に参加するが、委員が少ないと分かりながら多数決を押し付けるなら、脱法行為だ」

大田委員「市教委、協議会でも最終的には多数決だ」

崎原教育長「あれは、あれでいい。(傍聴人から大きな笑い声)条件が一緒だった。われわれは3人しかいない。条件が違う」

 

 崎原教育長の発言に大きな笑い声を上げる傍聴人。育鵬社版の不採択を求める団体のメンバーたちが会場に詰め掛けている。玉津教育長を罵倒する私語が多い。笑い声だけでなく、時おり拍手することもあり、傍聴マナーに問題がある。

 

 玉津教育長「合議制を希望している人がいる場合は、多数決はできない」

 

入慶田本委員長が「できないということがあるか」と声を張り上げる。

 

玉津教育長「3市町教委は独立した機関だ。その独立した組織が決めた結論を変える場合は、決めた本人たちが決める」

慶田盛教育長「何のためにこの会議を持っているのか」

崎原教育長「条件が違うので、採決を取る意思決定方法はやめてください。そうでないと、与那国に帰って協議事項を否決する。(多数決なら)拘束力がないからだ」

 

多数決をめぐる議論がさらに白熱する。

 

玉津教育長「協議会では、多数決という規約を決めてきた。きょうは合議でやるか、多数決でやるかを、多数決で決めてはいけない。何でこれを、みんなで集まったから変えようという話になるのか」

大田委員「始めに確認してスタートしている」

慶田盛教育長「採決の意見は曲げないと出席しているのに、どんな合議ができるのか」

 

狩俣課長が発言する。

 

狩俣課長「採択が異なれば協議をしなければならない。そこを確認してください」

竹盛委員長「多数決で諮るか、諮らないか決めたい」

大田委員「多数決で諮ってください」

崎原教育長「多数決を取るなら私は退席する。ルール違反だ」

玉津教育長「私も退席する」

狩俣課長「退席という選択はできるだけ避けてほしい」

崎原教育長「人間の少ないほうが不利だ」

狩俣課長「皆さんは協議をする義務がある。そこから逃げないでください」

崎原教育長「ここで決めたことには拘束力は何もない」

 

このタイミングで、狩俣課長が明言する。

 

狩俣課長「ここで話したことは拘束力がありますよ。先ほどの段階で、全体で協議することを確認したので、それを踏まえて、無償措置法13条4項で、そこで決めたことに拘束力がある。答申は拘束力はない。もう一度確認する。この違いは大事だ」

 

育鵬社を選定した協議会の答申には拘束力はないが、この日の協議には拘束力がある―。県教委は、答申に従わなかった竹富町教委の意向を支持する姿勢を明確にした。

 

やるべきことやった」 

 指導に従うと竹盛氏

 文科省が15日、県教委に対し、採択地区協議会の答申に基づいた教科書採択を求めたことについて、竹富町の竹盛洋一教育委員長は「どうしろという指導があれば従うしかない。やるべきことはやった」と淡々と話した。


 教科書問題について「複数の教育委員会で違いがある場合、どうなるか詳細が決まっていない。文科省も県も困っていると思う」と制度の問題点を指摘した。

 

 慶田盛安三教育長は「協議会の答申には拘束力がない。(文科省の指導は)おかしい」と困惑した表情。「玉津博克石垣市教育長が、竹富町を指導するようにと言っていたが、竹富町は全く違法行為をしていない」と強調した。

 

 与那国町の崎原用能教育長は、8日の協議について「あまりにも法を無視した強引な協議の持ち方が、そういう結果になった。県の指導も不当だった。(文科省の指導は)当然だ」と、文科省の指導を評価した。

 玉津教育長は、特に報道陣に対するコメントは出さなかった。


協議会の決定尊重求める

 8日の協議は合意不在

教科書問題は、育鵬社版を選定した八重山採択地区協議会の玉津博克石垣市教育長の主張を、文科省が全面的に認める形で決着する方向になった。協議会が適法な手続きで教科書を選定した以上、協議会を構成する各教育委員会の採択は、基本的に協議会の決定に基づいて行われるべきという判断を明確にしたといえる。


