9月17日(土)

逆転不採択の現場⑥

 多数決で育鵬社版不採択

 2教育長に怒号響く  教科書の議論深まらず

 「多数決を取るかどうか」を多数決で決めよう。竹盛委員長がそう提案する。

 

竹盛委員長「多数決で決めることを決したい人は手を挙げてください」

玉津、崎原両教育長は抗議し、委員や傍聴人の怒号が響く中、ついに退席する。挙手による採決が行われた。

 

竹盛委員長「協議は多数決で行うことが多数で決しました。不本意な結果ではあるが、委員の皆さんにはご協力をお願いしたい」

 

 ここで狩俣課長が、2教育長を説得するよう求める。

 

狩俣課長「お2人が抜けている。ぜひ説得をしてほしい。地区のエゴで話をするものではない」

慶田盛教育長「石垣市の教育長は、採択の意思は曲げないと言ってきている。合議する態度ではない」

具志堅委員「(与那国町教委は)多数決はしないように、ということ(が条件)だった」

竹盛教育長「もう期限切れが間近だ。八重山の子どもたちはどうなるのか。合議でやるべきだと思うが、合議は有り得ないと確認はできていると思う。一刻も早い採択を私は願う」

 

 2教育長を説得するために、協議は休憩に入った。再開後も2教育長は姿を見せない。

 

慶田盛教育長「教育長が退席するのは責任の放棄だ」

入慶田本委員長「冗談じゃない。子どもじゃあるまいし」

慶田盛教育長「全体の話が大事だ。退席した人の話は大事じゃない。勘違いするなよ」

 

2教育長に怒号が響く。育鵬社版に反対する委員からは、なお2教育長を批判する声が相次ぐ。竹盛教育長が、県教委の指導助言を求める。

 

狩俣課長「(2教育長に)もう開始しますよと話し、会議を再開することを確認して、それで席に着かなければやむを得ないと思う。この皆さんであれば、合意することは難しいですか。ここでも多数決になりますか」

 

竹盛委員長「もう1時間過ぎたが戻って来ない。県からの指導で、最後通告をして、出席しない場合はそのままいくということでよろしいですか」

異議はない。しかし玉津教育長のみ、席に戻ってきた。

 

玉津教育長「この場は多数決で決する場ではない。何でだめかというと、協議の場で、たとえある程度、話が煮詰まっても、最終的には古巣である教育委員会に戻り、再度話し合いをしないといけない。多数決で決することは反対だ。挙手はしない」

 

竹盛委員長「この件についてまた、教育委員会を開催すると、かなり時間がかかる。きょうのこの場を協議の場にしたい」

大田委員「各教育委員会で解決できなかったから、今日の場がある。この場で多数決で決めてほしい」

 

多数決を求める圧力は、さらに強まる。

 

玉津教育長「法的根拠もはっきりしない協議の場で、教科書無償措置法の決議を行うのは違法だという文科省からの情報も入っている」

竹盛委員長「今、違法な場という表現があった。県教委の皆さんもいらっしゃるが、違法な場か」

狩俣課長「そうではありません。協議の場です」

 

県教委は改めて、協議に「お墨付き」を与えた。玉津教育長は、さらに追い詰められていく。

 

玉津教育長「まだ私たちは、育鵬社、東京書籍の教科書について一切議論が深まっていない」

 

複数の委員が「何を言っているのか」と玉津教育長を怒鳴りつける。しびれを切らしたのか、大田委員は「もう決を取ってください」と叫んだ。

 

竹盛委員長「答申通り育鵬社とするか、別の教科書を選ぶべきか挙手で諮っていいですね」

玉津教育長「多数決が決まっていない状態であれば参加する」

入慶田本委員長「何様だと思っているのか。退席したのは責任の放棄じゃないのか」

竹盛委員長「(育鵬社を選定した)答申について異議あり、別のものを選ぶべきという委員の皆さんは挙手をお願いします」

 

育鵬社版に反対し、挙手したのは7人。育鵬社版に賛成して挙手しなかったのは玉津氏を含め4人にとどまった。竹盛委員長も育鵬社には反対だが、議長のため採決には加わっていない。

 

竹盛委員長「多数決で大変申し訳ない気持ちでありますが、育鵬社については不採択と決しました」

協議は終わりに近づいた。最後の議題に入る。

 

竹盛委員長「育鵬社に代わる教科書を採択したい。竹富町は東京書籍を挙げたが、推薦の中には帝国書院もある」

 

入慶田本委員長「従来使っていたのはどの社か」

竹盛委員長「東書(東京書籍)です」

入慶田本委員長「私はそれでいいと思います」

嵩田委員「東書を希望します。現在使われており、学びの連続性とか、的確な教材になっている」

 

大田委員「私は東京書籍を推したい。調査員が推薦していることが第一」

 仲本委員長「調査員の意見を大事にする観点からは東書と帝国。今、現在使用されているものは東書ということなので、東書でいい」

石垣(竹富町教委)委員・調査員の推薦があったということで、東京書籍を推したい。

慶田盛委員長「育鵬社のものは、沖縄の基地に触れられていないし、今問題になっている原発に関することも少ない。かえって大いに原発を勧めているように受け取られるところがある。(教科書採択は)多くの方々に理解される状況でないといけない」

 

調査員が推薦し、現在使用されている教科書だから、という理由で、ほとんど議論もなく東京書籍版に賛成意見が相次ぐ。

 竹盛委員長はここで「不採択」が決まったばかりの育鵬社の教科書について、委員の賛成意見を聞く。

 

竹盛委員長 答えにくいとは思うが、育鵬社を選定された委員の意見もお聞きしたい。

玉津教育長 誘導尋問はやめてください。

 

 しかし、市教委の石垣委員は立ち上がり「私は育鵬社を選んだ」と賛成理由を述べ始める。

 

 石垣委員「(育鵬社版の)調査員の報告に、天皇の写真が多いというのがあった。これは主観だ。国家、日章旗がどのように扱われているか見ると、他の教科 書は左側の片隅に、小さな字でしか扱っていない。(育鵬社版の)普天間の写真が小さいというのは、必要であれば教材研究して大きい写真を出せばいい。公民 は、至らないところもあるが、現代社会の見方、ヨコ軸とタテ軸の問題(の記述で)育鵬社のものはいいと思った」

 

 ここで竹盛委員長が、採択を提案する。

 

竹盛委員長「県からも指導を受けながら会を進めてきた。きょうこの場で採択をすることになった。東書を採択したいと思う委員は挙手をお願いします」

 

 賛成多数で東京書籍版の採択が決まった。

 

竹盛委員長「この協議会の場においては、賛成多数。合議ができなかったことは心苦しいところもあった。残念ながら与那国の教育長は戻られなかったが、時間の問題で、不在のまま進めることになった。教育委員全員で決まったことは有意義だったということで、閉めたい」

 

入慶田本委員長が「全日程を終了したので閉会します」とあいさつすると、育鵬社版に反対してきた傍聴人から繰り返し拍手が起こった。

    (了)

9月18日(日)

対立が対立生む構図 

 立場異なる国、県、市町

 16日 は教科書無償措置法に基づき、県教育委員会が文部科学省に来年度から使用する教科書の数や種類を報告する期限だったが、県は期限内に八重山地区の公民教科 書を一本化して報告できなかった。教科書問題で八重山地区は、全国でも前例のない違法状態に突入。文科省は石垣市教委と与那国町教委、県教委は竹富町教委 の立場を事実上支持しており、国、県、3市町の全面的な対立に発展しかねない深刻な事態になった。


 ▽具体策示さぬ県教委

 文科省は15日、県教委に対し、文書で「八重山採択地区協議会の規約に従ってまとめられた結果に基づいて、採択地区内で同一の教科書を関係市町教育委員会が採択を行うよう」指導することを求めた。

 

 「結果」とは8月23日、協議会が育鵬社版を選定した答申を指しており、森裕子文科副大臣もそのことを明言。事実上、文科省が県教委を通じ、育鵬社版を不採択とした竹富町教委に採択のやり直しを求める内容だった。

 

しかし県教委の大城浩教育長は16日の記者会見で「結果という言葉が何を意味しているのか、さまざまな解釈がある」と述べ、育鵬社版を不採択とした8日の全教育委員による協議の結果も「想定される」と強弁。

 

協議の無効を訴えた玉津博克石垣市教育等と崎原用能与那国町教育長の文書も「不適切」と断じるなど、文科省の指導とかけ離れた発言を繰り返した。

 

県教委は全教育委員による協議でも事実上、主導的な役割を果たしており、こうした言動を重ね合わせると、当初から「育鵬社版を不採択にさせる」意図を持って、3市町教委に指導助言を繰り返していた可能性も濃厚になる。

 

市教委幹部は「『私はジャッジ(審判)です』と言って、強引な指導を繰り返した」と県教委を批判する。

 

記者会見で大城教育長は、文科省の方針に「困惑している」と反発。事態の責任を取ろうとせず、地元に再協議を求めただけで、早期収拾に向けた具体策を何一つ示さなかった。

 

▽対立が対立生む

玉津教育長「竹富町教委が自分たちで教科書の選択までやって、東京書籍を採択したことは由々しき事態だ」

慶田盛安三竹富町教育長「石垣市教育長の話は許されない。非常識な話はするな」

 

8日の全教育委員による協議で、玉津教育長と慶田盛教育長は激しく応酬した。報道陣に対しても相互に批判を繰り返しており、教科書をめぐり、教育行政のトップ同士が真っ向から対決する事態。両者の関係悪化は、八重山の教育に暗い影を落としかねない。

 

町は開会中の9月議会で、30日で教育委員の任期切れになる慶田盛氏の再任を提案。慶田盛氏が今後も教育長として続投の見通しになり「教科書問題で、町は慶田盛氏を支持する姿勢を明示した」という観測も流れている。

 

「竹富町は違法行為をしていない」。再三強調する慶田盛氏の背景には、町や県教委の「お墨付き」があるという見方もある。

 

一方、開会中の市議会で、野党は教科書問題を集中的に取り上げ、玉津教育長を追及する方針。これに対し中山義隆市長は、玉津教育長を擁護する構え。

 

反目する国と県、県と市、市と町、町と町、与党と野党。仲裁約となるべき県教委の言動が、かえって混迷に拍車を掛け、対立が対立を生む構図になっている。


9月20日(火)

「領土や自衛隊教えて」 教科書問題で高橋氏講演  

 玉津改革に応援呼び掛け

 「守ろう!八重山の教育自治~どうなる子どもたちの教科書~」をテーマにした八重山の教育自治を守る会(鳩間昇会長)主催の教育講演会が18日、市健康福祉センターで開かれ、明星大教授で元埼玉県教育委員長の高橋史朗氏が講師を務めた。

 

高橋氏は「平和は積極的に獲得し、創っていくものだ。求められているのは旧来の反戦教育ではなく、現実を見すえ、どのように領土や自衛隊を教えたらいいのかということだ」と強調。

 

石垣市、与那国町教育委員会が採択した育鵬社版の公民教科書が、尖閣諸島問題や自衛隊について明確に記述している一方、他社の教科書があいまいな表現にとどまっていることを指摘。「八重山の中学生にふさわしい教科書はいかにあるべきか考えてほしい」と求めた。

 

 教科用図書八重山採択地区協議会の玉津博克石垣市教育長が、協議会委員の入れ替えや教科書の順位付け廃止などの改革に取り組んだことについて「平成2年 の文部省通知に基づいており、まっとうな制度改革だ」と支持。県教育委員会による委員の追加要請などの動きを「明らかに不当介入」と批判した。

 

 保守系の教科書採択に反対し、玉津教育長を批判する報道が激化している現状について「あまりにも異常。こんな報道は沖縄以外にない」と述べた。

 

 講演後、保護者代表の女性が演壇に上がり「育鵬社の教科書で勉強すると、子どもたちが戦争に向かっていくような考え方は、あまりにも偏っている。大きなバッシングが押し寄せているものの、負けないように玉津教育長を応援したい」と呼び掛けた。

 

9月21日(水)

