2016年

12月

08日

日本が「奄美・琉球」の…

 日本が「奄美・琉球」の世界自然遺産登録を目指していることに絡み、中国紙が「琉球は日本固有の領土ではない」とする専門家の論文を掲載した。世界遺産登録の範囲が将来、尖閣諸島に拡大されることを警戒する中国の妨害工作だ。石垣市が2013年の海洋基本計画で尖閣の世界遺産登録を打ち出したことへの「意趣返し」と見られる◆しかし県は6日の県議会代表質問で「一専門家の論文に過ぎない」と問題視しなかった。反論しないということは黙認したも同然だが、そんな安易な姿勢でいいのか◆尖閣を抱える石垣市もトーンダウンが目立つ。海洋基本計画の策定から3年、尖閣の世界遺産登録に向けた具体的なアクションが全く見られない。「奄美・琉球」登録への悪影響を懸念していると見られるが、そうしたリスクは最初から認識すべきだった◆尖閣を守る最大の対抗策は石垣島への自衛隊配備だが、防衛省の打診から1年、市はいまだに賛否を明らかにしていない。この問題は中山市長の就任以前から浮上しており、市長も当然、政治家としてそれなりの考えを持っているはずで、これほど時間をかける理由が不可解だ◆中山市長が年内に表明する可能性が取り沙汰されているが、受け入れるにせよ拒否するにせよ、遅過ぎの感は否めない。

2016年

11月

18日

「今度○○さんを紹介するから」と…

 「今度○○さんを紹介するから」と言われ、何気なくインターネットで○○さんの名前を「ググって」みたところ、フェイスブックのページが出現。写真やら出身地やら学歴やら、さらには日々の生活ぶりまでアップされていて、会う前から○○さんをすっかり分かったような気になってしまった◆つい20年前だったら、これだけの個人情報を収集するには、それこそ探偵でも雇わなくてはならなかったろう。40代以上の世代は、インターネットや携帯電話が普及する前の世界を知っている。意思疎通は手紙、緊急連絡は固定電話かポケベルという時代である。今や写真も動画もリアルタイムで送れるスマホというものがある。技術は加速度的に進歩しているのだ◆ネットは人生も変える。個人的な話になるが、学校を卒業後、就職のため本土に出ながら、結局は沖縄に帰ってきたのには理由がある。ネット環境さえあれば、東京でも石垣島でも、情報格差はほぼ皆無だと知ったからだ◆島々の離島苦も今後、遠隔医療や遠隔授業などの技術革新によって、徐々に克服されていくだろう◆私たちのライフスタイルは、この20年ですっかり変わった。今、スマホに顔をくっつけて歩く人の波を眺めながら「見えざる革命が起きていたのだ」と改めて思う。

2016年

11月

10日

「変化」を求める大きなうねりが…

 「変化」を求める大きなうねりが、実業家トランプ氏を大統領へ押し上げた。世界が注目した米大統領戦。トランプ氏は日本などに対し、米軍駐留の経費負担を増額するよう要求しており、沖縄にも大きな影響が出るかも知れない◆3年前に米国を訪れた際、ジャーナリストや安全保障の専門家と言われる人たちでさえ、尖閣諸島問題をほとんど重要視していないことに衝撃を受けた。新大統領のもと、外交や安全保障政策で、米国がこうした「本音」を露骨に打ち出すようになれば、東シナ海、南シナ海問題で日米の連携は覚束ない。混迷の時代が始まるかも知れない◆八重山住民も当然、無関係ではいられない。米軍撤退や日米同盟の希薄化が現実味を帯びれば、日本は「自分の国は自分で守る」という原則に立ち返らざるを得なくなる。石垣島への自衛隊配備計画もいっそう重要性を増す◆今回の米大統領選は、戦後70年間続いた「米国頼み」の終わりの始まりになる可能性もある。停滞している憲法改正の動きに拍車が掛かることも有り得る◆この選挙結果が「核なき世界」「イエス、ウィ、キャン(私たちはできる)」といった空虚な言葉だけが先行したオバマ政権に対する反動であることは間違いない。政治家の神髄は政策の実行にある。沖縄の政治家も心すべきだろう。

2016年

10月

25日

米軍北部訓練場の…

 米軍北部訓練場のヘリパッド移設工事で、反対派に「土人」と暴言を吐いた大阪府警の機動隊員が処分された。経験上、巻き舌で威圧的な関西人はよく見かけるが、公務員という彼の立場を考えると許されない一言であり、処分は当然だ◆だが工事現場周辺の動画などを見ると、反対派のガラの悪さも尋常ではない。政府職員、警察官、作業員への威嚇や挑発、罵詈雑言も相当なものだ。「けんか両成敗」ではないが、この機動隊員にも情状酌量の余地はあろう◆「土人」発言をめぐる数々の論評の中で飛び出した「沖縄差別」という批判には違和感がある。本土による沖縄差別が存在したのは事実だ。復帰前後まで、本土で多くの先輩たちが苦闘した歴史は忘れない。しかし21世紀の現在、「本土から蔑視されている」などと感じる県民はどれだけいるか◆東京や大阪の人が地方の人を「田舎者」と見下す意識が「土人」発言を生んだ可能性はあるが、逆に言えばその程度の話でしかない。基地問題の背景に、その種の差別意識を持ち出す論理は強引過ぎるし、事実、多くの県民はそこまで拡大解釈はしていない◆辺野古や高江の混乱には、全国の人たちが心を痛めている。「差別」という言葉まで持ち出し、この問題をさらに煽るのは不適切だろう。

2016年

10月

22日

日本が南シナ海問題に…

 日本が南シナ海問題に関与するのは、尖閣諸島への中国の圧力を下げるためだ―。国営放送でこう日本を非難していた中国だが、どうやらその南シナ海問題で有利な立場を獲得しそうだ。フィリピンのドゥテルテ大統領が、領有権問題を棚上げし、中国と和解する意向を示しているからだ。中国は南シナ海問題が片付けば、いよいよ尖閣攻略に本腰を入れてくる可能性がある◆犯罪容疑者の大量殺害で国際的な非難を浴びているドゥテルテ大統領だが、中国は一切問題視せず、巨額の経済援助で同大統領を懐柔。同大統領の「米国と決別する」という発言まで飛び出した◆石垣市議会はフィリピンにならい、尖閣問題を仲裁裁判所に提訴するよう国に要請したばかりだ。しかし肝心のフィリピンが早々と腰砕けになり、愕然としている市議も少なくないだろう◆中国は海洋だけでなく、宇宙やサイバー空間でも勢力を急拡大。現在のペースで成長を続ければ、少子高齢化と人口減少が続く日本は国力の差を広げられる一方だ。強大化する中国の圧力に、尖閣を抱える国境の島々が、どこまで持ちこたえられるか◆県民はもっと視野を広げ、到来する危機に備える必要がある。辺野古や高江をめぐり、延々と内向きの議論を続けている場合ではないだろう。

2016年

10月

18日

東村高江では…

 東村高江ではヘリパッド移設工事への激しい抗議運動が続いているが、反対派も陣取る高江周辺の県道70号線をめぐり、県議会で興味深い質問があった。「オスプレイ配備から4年余り、一度の人身事故もないが、県道70号線沿いでは何件の死亡、重傷事故が起きているのか」。質問者は又吉清義氏(自民)だ◆池田克史県警本部長によると、2011年から5年間の事故数は今年8月末で人身事故34件。内訳は死亡事故6件、重傷事故14件、軽傷事故14件。「他の県道に比べて事故率は非常に高い」(池田本部長)という◆翁長雄志知事は、ヘリパッド移設が条件となっている米軍北部訓練場の部分返還について推進の立場。しかしヘリパッド移設については、オスプレイが運用されることを理由に反対姿勢を示す。だが事故率を見る限り、県がやるべきことはオスプレイ反対ではなく、県道70号線での安全運転を呼び掛けることでは◆そもそもオスプレイは危険な輸送機なのか。米軍は既に運用開始しているし、自衛隊も導入の方針を固めている。熊本地震では被災者支援で活躍した◆そろそろ冷静なデータに基づいて安全性を評価すべき時期に来ている。「オスプレイが運用されるからヘリパッドに反対」という県の論理は、このままでは苦し紛れだ。

2016年

10月

10日

八重山の政財界リーダーと…

 八重山の政財界リーダーと話すたび感じることがある。40代以下の若者世代は柔軟性と行動力に富む反面、いかにも言動が軽く、どこまで信頼していいのか迷う。50代以上のシニア世代は鈍重だが、強い信念を持ち、他人を包み込むような人格力や品位がある◆特に政界は近年、全国的に若返りが進んだ。その余波は八重山にも及び、40代の市長や20代、30代の市議が相次ぎ誕生。6月の県議選も3人の候補者のうち2人は40代で、シニア世代はずいぶん存在感が薄くなった◆しかし役場移転問題の混乱や職員の不祥事が相次いだ竹富町では、8月の町長選で68歳の西大舛高旬氏が初当選。ベテランの復権を印象づけた。混迷の時代を乗り切るには若者の突進力だけでは無理で、長年の経験に裏打ちされた的確な判断力が不可欠だ◆石垣市は今月、「生涯活躍のまち」をテーマにした「石垣版CCRC基本構想策定委員会」を発足させた。若者に加えシニア世代の移住を促進し、新たな雇用を誘発しようという取り組み。長年、一つの分野に打ち込んできた人材を、定年を理由に引退させるのはもったいない。貴重な戦力として地域振興に活用すべきだ◆必要なのは世代間の適材適所。誰もが年輪の数だけ輝きを増すまちづくりに期待したい。

2016年

9月

06日

渦中の…

 渦中の東村高江を訪れた。米軍北部訓練場の部分返還に向け、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設工事が本格化し、多数の反対派が工事の妨害行為や警察官などへの挑発行為を繰り返している◆よく言われるような「機動隊や警察官が市民を弾圧している」光景は見られない。むしろ機動隊や警察官は、車両の近くに座り込んだり、通行中のトラックの前に飛び出しそうな様子を見せる反対派に対し、けが人が出ないよう現場の秩序維持に努力していた◆民主主義の政権に抵抗するなら民主主義のルールに則るべきで、実力行使で工事を妨害するような行為は、むしろ民主主義に対する挑戦でもある。独裁政権の中国に対し、香港の民主派がやむを得ず実力行使で抵抗するような行為とは、本質的な意味が異なる◆反対派は、県議選や参院選で、辺野古や高江の工事に反対する「沖縄の民意」が示されたと主張する。ただ基地問題や安全保障問題は沖縄だけの問題ではなく、日本全体で考えるべき問題だ。県民負担の軽減や日米同盟の必要性といった広い視野の議論も必要で、イデオロギー闘争だけでは何も前進しない◆県民なら、平和を願う心は誰でも同じだ。高江の抗議行動がさらに過激化し、いたずらにけが人が出るような事態は避けてほしい。

2016年

8月

30日

「大統領が町長に」…

 「大統領が町長に」。竹富町長選の結果が伝えられると、関係者からこんな言葉が飛んだ。「西表島の大統領」の異名を持つ西大舛高旬氏の初当選である◆八重山でも政治家の世代交代が進み、最近はドライな考え方を持つ若い政治家が多いが、西大舛氏は「義理と人情」を重んじる世代の68歳。町議会の最多当選者で、大浜長照元石垣市長、大盛武元竹富町長と同年齢、むしろ旧世代に属する。八重山を代表する政治家を輩出した世代の最後の一人が、真打ち登場のようにようやく表舞台に躍り出た◆町議の経験が長いが、初挑戦時には落選の苦杯もなめた。のちに実力者になったあと、落選の経験が人間の幅を広げたと自認する◆事あるごとに「自民党」を強調する保守派で、携帯電話の着メロが「君が代」なのは有名だ。歯に衣着せぬ物言いと地鳴りのような声が他人を驚かせることもしばしば◆町民の人気が高かった川満町政だが、相次ぐ職員の不祥事、先の見えない議会との対立が停滞感を招いた。破天荒な西大舛氏に町民の期待が集まり、現職優位の下馬評を覆した◆米大統領候補2人も西大舛氏と同世代である。混迷の時代には若さより、経験や実績といったベテラン力が求められるようだ。「大統領町長」の新たな船出に期待したい。

2016年

8月

21日

「人が足りない」―。…

 「人が足りない」―。最近、多くの職場で嘆き節を聞く。沖縄の有効求人倍率は6月、復帰後初の1倍台となる1・01倍を記録。労働市場は好調に推移しているが、企業側からは悲鳴が聞こえる◆特に深刻なのは建設業だ。若者に敬遠され、現場では若い作業員が不足。そのため人件費が高騰し、公共工事の入札不調が相次ぐ一因となっている。業界のイメージアップが急務で、石垣市では、県建設業協会が若者の就職を促す方策を関係機関と話し合った◆建設業界の人手不足は庶民のマイホームの夢も直撃している。もともと離島はコスト高だが、近年は資材の値上がりなども加わり、一軒家の建設費は天文学的な数字に膨れ上がった。これでは、住民がおいそれと家を新築できないだけでなく、他地区から八重山への移住を促す「地方創生」の戦略にも影響が出かねない◆好景気と言いながら、建設業では人手不足、農水産業にも依然として力強さが感じられず、商業もさほど元気ではない。観光産業の伸びを他産業に波及させる取り組みを欠いているのではないか◆観光客が百数十万人に達しようという千載一遇の好機を生かし、自立経済構築への道を歩めるか。八重山は岐路に立っていると言えるが、現状では見通しは明るくない。

2016年

8月

16日

新聞で…

 新聞で沖縄の選挙を報道する際は「保守対革新」と表現されることが多いが、竹富町は違う。全県に先がけ、十数年前に保革を乗り越えているのである◆保守派だった那根元・元町長の初当選時までは「保革対決」だった。しかし那根町長時代に市町村合併の波が到来。次の町長選は合併反対派の那根氏と推進派の大盛武氏の対決となり、対立軸が「合併の是非」に移った◆大盛氏が町長に就任したが、町議会の反対で合併が頓挫。次の町長選の対立軸は「役場移転の是非」に移り、移転推進派の川満栄長氏が勝利した◆しかし役場移転の手法をめぐり対立が持ち上がり、町長選で野党は山田耕治氏を擁立したが、川満氏が圧勝、久しぶりに現職が再選された◆今選挙に出馬する西大舛高旬氏は保守の大物政治家であり、川満氏は、かつては革新のリーダー格だった。世が世なら保革の最終決戦と呼ばれてもおかしくない戦いだが、もはや、誰もそう見ていないところが面白い。対立軸は役場移転の手法や行財政改革などになりそうだ◆沖縄本島では保革を乗り越えた反基地の候補を「オール沖縄」と呼ぶが、その実態は革新であることが明らかになっている。沖縄の政治が、真に保革を乗り越えるのはいつの日か。竹富町こそモデルケースになり得るかも知れない。

2016年

8月

02日

台湾の…

 台湾の李登輝元総統を迎える石垣島の関係者は、冗談半分に言い合っていた。「李氏が来島したら、中国が反発して領海侵犯するのでは」。まさに李氏が石垣島に降り立った日、中国公船3隻が尖閣周辺で領海侵犯した。偶然とは考えにくい◆気に食わない相手には実力行使で嫌がらせをする。中国の指導者は子どものように単純で、分かりやすい。大人の話ができる相手なのか疑問だ◆尖閣周辺を「パトロール」と称して航行する中国公船の活動は息が長い。中国は「超大国」への道を突き進んでおり、東シナ海方面への野心は肥大化する一方だ。ある識者は尖閣問題について「21世紀を通じ、ずっと存在し続ける」と予測する。事なかれ主義で黙っていれば平和が維持される時代は過ぎたと見るべきだろう。八重山の将来を考えるとき、自衛隊配備は必須になる◆世界は数年前には予想もしなかった方向へ進んでいる。安全だと思われていた欧州で相次ぐテロ、在日米軍の撤退を匂わせるトランプ氏の米大統領候補指名獲得、英国のEU離脱。極言すれば誰が敵で誰が味方なのか分からない時代になりつつある◆臨機応変さが求められる時代に「ぶれない」ことは必ずしも美徳ではない。配備反対派も、虚心坦懐に八重山の将来を見据えてほしい。