義家弘介参院議員が7、8の両日、文科省幹部に面会して取った「確認書」でも、文科省は同様の見解を示している。また、協議会の結論については「協議会には竹富町からも参加しており、そこで出された結論には法律的に整合性がある」と指摘している。

 

文科省は13日に開かれた自民党文部科学部会で、各教育委員会が協議した結果、協議会の決定とは異なる教科書を採択することは認めている。

 

しかし、その協議は「少なくとも各教育委員会で、どういう場で協議を行ったらいいか、それぞれの合意が必要」(同省幹部)。市教委、与那国町教委が合意の不在と無効を主張する8日の協議が、協議会の結論を覆せる「協議」に該当しないことは明らかだった。

 

今後は、3市町で採択した教科書が異なるという教科書無償措置法の違法状態の解消に向け、竹富町教委が採択をやり直し、育鵬社版を採択する手続きが必要になる。

 

同省幹部は「当該市町村教委(竹富町教委)が自ら変更の手続きをしないと終わらない。国、県が代わりに決めるということはできない」としているが、違法状態が継続する場合は、必要な是正措置を行う考えも示唆した。


全教育委員で「採択」できず

 協議の「違法性」強まる

 13日 に開かれた自民党文部科学部会と日本の前途と歴史教育を考える会の合同会議で、文部科学省幹部は「8日の協議に基づく内容による教科書採択がされるのであ れば、各教育委員会で再度、どういう教科書を採択するか決定する会議も開かないといけない」と述べ、教科書の採択は、最終的に各教育委員会を個別に開いて 決定しなくてはいけないという見解を示した。

 

 8日の3市町教 育委員による協議では、公民教科書について、育鵬社版の不採択と、東京書籍の採択まで決議していた。同省の見解に基づくと、前提とされた3市町の合意が得 られていなかった上に、権限のない採択、不採択まで決めていたことになり、協議の「違法性」がさらに強まった。

 

 文科省幹部は、教科書を一本化するために、教科書無償措置法で定められた「協議」について「協議と認めるためには、少なくとも各教委で、どういう場で協議を行ったらいいいか、それぞれの合意が必要であると考える」と指摘。

 

 8日の協議について「2市町から協議は無効であると異議表明が出されている。それを勘案すると、3市町の教委が協議の場としての合意を行ったという確認はできないというのが文科省の見解だ」と述べた。

 

 その上で、市教委と与那国町教委が育鵬社版、竹富町教委が東京書籍版を採択したことについて「採択の結果が8日の協議によって取り消されたということない」と述べ、育鵬社版の不採択は無効という考えを重ねて示した。

 

育鵬社版で一本化指導 

 教科書問題決着へ 「答申に基づいた採択を」 

 教科書問題で文部科学省は15日、 県教育委員会に対し、育鵬社の公民教科書を選定した八重山採択地区協議会の結果に基づいて採択を行うよう指導した。石垣市教委、与那国町教委はいずれも協 議会の答申に従って育鵬社版を採択しており、育鵬社版を不採択とした竹富町教委に対し、採択のやり直しを求めたことになる。同省が明確な見解を示したこと を受け、教科書問題は、3市町が公民教科書を育鵬社版に統一することで決着する見通しとなった。

 

 森裕子文科副大臣は同日の記者会見で「協議会の規約に基づいて正式に決定された答申は一つで、それに基づいて採択されるよう努力してほしい」と述べた。

 

 文科省の指導文書では、県が16日までに教科書の需要数(来年度から使用される教科書の数)を報告する必要があることを指摘。「八重山採択地区協議会の規約に従ってまとめられた結果に基づいて、採択地区内で同一の教科書を関係市町教育委員会が採択を行うよう指導を行う」ことを求めた。

 

 県教委は「文科省の指導を仰ぎながら方針を取りまとめる」としており、16日の記者会見で、竹富町教委を指導する方針を発表すると見られる。

 