全教育委員の協議無効

 与那国町教委が議決 委員長は辞表提出

 与那国町教育委員会(入慶田本朝政委員長、3人)は20日 の定例で、育鵬社の公民教科書の逆転不採択を決めた全教育委員による8日の協議について「協議は整っていない」と無効を確認する議決を行った。全会一致。 入慶田本委員長は委員会終了後、委員長の辞表を提出した。文部科学省はすでに、協議が無効だったという見解を示している。与那国町教委が改めて無効を議決 したことで、3市町が、8日の協議に基づいた教科書採択を行う可能性は、ほぼ消滅したと見られる。


 文書では、与那国町教委は「全委員一致による同意を前提に、13名全委員で協議する」ことが協議に臨む基本的事項だったとし、協議は「前提条件を無視し、県教委主導のもと強引に行われた」と指摘している。

 

 文科省は全教育委員による協議について、教科書無償措置法に基づき、教科書採択に向けた協議だと認めるためには、3教育委員会が個別に同意することが必要、という見解を示している。この日の与那国町教委の議決で、名実ともに、その条件が崩れたことになった。

 

 8日の協議をめぐっては、市教委の玉津博克教育長と与那国町の崎原用能教育長がすでに「無効」を訴える文書を送付している。この日の委員会では、崎原教育長の文書についても、業務報告の形で承認した。

 

 文科省が15日の指導文書で、事実上、育鵬社版を採択するよう求めたことを踏まえ、県教委に対し、文科省の指導に従うよう求める要請文を送ることも決めた。

 

 辞表を提出した入慶田本委員長は8日の協議で、育鵬社版の採択に強く反対した委員の1人。15日、市教委の仲本英立委員長、竹富町教委の竹盛洋一委員長と連名で文科省などに対し、協議は有効だと訴える文書を送っていた。

 

 与那国町教委は近く臨時会を開き、入慶田本氏の辞表を受理する見通し。

 県教委は16日付の文書で、3市町教育委員会に対し、同一教科書の採択を求める通知を改めて出し、文科省の指導文書も添付した。

 

市教委幹部は20日、この文書について「文科省の文書が添付されたということは、県教委が竹富町に対し、暗に育鵬社版の採択を求めているのではないか」という見方を示した。

 

 県教委義務教育課の担当者は取材に対し、今後の対応について「協議中で、具体的なことは言えない」と明言を避けた。


「臨時教委の結果尊重を」

 文科省発言の撤回も要求

※参加者全員で臨時教委会の協議採択の尊重などアピールし、団結がんばろう三唱した=市健康福祉センター
※参加者全員で臨時教委会の協議採択の尊重などアピールし、団結がんばろう三唱した=市健康福祉センター

9・8採択教科書を子どもたちの手に!住民集会(主催・同実行委員会)が20日夜、市健康福祉センターで開かれた。350人(主催者発表)が一堂に会し、3市町全教育委員による9月8日の臨時教育委員会の協議結果採択の尊重と文部科学大臣、副大臣の発言撤回と教科書無償措置法の再検証を求める決議を採択した。決議文は3市町教育委員会に送付される。

 

 住民集会には実行委員会を組織する20団体、元教育長、校長、教職員ら350人が集まった。

 

決議では、9月8日に開催した臨時教育委員会の協議結果採択が、八重山地区同一の教科書として尊重されるべきで、この会議を超える協議機関が存在しないことや文科省の不当介入に屈することなく、速やかに手続きを開始すること。文科大臣、同副大臣の「9月8日の協議は整っていない」とした発言の撤回と、採択結果を尊重し、教科書無償措置法の再検討を求めた。

 

 高嶋伸欽琉大名誉教授は、優越が無い教科書無償措置法と地方教育行政法の矛盾した法律を放置している文科省と自民党文教族に責任があることを指摘し、「介入は、文科省の責任を転嫁するアリバイ作り」と批判した。

 

 ゆい法律事務所の仲山忠克弁護士は全国2000人余の弁護士で構成する自由法曹団の常任幹事会で検討した結果を報告。「地方教育行法、教科書無償措置法の理念、法理から8日の臨時教育委員会の請託は正当だ」と述べた。

 

引き続き、各団体の代表が採択協議会の運営に関して「調査員の推薦しない教科書を採択した説明がない」「情報を公開すべきだ」、「独断で選んでいる」などリレートークを展開した。

 

 冒頭で、仲山忠亨実行委員長は「臨時教育委員会の採択は民主主義で決められ、県教育委員会も有効と認めている。この運動を全県に広め、一致団結して頑張ろう」とあいさつした。

 

 最後に参加者全員で団結がんばろう三唱で気勢を上げた。

 

9月23日(金)

教科書問題、足踏み状態

 文科省指導から1週間

 教科書問題は22日、文部科学省が育鵬社の公民教科書で一本化することを15日の文書で県に指導してから1週間が経過した。県教委、3市町教委とも、何の動きもないまま2度目の週末に入り、事態は足踏み状態が続いている。文科省の森裕子副大臣は22日の記者会見で「とにかく、地元の皆さんのご努力をお願いすることに尽きる」と述べ、引き続き県教委と3市町教委の調整に期待する考えを示したが、具体策には踏み込まなかった。

 

 文科省の指導を受け、事態の解決を迫られている形の県教委は、16日の記者会見で3市町の再協議を求めただけ。具体的な行動を起こしておらず、事実上、文科省の指導を無視した状態が続いている。市教委、与那国町教委からは、県教委の指導力、中立性を改めて疑問視する声が上がっている。

 

県教委が求めた再協議には、石垣市教委、与那国町教委とも応じない考え。さらに与那国町教委は20日、育鵬社版を不採択とした全教育委員による協議の無効を確認し、3市町が東京書籍版の採択で決着するという可能性はほぼ消えた。

 

市教委も30日に無効を確認する見通し。玉津博克石垣市教育長、崎原用能与那国町教育長とも、現実的な解決策は、採択地区協議会の規則に基づいて決定された育鵬社版の採択しかないという見方で「共闘」する。

 

一方の慶田盛安三竹富町教育長は、町議会一般質問で「県、国の指導を待つ以外にない」と「待ち」の姿勢に徹する方針を示した。

 

 市議会では週明け26日から一般質問に入り、与野党が玉津教育長を擁護、批判する立場から、集中的に教科書問題を取り上げる。

 

9月24日(土)

検証 玉津改革(上) 

「権限と責任」取り戻す  玉津氏、従来の方法「拒否」

調査員が国語の教科書を1点に絞り込み「採択教科書」として報告した2005年の答申書
調査員が国語の教科書を1点に絞り込み「採択教科書」として報告した2005年の答申書

 「順位付け」 「絞り込み」―。一般住民にはなじみがなかった教科書選定の専門用語が、長期間にわたり、新聞紙面を賑わせている。発端は、八重山採択地区協議会会長の玉 津博克石垣市教育長が着手した選定方法の改革だった。激しい賛否両論を巻き起こした「玉津改革」を振り返る。(敬称略)

 

 ※   ※   ※

 ▽教科書の選定方法

 「絶対、こんな方法で教科書を選んではいけない」。

今年5月、昨年の小学校教科書選定の資料を初めて見た玉津は、その「あいまいな内容」に驚いたと振り返る。

 

 教科書を選定する八重山採択地区協議会は、教科ごとに3人の現場教員を「調査員」に任命。約1カ月にわたって各社の教科書を調査研究させ、報告書を提出させる。委員は報告書を参考資料に、最終的には自らの判断で教科書を選定する仕組みだ。

 

 しかし、玉津が見た資料からは、調査員が事実上教科書を「選定」し、協議会は事後承認していただけという実態が浮かび上がった。

 

 調査員が作成し、昨年7月、協議会に提出した「答申書」。各社の教科書に1位から最下位までの順位を付けた上で、1位の教科書1点を「採択教科書」として絞り込み、報告する内容だった。

 

調査員が選定した「採択教科書」は、3市町の教育委員会で、全教科とも選定通り採択されていた。

 

 文部省(当時)の1990年の通知では、採択権者である教育委員会の責任が不明確になるとして、教職員が投票などで教科書を決定することがないよう求めている。

玉津は「『順位付け』も『絞り込み』も、教職員の人気投票と本来的には同じ」と指摘。従来の教科書選定方法は、文部省の通知に反していると感じた。

 

文部省通知についての玉津の解釈は、のちに反対派から「曲解だ」と批判される。

しかし文科省幹部は9月13日、自民党文部科学部会で「さまざまな調査研究があって、推薦とかいろんな意見があっても、それが教育委員会の決定を縛るというのは好ましくないと、従来から指導している」と説明。玉津の解釈を裏付けることになる。

 

▽調査員の説明責任

「順位付け」「絞り込み」は2005年の中学校教科書選定でも行われており、長年の慣習として当然視されてきたことがうかがえる。

 

玉津を不審がらせたのは、調査員がなぜ、こうした「順位付け」を行ったのかという説明が、現存する報告書に書かれていないことだった。玉津はのちに、調査 員 独自のコメントを書く欄を報告書に設けることになるが、従来の報告書では、そもそも調査員の「説明責任」も不十分だった。

 

05年当時の関係者のメモによると、調査員の委嘱状交付式で、当時の教育長はこうあいさつした。「(調査員の職務は)八重山採択地区に最適な教科書を選んでもらおうということです」。

 

調査員が教科書を選ぶなら、協議会の役割とは何なのか。「調査員が教科書を選ぶのはおかしい。協議会の権限と責任で選ぶ」。玉津の胸中に、改革への決意が芽生えた。

 

 一方、歴代教育長らでつくる「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」は、「子どもの実態をよく知っているのは教員。専門家が1ヵ月間も教科書を調 査研究した成果を尊重するべきだ」と批判。教科書は調査員の意見に基づいて選ばれるべきだと主張し、玉津と鋭く対立した。   (仲新城誠)

9月25日(日)

検証 玉津改革(中) 

 順位付け、絞込み廃止  「保守系の教科書」が焦点に

▽保守系の教科書

 「これまでの教科書選定には何の問題もなかった。なぜ変える必要があるのか」。玉津の改革が明らかになったあと、7月19日に市教委を訪れた歴代教育長は、口々に抗議した。

 

 「問題意識を持たない人には問題はない」。その場でこそ口にしなかったが、玉津は歴代教育長の姿勢に憤りをおぼえていた。

 

 「順位付け」「絞り込み」の弊害は何なのか。それは社会科の教科書選定で、保守系の教科書が調査員によって意図的に低い評価を与えられ、事実上、選定対象から外されるという現象が起きていたことだった。

 

 「現場の先生が教科書を絞り込むと(保守系の)自由社、育鵬社の教科書は、上位にはたぶん入らない。ランク外になる可能性がある」。沖教組の山本隆司中央執行委員長は8月16日の記者会見で述べた。

 

 保守系の教科書は、領土問題や安全保障問題を明確に記述し、自衛隊の役割を積極的に評価する。

 

 「軍事力に頼らない平和への努力や、憲法9条が果たしてきた役割がほとんど記述されていない」「憲法9条を改正する方向へ誘導するような内容」。

 

のちに調査員は、協議会に提出した報告書で、保守系の教科書に、こう「反発」することになる。平和教育に情熱を注ぎ、反自衛隊の感情が色濃い沖教組のイデオ ロギーと、保守系の教科書が相容れないのは明らか。こうした調査員の記述は、保守系の教科書採択に反対する革新系団体が発行したパンフレットの記述と同一 だった。

 

05年の中学校教科書選定でも、当時の保守系の教科書だった扶桑社版の歴史教科書は、最下位に順位付けされたことが分かっている。

 

 玉津は「沖教組は『絞り込み』は当然だというが、文科省の検定を通った教科書を、選定から除外する権限が調査員にあるのか」と、改めて従来の選定方法を疑問視する。

 

 市教育委員の徳松節子も、9月8日の全教育委員による協議で「調査員といえども、自らの主義主張がある。その中でしか調査はできない」と指摘。「調査員絶対主義」の従来の選定方法に警鐘を鳴らした。

 

 玉津は6月28日に調査員を委嘱し「順位付け」「絞り込み」の廃止を言い渡した。調査員の意見を吸い上げる新たな方法として、報告書に「推薦したい教科書」「特色のある教科書」を複数記入させることにした。

 