2016年

7月

27日

八重山商工の…

 八重山商工の衝撃的な春夏連続甲子園出場から10年。沖縄の高校野球に偉大な足跡を残した伊志嶺吉盛監督が退任を表明した◆10年前は八重山にとって「天の時、地の利、人の和」の三拍子がそろった千載一遇の機会だった。伊志嶺監督という名将、その薫陶を受けた優れた選手がいて、市民も一丸となって選手の島外流出を防いだ。当時のような熱気を、現在の八重山で感じることはできない。この10年間、八重山勢の甲子園出場がかなわなかったことは、ゆえなしとしない◆離島の八重山は、本島の高校に比べると大きなハンディを抱えている。お隣の宮古島からも、いまだに甲子園出場校は出ていない。生半可な覚悟では甲子園にたどり着けないことを、10年間の空白が教えてくれる◆それでも今年の八重山勢は健闘した。八重山高校が県王者となり、九州大会でも1勝して21世紀枠候補に初めて選ばれた。八商工も夏の大会で4強入りを果たした。しかし八重高は夏の大会で初戦敗退し、最大のライバルだった興南も早々に姿を消して、頂点に立ったのはダークホースの嘉手納だった◆沖縄の高校野球界は戦国時代に入っており、誰もが天下を狙って切磋琢磨している。勝負の世界で生き抜く厳しさを、改めて実感させられた1年でもあった。

2016年

7月

13日

参院選は…

 参院選は翁長雄志知事を支える「オール沖縄」の新人、伊波洋一氏が自民現職で沖縄担当相の島尻安伊子氏に圧勝した。当選後のインタビューでは「国政で離島の課題にも取り組みたい」と離島振興に意欲を示した。有言実行に期待したい◆と言うのも、基地反対を訴えて当選した国会議員は、概して基地のない離島には関心が薄いからだ。「オール沖縄」の国会議員が選挙以外で八重山を訪れた姿を見たことがない◆有権者との触れ合いがないため、中央政界で離島振興に向け、どのように活動しているのかも見えてこない。伊波氏には同じ轍(てつ)を踏まないようクギを刺したい◆伊波氏の当選直後、翁長知事が「県民の良識の勝利だ」とコメントしたことも納得し難い。確かに伊波氏と大差はついたが、島尻氏が約25万票を獲得した事実も重い。県議選からの「オール沖縄」の連勝で、知事が慢心したような印象を受ける◆中央政界では「安倍一強」が批判されるが、沖縄ではまさに「翁長一強」の状況が出現している。県議会で与党が圧倒的な多数を占め、衆参選挙区の自民党議員がゼロになったのは、県政のチェック機能が大幅に低下したことを意味する。県民が一定の警戒心を保ち続けなければ、予想外の「暴走」が始まりかねない。

2016年

7月

05日

石垣市の総務部長…

 石垣市の総務部長、當真政光さんが55歳で急逝した。中山市政の番頭役として存在感を発揮していただけに、當真さんの死は市役所の一職員の死にとどまらず、市政運営にも大きな波紋を広げている◆當真さんと取材を通じて個人的に知り合ったのは10年以上前。当時、教育委員会の係長だった當真さんに個人的な悩みなどを相談したが、嫌がらずに真摯に対応してくれたのを覚えている。公私混同せず、多少親しくなっても常に発言には気を使い、滅多に軽口を叩かなかった◆中山市長の就任とともに抜擢され、総務課長、総務部長を歴任した。温厚な性格だったが、議会などで市長の「盾」となるべき時には毅然として立ち上がり、論敵に妥協しなかった。「プレッシャーも大きかっただろう」と周囲は推測する◆プロの行政マンとして着実に仕事を進めていたが、珍しい一面をかいま見たのは今年、市議会で、議案の文面の誤りを議員に指摘された時。「本当に恥ずかしい」と身を縮めていた謙虚さが印象的だった◆八重山で、この20年ほどの間に、政治や行政の第一線で活躍していた人が突然亡くなったのを何人か目にした。石垣市の大浜永造元助役、後原保一元市議、尾辻吉兼元与那国町長など。當真さんもその一人に加えていいだろう。

2016年

6月

16日

尖閣諸島周辺の…

 尖閣諸島周辺の接続水域に中国軍艦が初めて侵入し、八重山住民に不安が広がっている。これまでは中国公船「海警」が頻繁に領海侵入を繰り返してきたが、軍艦の出現は、中国が尖閣強奪に向け、実力行使をエスカレートさせる第一歩という見方が支配的だ◆同時にロシア軍艦も接続水域に入ったことから、中ロが連携して日本を揺さぶっているという分析もある◆八重山住民の間では、台湾の李登輝元総統が7月に石垣島を初訪問することから「中国が石垣市民に反発している」という珍説も流れている◆今、沖縄本島では米軍普天間飛行場の辺野古移設が進み、石垣島では陸上自衛隊の配備計画が浮上している。反対派は「基地は要らない」と訴えるが、中国の脅威が現実化すると、その論拠は足元から崩れてしまう。中国が今回の行動で何を意図したのかは不明だが、中国が挑発を強めれば強めるほど、辺野古移設や自衛隊配備の追い風になるだけという皮肉な結果に終わっている◆それにしても不可解なことに、当事者であるはずの翁長雄志知事の顔が全く見えてこない。米軍関係者の事件には饒舌にコメントする知事が、中国の軍艦航行には沈黙を続けている。県議選勝利の余韻にいまだ浸っているのだろうか。八重山住民としては寂しい。

2016年

6月

08日

県議選が…

県議選が5日投開票され、石垣市区では現職、砂川利勝氏と元市職員の新人、次呂久成崇氏が当選した。今後4年間、県議会の場で八重山住民の声を代弁する◆「有言実行」をモットーとする砂川氏はたばこ農家でもあり、農業政策を中心に掲げ、現場主義を徹する姿勢が評価された。次呂久氏は若さと豊富な行政経験を併せ持ち、青年会やPTAなどの地域活動で人脈を築いてきた。八重山振興に向けた両氏の活躍に期待したい◆選挙イヤーはまだ始まったばかりだ。県議選の硝煙もまだ残る7月には参院選が行われ、砂川氏を支えた自公勢力と、次呂久氏を支えた「オール沖縄」が再対決。米軍普天間飛行場問題だけでなく、沖縄振興の方向性も左右される重要な選挙である◆参院選後の8月は息つくひまもなく、竹富町長選に突入する。竹富町は八重山の観光を支える要石であり、石垣市や与那国町も無縁ではない◆竹富町長選が終わっても選挙イヤーは終わらない。八重山住民は直接関係ないが、11月には米大統領選がある。共和党候補のトランプ氏は、日本に在日米軍の駐留費を全額負担するよう求め、応じられなければ米軍を撤退させる可能性を示唆。日米安保のあり方が大きく転換すれば、沖縄の運命も変わってくる。今年はまさに「決断の年」だ。

2016年

5月

31日

八重山住民を置き去りに…

 八重山住民を置き去りにした決議という印象が強い。米軍属の女性死体遺棄事件を受け、県議会は26日、県政与党の主導で、在沖海兵隊の撤退要求と普天間飛行場の県内移設断念を決議した◆石垣市は尖閣諸島を抱え、日常的に他国の圧力にさらされている。海兵隊の撤退後、国境の島々をどう守るか、真摯な議論はなかった。一般県民が事件への怒りをぶつけるのは当然だが、政治には責任が伴う。一緒になってこぶしを振り上げるだけでは物事は解決しない◆石垣市議会は県内で最初に抗議決議を可決したが、海兵隊撤退や普天間飛行場問題には触れていない。事件を無理に政治問題に結びつける必要はないのである。県議会の決議は県議選や参院選を意識しているとしか思えず、政府批判を繰り返す翁長雄志知事の発言も、そうした雰囲気が濃厚だ◆一方の野党側にも「選挙前のこの時期になぜ」と事件に頭を抱える人がいる。しかし事件のタイミングが問題なのではない。人としての誠実さが問われているのだ。もっと遺族に寄り添い、真摯に事件と向き合い、再発防止策の議論を深めるべきだ◆県議選の街頭演説や集会でこの事件が持ち出されるたび、聞いていて、やるせなさや虚しさが増す。政治家は「分かっていない」と感じるからだ。

2016年

5月

22日

被害者と遺族の恐怖や…

 被害者と遺族の恐怖や苦痛は想像を絶する。慰めの言葉も見つからない。米軍属によるうるま市女性の死体遺棄事件で、沖縄の隅々まで怒りと悲しみが広がっている◆日米両政府に求められているのは事件の徹底究明と実効性ある再発防止策、遺族に対する可能な限りの償いだ。どこまで県民の思いを受け止められるか問われる◆「基地があるから事件が起こる」と言われても、被害者のことを思うと一言の抗弁もできない。「全基地撤去」という訴えも分かる。しかし、県民が感情だけに流され、政治が引きずられてしまうと、最悪の事態がさらに増幅されてしまう。殺人事件と安全保障は別の問題であることも理解しなくてはならない。普天間飛行場の移設反対のような特定の政治問題と事件を、直ちに結びつけるべきではない◆石垣市の中山義隆市長は、事件に強く抗議した上で「基地があろうがなかろうが、こんな犯罪を起こしてはいけない。犯罪があろうがなかろうが、基地の整理縮小に頑張らなくてはならない。それが政治だ」と述べた。政治は政治として冷静さを保ち、沖縄の基地負担軽減に向けた取り組みを着実に進めるべきだ◆事件は、自国の安全保障を他国に依存しているゆえに起きた悲劇でもある。国の根本的な在り方に対する問題も提起している。

2016年

5月

15日

13日に開かれた幼稚園…

 13日に開かれた幼稚園教諭研修会では、預かり保育の人員不足を訴える声が相次ぎ、予定していたプログラムが中断される異例の事態になった。公立保育所の保育士も不足していることが報じられており、市が掲げる、来年度中の「待機児童ゼロ」に黄信号が灯っている◆中山義隆市長は、初当選した2010年の市長選から子育て支援を政策の目玉に掲げ、全幼稚園での預かり保育実施などを推進。さらに国の子育て支援新制度が追い風となった。ところが保育現場では人員体制や待遇面で十分な手当てがなく、政策のスピードに追いつけないまま、不満がうっ積している◆しかし、行政内部のゴタゴタが市民に露呈する形になったのは市の大きな失態だ。保育人員不足の報道に接した母親からは「安心して石垣市に子どもを預けられるのか」と懸念の声も上がる◆そもそも、市が乏しい予算で公立保育所や幼稚園を運営する必要性が疑問だ。「安心安全」は行政の専売特許ではなく、現に民間保育園と公立保育所で保育の内容に大差があるわけではない◆特別な事情がある地域は別だが、市があまりに多くの保育所や幼稚園を抱えている現状が、かえって待機児童ゼロの障害になってはいないか。何でも行政任せはダメで、市民の厳しい視線も必要だ。

2016年

5月

07日

八重山青年会議所が…

 八重山青年会議所があす8日、県議選の予定候補者3人による公開討論会を開催する。有権者に投票の判断材料を提供しようという若者たちの情熱には敬服するが、運営方法には大きな疑問がある◆予定候補者が互いに疑問をぶつけ合う「クロストーク」が省略されている点だ。同会議所が4年前に開催した討論会の際、クロストークで「制限時間内に立候補予定者の考えを来場者に伝えきれなかった」という反省点があったため省略したという◆討論会は3人がそれぞれ所見を述べたあと、主催者側があらかじめ準備した質問に答えていく方法になるようだ◆八重山では過去にも県議選のほか石垣市長選、竹富町長選で公開討論会が開かれたが、クロストークは常に「目玉」だった。相手の急所を突く鋭い質問、それをとっさにかわして反論する瞬発力。予定候補者の政治家としての資質が最も試されるスリリングな瞬間だからだ。テレビ番組で言えば最高視聴率を記録する場面であり、そこを省略した討論会は「画竜点睛を欠く」としか言いようがない。主催者側の決定は不可解だ◆とはいえ、予定候補者が一堂に会する、恐らく最初で最後の機会である。予定候補者の貴重な生の声を脳裏に刻み、6月5日の投票日には、しっかり投票所に足を運びたい。

2016年

4月

28日

地震体験車に乗ってみた…

 地震体験車に乗ってみた。震度7。天地がひっくり返るのではないかと思われる激しい揺れ。座っていても、何かにつかまらないと姿勢を維持できない。心の準備をしていても、かなりきつい。家でくつろいでいる時間に突然、こんな揺れに襲われたらパニックになってしまうだろう。熊本の人たちは、想像もつかないほど怖い思いをしたはずだ◆東日本大震災で高まった日本人の防災意識も、時間とともにやや薄れつつあったような気がする。そこへ発生した熊本地震は、東北に続き九州が被災地となったことで、日本全国、どこにも安全な場所はないことを改めて印象づけた。24日の石垣市防災訓練では、参加者数が昨年を大きく上回り、住民の危機感が高まっていることを示した◆地震が来たらどうするか。津波や竜巻に襲われたら…。普通の生活を送っている今だからこそ、多少なりともイメージする時間を持ちたい。いざ「その時」が来た時、対応は全然違ってくるだろう。防災の基本は、自分の身は自分で守る「自助」だ◆それでも地震体験車に乗って気づいたことは、実際の災害は想像以上であること。まさに「想定外」のことが起こるのだ◆想定外の状況を想定し、その上で自分や家族の命をどう救うのか。「防災」とは口で言うほど簡単ではない。

2016年

4月

15日

冷戦を生き抜いた…

 冷戦を生き抜いた元米大統領のニクソンは「戦争が起こりやすいのは2国が軍拡競争している時ではなく、防御しようとする勢力が、攻撃しようとする勢力との軍拡競争に敗れた時だ」と指摘する◆現在、攻撃しようとする勢力は東シナ海への勢力拡大を図る中国、防御しようとする勢力は石垣島に自衛隊を配備しようとする日本だ。双方の立場はまるで違い、現状ではまともな外交交渉は難しい◆中国が関係改善の対話に応じるのは、日本の防衛体制が堅固になり、八重山に触手を伸ばすのはとても無理だと知った時だけだろう。だから、反対派が主張するように、自衛隊配備は八重山の安全を脅かすのではなく、かえって中国に対話を促し、住民の安全度を高めることになる◆「自衛隊が配備されれば有事の際に標的となる」というのは反対派の常套文句だが、有事ともなれば、全国どこでも標的になり得る。軍事基地がなければ安全だという保障などなく、中国の脅威を自衛隊に責任転嫁すべきではない◆配備予定地周辺の住民が反対しているという事実は重いが、安全保障に関わる問題は、もとより一地域の意思だけでは決められない。配備計画をめぐり、防衛省が開く住民説明会の日程もようやく22日に決まった。冷静に耳を傾けたい。