 竹富町教委の竹盛洋一教育委員長は15日、取材に対し「どうしろという指導があれば従うしかない」と話し、文科省や県の指導に従う考えを示した。

 

 協議会は8月23日、育鵬社版の公民教科書を選定し、3市町教委に答申。同26日、石垣市教委と与那国町教委は答申に従って育鵬社版を採択したが、竹富町教委は育鵬社版を不採択とし、東京書籍版を採択した。

 

 3市町教育長は協議会規約に基づき、31日に再協議を行い、協議会として、竹富町教委に協議会の選定通り採択を行うよう要請。しかし竹富町教委は9月2日の臨時会で、育鵬社版の不採択とする方針を再確認した。

 

 8日には3市町の全教育委員が協議し、多数決で育鵬社版の不採択と東京書籍版の採択を決定。しかし中川正春文科相は13日、協議は無効という認識を示し、文科省幹部は、県教委を通じて教科書一本化に向けた指導を行う方針を表明していた。

 

協議会の決定尊重求める 

 8日の協議は合意不在

教科書問題は、育鵬社版を選定した八重山採択地区協議会の玉津博克石垣市教育長の主張を、文科省が全面的に認める形で決着する方向になった。協議会が適法な手続きで教科書を選定した以上、協議会を構成する各教育委員会の採択は、基本的に協議会の決定に基づいて行われるべきという判断を明確にしたといえる。

 

義家弘介参院議員が7、8の両日、文科省幹部に面会して取った「確認書」でも、文科省は同様の見解を示している。また、協議会の結論については「協議会には竹富町からも参加しており、そこで出された結論には法律的に整合性がある」と指摘している。

 

文科省は13日に開かれた自民党文部科学部会で、各教育委員会が協議した結果、協議会の決定とは異なる教科書を採択することは認めている。

 

しかし、その協議は「少なくとも各教育委員会で、どういう場で協議を行ったらいいか、それぞれの合意が必要」(同省幹部)。市教委、与那国町教委が合意の不在と無効を主張する8日の協議が、協議会の結論を覆せる「協議」に該当しないことは明らかだった。

 

今後は、3市町で採択した教科書が異なるという教科書無償措置法の違法状態の解消に向け、竹富町教委が採択をやり直し、育鵬社版を採択する手続きが必要になる。

 

同省幹部は「当該市町村教委(竹富町教委)が自ら変更の手続きをしないと終わらない。国、県が代わりに決めるということはできない」としているが、違法状態が継続する場合は、必要な是正措置を行う考えも示唆した。

 

事実認識で対立 県教委と玉津教育長

 13日に開かれた自民党文部科学部会では、教科書問題をめぐる事実認識で、県教育委員会と玉津博克石垣市教育長が真っ向から対立する場面があった。市教委は、県教委が事実関係を正確に把握しないまま、玉津教育長を批判する報道にあおられる形で「指導助言」を行ってきたと指摘している。

 

 玉津教育長は、育鵬社の公民教科書を選定した採択地区協議会の選定について「瑕疵(かし)はない」と再三主張してきた。

 

しかし県教委の狩俣智義務教育課長は、13日に開かれた自民党文部科学部会で、協議会委員を入れ替えた規約改正が「総会当日に出された。そのことで紛糾が始まり、ボタンの掛け違いのような状況が起こった」という認識を示した。

 

 これに対し玉津教育長は、規約改正について「1週間前に(各教育委員会に)出して、見ていただいて、それぞれの教委から委員の代表を一人出してほしいということも求めて、総会で決めた」と反論。

 

協議会委員に委嘱される教育委員を、各教委があらかじめ選んでいたことを指摘し、各教委との事前調整があったことを強調した。

 

 狩俣課長はまた、協議会での選定をいったん延期するよう要請した経緯について「協議会の信頼性が揺らぐ、とマスコミで大騒ぎになり、由々しき事態だと判断した。今の段階で採決して答申すると大変なことになると、まずは選定を延期していただいた」と説明。要請の背景に、玉津教育長を批判する報道の激化があったことを認めた。

 