 ▽布石

 「順位付けがあれば楽です」

 「だめです。気持ちを入れ替えてください」

 

 順位付け廃止後、玉津と協議会委員の間で、このようなやり取りがあったという。委員が自らの責任と権限で教科書を選ぶという玉津の理想からは「委員の意識改革が最も大事」だった。

 

 その「玉津改 革」の根幹は、委員そのものの入れ替え。従来の委員は3市町の教育長、3市町の教育委員会担当課長、補助職員、PTA代表の9人。玉津はこのうち、教育委 員会担当課長、補助職員を外し、3市町の教育委員代表、学識経験者を加えて8人の新メンバーにすることを提案した。

 

 入れ替えの理由について「職員は多忙で教科書を読む時間はない。時間的にゆとりがある教育委員、学識経験者を入れることで、視野が広く、質の高い論議ができる」と説明する。

 

 6月27日の協議会総会は、従来の委員で開会し、規約改正を全会一致で承認。待機していた新委員が休憩中に旧委員と入れ替わり、改めて再開するという異例の方法で開かれた。

 

 この規約改正がのちに「強引」という批判を生む。委員の1人は「事前に説明がなく、総会当日に提案された」と不満をあらわにするが、玉津は「3教育委員会には1週間前に説明し、協議会委員となる教育委員を出してもらっていた」と反論する。

 

 会長である玉津の判断で、教科書の選定方法は無記名投票とすることも決定した。

 「玉津改革」は、保守系の教科書を選定するための布石ではないか―。規約改正を受け、一気に広がった観測。「協議会は会長の独善で運営されている」。竹富町の慶田盛安三教育長は報道陣の前で阻止する決意を表明し、玉津との軋轢(あつれき)が一気に表面化した。

 

 「調査員が推薦していない教科書がなぜ選ばれたのか」。協議会で育鵬社の公民教科書が選定されたあと、玉津は現在に至るまで、この言葉を投げつけられ続けている。

 

9月26日(月)

検証 玉津改革(下)

 高まる「育鵬社期待論」 教育長、信念通す

▽「育鵬社期待論」の背景

 「どのように教科書が選定されていたのか、これまで議員すら知らなかった」と率直に語るのは「尖閣諸島を守る会」の代表世話人で、市議の仲間均。中国が 尖閣諸島を「自国の領土」と主張し、経済力の拡大に合わせ、日本の実効支配に挑戦する動きを強めていることに危機感を募らせていた。

 

特に昨年の中国漁船衝突事件は、中国の意図を如実に浮き彫りにする出来事だった。

 

 仲間は「尖閣諸島は石垣市の行政区域だと、子どもにしっかりと教えるのが義務。これまでは自衛隊が国民を守っていることも詳しく教えていない。保守系とか革新系とかは別にして、きちんとした教育をするべき」と玉津を後押しする。

 

育鵬社、自由社版は、尖閣諸島が日本の領土であり、中国の主張には根拠がないことを明記する。育鵬社版に反対する沖教組八重山支部の上原邦夫執行委員長は「尖閣問題をきっかけに、領土問題を書いてある教科書がいいという意見が出てきた」と危ぶむ。

 

 育鵬社版には「沖縄の米軍基地と県民の負担について触れられていない」という厳しい批判もある。

 

育鵬社に投票した協議会委員で、市教育委員の石垣朝子は「至らないところもある」と認めながら「必要であれば教材研究すればいい」と、教員の努力で補うことができると指摘する。

 

 「公民とは公の一員として考え、行動する人たちのことです」。こう記述し、公共の精神を強調する育鵬社版を、玉津も高く評価していた。「子どもに世のた め、人のためという前向きな精神を教えることは重要だ。現在の日本では、自己中心的な子どもが大人になって、いろいろな問題を起こしている」。

 

 与那国町教育長の崎原用能は「いじめなど、今までの教育の問題点は先生の指導力不足ではないか。先生の言いなりの教科書採択ではなく、どうしたら子どものためになるかを考えないと」と訴える。

 

 年表の流用問題もあって早々に候補から外れた自由社版に代わり、協議会委員に広がった「育鵬社期待論」。尖閣諸島を抱える沖縄、八重山の厳しい国際環境と、深刻化する教育問題が選定の背景だった。

 

こうした空気は、育鵬社版に反対する委員を通じ、住民団体などに敏感に察知された。「戦争賛美の教科書が選ばれる」「子どもの『皇民化』につながる」―。住民団体とマスコミが一体になり、激しい反対運動が勃発した。

 

 ▽玉津教育長

「強引」か「豪腕」か―。改革を断行し、沖縄で初となる保守系の教科書採択につなげた玉津の行動力は、大きく評価が分かれる。

 

 玉津は石垣市宮良出身で、金沢大史学科卒業後、高校の事務職員に採用された。その後教員免許を取得、高校の教員に転じた異色の経歴を持つ。

 

 もともとマルクス主義に賛同していたが、1991年のソ連崩壊を見て考えを改め、世界観や人生観を再構築した。その後は保守的な言動で硬骨漢として鳴らし、八重山高校の校長時代に中山義隆市長の目にとまった。昨年10月に教育長に就任し、来月で1年を迎える。

 

 中山市長から第一に託されたのは学力向上。玉津は「児童生徒の学力を県内最高水準に引き上げるため、陣頭指揮をとる」と宣言し、今年度から学校、地域、家庭にそれぞれの取り組みを求めた「冠鷲プロジェクト」スタートさせた。

 

 ある校長は「学校現場には戸惑いもあるが、ようやく学力向上に取り組もうとする矢先に、教科書問題が起きた」と困惑。育鵬社版の採択が最終的に決まれば、反発する教員を中心に、学校現場で混乱が起こりかねないと懸念する。

 

 革新系の野党市議から、郷土の宮良を優遇するような言動があると批判されたり、職員との対立がうわさされるなど、一部から反発の声も絶えない。

 

野党は開会中の9月議会で、教育現場に前例のない混乱をもたらしたとして、史上初の「教育長不信任案」を提出する方向だ。

 

 「褒(ほ)マリ謗(そし)ラリヤ 世ヌ中ヌ倣(なら)イ 謗ラリヌ者ヌ 又役立チュガ」(褒められ、謗られは世の中のならい。謗られぬ者が何の役に立つのか)。玉津は、琉球王国の政治家、蔡温の作だという琉歌を引用するのが好きだ。

 

 「勉強は何のためにやるのか。勉強して、いい仕事について、世のため、人のためになるという大きな目的がある。いい教科書で高い志を持ってほしい」。教 科書選定の改革も、学力向上に向けた大きな改革の一歩だと強調し、信念を通す構え。官民挙げた根強い抵抗運動に直面しながら、玉津の改革は最終局面を迎え た。

 

9月27日(火)

「教科書議会」論戦スタート 

 野党、教育長の辞任要求  与党、委員長の責任追及

市議会で野党議員の一般質問を聞く仲本委員長(左)と玉津教育長=26日午前、議場
市議会で野党議員の一般質問を聞く仲本委員長(左)と玉津教育長=26日午前、議場

 石垣市議会(伊良皆高信議長)は一般質問初日の26日、与野党の4人が教科書問題を取り上げ、本格的な論戦が始まった。野党は、玉津博克教育長が教育行政の混乱を招いたとして「即刻辞任して責任を取るべきだ」(長浜信夫氏)と批判。これに対し与党は、全教育委員による協議を招集し、育鵬社の公民教科書の逆転不採択を図った仲本英立委員長の責任を追及した。一般質問では19人中14人が教科書問題を取り上げ「教科書議会」の様相を呈している。

 

 長浜氏と大浜哲夫氏は、八重山採択地区協議会会長の玉津教育長が進めた教科書選定作業の改革について「特定教科書の採択に向け、意図的に取り組んだとしか思えない」(長浜氏)などと疑問視。

 

 玉津教育長は1990年の文部省通知を引用し「採択は、採択権者者が自らの権限と責任において適正、公正に行う必要がある」と改革の理由を説明。

 

協議会で育鵬社版が選定されたことについて「国境を抱える地域の教科書として、さまざまな思いや希望を託した育鵬社が選定された。来年4月には胸を張って、この教科書を中学生に届けてあげたい」と高く評価した。

 

13日の自民党文部科学部会と教科書議連の合同会議に玉津教育長が出席したことについて、大浜氏は「政党の政治介入ではないか。教育長は職務専念の義務がありながら堂々と出席している。教育の中立性を自ら侵した」と怒りをあらわにした。

 

玉津教育長は「この会議には県教委の義務教育課長も呼ばれている」と反論。当日は年休を取得して出席し、自費で上京したことを明らかにし「公務には当たらない」と述べた。

 

与党の上門孝子氏は、市教委、与那国町教委の合意がないまま、全教育委員による教科書一本化に向けた協議を招集した仲本委員長に対し「プロセスに大きなミスがあった」と責任を追及した。

 

仲本委員長は「県教委の指導助言のもとにやった。協議には瑕疵(かし)はない」と主張。協議は有効だという見解を繰り返した。

 

育鵬社版の採択を多数決で決めた市教委の決定に従わない姿勢を見せたことについては「教科書の選定では、現場の声を大事にしたいという意思表示をした」と強調。育鵬社版は協議会の調査員が推薦せず、校長会やPTAも反対していたと説明した。

 

上門氏、砂川利勝氏は、全教育委員による協議を主導した県教委の姿勢について「不適切な指導助言で問題を大きくさせた」(上門氏)、「不当介入」(砂川氏)などと厳しく指摘した。

 

野党は最終本会議で玉津教育長の不信任案を提出する方針を固めている。与党には、これに対抗し、仲本委員長の不信任案提出を模索する動きがある。

 

野党発言に与党反発

 議場が一時騒然

 26日の一般質問で、教科書問題を追及した長浜信夫氏が、玉津博克教育長に対し「職員の気持ちは、すでにあなたから離れている」と発言した。これに与党市議の一部が「不穏当な発言だ」「根拠を示せ」と猛反発し、野次の応酬で一時、議場が騒然となった。

 

 仲間均氏は、長浜氏に発言の撤回を求め「与党としてこの問題を取り上げる」と迫り、伊良皆高信議長に預かりの形になった。

 

 自民党が文部科学部会で八重山の教科書問題を取り上げたことについて、長浜氏が「政治介入だ」と批判。これに対し与党は「野党が最初に(県教委に)要請に行ったじゃないか」と野次を飛ばすなど、この日は教科書問題で「場外乱闘」が目立った。

 

「離脱も一つの選択肢」 

 教科書問題で砂川氏

 砂川利勝市議は26日の一般質問で、教科書問題の決着が長引いていることについて、石垣市が八重山採択地区協議会から離脱し、独自に教科書を採択することも「一つの選択肢として考えるべきだ」と提案した。

 

 玉津博克教育長は「時期的な制約がないので、これからでも可能性としてはあると思われる」とした上で「今しばらく竹富町の判断を待ちたい」とした。

 砂川氏は「(教科書採択に関する)文科省の判断が意に沿わなければ取り組んでほしい」と述べた。

 

 砂川氏によると、複数の市町村で教科書採択が一致しなかった場合、文科省は1自治体の「離脱」を認めている。八重山採択地区協議会は市と町で構成しているが、玉津教育長によると、全国の例から、市は単独で採択地区を設けることができる。

 

9月28日(水)

政府、市教委の主張支持 答弁書を閣議決定

  無償措置法が優先

 八重山地区の中学校公民教科書問題で、政府は27日、3市町の教育委員会は、教科書無償措置法に基づいて、同一の教科書を採択すべきだとする見解を示した。政府として事実上、石垣市、与那国町教育委員会の主張を支持し、八重山採択地区協議会が選定した育鵬社版での決着を求めたことになる。また政府は同日、育鵬社版の逆転不採択を決めた8日の全教育委員による協議について、無効とする見解も改めて示した。

 

 義家弘介参院議員が14日に提出した質問主意書に対し、政府が27日、答弁書を閣議決定した。

 

 教科書無償措置法13条4項では、採択地区の市町村教育委員会に対し、協議して同一の教科書を採択するよう求めている。一方、地方教育行政法23条6号では、教科書採択の権限は教育委員会にあると定めている。

 