2016年

3月

29日

明治維新の元勲、大久保利通の…

 明治維新の元勲、大久保利通の言葉である。「過ぎたるは及ばざるに如かず」。やり過ぎてしまったら取り返しがつかないが、やらないうちなら、まだ熟慮の余地がある、とさとす◆就職、進学、進級の春を迎え、世には若者へのはなむけの言葉が氾濫している。筆者が若いころ、バイトの先輩に教えられたのは「やらずに後悔するより、やって後悔せよ」だった◆しかし、さまざまな人生経験を積んだ今になって振り返ると、これは全くの誤りだった。自分の能力を過信し、しなくてもいい失敗を重ね、人生の大事な時間を山ほど無駄にした。悔恨の思いは深い◆「失敗を恐れるな」という言葉は、一般論としてはその通りだが、これが当てはまるのは、人並み以上の才能や幸運に恵まれた人ではなかろうか。そういう人なら最初から成功の見込みは立っているし、未来を恐れる必要もない。大多数の人間に当てはまる言葉は、孫子の兵法も指摘するように「勝算がなければ勝負に出るな」ということに尽きると思う。失敗というのはたいてい、自分一人の問題にとどまらず、めぐりめぐって周囲に迷惑を掛けることもあるからだ。甘く見てはいけない◆老境に達した今、筆者が若い友人に真心を込めて贈る言葉は「失敗を恐れよ」である。

2016年

3月

24日

さわやかに晴れ、まだ日差しも…

 さわやかに晴れ、まだ日差しも強くない午前中に街を歩くことは楽しい。20日に石垣市民憲章推進協議会が実施した「健康づくりウォーキング」。参加者の生き生きした表情を見て、久しぶりに歩きたくなった◆体調が悪くなると足取りが覚束なくなり、病が重くなると、もう歩けない。軽やかな歩行こそ、健康のシンボルだ◆歩くと考えがはかどる人は多い。沈思黙考する精神と、活発に手足を動かす肉体とのバランスが取れるからだろう。有名な推理作家にも、歩きながらストーリーやトリックを組み立てるという人がいた。それに歩く仲間がいれば会話も弾む。車を持たなかった学生時代、目的地まで友人と長い道のりを歩き、話題が尽きなかったことを思い出す◆しかし社会人になると、歩きたくても歩けないことに気づいた。仕事は時間厳守だから、車に乗らないわけにはいかない。昼間はとにかく忙しい。それならと涼しい夜に歩くと、道路には猛スピードの車がうようよして、危険極まりない。ダイエットでウォーキングやジョギングに励む人は多いが、痩せるために本当に必要なのは運動ではなく食事制限だ◆しかし、そう言って歩くことを億劫がるのは、老化が進んだ証拠だろう。渋る気持ちを叱咤激励して、スニーカーを履こう。

2016年

3月

22日

民主党政権は「失政」と…

 民主党政権は「失政」と同義語のようなイメージで語られることが多い。実際、振り返るとさまざまな醜態が思い浮かぶ◆東日本大震災と原発事故では、菅首相の言動が混乱を助長したとして問題視された。消費税をめぐっては、不況下にもかかわらず、野田首相がよりによって「増税に政治生命を懸ける」と公言、政治センスの欠如をさらけ出した◆鳩山首相は、無鉄砲な「最低でも県外」発言が名高い。現在に至る普天間飛行場移設問題の混迷がスタートした。菅政権時代、尖閣諸島周辺では、中国漁船が海保の巡視船に衝突する事件を起こしたが、ただちに船長を釈放した「弱腰対応」が批判された◆東京都の尖閣購入計画を阻止するため、野田首相が尖閣国有化に踏み切ったが、中国はこれを口実に反日活動を活発化させた。あのまま都に尖閣を購入させ、船着き場などを迅速に整備させていたら、衰退する八重山漁業は今ごろ違った展開をたどっていたかも知れない◆民主党が政権を奪取したころは、日本ブランドが大きく揺らぎ始めた時代だった。その動揺は今でも続き、不透明で混沌とした時代が到来している。「あの時自民党だったら、もっとうまくやれたはず」とも一概に言えない。民主党は、悪い時代に政権を担ってしまったのだろう。

2016年

3月

13日

「議会で急転直下の出来事が…

 「議会で急転直下の出来事が起こることがある。やわらかい言葉で言うと、根回しとか裏取り引きという」。あるベテラン議員が、政治の仕組みを分かりやすく解説してくれた。双方が対立し、八方塞がりのように見えた状況が突如動き出す。その背後には、政治の達人であるベテラン議員たちの影がある◆最近は全国的に政治家の若年化が進んでいる。20代、30代の国会議員も珍しくなくなったし、沖縄でも40代の首長が続々誕生。優秀な政治家の条件として、若さを挙げる声さえ出始めた◆ルックスも良く、弁舌も巧みな若者が理想論をぶつ姿は確かに心地いい。しかし若者は、往々にして口だけ達者だ。ルックスだけで投票すると、育休不倫議員のような未熟者が当選してしまう◆ベテラン議員はどこで、誰と、何を、どのように交渉すれば物事が前に進むかを知っている。建前と本音を使い分け、時には妥協もいとわない。「ゼロか100か」という完全主義者ではなく、五割一分以上の成果が得られれば良しとする。「過ぎたるは及ばざるがごとし」である◆米軍基地問題も、ともすれば「全基地撤去」のような理想論がもてはやされるが、大切なのは目の前の現実を改善していくことだ。沖縄が抱えるさまざまな政治課題に「ベテラン力」が求められている。

2016年

3月

03日

石垣市民憲章推進協議会が…

 石垣市民憲章推進協議会が石垣第二中と大浜小の児童生徒を集めて「子どもまちづくりワークショップ」を開き、石垣市の将来像について夢を語ってもらった。「住みたいまち」のアイデアを投票したところ「どこでもWi―Fi(ワイファイ)が使える」が圧倒的な得票でトップになった◆10年前なら予想もできなかった答えだが、子どもたちの本音を知ることができ、興味深い。スマホの爆発的な普及が背景にあるのだろう◆インターネットが自由に使える環境はもちろん魅力的だが、これを「石垣市のあるべき将来像だ」と前面に出されると、正直なところ、ちょっと違和感がある。「コーラ専門店、遊園地、映画館、ライブハウス、ショッピングモールがあるまち」というアイデアも出たが、もっと思い切って大風呂敷を広げても良かったのではないか◆個人的には「街灯が多いまち」「年配者を気遣うまち」「自然がある美しいまち」といったアイデアが、少数意見にとどまったことも気になる。豊かな自然や人情こそ八重山の最大の魅力であることに気づいてほしい◆どんな破天荒な夢を語っても、笑って受け入れてもらえるのが子どもの特権だ。「あらゆるがんを治療する医者になり、ノーベル医学賞を受賞する」。筆者が小学校の卒業文集に書いた夢だ。

2016年

2月

22日

米軍普天間飛行場の…

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で、本土の住民から「沖縄で冷静な議論ができているとは思えない」という声をよく聞くようになった。「移設反対があたかも正義のように語られている現状は、県民自身の目から見ても正常とは言えない」と答えている◆共同通信が1月末に実施した全国的なアンケートでは、移設賛成47・8%、反対43%で、国民の意見は大きく割れている。当事者である沖縄の感覚は尊重されるべきだが、県民にも自らを客観視する冷静さが求められる。移設反対だけが正義ではないのは客観的な事実だ◆沖縄に対する中国の脅威が増す中で「普天間飛行場を抱える宜野湾市民の危険性除去と抑止力の維持を両立させる」ことが辺野古移設の理由とされてきた。反対派は県内移設では県民の負担軽減にならないとする。だが抑止力の維持に関してはどうか。特に尖閣問題に関しては、反対派からは「米軍は抑止力にはならない」というたぐいの曖昧な答えしか聞けないのが現状だ◆米軍が抑止力にならないのなら、自衛隊を増強するのかと問いたいところだが、石垣島への自衛隊配備にも反対だという◆米軍基地のない八重山から基地問題について意見を言うのは困難だが、言葉遊びのような議論では離島住民の理解は得られない。

2016年

2月

11日

石垣市の新庁舎建設位置を…

 石垣市の新庁舎建設位置を問う住民投票で「旧石垣空港跡地」が圧倒的多数を占めたことを受け、市は新庁舎を高台移転すると発表した。初の住民投票が巻き起こした「民意」の波動は、市の方針を大きく揺り動かした◆いくつか課題は残った。まずは現地建て替えを求めた新庁舎建設基本計画策定委員会の答申とは何だったのかという疑問だ◆行政機関の求めに応じ、意見を答申する「第三者委員会」は、中立性や専門性を建前とする。策定委も第三者委員会だが、当初から「委員の人選が現地建て替え派に偏っている」という批判が上がっていた。策定委が必ずしも市民の多数意見を代表する必要はないが、今回の答申が、あまりにも民意とかけ離れていたことは認めなくてはなるまい◆第三者委員会は、往々にして行政機関の意に沿ったアリバイ作りの組織になりがちだと言われている。市民の疑念を招かぬよう、人選のあり方を再度見直す必要はないのか◆もう一つの課題は39%にとどまった投票率だ。当初から50%には届かないと見られていたが、40%にも届かないというのは大方の予想外だった。投票所にわざわざ足を運ぶのは、確かにエネルギーが要る。「それでも1票の重みを自覚してほしかった」と残りの6割の市民に言いたい。

2016年

2月

09日

「ミサイルが発射された模様です」―。…

 「ミサイルが発射された模様です」―。防災無線のスピーカーから流れる音声に「まるで空襲警報のようだ」と感じた市民や観光客も多かったのではないか。北朝鮮が2012年に続き、先島諸島方向に向けミサイルを発射した。八重山を取り巻く厳しい国際環境が改めて浮き彫りになった◆関係機関の対応で一つ疑問に思ったのが翁長雄志知事の言動だ。発射から約3時間半後、報道陣の質問に「心臓が凍る思い」と答えた上で、ミサイルを迎撃する自衛隊のPAC3(地対空誘導弾パトリオット)について「一体全体、どんな精度があるのか、素人には分からない」と語った◆自衛隊に反対する勢力を含む「オール沖縄」に配慮した発言だという。しかしミサイルが県民の頭上を通過した非常時であり、支持者に気を使い、わざわざ自衛隊に嫌味を言っている場合なのか、首を傾げる◆石垣市の中山市長は、ミサイル発射とほぼ同時に報道陣の前に姿を現し、防衛省のPAC3配備については「迅速な対応に感謝したい」と語った。非常時、首長が市民、県民へどう存在感を示すかというアピール力も含め、両者の危機管理能力の差を感じざるを得ない◆沖縄の首長には、北朝鮮の暴挙にも中国の領海侵犯にも、きちんと対峙する姿勢が求められる。

2016年

1月

31日

年明けから尖閣諸島を…

 年明けから尖閣諸島をめぐるニュースが相次いでいる。フジテレビの報道によると、中国が尖閣周辺で常駐させている「海警」の甲板上で、尖閣を背景に、モデルのような女性にポーズを取らせて撮影を行う様子が何回か確認されたという。中国が何らかの広報に尖閣を利用しようとしている可能性がある◆米シンクタンクは、尖閣をめぐり日中間で戦争が起きた場合、中国が5日間で勝利するという分析を明らかにした。米国が日中間の戦争に巻き込まれることを防ぐため、米軍は介入を回避すべきと提言している◆すると、これを否定するかのように、ハリス米太平洋軍司令官はワシントンでの講演で「中国からの攻撃があれば、われわれは必ず(日米安全保障条約に基づき)防衛する」と述べ、米軍の軍事介入を言明した◆尖閣周辺では昨年12月から機関砲を搭載した改造軍艦の「海警」が航行するようになり、武装船による領海侵犯が日常化している。八重山住民は強く平和を希求しているが、中国に妥協の意思は一切ないようだ◆中国や米国が発信する情報に振り回され、一喜一憂する日本の現状を見るとき、物悲しい気分にさせられる。「自分の国は自分で守る」。こんな当然なことの意識がここまで希薄な国は、ほかにそうないだろう。

2016年

1月

27日

石垣島の自衛隊配備候補地周辺の…

 石垣島の自衛隊配備候補地周辺の3公民館が、配備反対を決議した。当初は防衛省に説明を求める姿勢だったのが、一転して説明も拒否することを決めた。配備に関する具体的な情報がないまま、なぜこのような重要な判断が可能だったのか。性急な決議という印象は否めない◆地域住民としての意見表明は当然あるべきだ。しかし自衛隊配備は一地域だけではなく、八重山、さらには沖縄全体の安全保障にもかかわる問題であり、本来「聞く耳を持たない」では済まされない。それに反対だからと最初から対話の扉を閉ざしてしまうと、情報を得る貴重な機会を失い、かえって地域の利益を損なう恐れもある◆3地区は「現在の候補地に反対。石垣島への自衛隊配備計画そのものには意見を表明しない」というが、配備反対派は3地区の決議を「追い風」として勢いづいている◆先日開かれた反対派の集会では、自衛隊を「憲法違反」と公言する参加者もいた。3地区の決議は、自衛隊の存在そのものを否定する運動に政治利用されているのが現状だ◆一方で防衛省の説明不足も否めない。住民生活にどのような影響が出るのか、あるいは出ないのか。八重山を取り巻く国際情勢の厳しさも、住民に十分理解されているとは言えない。丁寧な対話を求めたい。

2015年

12月

16日

記者泣かせなのが…

 記者泣かせなのが、読めない名前だ。パソコンで入力してもなかなか出ず、悪戦苦闘する。常識的な音読みや訓読みでは読めないのである◆珍名奇名かというと、必ずしもそうではなく、何となく意味は分かるのだが、年寄りには、やはり読めない。こうした名前は「キラキラネーム」と呼ばれることもある◆駆け出しの記者だった当時に比べ、八重山でこうした名前は明らかに増えている。感覚として、最近の20代以下の名前は、特に女性の場合、半数近くが読めない。可愛らしい漢字が並んでいたりするので「ご両親はたぶん、こんなイメージで命名したのだろう」と想像はできるのだが、とにかく、読めないものは読めない。記者としては困るというほかない◆「キラキラネーム」は、漢字本来の持つ意味よりも、漢字の持つイメージを重視した命名であることが多く「漢字文化を軽視している」という批判の声もある。ただ現実に「読めない名前」がこれだけ増えた以上、一過性の社会現象として見過ごすことは、もはやできないように感じる◆名前は親が子どもに与える最初で最大のプレゼントだ。凝りすぎて子どもの重荷になるくらいなら、平凡なほうがはるかにいい。今の若者には「昭和世代の遠吠え」と笑われそうだが。

2015年

12月

13日

世界的指揮者のニコラウス・アーノンクールさんが…

 世界的指揮者のニコラウス・アーノンクールさんが、86歳の誕生日を前に引退を表明した。体力の限界が理由だという。30年来、彼の演奏に親しんできたファンとしては、衝撃的で辛いニュースだった◆バッハやモーツァルト、ベートーベンなどの演奏に、作曲当時のスタイルを応用する画期的な演奏法を導入した。世界各地のオーケストラで本格的に活動を開始した1980年代には無理解な評論家が多く、特に日本では「音が汚い」「あざとい」などと毛嫌いされた◆既成の権威は常に新しいものを叩きたがる。しかし時間は厳正な審判者だ。アーノンクールさんが幾多の名演を積み重ねた結果、現在のクラシック音楽界では、むしろ彼が切り拓いた演奏法こそスタンダードとして定着。彼は現在、日本を含め、世界で最も尊敬される音楽家の一人となっている◆まだまだ世界中から期待されながら、燃え尽きるように第一線を去るアーノンクールさんの姿は、夕映えのように美しい。長くかつ充実した音楽生活を羨む◆人間にはさまざまな生き方がある。しかし筆者にとっては、他人の評価など気にせず、自分の信じた道をひたすら進み、何かをつかみ取った人生ほど価値あるものはない。「誰からもほめられる」と「つまらない」は、実は紙一重だから。