 同部会で、8日の協議当日、玉津教育長に文科省との確認書を送った義家弘介参院議員は「全教育委員で採決したら、教育委員をたくさん持っている教育委員会の意向がすべて通って、ひっくり返ってしまう。民主主義じゃなくて数合わせだ。別々の議会で承認された教育委員が、一つの案件について全員で多数決しましょうというのは、基本的に論理破綻だ」と批判した。

 

9月17日(土)

県教委、具体策示さず 

 3市町に一本化要請 文科省方針と食い違い

教科書問題で記者会見する大城教育長(左)と狩俣義務教育課長=16日午後
教科書問題で記者会見する大城教育長(左)と狩俣義務教育課長=16日午後

 八重山の公民教科書問題で、県教育委員会の大城浩教育長は16日、県庁で記者会見し、3市町教育委員会に対し、速やかに同一教科書を採択して報告するよう求めた文書を15日付で送付したと発表した。教科書の「一本化」に向けた具体策は全く示さず、3市町教委に責任を押しつけた形。文科省は15日、県教委に対し、育鵬社版を選定した八重山採択地区協議会の結果に沿って採択するよう指導したが、県教委の文書に文科省の指導は反映されておらず、国と県の姿勢が食い違う事態になった。

 

中川正春文科相は16日の記者会見で「採択地区協議会のルールに基づいて話し合いで決着してほしい」と述べ、育鵬社版を選定した協議会の結論に従って検討するよう求めた。

 

また、教科書採択の現行制度について「今回の混乱の一因。注意深く検討したい」と述べた。

 

 16日は教科書無償措置法に基づき、県から国に対し、来年度から使用する教科書の数や種類を報告する期限。県は八重山の公民約600冊を除いた報告を15日に提出したが、公民については期限に間に合わなくなった。

 

今後について大城教育長は「3教委に対し、同一の教科書が採択されるよう、文科省と調整しながら助言したい」「引き続き3教委には努力いただくことを期待する」と、あいまいな答弁に終始。

 

「3市町にまた協議してもらうことになるのか」という報道陣の質問に「そういう形になる。一日も早くということ」と述べた。

 

文科省が15日、県教委に対し、協議会で「まとめられた結果」に基づいて採択するよう求めた指導文書について狩俣智義務教育課長は「(協議会の)答申以外の教科書で一本化することも、連立方程式の一つの解」と述べ、必ずしも育鵬社版の採択を求めたものではないという解釈を示した。

 

 8日に開かれた全教育委員による協議について、中川文科相はすでに無効との見解を示しているが、会見で大城教育長は「(中川文科相の見解には)いささか困惑している」と述べ、国の対応に不満をにじませた。

 

「無効主張は無効」

 教育長と教育委員長が抗争

 玉津博克石垣市教育長と崎原用能与那国町教育長が、育鵬社の公民教科書を不採択とした8日の全教育委員による協議を無効だとする文書を文科省と県教委に送ったことを受け、3市町の教育委員長は16日までに、両教育長の文書をさらに無効と主張し、東京書籍の公民教科書採択を認めるよう求める文書を文科省、県教委に送った。文書は15日付で、3教育委員長の連名。


 これに対し玉津、崎原両教育長は16日、3教育委員長の文書が無効だとする文書を文科省、県教委に送った。協議の有効性をめぐる3教育委員長と2教育長の対立は、果てしない抗争の様相を呈している。

 

 仲本英立石垣市教育委員長、竹盛洋一竹富町教育委員長、入慶田本朝政与那国町教育委員長の文書では、2教育長の文書について「教育委員会の議を経ておらず、公務文書としての機能を有しない」と主張している。

 

竹富町教委事務局が作成、送付した。竹富町教委側は15日、本紙取材に対し、文科省の指導に従う意向を示唆していたが、その後、姿勢を一転させた。

 

 一方、玉津教育長は、育鵬社版を採択した8月26日の市教委の議決、崎原教育長は、全教育委員による協議の条件を全会一致だとした今月8日の臨時教委の議決が、それぞれ文書の根拠と反論。

 