 石垣市教委、与那国町教委は無償措置法を根拠に、八重山採択地区協議会で3市町が協議した結果、選定・答申された育鵬社版を採択した。

 

一方、竹富町教委は地教行法を根拠に、独自に東京書籍版を採択し、育鵬社版を不採択とした。このため、3市町で教科書が一本化できない状態が続いている。

 

 答弁書では「(教科書無償措置法13条4項の)規定による協議の結果に基づいて、同一の教科用図書を採択すべきものと考えている」と指摘。事実上、無償措置法が地教行法に優先するとの見解を示し、市教委、与那国町教委の主張を裏付けた形になった。

 

 政府は同日、照屋寛徳衆院議員の質問主意書に対する答弁書で、市教委、与那国町教委の合意がないことを理由に、全教育委員による協議を改めて無効と判断。

 

無償措置法に基づく「協議の結果」が全教育委員による協議ではなく、八重山採択地区協議会の答申であることを確認したことになる。

 

義家氏は質問主意書で、各教育委員会は無償措置法の定める協議の結果に基づき、地教行法による教科書採択権限を行使すべきだとして、政府の見解をただした。

 

与党が異例の教育長批判

  「言動に注意を」と内野氏

 27日の市議会一般質問で与党の内野篤氏は、玉津博克教育長に対し「今一度、言動や行動には最善の注意を払っていただきたい」と批判した。「身内」の与党が公式に教育長を批判するのは異例。


 内野氏は「今回の教科書問題に関しても、大きな改革をしようとするときは、慎重かつ、ていねいな姿勢で臨んでいただきたい。決して独裁的といわれないよう、常に注意を払ってほしい」と指摘した。

 

与党、仲本氏の辞任要求 

 野党は玉津教育長批判

 石垣市議会(伊良皆高信議長)9月定例会は27日の一般質問で、与党の砥板芳行氏と野党の石垣三雄氏が教科書問題を取り上げた。砥板氏は、仲本英立教育委員長が竹富町、与那国町の教育委員長と連名で国、県に送った文書が、市教委の規則に違反していたとして、仲本氏に教育委員の辞任を要求した。


 仲本委員長ら3委員長は、育鵬社版公民教科書の不採択を決めた8日の全教育委員による協議について、有効だとする文書を国、県に送付。文書は市教委、与那国町教委については公印省略、竹富町教委のみ教育長決裁で公印を押した。

 

 砥板氏は、公文書には公印省略の場合も決裁が必要だと指摘、仲本氏に「公印省略に公印管理者(総務課長)の決裁はあったのか」とただし、仲本氏は「いただいていない」と認めた。

 

 砥板氏は「混乱に拍車をかけ、さまざまな規定違反をされたことを踏まえ、賢明な判断をしてほしい」と教育委員の辞任を要求。仲本委員長は「(委員長の任期切れとなる)30日の定例会まで待つ」と確答を避けた。

 

 野党の石垣三雄氏は、玉津博克教育長が、八重山地区採択協議会の規約改正を要請した6月24日の文書について、教育委員会の議決を経ていないと追及。

 

 玉津教育長は「教育長判断で事務処理が可能」と反論した。
 石垣氏はさらに、規約改正、調査員による各社の教科書の「順位付け」廃止、調査員の委嘱手続きについて「玉津教育長の横暴、独断の運営だ」と批判。

 

 調査員が事実上、教科書を選定する「1種絞り込み」が行われていたという玉津教育長の主張について、調査員経験者から「1種絞り込みは絶対にやっていない。教育長はうそを言っている」という証言が得られたと追及した。

 

 玉津教育長は、調査員が「1種絞り込み」していたことを証明する昨年の調査報告書を議場で提示し、理解を求めた。

 

 教科書問題で議論になっている、教科書無償措置法と地方教育行政法との関係については「無償措置法が優先」という見解を示したが、石垣氏は「教育長の思い込みで行政をやられたら大変だ」と批判。8日の全教育委員による協議の議事録公開も求めた。

 

教科書問題質問要旨

 砥板氏 8月23日の協議会の答申、26日の市教委の採択が唯一法的に有効だ。問題がこじれた最大の原因は県の不当介入で、教育委員協会の臨時総会が開催され、その決定が有効だという県のお墨付き、マスコミ報道だ。臨時総会の招集の議題は何か。
 仲本委員長 教育委員協会の議題は教科用図書採択の早期実現ということだった。

 

 砥板氏 それがどこで採択協議会になったのか。
 仲本氏 地区教育委員協会は、3市町の教育委員の13人で組織されている。そこには法的なものはない。任意団体だ。臨時総会はいったん終了して、13人による協議の場として設定した。

 

 砥板氏 あたかも教育委員臨時総会で一本化されたような報道がされているが(協議が行われたのは)臨時総会のいわゆる二次会だ。二次会で、なぜ教科書が採択されたのか。
 仲本 私たちは二次会とは申し上げていない。

 

 砥板氏 臨時総会後の二次会での決定は何ら有効性はないと断言できる。その後、教育委員長は与那国、竹富と連名で有効性について要請を行っているが。
 仲本氏 これは要請ということで出したが、先ほど前花部長からあったように職務権限のところで。3人の委員で連名で出したが、そこは公印省略だった。公印を押す場合は、教育委員会の合議のもとでしかできない。

 

 砥板氏 官公署には公印の規定が必ずある。公印省略に公印管守者、または公印管守助者の決済はあったのか。
 仲本氏 いただいていない。

 

 砥板氏 規則を無視した形で対外的に文書が送られている。由々しきことだ。教育委員長は、個人の判断で教委の意思を 対外的に出してはいけない。市の公印規約に違反していることが明白。委員長の任期が30日に切れ、辞意を伝えているということだが、教育委員として今後も 残るのか。
 仲本氏 30日の定例会まで待つ。

 

 砥板氏 教科書問題の最大の混乱となった教育長と委員長の対立、混乱に拍車をかけ、さまざまな規定違反をされたこと を踏まえ、賢明な判断をしてほしい。育鵬社は今年、全国で5万110冊採用されている。今回の採択地区協議会の答申、市教委の採択については、市教委は 堂々と胸を張って採用してほしい。

 

 石垣三雄氏 6月27日の採択地区協議会の総会で、突然規約全面改正案が提案され成立した。よこしまな狙いが隠されているとは誰も思っていなかったと思う。運営に対する意見や批判が出されたが、玉津は強引な運営でそれらを退けた。教育行政にあるまじき非民主的な手法。
 玉津教育長 6月27日の協議会総会で、規約をその日に出したと誤解されているが、事実はそうでない。6月10日の市教委の勉強会の中で、今回の規約改正 案を提示し、意見をうかがっている。その中で、規約改正された際には、教委を代表する委員1人を選出していただきたいということで、市教委は委員を選出し た。

 

 石垣氏 協議会の調査員の内諾をもらっていた人を差し替えた。理由は。
 玉津氏 内定という事実はない。

 

 石垣氏 事務方から打診を受け、了解したが差し替えられたと本人から聞いている。役員会の合議を経て調査員を決めたのか。順位付けの廃止、複数推薦制(の導入)は、採択協議会の役員会の合議を経てやったのか。
 玉津氏 調査員に委嘱状を交付した際に、役員会への説明はしていない。調査員についての業務内容は、会長の業務だと判断した。

 石垣氏 規約改正にしても、協議会の運営にしても、諮るべきところにきちんと諮らないで独断専行しているようにしか見えない。

 

 石垣氏 協議会では、教科書名を言わずに審議した。どうして教科書のよしあしが判断できるのか。
 玉津氏 協議会では、委員同士で討議をして教科書名を一本化するという方式ではなく、あらかじめ準備した評価シートに評価点や意見を書き込んで協議に臨 み、どういう観点から選定したのか意思表明する方式だった。種目によっては意思表明なしで評価シートに基づく投票のみという事例もある。各自の意見と結論 は協議のあとの投票と評価シートで表明されており、その集計結果で教科書は選定された。

 

 石垣氏 協議会で審議して決める意味が全くない。議論をして、自分が考えたこと、新たに分かったことを通して選定されるのが民主的な形だ。協議会のまさに形骸化だ。こんな形で子どもたちのための教科書が選定できるか。
 玉津氏 昨年の協議会は議事録がない。議事がないからだと思われる。かかわった委員もほとんど協議していないと証言している。それに比べると、立場によって賛否両論あると思うが、協議会のもてる範囲内でしっかり協議をした。

 

9月29日(木)

教育長反論に集中砲火

 野党「態度悪い」と怒号  教科書問題で攻防

一般質問の答弁のため壇上に向かう玉津教育長=28日午前、議場
一般質問の答弁のため壇上に向かう玉津教育長=28日午前、議場

 石垣市議会(伊良皆高信議長)9月定例会は28日、野党の3氏が教科書問題を取り上げ、八重山採択地区協議会会長の玉津博克教育長を集中攻撃。協議 会規約を改正した手続きなどを追及したが、玉津教育長が反論したため、野党から「態度が悪い」などと怒号が飛び交った。

 

 池城孝氏、宮良操氏は、協議会委員の教育委員を、市教委が5人全員が参加した自主研修会で選出したことを疑問視。「委員会の議を経て互選で選ばないといけない。ちゃんとしたルールを踏んでいない」(池城氏)と追及した。

 

 玉津教育長は「協議会のあり方については法に規定はない」と述べ、委員の人選は、規則で委員会を開催して決めなくてはならない「重要かつ異例な場合」には当たらないと反論。

 

 宮良氏は「那覇市は教育委員会で決議して人選している」と指摘したが、玉津教育長は「(人選の方法は)県内のみならず、全国でも千差万別だ」と説明。

 

 宮良氏は「こういうあなたの態度が一番悪い。みんな集まっていて、分かっているからやったというなら教育委員会はいらない。すべてがあなたの法解釈で動くのか」と声を荒げた。

 

 玉津教育長が、教科書選定の改革を平成2年の文部省(当時)通知に基づいて行ったと説明していることについて、小底嗣洋氏が「今は平成 23年だ。21年前の文科省の通達を、いまだに根拠として答弁するのか。大変な感覚だ」と批判。「文科省の通達を錦の御旗(みはた)のように言うのは、時 代錯誤も甚だしい」と攻撃した。

 

 玉津教育長は、平成13年、文科省が全国都道府県の教育長を集めた会議の中で、幹部が「平成2年に教科書改善の通知を出したが、改善が進んでいない」と改めて指導したと述べ「原点は平成2年の通知だ」と強調した。

 

 小底氏は納得せず「逃げの答弁は用意されていて、自らの判断は正当だと言わんばかりだ」と教育長の答弁を疑問視した。

 

 池城氏は「育鵬社の本は、県民の心からかけ離れている。これは県民の民意だ」と「民意」に対する玉津教育長の認識をただした。

 

玉津教育長は「協議会の委員は教科書を読み、調査員の報告書を読み、世論も考えながら選定したと理解している」と答弁。池城氏は納得せず「あなたは法も世論も否定している」と怒りをあらわにした。

 

教科書問題質問要旨

 池城氏 教育長は義家参院議員とどういう関係か。
 前花教育部長 義家参院議員とは、これまで一切面識はない。9月7日に初めて電話があり、初めて話した。


 池城氏 教育長は現場の教員を信用していないのか。
 前花部長 順位付けの廃止は教員を信用していないのではなく、教育委員会の採択権を侵害する心配があったからだ。複数推薦制というシステムは、教員を信用しているからこそ取り入れた。


 池城氏 政治的な中立を保つのがあなたの仕事。13日の文部科学部会に出席したのは教育委員会制度に違反していないか。
 玉津氏 県教委義務教育課、竹富町、与那国町教育長も呼んである、文科省の課長も出席するという情報があったので、何らかの解決を図る場になればと思い出席した。


 池城氏 あなたは協議会の規約改正も事前協議しなかった。
 前花氏 規約改正案は、事前に担当指導主事が竹富町の指導主事に手渡した。与那国町にはファックスで送信した。


 池城氏 各協議会委員の代表も選んでくれと言ったというが、人選はどのようにしたのか。
 玉津氏 市教委は全員集まった研修会の場で代表をお互いに推薦して合議で選んだ。