2015年

11月

25日

 「いかなる死も、それを犬死と呼ぶことはできないのである」。…

 「いかなる死も、それを犬死と呼ぶことはできないのである」。1970年11月25日に自衛隊の市ヶ谷駐屯地で自決した作家、三島由紀夫の言葉だ◆憲法改正を促す演説をしたあと割腹した三島の姿は、国や故郷のために命を捨てた特攻隊とどこか重なる。2013年、石垣島出身の特攻隊長、伊舍堂用久中佐の特集を本紙で連載した際、結びに、三島のこの言葉を引用せずにはおれなかった◆今年は三島没後45年、生誕90年の節目に当たり、各メディアで盛んに三島特集が組まれている。自決当時の世論は「有名作家がクーデターまがいの事件を起こした」と非難一色だったというが、現在、各メディアの特集を見ると、驚くほど三島に肯定的な論調が多い。「三島事件」が歴史の一部となり、ある程度評価が固まってきたということかも知れない◆三島を知る人は誰もが「天才だった」と口をそろえる。早熟で、30代にしてノーベル賞候補。わずか45年の生涯にもかかわらず、彼の作品は膨大な量を誇る。圧倒的な「生」を駆け抜けた三島だが、なお貪欲に「死」によっても何事かを成し遂げようとした◆彼の思想に対する賛否は別として、45年前の衝撃は今なお色あせていない。11月25日には、人間の生や死の意味を改めて考えさせられる。

2015年

11月

11日

米軍普天間飛行場の辺野古移設問題は…

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題は、政府と翁長知事が法廷闘争に突入する見通しで、泥沼化の様相を呈してきた。そんな折、八重山住民に新たな視点を与えてくれたのが今月4日に石垣市で講演した名護市民の我那覇真子さんだ◆移設先の名護市は移設に反対しているが、辺野古区民は移設容認が多数を占めていると紹介。米軍キャンプ・シュワブ前は県内外の移設反対派が連日の抗議行動を繰り広げているが、辺野古区民と米軍は伝統的に友好関係を築いてきたと強調した。こうした「地元の地元」の実情を知る機会は少ない◆普天間飛行場を抱える宜野湾市議会は、同飛行場の固定化に反対する意見書を9月に採択し「(普天間問題の)議論は移設先だけに終始してしまっている感があり、当事者である宜野湾市民として不安、危惧を抱かずにはいられない」と指摘した◆普天間問題の原点は「宜野湾市民の危険性除去」であり、県外であれ県内であれ、まずは同飛行場を動かすことが喫緊の課題だ。移設先うんぬんは本来の問題ではないという宜野湾市民の焦燥感も浮かび上がる◆「新基地建設反対」という扇情的なスローガンの陰で、真の当事者である辺野古区民や宜野湾市民の声がかき消されていないか。県民は謙虚に耳を澄ます必要がある。

2015年

10月

26日

高校野球の九州大会で…

 高校野球の九州大会で、八重山高校がきょう、4強入りを懸けて秀岳館(熊本)と対戦する。八重山勢にとっては、2006年の八重山商工以来、9年ぶりにめぐってきた甲子園出場のチャンスだ◆八商工が出場した春の甲子園には同行取材した。日本最南端からの出場ということで注目度は高く、選手が甲子園に姿を見せると、報道陣が「あっ、八重山だ」と色めきたった。同じ八重山から来た記者としてうれしかったことを覚えている。甲子園出場となれば、八重高も全国の話題をさらうことだろう◆それにしても9年間は長かった。若い人は、当時の地元の熱狂ぶりをリアルタイムでは覚えていないかも知れない。八商工の春夏連続出場のあと、すぐにでも実現しそうだった3回目の甲子園は思った以上に遠く、住民の熱気も徐々にさめていった◆しかし、県の新人大会、秋季大会を連覇した今年の八重高の力強さ、落ち着きを見ると、9年前に八商工がまいた「種」が、確実に息づいていたことが分かる。離島勢であっても、甲子園が十分に手の届く夢であることは、今や全国の誰もが知っているからだ◆故郷の熱い視線を一身に浴び、大舞台で躍動できる選手は幸せだ。結果にかかわらず、実力を出し切って悔いのない試合をしてほしい。

2015年

10月

11日

沖縄と米国ハワイ州の…

 沖縄と米国ハワイ州の姉妹都市提携30周年を記念し、ハワイからデービッド・イゲ知事が来沖している。10日には那覇市内のホテルで記念式典・祝賀会が開かれ、翁長雄志知事は「30周年を契機に、ハワイと沖縄の友好の歴史に新たな一歩が生まれた」などと交流の深化を誓った。知事は、来年10月に開かれる第6回世界のウチナーンチュ大会への参加も呼び掛けた◆節目の年を契機に、県とハワイの間では、人材育成や学術交流、新エネルギー分野での協力促進などが検討されているという◆ハワイと沖縄がお祝いムードに包まれた今年は、奇しくも石垣市と台湾・蘇澳鎮の姉妹提携20周年でもある。沖縄本島ではハワイの陰に隠れて目立たなかったが、八重山と台湾の交流も歴史は長い◆9月には中山義隆市長を団長とする訪問団が台湾・蘇澳鎮に入り、協力関係をさらに強固なものとするための覚書を交わした。農林漁業の特産品生産販売に向けたコミュニティ立ち上げ、学校現場での教育と相互訪問による文化交流の促進、観光産業の促進と交通産業の連携が主な内容だ◆国境に接する沖縄は諸外国に対する日本の玄関口でもある。ウチナーンチュは、世界の多様な文化や価値観を受け入れる包容力を持っている。交流拠点としての期待は大きい。

2015年

10月

08日

7日の内閣改造で…

  7日の内閣改造で、県選出の島尻安伊子参院議員が沖縄担当相に就任した。島尻氏は八重山に何度も足を運び、離島の課題を熟知している数少ない政治家の1人でもある。離島住民としては手腕発揮に期待が高まる◆島尻氏は米軍普天間飛行場の辺野古移設容認を明確に打ち出しており、本島では反基地派の憎悪を一身に浴びている。マスコミでも槍玉に挙げられることが多く、当選2回での大抜てきは、苦戦が予想される来年の参院選対策との見方が強い。しかし「オール沖縄」の大逆風が吹き荒れる中、女性ながら果敢に信念を貫く「男らしい」姿勢こそ安倍首相に評価されたと見ていい◆それにしても、インターネットの掲示板などを覗くと、反基地派が島尻氏に浴びせる罵詈雑言の数々に驚く。宮城県仙台市出身の島尻氏のせいで「仙台出身者のイメージが悪くなった」などというたぐいである◆島尻氏が他県出身ながら、沖縄で地歩を固めた努力に感心しこそすれ「本土出身者には沖縄人の心は分からない」などという物言いは、沖縄の品位をおとしめてしまう。政治家は政策で評価されなくてはならない◆八重山住民が最も望むのは離島振興だ。新大臣には女性ならではの目配り、気配りで離島の隅々まで光を当て、離島苦の解消に努力してほしい。

2015年

10月

03日

台風15号は10年に…

 台風15号は10年に1度の大型台風だと思っていたが、わずか1カ月ほどで、それをさらに上回る21号が襲来した◆災害は忘れたころにではなくて、記憶がまだ生々しいうちに立て続けでやって来る。台風銀座と称される八重山だが、改めて油断している暇などないと感じる◆電力、電話、水道といったライフラインの寸断は住民生活に大きな影響を及ぼす。離島の離島である八重山では、復旧のため、電力会社の作業員らを本島から呼び寄せなくてはならないが、民間の航空機は満席や欠航だった。代わりに自衛隊機が作業員の輸送で活躍した。与那国島や石垣島への自衛隊配備は住民の安心のためにも必要だ◆電柱の倒壊が停電などの被害を拡大させていることを考えると、電線類地中化は喫緊の課題だ。今回と同様の大型台風だった2006年の台風13号襲来時から、既に指摘されていたことだが、10年近く経った現在でも目に見える進展が少ないのはなぜだろう。予算の大きさや工事の複雑さを考えれば、確かに一朝一夕に進む事業ではないとはいえ、過去の教訓がうまく生かされていない◆被害が特に大きかった与那国住民のニーズを的確に把握することも必要だ。責任ある政治家には早期に来島して生の声を聞いてほしい。

2015年

9月

15日

中秋の名月である…

 中秋の名月である旧暦8月13日の今月25日、「とぅばらーま大会」が開かれる。石垣島の方言で、切ない思いが夜空に歌い上げられる。伝統文化である方言継承も大会の重要な目的の一つだ◆しかし最近「歌詞の部」の応募作を見ると、石垣島の方言と沖縄本島の方言(ウチナーグチ)が混同されている例が多く見られるという◆マスコミで方言の復興が叫ばれているが、宣伝される機会が多いのはほとんどがウチナーグチで、八重山の住民でさえウチナーグチと地元の方言の区別がつかなくなっているのだ。関係者は「ウチナーグチが八重山の島言葉を侵食している」と嘆く◆沖縄の人々は方言に対して複雑な意識を抱いてきた。方言を使った者が罰としてぶら下げたという「方言札」のエピソードが示すように、戦前、戦中は標準語が奨励され、方言は排除すべきものとされた。方言しか使えない沖縄人は本土で差別を受け、飲食店への出入りを禁止されたり、軍隊でいじめにも遭った◆実際には、沖縄方言は言語学的に日本語の一種であることが判明している。しかし、それを強調するまでもなく、方言とは日本文化の多様性を示す国民の貴重な財産だ。現在、八重山の方言は消滅寸前だが、それは八重山だけでなく、日本全体の損失でもある。

2015年

9月

04日

70年前の戦勝国とは…

 70年前の戦勝国とはそこまで偉いのか、というのが八重山住民の率直な感想だろう。「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」式典で習近平国家主席は「日本軍国主義の侵略者を徹底的に打ち負かした」「この偉大なる勝利によって、中国は再び、大国としての地位を手に入れた」と胸を張った◆歴史を忘れず、貴重な教訓として胸に刻むのは当然だ。だが70年前の感覚で現代を語られても困る。習主席の演説では、日本に対する融和の言葉は一言もなく、一方で国民に対し、共産党指導下での「中華民族の偉大な復興」を呼び掛けるなど、独善さだけが目立った◆「平和発展の道を歩む」と宣言しながら、200機もの軍用機やミサイルを披露する軍事パレードを実施する神経が、そもそも不可解だ◆ミサイルの登場時には、国営テレビのアナウンサーが「殺傷能力が高い、優れた兵器だ」と称賛。習主席が車で閲兵を行うシーンも、どこかの国の独裁者を見ているようだった◆習主席がこの日、世界に要求した「正しい歴史観」は「日本が尖閣諸島を領有するのは戦後の国際秩序に対する挑戦だ」という身勝手な主張を含む。八重山住民としては、習主席の粗雑な演説より、安倍談話のほうがよほど未来志向で、格調高く感じる。

2015年

8月

31日

個人的な体験になる…

 個人的な体験になる。小学校に入学したばかりの筆者はクラスで最も背が低く、ガリガリに痩せて、ひ弱な印象を与えた。体格の大きな子どもたちに目をつけられ、何度もいじめられた◆そこへ駆けつけたのが担任の女性教諭。いじめっ子たちを厳しく叱りつけると、彼らは別人のように大人しくなり、全く手を出して来なくなった◆ここから学べる教訓は2つある。一つは、残念ながら弱い者いじめは人間の習性だということ、もう一つは、強い者は、もっと強い者に対しては刃向えないということだ◆人間社会の法則は、広く国際社会にも適用できる。いじめられっ子が日本、いじめっ子が中国、教師が米国だと考えると、そのまま現代の縮図だ。戦後70年、なぜ日本が平和を保ち続けられたかは、人生の実体験から即座に理解できる。日米同盟があるからだ◆国会で審議中の安全保障関連法案は、その日米同盟を強化することが目的であり、日本の平和や安全に寄与することはあっても「戦争法案」ではないだろう。石垣市議会は同法案の今国会成立を求める意見書を可決しているが、石垣市民の声が本土まで届いていない現状がある。それどころか沖縄本島にさえ届いていない。反対派には大声で気勢を上げる前に、小さな声に耳をすませてほしい。

2015年

8月

27日

ゆがんだフェンス、倒れた街路樹…

 ゆがんだフェンス、倒れた街路樹、空っぽの商品棚…。台風15号の爪痕は各地に残っている。改めて大自然の脅威を実感せずにはおれない◆今回の台風被害に遭った多くの住民から「2006年の台風13号を思い出した」という言葉を聞いた。あの時の被害も凄まじく、市街地では電柱があちこちで倒壊し、トタン小屋などが吹き飛ばされ、長期間の断水もあった。当時、被害を取材していて「こんな台風は二度とないだろう」と思ったものだが、認識が甘かった◆石垣島地方気象台によると、当時の13号と今回の15号は、ともにフィリピン周辺から北上し、西表島と石垣島の間を通過するコースをたどっており、類似性があるという◆台風から見て東側は特に風が強くなる傾向があり、ちょうど石垣島がそこに位置する。被害が大きくなるわけである。13号との比較で考えても、今回の15号は八重山にとって10年に1度の超大型台風だったと見ていいだろう◆東日本大震災以来、災害というと地震や津波に目が行きがちだったが、八重山にとって最も身近な災害はやはり台風である。八重山は台風銀座なのだから、新たな13号、15号は今後も必ずやって来る。今回の台風襲来を受け「防災」「減災」のキーワードを改めて噛みしめる機会にしたい。

2015年

8月

18日

「沖縄の高校球児はプレッシャーに弱い」と…

 「沖縄の高校球児はプレッシャーに弱い」とレッテル貼りされていた時期があった。象徴的だったのが現ヤクルトの新垣投手を擁した1998年の沖縄水産。メジャーでも活躍した松坂がいた当時の横浜に対し「西の横綱」と称され、甲子園で県勢初優勝の期待が高まっていた◆しかし春、夏とも実力を発揮できず、ともに初戦で敗退。当時の新聞は「西の横綱が、もろくも崩れた」と評した。確かに「優勝候補」の呼び声は、選手には重圧だったのかも知れない◆しかし、沖縄球児が脱皮するのは早かった。沖縄水産が初戦敗退した翌99年には沖縄尚学が春の選抜で悲願の県勢初優勝を果たす。以後、沖尚の2度目の優勝、興南の春夏連覇が続く。2006年に離島から初の出場を果たした八重山商工も、夏の初戦では9回に追いつき、延長戦に持ち込んで逆転勝ちした。むしろ精神力の強さこそ、沖縄球児の真骨頂ではないかと思える時代が到来している◆今年の夏も、興南は接戦を次々と制して準々決勝まで進んだ。石垣市出身の高良選手も、勝負どころで代打として起用され、大舞台のグラウンドで躍動した◆人間に「レッテル貼り」は無意味だ。たくましく成長する子どもたちの姿から、大人が学ぶべきものは少なくない。