逆に3教育委員長の文書こそ教育委員会の議決を経ていないとして「公文書偽造に当たるのではないか」(玉津教育長)「脱法行為だ」(崎原教育長)と反発している。

 

県教委の狩俣智義務教育課長は16日の記者会見で、文科省が8日の協議を無効と判断したことについて「2教育長から出された無効を訴える文書が大きく影響している」と指摘した上で「教育委員長が、その文書こそ無効であると述べているので、状況は当時とは異なっているかも知れない」と述べた。


地元に広がる困惑 

 県教委のあいまい文書

 県教育委員会が16日、3市町教育委員会に教科書の一本化を求めるだけのあいまいな文書を出したことを受け、地元では困惑が広がっている。焦点の竹富町教委は「現段階では、一本化は非常に厳しい」(慶田盛安三教育長)と改めて強調した。


 慶田盛教育長は報道陣に「(県教委の指導には)私たちも期待を募らせていたが、こういう通知では、どうしたらいいのか」と途方に暮れた表情を見せた。

 

その上で「採択権は教育委員会にある。文科省は『協議が整っていない』と言っているが、これ以上の場を作ることが、私たちにできるのか」と述べ、8日の協議の有効性を主張した。

 

 市教委の玉津博克教育長は「県教委の文書には(採択地区協議会の結論に沿って採択するよう求めた)文科省の通知が一切考慮されていないと感じる」と指摘。「採択地区協議会の答申は生きているという文科省のお墨付きも頂いている。新たな話し合いの場は必要ない。私たちは答申に沿って採択しており、変えることはない」と強調した。

 

 市教委は16日、県教委に対し、公民教科書を育鵬社版として8月30日付で提出した教科書需要数の報告に変わりはないことを、改めて通告する文書を出した。

 

 与那国町の崎原用能教育長は「県教委は竹富町を指導するべきで(3市町への文書は)横暴だ。自分たちがボタンを掛け違えた責任を(3市町の)教育委員会に押しつけてきた」と不満をあらわにした。


文科省の指導無視 

 県教委、責任逃れの姿勢も

 県教育委員会は15日、3市町教育委員会に対し、公民教科書の一本化を求める文書を送付したが、文書では、育鵬社版を選定した採択地区協議会の答申に沿って採択するよう求めた文科省の指導は反映されていない。県教委が事実上、文科省の指導を無視し「暴走」を始めた形だ。3市町教委に再協議を求めるなど、地元に責任を押しつける言動も見え隠れしており、いたずらに決着を先延ばしするだけの状況に陥っている。


 県教委が3市町に送付した文書では、同一の教科書を採択し、速やかに報告するよう求めただけで「協議会の規約に従ってまとめられた結果に基づいて」採択するよう求めた文科省の方針については一切触れられていない。

 

 全教育委員による8日の協議は、中川文科相が「無効」という見解を示しているが、記者会見で狩俣智義務教育課長は「採決については有効だというとらえ方をしている」と強調。「何をもって有効と判断しているのか」と問われると「有効か有効でないかという判断はまず、当事者がすべきだ」と発言を一転させ、地元にげたを預けるような姿勢を見せた。

 

 3市町教育委員長が育鵬社版に反対していることを踏まえ「基本的には教育委員長が納得する形であれば、まとまったと見るということか」と聞かれた大城教育長は「基本的に教育委員会は、教育委員長が責任を有している」と指摘。3教育委員長の意向を重視するような考えも示した。

 

こうした県教委の姿勢について拓殖大の藤岡信勝客員教授は「文科省が竹富町に対し、育鵬社の教科書を採択するよう求めているのは疑問の余地がない。(県教委の文書は)内容的には文科省に反旗をひるがえしている」と話す。

 

県教委が3市町に再協議を促すような姿勢を見せていることには「協議は終わっており、文科省も、唯一正当な結論は採択地区協議会の結論だと言っている。(県教委の姿勢は)支離滅裂」と批判。「文科省が求めている16日までの教科書の需要数報告ができなくなった時点で、県教委の責任が問われることになるだろう」との見通しを示した。