 池城氏 委員会の議を経て互選で選ばないといけない。手順を踏まないでやってきた。(育鵬社の教科書について)「文科省の検定を通った教科書は問題ない」と発言した。それでいいのか。「世論よりも法だ」言っている。どういう感覚なのか。
 玉津氏 すべての教科書に文科省と県教委がゴーサインを出していることを踏まえたうえで選定、採択をしている。全く問題はない。世論はもちろん大事だが、協議会の委員は教科書を読み、報告書を読み、世論も考えながら選定したと理解している。選定されたものを採択するという行政行為においては、法律をきちんと踏まえて判断するのが私の考え。


 池城氏 あなたは法も世論も否定している。世論よりも法というあなたの発言に対して、撤回を求めたい。市長は混乱を招いた原因は何だと思うか。
中山市長 私は教育行政に関しては教育長に任せている。協議会の決定に対して、3市町の採択が異なっている結果に対しては、それぞれの決定事項なので、私から、どうだということはできない。


 宮良氏 教科書問題で教育現場の混乱と影響は。
 前花部長 法と規則にのっとった教科書選定ができた。教科書選定と採択は法にのっとって粛々と進めており、教育行政の混乱はない。責任を取ることもない。


 宮良氏 最近、石垣島出身と言うのが恥ずかしいという人がいる。島のイメージが、リーディング産業の観光にも影響しないのか。発端を作ったのはあなたの行政運営だ。
 玉津氏 今回の改革の本当の狙いが、なかなかマスコミを通じては浸透していない。この議会を通じて、いろいろな意見をお聞きしたり、私どもの思いを伝え、市民の理解を得て、県民の誤解を解きたい。


 宮良氏 那覇市の教育委員会は、(採択地区協議会員を)人選する上で決議を経て派遣している。
 仲本教育委員長 (教育委員会で議決すべき事項は)重要かつ異例とあるが(委員の人選は)私はその通りだと認識している。

 玉津氏 教育委員が全員集まった場で(協議会の規則)改正案を提示し、委員をお願いした。私どもは(委員の人選は)重要かつ異例の場合ではないと判断している。教育委員長からも、一切反対の意見もなかった。みんなで協議して合意の上で委員1人を選んだ。何ら手続きに問題はない。


 宮良氏 こういうあなたの態度が問題だ。すべてがあなたの法解釈で動くのか。教育委員会の代表者は誰なんだ。委員長だ。何を考えているのか。
 玉津氏 教育長を指揮するのは(委員長ではなく)教育委員会だ。


 宮良氏 拡大解釈するなら教育委員会の合議はいらない。教育行政を私物化している。我田引水だ。自分が法律だと思っているのか。あなたの態度は教育長として不適当だ。唯我独尊の教育行政の進め方だ。

 

 小底氏 教育長は集中砲火を浴び、さぞ意気消沈していると思いきや、意気軒昂だ。このバイタリティは何か。強靭(きょうじん)な精神力か、図太さなのか。調査員による順位付けの廃止について、今一度皆さん方のご見解は。
 玉津氏 最大の根拠は平成2年の文部省の通知。採択権者が自らの権限と責任で適正かつ公正に行う必要があると書かれている。

 

 小底氏 21年前は、教職員のイデオロギー闘争が激しかったころ。日教組の政治的闘争が激しかったゆえに、文部省の通達で大いに通用する。しかし現状は、日教組の組織率低下は否めない。自分の都合のいいところだけを取り上げて、それを文科省の判断として議会の場で述べるのは時代錯誤だ。古い通達を持ってきて、議会の場で堂々と説明することが有り得るのか。
 玉津氏 平成13年1月の全国都道府県の教育長を集めた文科省の会議の中で、平成2年に教科書改善の通知を出したが改善が進まない。指導するということだった。原点は平成2年の通知だ。

 

 小底氏 未来に向かって発展しなければならない市の立場からは、あなたとはまともに議論する気持ちになれない。こんな手前味噌の解釈をして自らの論理を正当化するような教育長は、これからの将来を担う子どもたちにとってどのように映っているのか。

 

慶田盛氏を再任

 竹富町教育委員会(竹盛洋一委員長)は27日午前、定例会を町役場委員会室で開いた。定例会では教育長の互選が行われ、慶田盛安三教育長(70)の再任を全会一致で決めた。任期は10月1日から4年間。30日には教育委員辞令交付式が行われる。

 

9月30日(金)

「発言は誤解招く」 

 平良氏も教育長批判

 29日の市議会一般質問で与党の平良秀之氏は、玉津博克教育長の一般質問初日の発言について「誤解を招く」と述べ、考えを改めるよう要求した。一般質問では内野篤氏も玉津教育長に苦言を呈しており、野党だけでなく、与党からも玉津教育長に対する批判が相次いでいる。


 玉津教育長は一般質問で「私は市議会の承認を経て教育委員、教育長になった。私のバックには多くの市民の民意があると理解している」と述べた。


 平良氏は「市議会で玉津教育長を教育委員として承認した一人として、私は、子どもたちの学力向上に精力的に取り組むことを期待した」と指摘。中山義隆市長も、市長選では教科書問題を取り上げたことはないとして「今後、そのような解釈の仕方は改めていただきたい」とくぎを刺した。

 

過去の議事録存在せず

 透明度の低さ浮き彫り

 29日の一般質問では、与党の平良秀之氏ら3氏と前津究氏が教科書問題を取り上げた。平良氏は、過去の教科書選定作業で、八重山採択地区協議会の議事録が存在していないことを指摘。野党は育鵬社版を選定した協議会の議事録公開を要求しているが、従来は議事録そのものを作成しないなど、透明度の低い教科書選定作業が続けられてきた実態が浮き彫りになった。


 市教委によると、過去の教科書採択の資料で、現存しているのは2005年の中学校教科書採択と、昨年の小学校教科書採択。

 前花教育部長は「その中では議事録はない」と報告した。


 与党からは「これまでの教科書選定は天の声だった」「出来レースだった」と野次が飛び、平良氏は「採択の協議が見えない形になっていることも大きな問題」と、従来の採択方法を疑問視した。


 玉津教育長は報道陣に対し、過去の議事録が存在しないことについて「議事がなかったため」と推測。事実上、協議会は調査員(教員)の教科書選定を追認していただけだったため、議事録も作成されていないという見方を示している。


 一方で平良氏は、教科書問題の混乱の原因は教育長自身にもあると指摘。「教育長自身も、多くの方の意見にしっかりと耳を傾け、自分の行っていることが正しいのか考え、立ち止まる勇気も必要だ」と苦言を呈した。


 今年の協議会の議事録公開について玉津教育長は「協議会では、3市町の同一の採択が完了した段階で公表することを申し合わせた。協議会の申し合わせを尊重したい」と従来の見解を繰り返した。


 前津氏は、玉津博克教育長が、育鵬社の公民教科書採択に反対する集会の主催者側に、事前に録音許可を求めていたことを取り上げ「スパイ行為ではないか」と非難した。


 玉津教育長は「市民集会をすべて収録するという意味ではない」と説明。講演者の大学関係者に「学者として当然、(玉津教育長に賛成、反対の)両方の意見を聞いて話をしてほしい」と面会を要望したが聞き入れられなかったため「(講演者が)どういう報告をしているか確認する意味でやった」と述べた。


 前津氏は、13日の自民党文部科学部会に出席した玉津教育長が、指導主事が入った従来の協議会のあり方を「教育委員会の職員を置くような質の悪い協議会」と発言したことを指摘。玉津教育長は訂正してお詫びしたい」と謝罪した。

 

教科書問題市議会質問要旨

 平良氏 (採択が決まるまで八重山採択地区協議会の議事録を公開しないという)3市町の合意と、市情報公開条例はどちらに優位性があるのか。
 玉津氏 協議会で決めてあるので、当面は協議会の取り決めを優先したい。

 

 平良氏 過去の採択協議会における議事録はどうなっていたのか。
 前花教育部長 調べた結果では、昨年のものと2005年度の冊子は残っているが、その中では、議事録はない。

 

 平良氏 過去の議事録が存在しないということも大きな問題。形骸化している協議会の責任を明確にしようとした点は理解できる。しかし、教育長への指摘も真摯に耳を傾けるべきだ。自分の行っていることが正しいのか考え、立ち止まる勇気も必要だ。その部分が大きな混乱の原因の一つになっている。

 

 石垣氏 無用の混乱を招く八重山教育委員協会の臨時総会を何ゆえ開催したのか。
 仲本委員長 協会臨時総会は、県の委員長の通知を受けて開催したものだ。

 

 石垣氏 こういうのを「だまし討ち」というのではないか。総会をすると言って呼びつけておいて、いきなり別の協議に入るのはうそつきではないか。
 仲本委員長 3市町の教育委員13人がそろっているので、委員の中から一本化に向けて協議してくださいと提案があった。そのようにさせていただいた。

 

 石垣氏 どなたの提案か。
 仲本委員長 県義務教育課の狩俣課長の指導助言だ。

 

 石垣氏 あなたは臨時総会で、高校生の作文に感動した、勇気をもらったとあいさつしている。かたよった報道をう呑みにして、かつての恩師を批判する作文のどこに感動したのか。
 仲本委員長 その高校生が書いた民主主義のとらえ方に非常に感動した。

 

 前津氏 大川公民館で教科書の集会があった。主催者側に、市職員から録音していいかという話があった。スパイ行為ではないか。
 玉津氏 市民集会をすべて収録するという意味ではない。ある大学の先生がこの教科書問題について話をするというので、その学部長に連絡を取り、このような経過報告をする場合には、学者として当然、両方の意見を聞いて話をしてほしい、事前に私と意見交換してほしいとお願いした。しかし一切、私と連絡を取れずに当日を迎えたので、どういう報告をしているか確認する意味でやった。その大学と、教育に絡む契約をやっており、私どもが、その先生から指導を受けるための判断材料として指示した。

 

 前津氏 こういうことを答弁できるあなたに呆れた。恐ろしい。あなたの人間性、資質が問われている。自民党(文部科学部会)の議事録を取り寄せた。「教育委員会の職員を置くような質の悪い協議会ではなく、しっかりとした協議会にしようとした」と発言している。自分の部下である職員を「質の悪い」と公衆の面前で言う人間が教育者か。
 玉津氏 当日は私の出番がずいぶん遅れ、最後のぎりぎりの時間で呼び出された。当初の原稿も使えないままに話をしてしまった。事実であるなら、訂正してお詫びしたい。

 

 前津氏 玉津教育長は9月14日に竹富町職員を呼び出している。どういう意味でやったのか。そこまであなたは傲慢なのか。
 玉津氏 竹富町の教育委員長が(8日の協議は有効という)要請文を出した。資料を見せてほしい、説明してほしいと電話をさせていただいた。


 前津氏 自分の自治体の職員でも部下でもない。職員を呼び出すという行為自体、つけ上がっている。自分から出向けばいい。
 玉津氏 石垣市の教育委員長の名前を使った文書を竹富町教委の名前で出したのは、竹富町だけの問題ではなく、八重山の教育委員会すべての問題。竹富町は積極的に説明に来るのが筋だ。


 前津氏 お互いの自治体を尊敬しあうという上からは傲慢な答弁だ。態度、発言を見ると、八重山、県、日本の教育界の落ち度は、あなたのような人間が教育長に選ばれて、居座り続けていることだ。石垣市の恥さらしだ。情けない。


 仲間氏 暗礁に乗り上げている事態の解決策は。
 前花部長 答申に沿った育鵬社を(竹富町に)採択していただき、副読本のような形で東京書籍を購入するのは可能。

 

 仲間氏 教科書が変わると、何が現場で変わるのか。どういったことに支障をきたすのか。
 仲本氏 端的に言って、教科書が変わっても別に支障はない。学習指導要領に沿った本なので、そんなに支障をきたすことはないだろうと思う。

 

 仲間氏 教科書問題は白黒闘争になっている。天皇制、自衛隊、尖閣があるから(育鵬社版は)だめですよ、ではなく、教育委員は大所高所の立場から、真剣に話し合いをして解決してほしい。

 

10月1日(土)