2015年

8月

16日

八重山では沖縄戦末期…

 八重山では沖縄戦末期、「戦争マラリア」と呼ばれる悲劇が起こり、住民の心に深い傷を残した。石垣市の新栄公園には「世界平和の鐘」があり、慰霊の日や終戦記念日などには必ず打ち鳴らされる。住民の平和への強い願いを発信している◆安倍首相の戦後70年談話には、広島や長崎への原爆投下などと並んで「沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲になりました」と沖縄戦に言及した。村山談話や小泉談話では触れていなかった点で、沖縄県民としても感慨深い内容になった◆談話が「(日本は)進むべき進路を誤り、戦争への道を進んで行きました」などと誤りを率直に認め、国内外のすべての犠牲者に哀悼を捧げたことも評価できる◆不可解なのは談話に対する中国の反応だ。中国メディアは「日本が心からの反省と謝罪をしないのならば、国際社会の信頼を得ることもできないし、世界平和に貢献することもできない」と相変わらず厳しい調子で日本を非難している◆中国は現に八重山周辺の平和をかき乱している張本人であり、むしろ八重山住民こそ中国に「おわび」を要求しなくてはならない立場にある。中国の謝罪要求とは八重山に対する領土的野心の正当化ではないか、という疑念がぬぐえない。

2015年

7月

31日

米軍普天間飛行場の…

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で、仲井真弘多前知事の辺野古沿岸埋め立て承認に「瑕疵がある」と判断した有識者委員会の報告書が公表された。前知事の承認には「論理の飛躍がある」と批判している◆報告書では、埋め立て申請の適正な審査のためには、在沖米軍基地の「歴史と現状の理解が不可欠」として、米軍の土地接収に始まり、普天間飛行場の県内移設反対派が勝利した直近の知事選、衆院選までの経緯を長々と記述している◆前知事は基地の過重負担軽減や県内移設反対を求める県民の声を考慮に入れ、不承認の政治判断をすべきだった、と暗に主張しているのだ◆しかし、尖閣諸島海域で中国の領海侵入が相次ぐなど、沖縄、八重山をめぐる国際環境が厳しさを増していることについては一言も触れていない。沖縄に米軍基地が存在することの是非は別に考えなくてはならないが、尖閣問題が深刻化する現状で、米軍基地の位置は「沖縄より熊本のほうが地理的に優れている」などと言い出すのは、それこそ論理の飛躍だと感じる◆翁長雄志知事はこの報告書をもとに、8月にも前知事の埋め立て承認を取り消す意向だという。国との法廷闘争に突入すれば、対立の泥沼化が懸念される。大口を開けて笑うのは尖閣を狙う隣国だろう。

2015年

7月

27日

大相撲は今場所も横綱・白鵬が…

 大相撲は今場所も横綱・白鵬が盤石の強さで優勝回数を35回に伸ばした。白鵬の偉業に虚心坦懐に拍手を送りたい◆しかし、昭和の時代から大相撲を見続けているファンとしては、いつまで経っても国内出身力士の優勝が見られないのは不満だ。記録をさかのぼると、2006年1月の栃東を最後に途絶えているというから「空白期間」はもうすぐ10年になる◆大相撲の外国人力士というと米国ハワイ州出身の高見山や小錦が懐かしいが、曙が史上初の横綱に昇進。当時は各界のタブーを破ったと騒がれた。その後はモンゴル出身者勢が破竹の勢い。今や、モンゴル出身者でなければ優勝できないのではないかと思われる時代になった◆こうした現状について、ファンからは外国出身力士の「強さ」より、国内出身力士の「弱さ」を指摘する論調も多い。豊かな環境に育ち、少子化で競争相手の兄弟も少ない「いまどきの若者」はハングリー精神に欠けることが多いとされる。いわゆる「ゆとり世代」はその典型例か。テレビで国内出身力士のもろさを見ていると、果たして大相撲だけの問題なのか不安になる◆国際化時代、子どもたちに伝えるべき重要な要素は協調と競争だ。前者だけに偏った教育になっていないか、改めて問い直してみることも必要だ。

2015年

7月

22日

「野党の反対を押し切って強行採決した」…

 「野党の反対を押し切って強行採決した」「多くの国民が集会を開き、戦争法案に抗議している」―。安保法案の衆院通過をこう報道したのは日本の新聞ではない。中国の国営テレビである◆日ごろ、自国民の「民意」をないがしろにしている一党独裁政権が、この時ばかりは「国民が反対している法案」と安保法案を非難している。滑稽というほかない◆先日、石垣市で自衛隊配備の是非をめぐる高校生のディベートがあり、聴衆の一人として参加した。一番印象深かったのは、賛成派、反対派とも「中国の脅威」を口にしたこと。10年ほど前までは、特定の国名を挙げて安全保障の議論をするなど、大人のディベートでさえタブーだった。それが今や高校生まで尖閣諸島問題を懸念している。「時代は変わった」と実感した◆石垣市議会は県内で唯一、安保法案の今国会成立を求める意見書を可決した。沖縄というと基地問題がクローズアップされるが、意見書の可決は、国境の島から尖閣問題の重要性を改めて訴える意義があった◆米ソの冷戦時代、国際協調のポスト冷戦時代が終わり、現在は中国の軍事的台頭という従来とは全く異質の時代に突入している。安保法案の反対論者は、思考が冷戦時代のまま停止しているように思えてならない。

2015年

7月

13日

翁長雄志知事が…

 翁長雄志知事が米国ハワイ州と県の姉妹都市30周年記念式典に参加するため、10日からハワイを訪れているが、県紙と全国紙で報道が全く違っており、興味深い◆まず県紙。12日付の報道を見ると「沖縄とハワイ 新たな絆」「交流拡大に意欲」などと明るく希望に満ちた記事で、同行した記者は、知事が沖縄とハワイの交流機関設置に意欲を見せたと報告。笑顔の翁長知事がカチャーシーを踊る写真を掲載している◆一方、産経新聞は11日付で「沖縄の危機管理に批判も」という記事。台風9号の襲来で多数の重軽傷者が出ているにもかかわらず、知事はハワイ、職務代理者の浦崎唯昭副知事は東京出張中でともに不在だと指摘。秘書課は安慶田光男副知事が県内に残っているため「問題ない」としているが、県ОBの「職務代理を置く意味がなく、県民の生命・財産を守る本分もわきまえていない」という辛らつな批判を掲載している◆同じニュースでも、どの側面に光を当てるかで全く違う結論が導き出される好例だろう◆米軍普天間飛行場移設問題も、辺野古移設反対を訴える知事は県紙から高く評価されているが、保守系の全国紙はシビアな視線を送っている。多面的な物の見方を養うため、新聞を読み比べる姿勢も大事だ。

2015年

7月

05日

3月の自民党政策審議会で…

 3月の自民党政策審議会で、放送番組の過去のデータを蓄積する「放送アーカイブ」を議論した際、島尻安伊子参院議員が「先日の選挙では私の地元のメディアは偏っていた。あの時どうだったか調査するのは大事だ」と述べたとして、県紙が「放送アーカイブ、報道監視に利用、島尻氏が意向」と報じた◆島尻氏はホームページで「(報道監視などとは)一切発言していない」と反論。しかし県紙は社説で「自民党に不利な放送内容があるという前提に立ち、事後検閲の制度化を求めるものだ」と重ねて批判した◆マスコミの権力批判は民主主義の根幹を成すが、当のマスコミが批判から超越していいわけはない。報道がさまざまな角度から検証されるのは当然で、島尻氏の「発言」は「報道監視」とは違う話ではないか◆「事後検閲」という言葉も理解し難い。検閲とは報道などを事前に差し止める行為である。政権が報道内容を事後にチェックし、恣意的に罰則を課す行為を想定しているのかも知れないが、いずれにせよ表現の自由の侵害であり、憲法が禁止している。「制度化」など有り得ない◆そもそも島尻氏の「発言」は審議会に出席していない野党国会議員が伝聞で告発したという。県民としては、あげ足取りより政策論争に専念してほしい。

2015年

6月

24日

厳かな慰霊の場に…

 厳かな慰霊の場に政治的主張を持ち込んでいいのか。糸満市で開かれた沖縄全戦没者追悼式で朗読された翁長知事の「平和宣言」に懸念を感じた八重山住民も多かったはずだ。翁長知事が宣言で、政府に米軍普天間飛行場の辺野古移設中止を要求した◆会場からは、翁長知事に対しては拍手、安倍首相に対してはヤジが飛び、さながら政治集会だった。これも県の「平和宣言」が発端だ。こんな騒然とした追悼式で、果たして御霊は安らかでいられるだろうか◆八重山で開かれた追悼式は対象的だった。参列者はあらゆる政治的対立を超え、静かな雰囲気で戦争の悲惨さを語り、平和への思いに心を一つにした。主張の違いは何ら問題にならなかった◆最近、辺野古移設阻止を訴える知事の言動はエスカレートの一途をたどっているように見える。先月には「抑止力のために(辺野古移設が)必要だと日米両国が決めても止める」と述べ、今月は辺野古移設阻止を目的とした「辺野古新基地建設問題対策課」を県庁に新設した◆辺野古移設に向けた作業が進む中、県に苛立ちがあることは理解できる。しかし「反基地」の最も過激な主張が、そのまま県民の声として発信されているような現状では、県民の1人として不安を感じずにはいられない。

2015年

6月

19日

 石垣市出身のジャーナリスト、三木健さんの…

 石垣市出身のジャーナリスト、三木健さんの資料展が17日まで市立図書館で開かれた。著書の原稿用紙も見学でき、ます目を一文字づつ埋めていく作業の膨大さに圧倒される思いがした◆20年ほど前までは新聞社の原稿も手書きが普通だった。ワープロの登場もさほど昔の時代の話ではないと記憶しているが、今ではあらゆる原稿がパソコンへの入力になり、社内はもちろん、県外や国外からも文字データを瞬時に受け渡しできる時代になった◆分厚い原稿用紙の束を見ると息をのむが、パソコンの画面上に延々と続く文字データを見てもさほどの感慨はない。文豪の文学館などでは、手書きの原稿や万年筆が展示されるのが常だが、将来の文学館には何が展示されるのだろうか。便利さと引き換えに、手書き文化の衰退が確実に進んでいるのを感じる◆資料展では、三木氏が琉球新報記者時代に書いた取材メモも多数並び「よくも丹念に保存したものだ」と感嘆させられた◆使い終わった資料はごみ箱へ投げ込むのが当然のように思っていると、10年後、20年後にしっぺ返しが来る。「あの時の資料をもう一度見たい」「あの状況をちゃんと記録しておけば良かった」。若いころはさして気にならないが、年老いた今は悔悟が尽きない。

2015年

6月

04日

会議の運営は…

 会議の運営は楽な仕事ではない。テンポよく進み、十分に意見交換ができ、実りのある結論を得る―という会議が理想的だ。いろいろな会議を取材したり、自ら参加したりしてきたが、理想的な会議に出会えた経験はほとんどなかった◆ありがちなパターンの一つは、配布された資料の説明が延々と続くというものだ。ひどい会議になると、担当者が「説明」とか「報告」と称し、資料の全文を棒読みしたりする。資料は参加者の目の前にあるのだから、時間の無駄というほかない◆出席者の自己紹介や資料の説明に時間の大半を費やし、3時間近い会議なのに、意見交換が最後の15分だけだったというコメディのような会議もあった◆意見交換の時間は十分でも、一部の出席者が話題を独占し、大半の出席者にとって関心の薄いテーマでひたすらおしゃべりが続くというパターンもある。そういう時に議長の役割は重要だ。うまく交通整理をして話を本題に戻し、出席者の意見を調整し、とにかく何らかの結論に導く手腕が求められる◆大事なのは会議後の行動だ。会議そのものは座って話をするだけの場であり、かける時間は短いに越したことはない。しかし、会議そのものが目的になっているような会議が何と多いことか。行政しかり、民間しかりである。

2015年

5月

04日

言葉の乱れは世相の乱れが…

 言葉の乱れは世相の乱れが背景にあるようだ。最近の沖縄で飛び交う奇妙な日本語を聞いていると、沖縄の将来に危惧を抱かずにはおれない◆まずは「粛々と」という言葉。「やるべきことを淡々とやる」というプラスイメージの言葉だったはずだが、最近はなぜか「上から目線」を意味するようになった◆米軍普天間飛行場の辺野古移設を「粛々と進める」という政府を翁長知事が批判したことに端を発するが、反対派をはじめ周囲が一斉に知事の言葉尻に乗った。八重山でも「粛々と」という言葉を「使いにくくなった」とこぼす人がいる◆「過剰警備」という言葉もよく耳にするようになった。辺野古埋め立ての海上作業を阻止すべく船を繰り出す反対派に対し、警備に当たる海上保安官に投げつけられる言葉だ。だが過剰警備なるものは「過剰抗議」の裏返しではないか。プラカードを持ちデモ行進する程度ならともかく、辺野古の海に身を投げ出す行為が常識的な抗議活動とは考えにくい◆辺野古移設を「辺野古新基地」と言い換えるのもおかしい。移設は負担軽減であり、新基地は負担増なのだから、意味は全く逆ではないか。「新基地」という言葉が既に特定のイデオロギーを示唆しており、責任ある立場にある人が軽々に使うべきではない。

2015年

4月

26日

明和大津波の日である…

 明和大津波の日である4月24日を前に、突如、与那国島を襲った震度4の地震。20日に宮古、八重山地方に発表された津波注意報は住民を震撼させた◆幸い与那国島に被害はなく、津波の到達も観測されなかったが、使い古されたはずの「災害はいつ来てもおかしくない」という言葉が、改めて住民の胸にズシリと響いたはずだ。石垣市は24日に津波避難訓練を行い、26日にも全島一斉の防災訓練があるが、図らずも本番と訓練の順序が逆になってしまった◆八重山は太古から津波の常襲地帯であることが考古学的な証拠で指摘されているが、もし再び大津波に襲われることがあれば、被害は家屋の浸水や倒壊などにとどまらない。八重山は離島の離島であり、空港や港湾が破壊されれば、物資や援助隊が島に入らなくなり、住民は大海の真ん中で孤立化してしまう危険性がある◆停電や断水で住民生活は混乱。地割れや土砂崩れなどによる道路の寸断も懸念される◆住民自身が日ごろから「自助」「共助」「公助」の流れを把握し、役割分担の意識を持つことが必要だろう。とりわけ自助と共助は日ごろからの防災訓練が実際の行動に直結する。訓練が惰性的なイベントになってしまっては意味がない。大切な命を守る真剣勝負という意気込みで参加したい。

2015年

4月

14日

自民党県連の新会長に…

 自民党県連の新会長に就任した島尻安伊子参院議員が、あいさつで米軍普天間飛行場の辺野古移設反対運動に触れ「反対運動は責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治として対峙(たいじ)していく」と述べ、移設反対派から激しいバッシングを受けている◆島尻氏の真意を推測すると、たぶんこういうことだろう。責任がある反対運動であれば、問題解決に対する何らかの対案を示すはずだ。基地をどこへ移設するのか、基地を全撤去したあとの沖縄の安全保障をどう考えるか。その答えもなく、ただ反対の拳を上げるだけでは事態は前進せず、責任ある政治家としては反対運動と対峙するほかない、と◆沖縄本島と一定の距離を置く八重山住民の視点からすると「島尻氏は政治家として、自らの信念を正直に語ったのだ」という感想しかなく、賛同するしないは別にしても、特に不適切な発言とは思われない◆むしろ「反基地」の旗印だけで、移設に前向きな発言に対し、過剰な言葉狩りに走るような風潮はまずい。私たちは政治家から本音を聞きたいのであって、政治家が委縮して何も言えなくなるような社会になってしまっては、民主主義そのものが脅かされてしまう◆重要な問題であればあるほど、賛否両論に耳を傾ける謙虚さが大事だ。