「協議有効論」根拠失う 

 追い詰められた県教委

 8日に開かれた全教育委員による協議について、石垣市教育委員会が無効を確認した。与那国町教育委員会もすでに無効を議決しており、2市町教委の意思が正式な手続きで明確に示されたことになる。「無効の主張は無効」と訴える3教育委員長連名の文書も、仲本英立委員長が法的根拠のないことを認めたため、一角が崩れた。

 

協議を事実上主導した県教委は、県議会で「協議は有効」と主張。3教育委員長連名の文書を重要視する考えを示しているが、有効論の根拠を失い、追い詰められた形になった。

 

 文科省はすでに、育鵬社版を採択した八重山採択地区協議会の答申に従って、教科書を一本化するよう県教委を指導。一方で竹富町教委の擁護に固執し、指導に従わない県教委の姿勢が、問題を長引かせている最大の要因になっている。県教委の指導力や中立性に、改めて疑問の声が出そうだ。

 

 新委員長に石垣朝子氏  「誠意持ち一生懸命」

石垣氏(中央)を新委員長に選任した市教委定例会=30日午
石垣氏(中央)を新委員長に選任した市教委定例会=30日午

 石垣市教育委員会は30日の定例会で、仲本英立委員長の任期切れに伴い、後任の委員長に石垣朝子氏(66)を選任した。

 石垣氏は「教育委員会が信頼されるように心したい。誠意を持って一生懸命やりたい」とあいさつした。

 石垣氏は昨年10月から教育委員を務めている。

改革の「大義」アピール 

 玉津教育長、一般質問で論戦

市議会9月定例会の一般質問で、挙手して答弁に向かう玉津教育長
市議会9月定例会の一般質問で、挙手して答弁に向かう玉津教育長

石垣市議会9月定例会では26日 から4日間、一般質問で与野党の市議が教科書問題を集中的に取り上げた。八重山採択地区協議会会長の玉津博克教育長は野党の批判に対し、一貫して改革の 「大義」をアピール。用意周到な答弁で教科書採択の手続きに法的な問題がなかったことを改めて強調し、大きな山場を乗り切った格好だ。

 

▽批判に反論

野党は、玉津教育長の改革が、事前に関係者の十分な理解を得ないまま進められたとして「違法性」を立証しようとした。

「調査員制度の形骸化だ」(大浜哲夫氏)。

 協議会の調査員(教員)による各社の教科書の順位付けが廃止されたことを不当だと訴える野党。

 

「採択は採択権者が自らの権限と責任において適正、公正に行う必要がある」。玉津氏は文部省の90年の通知を引き合いに、逆に従来の協議会の審議こそ形骸化されていたと主張し、一歩も譲らなかった。

 

 協議会の委員入れ替えについては、宮良操氏が「那覇市は教育委員会の議決で人選している」と述べ、市教委が自主研修会で人選したことを問題視。

 

玉津氏は、協議会の委員については法律に何の規定もないとして「県内のみならず、全国でも千差万別」と答弁し、人選の方法に法的な問題はないと説明した。

 

 「教育の中立性を侵した」と批判された自民党文部科学部会への出席も、年休を取得して自費で出向いたことや、県教委の担当者も出席していたことを挙げ、問題ないという認識を示した。

 

野 党は、8日の全教育委員による協議が無効だと主張した玉津氏の文書について、教育委員会の議決を経ていないと攻撃。玉津氏は、育鵬社版を採択した市教委の 議決などが根拠になっていると反論し、逆に協議は有効だとする3市町教育長の文書こそ議決を経ておらず、法的に疑問があることを浮かび上がらせた。

 

▽無用の批判招く

一般質問を通じて野党は、玉津改革の「不当性」の強調に努めたが「違法性」の立証には挫折した形。「あなたは非常にがんこな方だ。逃げの答弁は用意されていて、自らの判断は正当だと言わんばかりだ」(小底嗣洋氏)と、さじを投げたような発言まで飛び出した。

 

ただ玉津教育長も27日、 議場で過去の調査員(調査委員)の報告書を説明する際に「調査委員という者ども」と口を滑らせ、調査員を蔑視(べっし)するような発言だと指摘された。一 般質問では過去の軽率な発言も掘り起こされ、改革とは無関係な場面で、与野党から無用の批判を招いた。教科書問題を機に反省が求められそうだ。

 

市議会の議論のあり方も問題を残した。答弁者である玉津教育長らを恫喝(どうかつ)するような一般質問や野次が目立ち、伊良皆高信議長は30日の議会運営委員会で「品位の維持に努めてほしい」と苦言を呈した。

 

「9月8日で協議終わった」

 県の指導助言待つと慶田盛氏

 教育長に再任した慶田盛安三氏は辞令交付後、記者陣のインタビューに答えた。教科書採択問題について、「私は9月8日の3市町教育委員で協議したことで終わったと考える。文科省の見解が日に日に変わるので戸惑っているが、県からの指導助言を待っている状況」と述べた。

 

 中川正春文科相が、育鵬社の公民を採択・答申した8月23日の八重山採択地区協議会と、育鵬社を不採択とし東京書籍の公民を採択した9月8日の3市町教育委員の全員協議について「どちらも合意を得ていないと解釈している」と発言したことを受け、慶田盛氏は「最初からとなると、課題としてきた規約や順位付けなどについて話し合わないといけない」とし、「我々は瑕疵(かし)を犯してはいない。採択地区協議会は諮問機関で、答申に拘束されることはないと考える。今は県の助言を待つ以外はない」と強調した。

 

 また、「今回のことで、多くの人が教科書採択に目を向けることになったのは良かったと思う」と語った。

 

 町として課題に挙げている学力向上については、「子どもたちの才能に差はないが、努力の差が大きいのではないか。子どもの学習意欲をどう高揚させていくかが課題」と説明。「子ども、教師、保護者というそれぞれの立場の課題を把握し、互いに自分の役割を果たしていくことで連携が生まれる。そのような連携を増やし、意見を交わしていきたい」とした。

 

慶田盛氏へ辞令交付

  教育長に再任

写真① 教育委員の辞令を受け取る慶田盛氏=30日午前、町長室
写真① 教育委員の辞令を受け取る慶田盛氏=30日午前、町長室

30日で竹富町教育委員会委員の任期満了を迎える慶田盛安三氏(70)は30日 午前、町議会9月定例会で再任された教育委員の辞令を川満栄長町長から受け取った。その後、町教育委員会で教育長の辞令交付も行われ、竹盛洋一委員長が辞 令を交付した。教育長に再任した慶田盛氏は「新鮮な感覚を養い、自己啓発を図っていきたい。よい子どもづくりを念頭に置いて、課題解決に取り組みたい」と 意気込みを語った。

 

 辞令を交付した川満町長は「豊かな心を持った人づくり、町づくりを目標に、慶田盛氏は委員として、教育長として手腕を発揮してきた。今後もその手腕が必要。持っている力を十分に発揮してほしい」と激励。

 

 竹盛委員長も「慶田盛氏は職員の皆さんと一緒に4年間頑張ってくれる。委員も一枚岩となって、竹富町の教育行政のために頑張っていきたい」と述べた。

 

 慶田盛氏は「課題は学力向上。現状を分析して、課題解決に取り組んでいきたい」と語り、一連の教科書問題については「互いに知恵を出し合えば、解決できないことはない」とした。

 

10月2日(日)

国判断で最終決着か

 県教委、違法状態是正せず

 教科書問題は9月30日、中川正春文科相が記者会見で「最終段階になったら、文科省として法律に基づいた結論を得たい。ルールに従ってもらう」と述べたことで、最終的には国判断で決着する可能性が出てきた。

 

 ▽法解釈詰める

3市町の採択教科書が異なるという違法状態の是正に向け、文科省は9月15日、育鵬社版を選定した八重山採択地区協議会の答申に従って教科書を一本化するよう県教委に指導。しかし県教委は、違法状態の是正に向けた行動を起こしていない。

 

このため文科省は、国として何ができるのか、省内で法解釈を詰めている段階だ。

文科省幹部は同13日の自民党文科部会で、地方教育行政法に基づき、国は違法状態に対して是正措置を行えると説明。ただ、国や県が市町に代わって教科書を採択することはできないという解釈も示している。

 

▽「答申は有効」

 教科書問題をめぐっては、中川文科相が国会答弁で、育鵬社版と東京書籍版の採択について「どちらもコンセンサスを得ていない」と発言した。会見では答弁の真意について「協議会の答申は、規則に従ってなされたと理解している。その後、個別の教育委員会(竹富町教委)が納得していないので、そこのところのコンセンサスを作らないといけない」と説明。

 

答弁が協議会の答申を無効と解釈する趣旨だったとする一部観測を打ち消し、答申が有効であることを確認した。

 

 協議会の答申は教科書無償措置法を根拠にしており、政府は、同法に基づいて教科書を採択するべきだとする答弁書を閣議決定。答弁書では、育鵬社版を不採択とし、東京書籍版を採択した8日の全教育委員による協議について、無効とする見解も示した。

 

「答申には拘束力はない」とする県教委、竹富町教委の主張ではなく、育鵬社版を採択した市教委、与那国町教委の主張を支持する立場であることが明確になっている。

 しかし県教委は開会中の県議会での答弁で①協議会の規約が直前に変更された②調査員(教員)が育鵬社版を推薦していない―などを理由に、協議会の答申を問題視。9月8日の協議が有効だとする見解を改めて示した。

 

協議会会長の玉津博克石垣市教育長は、こうした県教委の姿勢について「私たち(3市町教委)の不作為で教科書が決まらないような印象を与える言い方をしており、迷惑だ」と指摘。「(9月30日に全教育委員による協議の無効を確認したので)県教委の姿勢が変わることに期待している」と話した。

 

10月4日(火)

教科書問題の特別委否決

 野党「市教委の業務に疑義」  与党「一般質問で経緯明らか」

特別委設置に賛成して起立する野党(左側)と、反対した与党=3日午後、市議会
特別委設置に賛成して起立する野党(左側)と、反対した与党=3日午後、市議会

 石垣市議会(伊良皆高信議長)9月定例会の最終本会議が3日開かれ、教科書問題などの教育行政に関する調査特別委員会の設置は、野党の賛成少数で否決された。野党は「教育委員会の業務のあり方に数多くの疑義がある」(石垣三雄氏)などと特別委設置の必要性を訴えたが、与党は「一般質問でも数多く取り上げられ、明らかにされている」(石垣亨氏)と反論した。

 

 特別委設置は野党の前津究氏が一般質問中、動議で提案。教科書選定の経緯のほか、チャリティ公演のため市民会館を使用した宮良公民館の使用料が免除になった件について、解明の必要があると主張していた。

 

 賛成討論した石垣三雄氏は「一般質問で取り上げたが、解明できないさまざまな問題が浮き彫りになっている。9月8日の(全教育委員による)協議についても、すべての情報を明らかにして、事実が何かはっきりさせた上で、この問題を考えるべきだ」と述べた。

 

 石垣亨氏は反対討論で、野党が教科書を選定した八重山採択地区協議会の議事録公開を求めていることについて「議事録は近々、採択が整ったのちに公開される」と指摘。

 

宮良公民館の市民会館使用料免除については「公民館は自治体の基礎を構成している。趣味の活動や文化サークルと同列に扱うのは適当ではない」と正当性を訴えた。

 

表決では、特別委に賛成して起立した野党側は、与党側へ「市民が見ているぞ」などと口々に野次を飛ばした。

 

答弁訂正で紛糾

 賛成多数で承認

休憩中、答弁の訂正について調整する中山市長(左)と玉津教育長ら。手前右は野党=3日午後、市議会
休憩中、答弁の訂正について調整する中山市長(左)と玉津教育長ら。手前右は野党=3日午後、市議会

石垣市教育委員会は3日、教科書を選定した八重山採択地区協議会(会長・玉津博克教育長)に派遣する教育委員を人選した日時について、前花雄二教育部長が議会答弁した「6月10日の自主研修会」を「6月24日の定例会終了後」に訂正する申し入れをした。しかし野党が「訂正は認めない」と反発し紛糾。議会運営委員会、本会議とも表決に持ち込まれ、与党の賛成多数で申し入れを承認する事態に発展した。

 

 前花部長は一般質問で、協議会委員を入れ替える規約改正と、協議会に派遣する教育委員の人選を6月10日の自主研修会で行った、という趣旨を宮良氏ら3氏に答弁していた

 

市教委が9月30日の定例会で人選の有効性を確認した際、委員から答弁は誤りだとする指摘があり、事務局が再度事実を確認。答弁は記憶違いだったとして訂正を申し入れた。

 

 議会運営委員会(平良秀之委員長)が本会議を挟んで断続的に開かれ、訂正申し入れの取り扱いを審議。宮良操氏は「答弁のこの部分が訂正されたら、私の一般質問の8割がなかったことになる。議員の質問がこんな状況でいいのか。納得いかない」と強く抗議。石垣三雄氏は「なぜ、こういう訂正に至ったのか。間違っていたでは通らない」と批判した。

 

本会議で前花教育部長は「時系列に並べたときに、6月10日と申し上げたのが24日と判明した。そのことが協議会の規約に影響を及ぼしたとは考えていない」と釈明。

野党は答弁に納得せず、休憩を求めるなど一時紛糾した。伊良皆高信議長は、宮良氏の一般質問の議事録が出るのは12月議会前になるため、一般質問への具体的な影響は現時点で判断できないとして「訂正の申し出が出たら拒否できない」という考えを示した。

 

 宮良氏は、日付が24日に訂正されたことで、なぜ、その日の市教委定例会に人選を諮らなかったかという問題になると指摘。石垣氏は「教育委員会の業務のあり方が問われている。議会として訂正を行うべきではない」と強調した。前津究氏も、協議会運営で方針の修正や事後承諾が相次いでいるとして「こんなあり方でいいのか」と反発した。

 

玉津教育長は「(協議会に派遣する)委員の代表は、協議会で規約改正が成立しないと正式に選ぶことができない」と、人選を定例会に諮らなかった理由を説明。「(24日の)教育委員会定例後、場所を別に移して話し合いで決めていただいた」と述べた。

答弁の訂正に伴い、議事録の文言は関係議員と相談しながら訂正を図ることにした。

 答弁の訂正申し入れは通常、全会一致で承認しており、表決に持ち込まれるのは異例。

 

10月7日(金)

協議会議事録を公表へ

 委員名には慎重姿勢

来春以降使用される中学校教科書を選定した八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長は、協議会議事録の公開を委員に諮るため、来週にも協議会を招集する方針を固めた。議事録は3市町教育委員会が同一の教科書を採択したあと公開することを協議会で申し合わせているが、情報公開請求が相次いでいることを受け、改めて委員の考えを聞く必要が生じた。協議会で公開は承認される見通しだが、委員名の公開について、事務局の市教委は慎重な姿勢を崩していない。

 

 玉津教育長は6日、「隠し立てしているわけではないので、公開するのはやぶさかではないが、クリアしないといけない条件がある」と指摘。協議会で改めて同意を得る必要があるという考えを示した。

 

 公開の対象となるのは協議会総会、役員会、教科書を選定した会合の議事録。膨大な量になり、議事録に記された発言が正確かどうか、8人の委員に確認してもらう作業が必要になるため、協議会で公開が決定した場合でも、実際に公開できる状態になるのは今月下旬以降になる見通し。

 

 委員名についても公開を要求する声があるが、市教委は「委員の家族にも嫌がらせが及んでいるという報告がある。由々しき事態だ」(前花雄二教育部長)と、育鵬社版に対する反対運動の過熱を懸念する。

 

 前花部長は、委員名が外部に漏れている現状も含め「(関係者の)守秘義務の観点から検証する必要もある」と指摘している。

 

10月8日(土)

12月も「教科書議会」に

 野党が警告、玉津教育長非難

記者会見で玉津教育長を批判する野党連絡協議会の大浜哲夫会長(中央)ら=7日午後、市議会野党控え室
記者会見で玉津教育長を批判する野党連絡協議会の大浜哲夫会長(中央)ら=7日午後、市議会野党控え室

 教科書問題で石垣市議会の野党連絡協議会は7日、市議会野党控え室で記者会見し「12月議会も教科書採択問題が大きくクローズアップされる」(大浜哲夫会長)と、引き続き玉津博克教育長を追及する考えを示した。公開される見通しの八重山採択地区協議会の議事録など、新たな攻撃材料をそろえ、野党として12月議会も「教科書議会」になるという決意を示したものだ。

 

 野党連絡協が発表した声明では①採択協議会が教科書の内容を十分に審議していなかった②調査員(教員)による教科書の「1種絞りこみ」は客観的な証拠がない③玉津氏の協議会運営が独善的で、教育長としての能力と資質に欠ける―などと非難。

 

 教科書無償措置法と地方教育行政法の優劣関係について答弁が二転三転したことなどを挙げ、発言が行政執行者としての能力、教育長としての品位に欠ける―とした。

 石垣三雄氏は「協議会運営そのものの不当性が明らかになった。玉津改革の真相が、市民に明らかではない」と改革を疑問視。

 

 育鵬社の公民教科書を不採択とした9月8日の全教育委員による協議については、宮良操氏が「(有効だと主張する)県教委の立派な答弁を、心底支えたい」と強調するなど、一致して「有効」という見解を示した。

 

 宮良氏はまた、議事録が公開されていないことについて「情報公開は基本中の基本。資料がなければ作ってでも見せるべきだ。(議事録の非公開は)まるで戦前の行政だ」と批判した。

 

 池城孝氏は育鵬社版について「平和憲法に否定的な教科書。調査員が推薦しないのは当たり前だ。その教科書を選定した説明責任を求める」と批判論を展開した。

 

「1種絞り込みは事実」

 野党批判に教育長

 教科用図書八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長は7日、市議会の野党連絡協議会が「調査員が教科書を1種に絞り込んでいた客観的な証拠がない」と批判したことについて「1種絞り込みが行われていたことは事実であり、否定しようがない」と述べた。八重山日報社の取材に答えた。

 

 教科書無償措置法と地方教育行政法の優劣については、無償措置法に基づいて教科書を採択するべきだとする義家弘介参院議員に対する政府の答弁書を引用し「無償措置法が優先されるという説明に間違いはない」という認識を示した。

10月12日(水)

記者の目拡大版

 目立つ強引な論法

教科書問題は騒動の勃発以来、2ヵ月以上が経過したが、騒動の大きさの割には、実のある議論が進まない。育鵬社の公民教科書採択に反対する議論に、強引な論法が目立つことも一因だ。

 

 ▽1種絞り込みの是非

 過去の教科書採択では、調査員(教員)が各社の教科書を順位付けし、第1位の教科書を「採択教科書」として協議会に答申していたことが当時の資料で判明している。

 これを「1種絞り込み」という。順位付けが認められている県内他地区の調査員も、上位2~3社の教科書を推薦するのが常で、1種絞り込みまでは行っていない。好ましくないことは県教育委員会も認めている。

 

 しかし、育鵬社版に反対する人たちからは「調査員が教科書を1冊に絞り込んでいたというのはうそだ」と主張する声がある。根拠は「かつての調査員がそう証言した」からだという。調査員はいわば当事者であり、好ましくないとされる1種絞り込みを否定するのは、当然といえば当然かも知れない。少なくとも現存する資料は「1種絞り込み」が現実に行われていたことを示している。

 問題なのは、1種絞り込みによって、調査員が事実上、教科書を選定していたことが「うそだ」と否定されてしまうと、話がそこで終わってしまうということだ。このあり方が是なのか、否なのかという前向きな議論につながらない。

 

 ▽「実質的な論議なかった」

 育鵬社版の教科書を選定した8月23日の八重山採択地区協議会について「公民教科書の審議が数分ほどで、実質的な議論や討議がなかった」と批判する声がある。議事録が公開されていないのにそう断言できるのも本来は奇怪な話だが、その通りだと仮定しよう。実質的な議論がなかったことが悪い、というのであれば、9月8日に行われた全教育委員の協議で、東京書籍版を「採択」したときの議論はどうだったか。

 

 「調査員が推薦した教科書だから」「現在使用されている教科書だから」という理由で、やはり実質的な議論もなく、大した時間もかけずに東京書籍版に軍配が上がった。これは議事録の公開を待つまでもなく、会議そのものが公開されたから、傍聴しに来た人はみんな目撃している。同じように議論がないまま選定された教科書なのに、東京書籍版は善で育鵬社版は悪、という論法は奇妙だ。

 

 ▽調査員の推薦

 騒動の勃発当初から、現在に至るまで育鵬社版に反対する強力な根拠とされているのが「調査員が推薦していない教科書」だという指摘だ。これも冷静に考えてみるとおかしい。調査員の推薦がない教科書を選んではいけないというのであれば、最初から3市町が一緒になって調査員を委嘱し、調査研究だけでなく選定までお願いすればいい。調査員の選定を追認するだけの協議会は、廃止したほうが話が早い。

 

 結局、問題は「育鵬社版は八重山地区の教科書としてふさわしいのか、ふさわしくないのか」の1点に絞られるべきで、調査員が推薦したとか、しないとかは本質的な話ではないと考えられる。

 

 教科書のあり方に対する本質的な議論ではなく、現在の議論は単なる悪者探しに陥った。「玉津博克教育長が悪い」「協議会委員が悪い」「調査員が悪い」といういがみ合い。市教委の関係者は「こんな状況だと将来、協議会委員も調査員も、引き受ける人がいなくなる」と危ぶむ。教科書問題が保革の政争の具になっているからだ。(仲新城誠)

 

10月16日(日)

県、竹富町の「決断待ち」

 国判断1カ月

 教科書問題は、文部科学省が事実上、育鵬社の公民教科書を採択するよう県教育委員会を指導してから1カ月が経過した。国が明確な判断を示したことで、当初は早期決着に向かうとの観測も流れたが、県、竹富町教委とも国の指導に従わず、「違法状態をずるずると引き延ばしている。(関係者)」この間、国は国会議員の質問主意書に対する答弁書で、育鵬社版を採択した石垣市、与那国町教委の主張を全面的に支持する見解を明示。育鵬社版の採択やり直しに向けた県、竹富町教委の「決断待ち」の状態になっている。

 

 答弁書では①育鵬社版を選定した八重山採択地区協議会の答申は有効②東京書籍版を選定した全教育委員の協議は無効―と指摘。特定教科書を不採択に持ち込む意図で、個別の教委の合意もないまま「協議の場」を設ける強引な手法に警鐘を鳴らした形だ。

 

 県教委は、政府の答弁書が閣議決定されたあとも「全教育委員の協議は有効」という主張を崩していない。市教委関係者は「県教委は『協議には拘束力がある』と言って主導した立場上、振り上げたこぶしを下ろせなくなっている」と推測する。竹富町教委は「県教委の指導助言を待つ」としている。

 

答弁書では、採択地区内で同一の教科書を採択するよう求めた教科書無償措置法は、採択権が各教育委員会にあるとする地方教育行政法に対し「採択権の行使について特別の定めをしている」と述べた。

 

無償措置法が地教行法に優先するという見解を示し、地教行法を根拠に育鵬社版を不採択にした竹富町教委の主張を否定したことになる。

 

 9月に開かれた自民党文部科学部会と教科書議連の合同会議では、仮に竹富町教委の主張が認められた場合について「(全国の教科書採択は)オセロのように変わっていく」「普通に考えたら、竹富町のごね得と、県教委のごり押しだ」と批判の声が上がっていた。

 文科省が見解を明示しながら、同省、県教委、竹富町教委とも目に見える行動に出ず、1カ月が経過。関係者は「三者とも育鵬社版に批判的なマスコミを恐れ、身動きが取れずにいる」と見る。

 

市教委の問い合わせに対し文科省の担当者は、生徒に対する教科書の配布には支障が出ないよう対応すると回答しているという。

 

10月18日(火)

情報流出職員の告発を

 議事録報道で市与党 玉津氏「調査し判断」

協議会議事録が「流出」した問題で、要請文を玉津教育長に手渡す砂川氏=17日午後、市教委
協議会議事録が「流出」した問題で、要請文を玉津教育長に手渡す砂川氏=17日午後、市教委