2015年

4月

07日

4月はフレッシュマンの…

 4月はフレッシュマンの季節でもある。名蔵小中学校の石垣校長が新採用の教員などを対象に講話した記事が6日付本紙に掲載されたが、手抜きの方法ではなく、難儀することを教えるのが本物の先輩だと語っていたのが印象的だった◆自分自身の過去を振り返ると、きつい仕事を次々と押し付けてくる先輩には閉口させられた記憶がある。しかし新人時代に楽をすることを覚えてしまったら、仕事が長続きすることはなかったろう◆新人時代には、先輩や同僚からの助言や忠告を、当たり前のようにやり過ごしてしまうことが多い。最近は政治も企業も若返りが進み、40代でトップに立つ人も少なくなくなった。そうなると、若いからと言って、周囲もおいそれと忠告などしない。50代ともなると言わずもがな◆江戸時代に武士の心得を説いた「葉隠」に至っては、30歳を過ぎると忠告してくれる人もいなくなると指摘する。いずれにせよ他人から親身にアドバイスを受けられるのは、20代のフレッシュマンだけの特権だろう◆それに、年老いて気づくのは、20代の体力がいかに驚異的かということ。大いに仕事に励めるのも今だけ、大いに先輩に叱られるのも今だけだ。そして桜の花が散るように、その季節はあっという間に終わってしまうのである。

2015年

3月

30日

大学時代に「21世紀の中国」を…

 大学時代に「21世紀の中国」をテーマにした講義を受け、教授や参加者と意見交換したとき、出席者の誰もが「21世紀は中国の世紀になる」と断言した◆人口の多さや人民の潜在能力の高さから、いずれ米国をも抜き、世界一の大国に成長する―と誰もが予想した。「そんなものか」と思いながら話を聞いていた記憶があるが、予想より早く、その時が訪れようとしているようだ◆中国が主導して設立する国際金融機関、アジアインフラ投資銀行に日米を除く主要国がこぞって参加を表明しており、従来の日米主導に代わり、中国を中心とした新たな金融秩序がアジアで誕生しそうだ。中国が名実ともに「アジアの盟主」として影響力を拡大させることになる◆ただ経済面での躍進とは裏腹に、中国の軍事的、独裁的な体質は強まる一方だ。本来なら隣国の経済成長は大きなチャンスだが、尖閣問題を抱える八重山にとっては、逆に脅威が増す一方だと受け止められる。順調に伸びる八重山観光も、外国人からの誘客は台湾や香港がメインターゲットとなっており、中国本土との民間交流が活発化する兆しはない◆東アジアの玄関口を目指す八重山にとって、相互理解が深まらないまま、隣国の存在感だけ増していく現状は不幸としか言いようがない。

2015年

3月

12日

タイの貧困街で育ちながら…

 タイの貧困街で育ちながら、子どものころに日本の支援団体がつくった図書館で学ぶ喜びを知り、現在は外交官として活躍している女性が10日付の本紙で紹介されている◆彼女の周辺には麻薬がはびこり、彼女の幼なじみには刑務所に収容された人もいて「本に出会わなかったら、私も犯罪に手を染めていたかも」と述懐している。一つの図書館、一冊の本が彼女の人生を変えた◆石垣市でもエーデルワイス会長の比屋根毅さんや、産経新聞顧問の桃原用昇さんが、郷土の後輩のため各学校に熱心に本を贈っていることが知られている。本がそろったからと言って、その年からすぐ学力が向上するわけではない。しかし、その本と出会った一人の子どもの運命が変われば、世界の運命が変わることも有り得る。本を贈る行為は地味かも知れないが、その効果は計り知れない◆新潟には「米百俵」という有名な逸話がある。戊辰戦争に敗北し、窮迫していた長岡藩の小林虎三郎が、周囲の反対を押し切り、支援米百俵を学校設立の資金に充てた。「米は食べてしまえば終わりだが、人材が育てば必ず故郷は復興できる」と周囲を説得した◆国も地方も人材が浮沈のカギを握る。胸を張って「教育立市・立町」を内外に宣言できる八重山になってほしい。

2015年

3月

09日

「勧酒」という有名な漢詩がある…

 「勧酒」という有名な漢詩がある。友人に酒を勧め「花発(ひら)けば風雨多し/人生別離足る」と別れを惜しむ場面だ。「サヨナラだけが人生だ」とも訳された。進学や異動などで別れの季節といわれる3月は、この名文句を思い出す人も多いだろう◆若いころは別れの寂しさを噛みしめながらも、新たな出会いへの期待に胸を膨らませることができた。しかし年老いてくると、人生は別ればかりのような気がしてしまう。老年になると活動範囲も限られ、出会いも少なくなってくるせいだろう◆固い絆で結ばれてきた家族、友人たちが徐々に身辺から消え、最後にはかく言う自分もこの世に別れを告げる。どんなに愛する人であっても、永遠に一緒にいることはできない。仏教では愛する人との別れを「愛別離苦」と呼び、人生の苦悩のうちでも特に大きなものの一つに挙げる◆しかし逆に考えると、いつかは別れなくてはならないからこそ、大切な人と過ごす今が、かけがえのない時間だと知る。「あんな冷たいことを言わなければよかった」「感謝の気持ちを素直に伝えたかった」と、あとで後悔しても始まらない。つまらないけんかや、意地の張り合いに費やす時間はない◆今を誠実に生きたい。「勧酒」を口ずさむたび、そんな思いが胸をよぎる。

2015年

3月

02日

石垣市の小学校教諭が…

 石垣市の小学校教諭が飲酒運転で飲食店従業員の男性をはね、男性は昨日亡くなった。子どもたちの模範となるべき教諭の行為として言語道断で、空いた口が塞がらない。20代の若さで将来を奪われた被害者の無念、遺族の憤りは想像するに余りある◆教諭は同僚と酒を飲んだ帰りだったという。運転席に乗り込んだとき「飲んだら乗るな」というスローガンは頭をよぎらなかったのだろうか。県の飲酒運転根絶条例が石垣市の辻野ヒロ子元県議の主導で制定されるなど、八重山は飲酒運転の防止に人一倍熱心に取り組んできたはずだった◆教諭の今後を考えても暗澹たる気持ちになる。被害者が亡くなったことで、県教育委員会からは厳しい処分が予想される。今後の捜査によっては刑事責任を問われる可能性もある。被害者への賠償責任ものしかかる。教諭はまだ働き盛りの年齢だが、今後の人生を贖罪とともに送らなくてはならない。飲酒運転の恐ろしさが改めて痛感される◆最近も石垣市の臨時教諭が強制わいせつで逮捕される事件があったが、こうした教諭たちは一体、現場でどのような指導を受けてきたのか。自分の仕事を普通のサラリーマンと勘違いしていないか。この事故を八重山の住民すべての問題と受け止めて再発防止に努めるべきだ。

2015年

2月

15日

中国公船「海警」は今年に…

 中国公船「海警」は今年に入っても執拗に尖閣諸島周辺を航行し、領海侵犯も繰り返している。昨年の日中首脳会談で日中は融和ムードにあると期待されたが、八重山住民にすれば、見事に期待を裏切られた形になった◆昨年12月の朝日新聞の報道によると、中国の軍艦や公船は習近平国家主席の直属組織のもとにあり、組織のメンバーが無線やテレビ電話を使って現場に指示を出すこともあるという。海警の動きが中国政府上層部の意向を直接的に反映しているのは間違いない◆海警が「配慮」らしきものを示すこともある。石垣市が「尖閣開拓の日」式典を開いた1月14日、海警は尖閣周辺の接続水域を航行していなかった。直前の1月12日、日中は尖閣周辺などの海上で不測の事態を避けるため「海上連絡メカニズム」構築に向けた実務者協議を2年ぶりに東京で開いており、海警は前日の11日から接続水域を出ていた。協議中に不測の事態が起きるのを避けたのだろう◆しかし結局、海警が接続水域で姿を見せない期間が1週間を超えることはなかった。そのメッセージは「中国は尖閣をあきらめない」の一言に尽きる◆沖縄本島では米軍を「悪しき隣人」と呼ぶことがあるそうだが、八重山で「悪しき隣人」と言えば、間違いなく中国だ。

2015年

1月

28日

翁長知事は米軍普天間飛行場の…

 翁長知事は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、埋め立てを承認した仲井真前知事の判断に法的な瑕疵(かし)がなかったかを検証する有識者委員会を設置した◆予想されていたこととはいえ、委員は辺野古移設に強く反対してきた知識人や弁護士といった顔ぶれ。「仲井真前知事の承認には瑕疵があった」という「結論ありき」が露骨という印象は否めない◆首長の政策実現に向けたレールを敷くため「アリバイ作り」の有識者委員会が組織されるのは珍しくない。しかし県民の圧倒的信任を獲得し、従来の県政を刷新する意気込みを見せていた新知事にして、旧態依然とした行政手法に依存する姿は物悲しい。公平な人選で堂々と白黒を問う気概を見たかった気もする◆辺野古周辺では移設工事に対する激しい反対運動が展開されており、反対派が海保に強制排除されている。反対の意思表示は民主主義社会で当然の権利だが、工事を実力行使で妨害することまで許されるのか。誰が被害者で、誰が加害者なのか。冷静な判断が必要だ◆八重山近海では、日本の国境線を実力行使で変更しようとする他国の公船が連日のように航行している。法を無視した反対運動は、やっていることの本質が他国の公船と同じではないか。

2014年

12月

30日

八重山商工野球部を…

 八重山商工野球部を甲子園に導いた伊志嶺吉盛監督の「派遣事業」が今年度で終了する。同事業は2003年、「八重山から甲子園に」という市民の気運盛り上がりを受け、当時の大浜長照市長が決断。少年野球の指導者だった伊志嶺氏を地元高校に派遣し、月々の謝礼を市が負担するというものだった◆当初は監督の厳しい指導について行けず、部員が次々と脱落。一時はついに3人だけという事態に陥った。当時、最後まで頑張り、野球部を存続させた部員たちは、のちの甲子園出場の隠れた功労者だろう◆伊志嶺監督が少年野球で指導した大嶺祐太選手らが入部し、ようやく同校は実力を発揮。06年に県内離島初となる春夏連続甲子園出場を果たす◆あれから8年。甲子園出場がいかに難事かを考えれば、再々出場が果たせない現状を一概に責められない。当時に比べると市民の気運も薄れてしまった。派遣事業の終了も、やむを得ない面があった。市民の税金が投入されている以上、結果が出ないのに10年も事業を継続することは不可能だろう◆しかし8年前にまかれた種は、まだ芽を出す可能性を残している。伊志嶺監督は今後も指導を継続するからだ。派遣事業の終了を奮起の材料に、3度目の甲子園に向けた「再起動」を果たしてほしい。

2014年

12月

24日

香港で民主化を要求する…

 香港で民主化を要求する学生たちの姿を、中国メディアは冷たく突き放して報道した。国営テレビは、学生たちが秩序を乱していると非難する市民のインタビューだけを繰り返し流し、ニュースキャスターは必ず「(学生は)違法だ」と強調した。ニュースでは、政府の公式見解が延々と垂れ流された◆公平な報道とは、何か意見が割れる大きな問題があるときに、両方の意見をバランスよく紹介することだ。この意味で中国メディアの報道が完全に失格なのは、国営テレビのニュースを数分も見ていれば気づく◆最高指導者である習近平氏を礼賛するニュースが10分近くも続き、日本に関する報道と言えば「アベノミクスの失敗で衰退している」「右傾化で軍事力の強化が進んでいる」などと金太郎あめのような内容ばかり◆さらには、新空港が開港したばかりの石垣島を「中国海軍が太平洋に進出する際の通り道だ」と言い放つニュースキャスター。こうした報道姿勢には人間性が感じられない。八重山からわずか数百㌔先の隣国では、こんな報道が堂々とまかり通っている◆客観性を保ちながら、なおかつ人間的な報道。これは民主主義社会であっても難しい。しかし民主主義社会に住んでいるからこそ挑戦でき、可能でもあるテーマだ。

2014年

12月

19日

日本では年末の風物詩とも…

 日本では年末の風物詩とも言われるベートーヴェンの「第9」が12月13日、石垣島でも生で響き渡った。「日本最南端の島から第9の調べで平和を発信しよう」をキャッチフレーズに、この演奏会に向け「石垣フィルハーモニー管弦楽団」が結成され、関係者の意気込みは並々ならぬものがあった◆10年ほど前にプロのオーケストラが招かれ、地元の合唱団と「第9」全曲を共演したことがある。今回のオーケストラは島外からの応援も仰いでいるが、主体は地元であり、その意味でも画期的な取り組みだったと言える◆演奏されたのは「第9」の最終楽章のみだったが、アマチュアとは思えないほど情熱的で、難しいパッセージにも果敢に挑戦しているのが聴き取れた。合唱はオケに負けない圧倒的な声量で、広い会場を「歓喜の歌」で包み込んだ◆シラーの「すべての人が兄弟になる」という歌詞は、人類の融和を歌い上げたものとして有名だ。しかしそれだけではなく、苦難を乗り越えて力強く生きた作曲者自身の人間ドラマでもある。それは「第9」全曲を聞かないと伝わりにくい◆千里の道も一歩から。たとえ時間がかかっても「石垣フィル」で「第9」のすべてを聴ける日を楽しみにしたい。沖縄の音楽史に残る金字塔になるだろう。

2014年

12月

16日

米軍普天間飛行場の辺野古移設に…

 米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する候補に投票した有権者は、勝利の美酒に酔いしれて床についたあと、翌朝の新聞を見て仰天したかも知れない。打倒したはずの自民党候補4人がそろって比例で復活当選していたからだ。結局、沖縄では小選挙区に立候補した全員が国会議員のバッジをつける◆知事選では、確かに県内移設反対の「民意」が示された。しかし衆院選では、辺野古移設を容認した自民党の4人も、小選挙区で勝利した4人と同じ発言権を持ち、今後の国会活動に臨むことになる。辺野古反対派の国会議員は増えたが、容認派も減っていない◆こうなると「知事選に続き衆院選でも辺野古移設反対の民意が示された」とは、一概に言いにくい。「小選挙区の結果が民意だ」と言う人もいるが、では比例の結果は民意ではないのかということになる◆重複立候補という選挙制度を疑問視する声もあるが、結局、県民は辺野古移設反対、容認の候補をバランス良く国会に送り出した、という見方が妥当なところだろう◆ともかくも、小さな沖縄から衆参合わせて11人もの国会議員が生まれた、というのは朗報だ。11人には、辺野古移設反対ではなく、離島振興という、より大きなテーマで「オール沖縄」を構築し、沖縄の明るい未来を開いてほしい。

2014年

11月

21日

映画スターの高倉健さんが…

 映画スターの高倉健さんが亡くなった。昭和のスターというと、現在の若い人にはほとんど残像しかイメージできないが、高倉さんは現在もなお輝きを失わないスターだった◆高倉さんが石垣市を訪れた際、たまたま見かけた富野小中学校の運動会に感動し、同校に手紙やプレゼントを贈ったという逸話もある。死後になって、東日本大震災被災地の少年と文通していたことも報道された。温かい人柄をしのばせる数多くのエピソードを残したのも、高倉さんが特別な存在だったゆえだろう◆現在の八重山では映画館はなくなってしまったが、かつて映画は住民にとって最大の娯楽だった。ある年代であれば、八重山にも、リアルタイムで高倉さんが出演する映画の数々を楽しんだ人は多いだろう◆昭和の文豪、三島由紀夫は映画好きで、高倉さんも好きな俳優の一人だったという。1970年の壮絶な自決直前、三島由紀夫が同志の若者と最後に口ずさんだ歌が、高倉さん主演映画の主題歌「唐獅子牡丹」である。2人の没年は44年離れているが、ともに男の美学を貫いた同時代人だった。1人は穏やかに、1人は鮮烈に。2人の最期は対照的だが「男らしさ」という点で一致する◆三島由紀夫25日、高倉健10日。奇しくも命日は同じ11月である。