中学校教科書を選定した8月23日の八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の議事録が一部マスコミに流出したとして、市議会与党の有志が17日、協議会事務局の市教育委員会を訪れ「流出させた職員を告発」することを要請した。玉津教育長は「どういうルートでデータが流れたのか、もう少し調査した上で判断したい」と応じた。

 

議事録と音声データは一部テレビ局の番組で放送されたほか、議事録の全文は作家、目取真俊さんのブログにも14日付で掲載された。

 

要請文では「手続きを経ずに会議録が流出したことは、公平性に欠けるとともに、市職員の公僕としての守秘義務違反にも問われかねない重大な問題」と指摘した。

 

 有志の会は公明党と議長の伊良皆高信氏、石垣涼子氏を除く与党9人で組織。代表世話人の砂川利勝氏は「今後、市の行政でも機密事項はなきに等しくなり、危機管理能力が問われる。教科書問題とは別の話だ」と厳しく指摘した。

 

仲間均氏も「職員は守秘義務を前提に勤務しないといけない。破った人は裁きを受けるべきだ」と求めた。

 

市教委によると、テレビ番組とブログで紹介された議事録は市教委が作成したものと同一だと思われる。議事録は音声データと文字データで担当職員のパソコンに保存されているほか、印刷した紙も存在する。

 

印刷した紙は確認用として協議会委員にも配布されているが「流出」した議事録とは細部が異なっている。

有志の会はこの日、中山義隆市長にも要請文を提出した。

 

10月19日(水)

「教科書見たと言えばいい」 発言存在せず

 議事録に該当なし

教科書問題で、八重山採択地区協議会会長の玉津博克石垣市教育長が委員に対し「教科書を見ていなくても見たと言えばいい」と発言したと一部マスコミが報道したことについて、玉津教育長は18日、八重山日報社の取材に対し「そのような発言はしていない」と否定した。ボイスレコーダーを書き起こした議事録にも該当する発言は存在しないという。

 

協議会は8月23日に教科書を選定したが、当日の議事録が内部から流出したと見られている。

 

それによると、委員の1人が玉津教育長に対し「会長が、前の時に、教科書を見なくても見たといえばいいんですよと話したでしょう」と発言した。

 

市教委によると、玉津教育長の「発言」があったとされるのは7月19日に開かれた協議会の連絡会。委員が「教科書は全部はどうせ見れない」と訴えたのに対し、玉津教育長は「建前上、全部の教科書は見るということでの話し合い」とした上で「裏の話で、全部は見れないということであれば…」「でも実際には、という話であればと言うことで…」と発言した。

 

ただ、玉津氏から「見たと言えばいい」と委員に促す発言はなかったという。

委員の1人は取材に対し、このやり取りについて「教科書を読んでいなくても、読んだと言えばいいという意味に受け止めた」と話している。

 

市教委は7月19日の協議会連絡会についても、議事録を公開する準備を進めており、18日までの検証で、玉津教育長に「見たと言えばいい」という発言はなかったことを確認したとしている。

 

8月23日の協議会では、公民教科書の選定後、数学教科書の審議を中断して、突然、委員の発言が飛び出した。議事録では、玉津教育長が「今の話は別です。発言ストップ」と注意し、論議を軌道修正しようと努力している様子も記録されている。

 

玉津教育長は、委員の発言について「7月19日に私からそういう発言があったと思い込んで、その発言を8月23日の議事録に残したいという意図があったのではないか。なぜ、そうしたのかは分からない」と話した。

 

玉津教育長の発言を指摘したとされる委員は、取材に対し「教科書の中身を精査した上で選定してほしいというのが私の立場だ。育鵬社の公民教科書は中学生にはそぐわない」と訴えている。

 

10月21日(金)

「歴史観」めぐり対立

 教科書問題・流出議事録  調査員推薦でも衝突 

中学校教科書を選定した8月23日の八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)の議事録が「流出」し、委員間のやり取りが明らかになった。歴史、公民教科書で「正しい歴史観」や「調査員(教員)の推薦の有無」をめぐって、委員同士が激しく衝突した様子がうかがえる。

 

▽「正しい歴史観」

委員「正しい歴史観を教えていきましょうということです」

玉津会長「正しい歴史観とか、本当の歴史はというのは、それを言ってはいけないと思います」

 

沖縄戦で、日本軍が県民に加害行為をしたと明記した帝国書院版などと、米軍の猛攻で県民が集団自決に追いやられたとする育鵬社版。事実上双方を念頭に、どちらが八重山の教科書にふさわしいのか、委員が応酬した。

 

崎原用能副会長(与那国町教育長)「歴史を勉強するのは難しい問題。裁判所で闘争するものでもない。裁判官は歴史の専門家でもない。こどもたちへ先生の主観を教えてはいけない」

 

委員「事実をとらえた教科書を選びたい」

崎原副会長「摩文仁から飛んだ婦人の皆さんは、恐らく渡嘉敷や慶良間で集団自殺した人間よりも多い」

 

ここで「正しい歴史観」をめぐり、玉津会長と育鵬社版に反対する委員が衝突。冒頭のやり取りが起きる。委員はさらに反論した。

 

委員「子どもたちへ正しい事実に基づいた歴史観を植え付けていく、育てていくことによって、ひいては大人になったときに正しい歴史観につながっていく」

 

崎原副会長「あったことは教えてもいいけれど、これが事実だよと先生が言うべきではない」

 

慶田盛安三副会長(竹富町教育長)「集団自決に関しては大きな問題ですから、これを忘れてはいけない。07年の11万6千人が集まった県民大会。41市町村で行われた意見の採択などは、こういうふうなことを考えてみても…」

 

集団自決に対する軍命の有無をめぐり、水掛け論のような意見交換が続いた。

社会科の教科書選定に先立ち、玉津会長は「できるだけ教科書名を、名前を言わないでの推薦をお願いします」と提案。意見交換は具体的な教科書名を出さずに進んだ。

無記名投票の結果は、帝国書院版4票、育鵬社版3票、東京書籍版1票だった。

 

▽調査員の推薦

公民教科書をめぐっては2委員が「公民と道徳との横断的な内容」「思考力、判断力、表現の育成」という観点で選んだ―と述べたほかは発言がなかった。無記名投票の結果は、育鵬社版5票、東京書籍版3票だった。

 

数学教科書の選定に入ろうとしたとき、委員の1人が「決まった公民のことですが…」と異論を提出。玉津会長は「議論を蒸し返すことになる」と難色を示すが、そのまま、調査員の推薦をめぐる議論が始まった。

 

委員「(調査員の報告書で、育鵬社版は)あまりにもマイナス面が大きく書かれているのに、出てくるのがおかしい」

 

崎原副会長「調査員の資料の文書と、私に送られてくる抗議文と内容が全く同じなんです。これを、私は公平な判断とは見ていない」

 

崎原副会長は、調査員の報告書が、他の資料の引き写しではないかと指摘した。これに他の委員が猛反発した。

 

委員「調査員に失礼です。どういうふうに調査員から漏れたのか、外部からどのように指導されたのか分かりませんけど、調査員も一生懸命研究してきたことに対して、非難した言葉は撤回してほしい」

 

調査員の推薦をめぐる議論は、さらに白熱した。

 玉津会長「調査員の順位付け、あるいは拘束性を持たせる、こういうことは絶対廃止するということで、協議会を始めたわけです」

 

  委員「順位付けは良いと言っているでしょう」

玉津会長「順位付けについては、良いとは誰も言っていませんよ」

崎原副会長「1種絞り込みはやらないということで、投票していますから」

委員「あまりにもマイナス面が多いから…」

崎原副会長「内容を見てください。すばらしく指導要領に全部合っていますよ」

 

 最後は玉津会長が「最初に(議論が)終わっていることですので、蒸し返すことになる」と交通整理し、数学の投票に移った。

 

10月27日(木)

石垣・与那国教委 歓迎  孤立深める竹富町

 教委間に溝 解決策見えず

保守系教科書選定反対する市民ら=8月23日(市教育委員会玄関前)
保守系教科書選定反対する市民ら=8月23日(市教育委員会玄関前)

中川正春文科相が公民教科書の無償給与対象となることを明言した石垣市教委は26日、「当然だ」などと歓迎した。与那国町教委は「竹富町も同一の教科書に」と改めて教科書の一本化を求めた。一方、東京書籍版の統一採択を求める竹富町教委には衝撃と困惑が広がった。双方の溝は深く、解決策は見えない。

 

市教委の前花雄二教育部長は「当然の法解釈であり、正しい判断。文科相の答弁を歓迎する」と強調。「私たちは法律の通りに粛々とやってきた。法解釈は間違っていなかった」と笑顔を見せた。

 

与那国町教委の崎原用能教育長は「法律(教科書無償措置法)の趣旨からすると、竹富町も同一の教科書にしてほしかった。自分たちだけのわがままが通るのでは、八重山の教育界はおかしくなる」と竹富町の姿勢を疑問視。「県が指導を放棄したことが問題だ」とも述べ、事態を混迷させた県教委の姿勢を批判した。

 

八重山2市町教委から孤立を深める竹富町教委にも文科相発言は、直ちに伝えられた。

 

慶田盛安三教育長は「マスコミからの連絡で(大臣発言を)聞いた。きちんと確認していないので町教委としての方針は出せない」とした上で、「町としては(東京書籍版を採択した)9月8日の全員協議会の結論を尊重する姿勢に変わりはない」と主張の堅持をアピールした。

 

さらに、町教委の方針は県教委の指導と助言を待ってから出したいと強調。「町の行政運営に何ら誤りはない。国から何の指導もないままに、町が教科書の予算措置をすることは考えられない。これは予算の問題ではない。文科相の方針は国の最終決定ではないのではないか。現状では行政訴訟などは考えていない」としている。

 

 法治国家の否定

  新しい歴史教科書をつくる会前会長の藤岡信勝拓殖大学客員教授は26日、「竹富町を特定の法律から除外することは法治国家の否定、採択制度の崩壊につながる」と批判。


藤岡氏は「法律では協議して同一の教科書を採択することになっており、竹富町は法律違反を公然とやっている。国が竹富町に命令を出して(育鵬社版の採択を)強制するしかない」と指摘。


その上で、文科省の判断について「国がお金を出す、出さないという問題に矮小(わいしょう)化し、竹富町が法の網から勝手に抜け出すことを容認している」と述べ、違法行為の放置につながるという見方を示した。


10月28日(金)

「東書」版採択署名活動へ

 住民の会 文科相発言に抗議

「軽はずみで絶対許せない」など、中川文科大臣発言に批判が続出した会見=石垣市役所
「軽はずみで絶対許せない」など、中川文科大臣発言に批判が続出した会見=石垣市役所

 竹富町への公民教科書無償給付を停止するとの中川文科相発言を受け、子どもと教科書を考える八重山地区住民の会(村田栄正ら共同代表)は27日、発言への抗議と撤回を求める声明を出した。住民の会は近く市内で、八重山地区の公民教科書に東京書籍版採用を求める署名活動とチラシ配布を展開する。声明文はこの日、中川大臣あてに送付された。

 

 声明で、中川大臣発言は「一般法と特別法の観点からも誤っている」と指摘。県教委の見解も踏まえ、東京書籍版が採択された全員協議会(9月8日)が合法的な決定であると主張する。

 さらに発言は、竹富町の教科書採択権を認めてはいるものの、東京書籍版を自治体が購入して生徒に配布するのは、国に対し義務教育の無償化を定める憲法26条に違反すると断じている。

 石垣市役所で会見した村田共同代表は「軽はずみで、絶対許せない発言だ。国に代わり町が教科書費用を負担するのは問題。自治体が費用負担を拒否したらどうなるのか」と疑問を投げ掛けた。

 出席者からは「試合の途中で突然ルールを変えられた」「私たちを愚ろうしている」「日替わり発言でそのつど(関係者が)振り回される」など、文科相発言に批判が続出した。

 地域の関心を高め、八重山地区で東京書籍版の統一採択を実現させるため、住民会は準備が整い次第、市内で署名活動とチラシ配布を行う。さらに、全国的な連帯を図るため、

 マスコミ大手への働き掛けも強化するという。 
 大浜敏夫事務局長は「保護者を含め、住民の力を合わせて、一日も早く問題の解決を図りたい」と強調した。