2014年

11月

19日

11月18日は、フォード米大統領が…

 11月18日は、フォード米大統領が米国の元首として初来日して40年の節目だった◆ミシガン州にあるフォード大統領記念館を訪れたことがある。フォード氏が生前に使っていたデスクなどの記念品や、館内に再現されたホワイトハウスの大統領執務室などを見学した。記念品を買ったり、記念撮影したあと、乗ってきたバスに戻ると、老運転手が1人いるだけだった◆老運転手に「フォード大統領は、ニクソン大統領がウォーターゲート事件で失脚したあと、就任した大統領ですね」と思い切って話しかけてみた。彼は人の好さそうな笑みを浮かべて「君は米国の歴史を勉強している」と肩を叩いてくれた◆そこで思い切って「歴代大統領では誰が好きですか?」と聞くと「オバマだ。ブッシュが嫌い。親戚がイラク戦争で亡くなったから。私は戦争が嫌いだ」。老運転手は、温かな笑顔を崩さないまま、そう話した◆記念館でのことを思い出すと、筆者の間違いだらけのイングリッシュにニコニコと付き合ってくれた老運転手の姿が脳裏に浮かぶ。筆者は「オバマ嫌い、ブッシュ好き」派だが、老運転手との何気ない会話は心にしみいった。超大国である米国の国民といえども、平和を願う心は日本人と変わらない、と確認できたからだ。

2014年

11月

15日

知事選で尖閣問題が…

 知事選で尖閣問題が争点の一つになることを期待していたが、結局、空振りに終わった。連日話題になる米軍普天間飛行場問題とは対照的に、4候補が尖閣に言及する機会はほとんどなかった◆この間、国際情勢は動いた。日中首脳会談で安倍首相と対面した中国の習近平国家主席は、首相のあいさつを無視し、露骨に冷淡な表情を見せた。他国の首脳との会談では背景にその国の国旗が掲げられたのに、安倍首相との会談では国旗が見当たらないなど、日本への差別待遇が際立った◆そこから推測されるのは、尖閣問題に象徴される中国の「反日」が、ほかでもない最高指導者に端を発しているということだ◆日中首脳会談や合意文書にかかわらず、中国が尖閣を強奪する決意に変わりがないことが世界に示された。中国で共産党独裁政権が続く限り、いずれ間違いなく、八重山や沖縄にとって厳しい事態が起きるだろう◆日中首脳会談に配慮して尖閣海域から去っていた中国公船も14日には舞い戻り「パトロール」を再開した。本欄が以前に指摘した通り、日本がいっそう劣勢に立った形で、尖閣争奪の第2ラウンド開始である。こんな状況下で行われる知事選で、尖閣が話題にならなかったことは、重ね重ね残念だったと言わなくてはならない。

2014年

11月

12日

「この世をばわが世とぞ思ふ…

 「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」とは平安時代に栄華を極めた藤原道長の歌だが、関白ならぬ中小零細企業のサラリーマンの人生は「満ちれば欠ける」の連続ではないか。何か問題を解決したと思えば次の難問が持ち上がり、それも解決しないうちに次なる難問がのしかかってくる、という日々である◆残り少なくなった今年を振り返ってみると、結局何が何だか分からないうちに月日が積み重なっていったようだ◆時間の経つのも忘れてトラブルとの戦いに明け暮れるうちに年齢だけはベテランの域に達し、三十にして自立できず、四十にして惑い苦しみ、五十にして成すべきことを成していないという有様である◆米国のケネディ元大統領は「危機とは中国語でピンチとチャンスを意味する」と語ったという。今、目の前にある危機は一見ピンチのように見えて、実はチャンスなのかも知れない。チャンスをピンチと取り違えてしまうと、筆者のように出口のない消耗戦に突入し、体力も気力も衰え、結局は何事も成し遂げられないまま老人になってしまう◆ピンチとチャンスを見極めること。毎日のトラブルに窒息しそうな若い企業戦士の皆さんに、一歩立ち止まって、自分の立ち位置を再考するよう勧めたい。

2014年

11月

09日

 2012年の尖閣諸島国有化前から…

 2012年の尖閣諸島国有化前から、中国政府が執拗に続けてきた尖閣周辺への公船派遣や領海侵犯が、ついに実を結んだということだろうか。日中は尖閣を含む東シナ海で「緊張状態が生じている」ことについて、互いに異なる見解を持つことを認識する、と明文化した。日本がついに根負けした、という印象を持った◆武力行使はしない、とうたった憲法のもと、日本人は、常に対話を優先しなくてはならない、という平和教育を受けてきた。しかし現実の国際社会では、尖閣を狙う中国が、対話ではなく実力行使で尖閣を取り巻く従来の情勢を打破したように見える。従来の平和教育は何だったのか、問い直されなくてはならない◆さらに日中合意に至る一連の動きの中で、国際社会における日中の国力に厳然たる差が存在することもあらわになってしまった。今後の日中関係は、名実ともに中国が主導権を握る形で推移するという予感が強まる◆中国は現在、APECで予定されている日中首脳会談に配慮して、尖閣周辺の公船を接続水域外に退去させているようだ。だが会談が終われば、公船が再び尖閣海域に姿を現す可能性が高い。日本がいっそう劣勢になった状況で、尖閣争奪の第2ラウンドが始まる―という危惧がぬぐえない。

2014年

11月

01日

知事選が始まったが…

 知事選が始まったが、八重山住民としては、米軍基地問題の影に隠れ、尖閣諸島問題がほとんど議論に上らないのが気になるところだ◆尖閣周辺を航行する中国公船3隻は知事選告示日の30日、領海侵犯し、領海内を約2時間航行したあと、領海外に出た。記憶をさかのぼると、今年の石垣市長選告示日だった2月23日にも、中国公船3隻が領海侵犯し、全く同じような動きを見せている。いずれも八重山、沖縄の未来を決する重要な選挙の告示日。中国公船は、わざわざこの日を選んで領海侵犯したとしか思えない◆そこで思い出したのが1996年、中国軍が台湾総統選に合わせて台湾周辺に出動し、軍事演習を行って住民を威嚇した事件である◆スケールは違うが、今回の中国公船の動きも、まさに同じメッセージを日本国民、沖縄県民に送っている可能性がある。つまり「中国の気に沿わない政策の人物を選んだら、ただではおかない」という脅しだ。中国が共産党独裁国家であることを考えると、中国公船の動きは、尖閣の領有権主張のみならず、沖縄、ひいては日本の民主主義に対する挑戦という受け止めも可能だろう◆次期知事は先鋭化する尖閣問題にどのように対処するのか。各候補者に納得できる回答を迫れるのは、八重山住民しかいない。

2014年

10月

27日

何が「正しい」かという疑問は・・・

 何が「正しい」かという疑問は、一見単純明快なようでいて、実際にはなかなか難しい問題をはらむ。時代を支配する価値観は時間とともに変化するのが常だ。50年後、100年後には全く逆の価値観がまかり通るかも知れない。現在の「常識」が未来の「非常識」となる可能性は十分ある◆音楽の世界にも、こうした問題が存在する。古今を通じて最大の名曲とされ、年末には誰もが耳にするベートーヴェンの「第9交響曲」。近年の自筆譜の研究によって、この曲の第1楽章に登場するあるメロディは、実は後世の出版社によって音程の一部が改ざんされていたことが分かった◆最近はオリジナルに戻した演奏のCDも登場しているが、実際の演奏会を含めて、現在も改ざんされた楽譜を使用するのが一般的だ。演奏家も聴衆も、改ざんされた楽譜に「慣れ」てしまい、オリジナルのほうに違和感を抱いてしまうのである◆同じく有名なモーツァルトの「トルコ行進曲」も、楽譜の読み方によっては、私たちが聞きなれているメロディが全くの「間違い」である可能性がある◆あえて音楽を例に取ったが、歴史とか政治の世界では、こうした状況は言わずもがな。自分の考えを持つのは当然だが、それを絶対だとは考えず、常に一歩引く冷静さも必要だろう。

2014年

10月

24日

テレビドラマの一ファン…

 テレビドラマの一ファンとして、密かな一つの信念を持っている。いわゆる「男らしい男」を主役に描くドラマは、男性の脚本家に書いてほしい、というものだ◆こんなことを言うと偏見だと怒られそうだが、大河ドラマなどを見てきて、女性脚本家が描くヒーローに常に違和感を抱いてきた。男の目から見て軟弱なのである◆非情な手段で敵を倒した戦国武将なのに、なぜか実は平和主義者で、城に帰ってから「自分は悪人だろうか」とクヨクヨ悩んだりする。物事には常に優柔不断。男尊女卑の時代なのに、女や子どもには異様なほど優しい◆要するに女性の目から見た「男はこうあってほしい」という理想像なのだが、本家の男に言わせると「男はそんなもんじゃないだろう」という気がする。戦国武将であれば、胸に秘めたものがあっても表には出さず、顔で笑って心で泣く。しんの強さがにじみ出るようなヒーロー。こういう男を描くドラマは、男性の脚本家のほうが成功しているように感じる◆とはいえ、色白でなよなよした最近の人気タレントなどを見ると、男の目から見た理想の男も、だいぶ軟弱化が進んでいるように見受けられる。実際のところ「男らしく」「女らしく」という言葉だって、現実社会では死語になりつつあるのではないか。

2014年

10月

22日

石垣島と宮古島で…

 石垣島と宮古島で、ほぼ時を同じくして、優れた才能を持つ2人の有名人が亡くなった。奇しくも、ともに交通事故死である◆石垣島で9月に亡くなったのは天然素材を生かした服飾ブランド「ヨーガンレール」(東京)のドイツ人デザイナー、ヨーガン・レールさん。石垣島で農作業しながら、東京と往来していたという。宮古島では今月、元サッカー日本代表の奥大介さんが亡くなった。宮古島のホテルに就職し、第二の人生を始めた矢先だったという。2人はともに、沖縄の離島に新天地を求めていたのだ◆本土から八重山に移住する人は、どんどん増えている感じがする。各種大会で活躍した児童生徒の名簿などを見ていると、本土の姓がかなりの割合を占める。豊かな自然や文化はもとより、外来者に寛容な土壌が移住者を惹きつけるのだろう◆このまま移住者の増加傾向が続けば、八重山に限らず、将来的には混血も進み、純粋な沖縄人は少数派になる可能性もある。こうなると「ウチナーンチュ」の定義もあやふやだ◆沖縄人の純粋なDNAを持つ者なのか、沖縄に生まれ育った者なのか、沖縄に現に住んでいる者なのか。今や従来の意味での「ウチナーンチュ」と「ヤマトンチュ」の境目が消えつつある時代がやって来た、とも思えるのだが。

2014年

10月

17日

捨て犬として殺処分寸前…

 捨て犬として殺処分寸前だった雑種犬「夢之丞」が、広島の土砂災害で救助犬として活躍し、話題になっている。倒壊した家屋の下などから人間を救出する役割を担う◆夢之丞は生後3~4カ月の時、広島県動物愛護センターでガス室に送られるところだった。偶然施設を訪れたNPОのメンバーに抱かれた時「自分の番が来たと直感したのか、小さな体が約30分間小刻みに震え続けたという」(毎日新聞)。夢之丞がNPОに保護されたあと、訓練を経て、救助犬として再生した◆小さな命を断つことはたやすいが、その命には大きな可能性が秘められていたのかも知れない。このエピソードは、一つの命が決して一つだけではなく、実は多くの命と連鎖していることを示唆してくれる◆誰にとってもかけがえがないのは「自分の命」だが、それは想像もできないほど遠い昔から、多くの先祖や周囲の人たちによって守り継がれてきた命である。特に県民にとっては、最近の大きな危機は沖縄戦だった。祖父や祖母、または父や母になるべき人が命を落とし、ついに存在することができなかった命も多いはずだ◆自分の命は自分の命であると同時に、託された命でもある。自分の肩に何が背負わされたのか、生き抜いてみないと分からない。

2014年

10月

15日

きょうから新聞週間…

 きょうから新聞週間。八重山日報の創業者、宮良長欣は1977年6月15日の創刊号に「創刊に当たって 読者とともに歩む」という一文を載せた。「八重山日報は、情報化の波にのり遅れがちなこの八重山のために、新しくユニークな新聞をつくり、国の内外の大きな流れや地元のニュースをいち早く伝え、時代の要求と人びとの望みにこたえるために誕生した」と記した◆2004年に死去した創業者の思いをどこまで形にできているのか、現在の社員たちは葛藤の日々が続いている◆毎日の業務に忙殺されていると、自分の原点は何か見失ってしまう。随分前、ある小学校の部活動を数年取材した◆部員たちは県大会で優勝し、顧問の先生が「新聞に載ると子どもたちも元気が出ます。いつも取材してもらってありがとうございます」と言ってくれた。何気ない一言だったが、胸が熱くなった。記事を書くことで少しでも地域を元気にしたいし、読者との信頼関係を築きたい◆宮良はこうも言っている。「冷静な読者の批判には謙虚に耳を傾ける寛容さを持ち、自らを厳しく律し、よりよい新聞づくりにまい進しなければならない。(中略)愛される新聞をつくりたいのである」。創業者の言葉が今は叱責に聞こえる。「初心に帰る」気持ちを肝に銘じたい。

2014年

10月

13日

「どんなトラブルに巻き込まれても…

 「どんなトラブルに巻き込まれても、僕は絶対に腕力だけは使わないよ。話し合えば分かってもらえるから」。そう宣言する草食系男子に、どれほどの女性が惹かれるだろうか◆軟弱そうな男性タレントがもてはやされる時勢を考えると、それはそれで大勢の女性ファンがつくのだろうが、こういう男性が「日本男児」かと問われれば、誰でも違和感を抱くだろう。せめて「腕力はなるべく使わないけど、男としてやる時はやるよ」と言ってくれるほうが頼もしい◆しかし、この草食系男子こそ、日本という国家の理想像なのだ。「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「国の交戦権は、これを認めない」。日本人なら誰でも、こう明記した憲法9条を読んだことがあるはずだ◆憲法9条には功罪があったが「罪」の部分は「自分の国は自分で守る」という、他国にとっては至極当然なことが、日本では当然でなくなってしまったことだろう◆今年のノーベル平和賞が女性の権利擁護を訴えてきたマララ・ユスフザイさん(17)らに与えられたと聞き、当然だと思った。厳しい国際情勢に翻弄される八重山住民の1人として「憲法9条を保持する日本国民」にノーベル賞などとは、首をかしげざるを得ない。

2014年

10月

08日

米国のある富豪は…

 米国のある富豪は、1日のうち一定の時間を思索に当て、一室に引きこもるという。思索のあと、彼はやおら部屋から出て電話を取り上げ、部下にビジネスに関する的確な指示を出す。そして富豪の財産はさらに増えていく◆どんなに多忙であっても、1日1回、一人になって思索に集中できる時間を持つことが本来は望ましい。しかし最近、意外なことに気づいた。思索に集中しようとしても、できないのである。老いて集中力が衰えたというだけではない。仕事、生活、人間関係など、雑念が次から次と湧いて出て、精神の統一を持続できないのだ◆ヨガや禅の瞑想などを傍から見ていると、目を閉じて座っているだけなら何の苦もない、と勘違いしてしまう。しかし実際には、何もせず座っていることが大変な苦痛なのだ◆思索や集中というのも一つの訓練であり、毎日の多忙さの中で置き忘れていると、その力が確実に衰えていくことを知った◆あるテレビ番組で、瞑想中、雑念が湧いた場合はどうするか問われた禅僧の答えを思い出す。彼はこともなげに「受け流す」と言った。集中とは雑念がないことではなく、雑念を何らかの方法で克服することだ。雑念とは心の闇であり、放っておくと体ごと吸い込まれるブラックホールなのだ。

2014年

9月

26日

クラシック音楽界に…

 クラシック音楽界に古楽器派という潮流がある。作曲家が活躍していた100年以上前の時代に立ち戻り、当時使用されていた楽器を使い、奏法も当時のやり方を参考にしながら、曲を作曲家がイメージした「オリジナル」の形で再現しようという思想だ◆古楽の大家だったオランダの指揮者、フランス・ブリュッヘンが8月13日に79歳で、英国の指揮者クリストファー・ホグウッドが今月24日に74歳で、相次いで死去した。いずれも古楽器派の黎明(れいめい)期に、先駆者として活動した人たちだ◆ブリュッヘンは「18世紀オーケストラ」、ホグウッドは「エンシェント室内管弦楽団」を創設し、それぞれ最初期の古楽器オーケストラとして大きな注目を集めた◆現代の大オーケストラとは異なり、さわやかで透明な響きと、既成概念を覆す快活なテンポが特徴である。彼らの演奏で、聞き慣れたはずのハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの交響曲が、全く違った曲のような魅力を放ち始めた。古楽器演奏は90年代から2000年代にかけて成熟期を迎え、今や、クラシック音楽は古楽器派の成果を抜きに語れないまでになっている◆私たちのもとには充実した音楽的成果が残されたが、先駆者が1人、また1人と去っていくのは淋しい。


2014年

9月

22日

英国からのスコットランド独立を・・・

 英国からのスコットランド独立を問う住民投票に合わせ、日本でも急に「沖縄独立論」が注目を浴びているようだ。菅義偉官房長官は記者に「沖縄県には独立の論議もあるが、住民投票が影響するか」と記者に問われ、「日本では住民投票で帰属を決めることは歴史的になじまない」と述べたという◆「沖縄はスコットランドが持つ『不公平感』に共感している」などという趣旨の報道も続々と現れており、沖縄が独立を待望しているという印象を国内外に拡散している◆しかし多くの読者がご存知の通り、少なくとも八重山では「独立」の気運の高まりなど100%存在しない。スコットランド独立と沖縄独立が同じ文脈で語られている現状を、大多数の住民が奇異の思いとともに眺めている◆独立の気運の高まりが「ある」のか「ない」のかは重大な問題だと思うが、経験上、沖縄には「ない」と断言して差し支えない◆いわゆる沖縄独立論は民族的な主義主張に基づくものではなく、日米安保条約を廃棄し、米軍基地を撤去させるための道具として認識されている。そのようなものが真の意味で「独立論」と呼ぶに値するのか大きな疑問だ。他国で展開されている独立運動のケースとは全く異なり、単なる「火遊び」という呼び名のほうがふさわしい。

2014年

9月

19日

新百歳を迎えた崎山キクさん・・・

 新百歳を迎えた崎山キクさん(石垣市石垣)の元気さには驚かされた。取材で何年も各地の敬老会を回り、いろいろなお年寄りに出会ってきたが、崎山さんほどはつらつとした新百歳も珍しい。毎日散歩に出かけるなど足腰もしっかりとしていて、質問に的確に答えるさまは、頭脳の冴えを感じさせる。笑顔の輝きは10代の乙女にも負けない◆「貧しくて苦しい時代に生まれたのに、今は何でもある時代。何だか恐い気がする」と崎山さん。子や孫が生きる未来のことを考えると、現在が豊かなだけに、かえって不安な思いに駆られるという◆経済的に恵まれていることの有難さを忘れ、大量消費でモノをポイポイ捨てる時代に対する警鐘だと受け止めたい◆100年の人生で最も印象深かった出来事は、やはり戦争だという。若い報道陣を見渡し「皆さんは戦争の恐さを知らないでしょ?戦争は一番恐い。戦争が終わったことが一番うれしかった」と回想した◆戦争の記憶は、この世代の人たちに消し難い傷跡を残している。戦争を憎み平和を愛するのは人間の本性だと信じたい。だが現実の国際社会を見ると、意外とそうでもない人間が多いことに気づく。単純なだけに心を打つ崎山さんの言葉を、改めて多くの人たちに聞いてほしい。

2014年

9月

17日

石垣市議会の新勢力が決まった…

 石垣市議会の新勢力が決まった。与党14人、野党・中立8人で、与党がさらに1議席上積みする圧勝。しかし与野党は別にして、初当選を果たした多士済々の5人も注目される◆1283票を獲得し、堂々の3位になった長山家康氏は市議会史上最年少の26歳。政治家の若返り傾向は沖縄、八重山でも著しいが、その象徴的存在と言えそうだ。文字通り次代を背負って立つ政治家になるかも知れない◆社大公認の崎枝純夫氏は、3度目の正直でようやく念願の議席を手にした。農業委員会の会長も経験し、農業振興を中心に政策を訴えてきた。共産公認の井上美智子氏は、女性や農業関係者の絶大な支持を集めたという。千票超の大量得票は大方の予想を覆す快挙だった◆前回選挙では惜敗した福島英光氏。小児マヒによる手足の障害を乗り越え、市職員として長年、福祉に携わってきた。政治の場で経験を存分に生かし、障害者の声を市政に反映させてほしい◆友寄永三氏は前回選挙で大敗したが、この4年間、地道に政治活動に取り組んできたことが評価され、前回より200票以上も上積み。見事念願を果たした◆与野党の違いはあっても、市民の福祉を願う志は一つ。5人がこれから市政にどのような新しい風を吹き込むのか期待して見守りたい。

2014年

9月

05日

3市町の議会議員選挙投票日…

 3市町の議会議員選挙投票日まであと2日。市政、町政の行方を占う試金石となる大事な選挙だ。投票所に積極的に足を運びたい◆石垣市議選は中山義隆市長を支持する与党がどこまで議席を伸ばせるかが焦点。当初は将来的に具体化する可能性が大きい自衛隊配備計画の是非が争点になると見られたが、与党候補の多くが態度を明らかにせず、結果として争点化が避けられている。自衛隊ではなく、経済、教育、福祉などが有権者の最大関心事だ◆竹富町は川満栄長町長を支持する与党が多数を奪還できるか注目される。過去、議会で多数を占める野党に苦しめられてきた川満町長は、与党の多数確保に大きな期待を抱いている。役場移転の是非も争点の一つになると見られたが、川満町長が住民投票を公約しているためか、現段階ではそれほどクローズアップされていない。こちらもうまく争点化が避けられている◆与那国町議選も、前回まで最大の関心事だった自衛隊配備の是非が、いつの間にか争点でなくなりつつある。既に駐屯地建設が進み、自衛隊問題は終わったという受け止め方をする住民もいる◆こうして見ると、3市町とも、争点であると考えられたことが、いつの間にか争点ではなくなっているようだ。不思議な選挙戦かも知れない。

2014年

9月

01日

埼玉県で、全盲の男性が…

 埼玉県で、全盲の男性が連れていた盲導犬が刺された。盲導犬は痛みに耐える訓練を受けているために声を出さず、周囲はしばらく気づかなかったという◆おとなしい盲導犬をあえて標的にしたのなら許されない事件だが、石垣市では、より残虐な事件が発生した。猫の死体がバラバラに切断され、平得の民家に投げ込まれたのだ。猫は眼球が飛び出すほど頭を殴られて殺されたようだという◆関係者は「長崎の事件を思い出した」と懸念する。長崎で同級生を殺害した高校生は、中学時代から猫を殺して解剖していたという。石垣市の事件も猫の首や胴体をハサミのような刃物で切り刻むなど、犯人の異常性を感じさせる手口であり、長崎の事件が他人事ではなくなってくる◆動物虐待で思い出したのは、数年前、猫が虐待されたという事件を本紙が社会面のトップで扱った時のことだった。社会的な地位もそれなりにある市民が「日報は猫の虐待のようなつまらない事件をトップ記事にするのか」とあざ笑った◆猫の虐待も人間のいじめも、無抵抗の弱者に襲いかかるという点で卑劣さは変わらない。「たかが犬や猫くらい」という風潮は社会全体をむしばむ。「弱者を守る」という当然のことが、当然のように行われる島にしなくてはならない。

2014年

8月

29日

今年の全国学力テストで八重山地区が躍進…

 今年の全国学力テストで八重山地区が躍進した。県内6地区で小学校は2位、中学校は5位。いずれも昨年までは最下位だったから、目を見張る快挙である◆全国学力テストは2007年から、全国の小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施されている。全員参加のテストであるため、児童生徒は自分の実力がどの程度なのか、より詳細に把握できる。民主党政権で全員参加が廃止され、抽出調査に変更される制度改悪があったが、昨年から全員参加に戻った◆同テストが画期的だった点は、学力向上に競争原理を導入したことだった。今回の八重山地区の躍進も、これまでずっと最下位が続いてきたという危機感がバネになっている。「毎年実施する意義は薄い」などと同テストの意義を疑問視する声は依然として根強いが、学力向上の重要性を軽視する意見であり賛同できない◆県は実は、県内6地区の順位を正式に公表していない。順位を非公表とすることは、最下位の地区を甘やかす一方、頑張った地区のやる気をそぐ。本来なら市町村別の順位も公表するべきだ◆八重山でも、一定規模以上の学校については学校別の順位公表も視野に入れるべきだろう。隠すことからは何も生まれず、オープンに堂々と論議することが新たな展開につながる。

2014年

8月

22日

必要性はあっても予算の…

 必要性はあっても予算の関係で芽出しが難しかった自治体のさまざまな事業が、一括交付金を活用して日の目を見るようになった。八重山でも長年の課題が次々と実現しており、一括交付金とは、まさに「打ち出の小槌」と言えよう◆ただ一括交付金の趣旨は「じゃぶじゃぶお金を使ってくれ」ということではない。この制度を活用し、自治体が将来にわたって発展できる基盤を整備せよ、という、いわば宿題である。その意味で、一括交付金とはいわば投資だ◆ある事業に一括交付金を活用できるかどうかは、自治体職員の能力によっても大きく左右されるという。国を説得できるだけの企画を示す能力である。発想力、突破力も問われてくる。住民にとっては、わが自治体の能力をテストする絶好の機会かも知れない。その意味で、せっかく配分されたお金を使い切れないケースなどは特に残念だ◆一括交付金は永続的な制度とは限らない。しかし児童生徒の派遣費補助のように、財源がないからと言って打ち切られてしまうと住民が大いに困る事業もある◆離島の離島という八重山のハンディを克服するため、将来にわたってぜひ必要な財源であるのなら、一括交付金ではなく、国や県の制度で恒久的な支出として位置付けてもらったほうがいいだろう。

2014年

8月

13日

産経新聞がウェブサイトに掲載した朴槿恵・・・

 産経新聞がウェブサイトに掲載した朴槿恵(パク・クネ)大統領の動静に関する記事をめぐり、韓国政府が産経新聞ソウル支局長に出頭を要請した。韓国外相も「隣国元首の名誉をひどく毀損(きそん)している」と日本の岸田外相に抗議する事態に発展した◆政府を批判する報道は民主主義社会では当たり前のことであり、韓国政府の行動は不可解だ◆しかも韓国のマスコミは産経新聞に対し「日本の右翼の声を代弁しており、慰安婦問題で強硬な姿勢を取る朴大統領を目の敵にしている」と批判を強めているという。韓国政府が産経新聞の報道姿勢をことさらに問題視し、抑圧を強めているのであれば、もはや民主主義を名乗る資格はないと言うべきだろう◆日韓には竹島問題というトゲが刺さっている。しかし日本人には、両国とも民主主義という同じ価値観を奉じているという安心感があった。少なくとも尖閣問題での中国のような、強盗国家に脅かされているという恐怖は感じていなかった。しかし今回の問題で、韓国という国に果たして大人の常識が存在するのか、改めて問い直さざるを得なくなるだろう◆韓国がますます「中国化」し、中韓が領土問題で連携するような状況になれば、八重山にも大きな悪影響が出る。他人事ではない。

2014年

8月

08日

新潟県の女性殺害は3人連続殺害という・・・

 新潟県の女性殺害は3人連続殺害という、全国でもまれな重大事件に発展する可能性が出てきた。その上、容疑者の男が石垣島出身で、高校も島内で進学していたことが明らかになり、八重山住民に大きな衝撃が広がっている◆八重山では多くの子どもたちが勉強やスポーツに頑張っている。だが一方で、深夜徘徊や喫煙、暴力行為などの少年非行が後を絶たないのも事実だ◆新潟の事件の容疑が事実であれば、凶悪犯の芽は石垣島で育っていたことになる。一歩間違えば同じ事件が石垣島で起こったかも知れず、地元の教育関係者にとって他人事ではないはずだ◆気になるのは、八重山で昔から頻発している自転車盗である。それ自体は殺人や傷害に比べれば軽い罪だが、小さな犯罪が徐々にエスカレートし、重大犯罪につながるケースもある。凶悪犯の芽は小さいうちに確実に摘んでおかないと、地域の将来に禍根を残す。地域と家庭、関係機関が一体となって、順法意識の大切さを子どもたちに徹底させなくてはならない◆都会化が進む中で、他人の子をわが子のように叱る風潮が薄れていると言われる。しかし自分の子さえ賢く育てば地域は安泰というわけではない。新潟の事件を契機に、八重山でも地域を挙げた犯罪抑止の決意が問われている。

2014年

8月

04日

誰にでも仕事に疲れ果てる時が…

 誰にでも仕事に疲れ果てる時がある。骨身を削る思いで作品を生み出す芸術家は特にそうだ。作曲家のハイドンは晩年、「肉体も精神もともに力が失せてしまって、自ら足を踏み入れた道を歩み続けることがどうしてもできないように感じた時」があったと書いた◆しかしハイドンは続けた。「(そんな時)私の内部の秘められた思いがしばしば、こうつぶやいた。『きっといつの日が、お前の仕事が悩み疲れた人々に束の間の休息を与え、力をよみがえらせる泉となる日が来るだろう』」と。ハイドンの確信通り、200年後の現代に至っても、多くの人々がハイドンの音楽に救われている◆ハイドンの弟子、ベートーヴェンも若くして聴覚を失う悲劇に見舞われて絶望し、いったんは自殺を決意した。しかし彼を生に引きとどめたのは「芸術」だったとのちに書いている。彼が本当に死を選んでいたら、まさに人類の損失だったろう◆誰かを幸福にする能力が自分には備わっている、という確信ほど自らを勇気づけることはない。だからどんなに辛くても人は頑張れる。あるいはそうした確信こそ、真の幸福の源泉なのかも知れない。哲学者ニーチェは誇らしげにこう書いた。「人生がわれわれに約束してくれたことを、われわれこそ人生に対して果たそう!」

2014年

8月

01日

スカイマークの経営が…

 スカイマークの経営が揺らいでいる問題は、八重山にも大きな波紋を広げている。搭乗率が低迷しているとされる石垣=那覇線の撤退につながる可能性が懸念されているのだ◆同社は航空大手エアバスから購入予定だった超大型機をキャンセルし、巨額の解約違約金を請求される恐れがある。西久保慎一社長は記者会見で経営判断のミスを認めたが、同時に「ウチがなくなると(日本の)航空業界は10年前に戻ってしまう」とも訴えたという◆LCCのピーチはすでに石垣=那覇線から撤退しており、スカイマークまで撤退すると、同路線は既存の航空会社2社だけの運航体制に戻る。住民からは早くも「航空運賃も新空港開港前の水準にはね上がるだろう」と危機感を訴える声が出始めている◆同路線の運賃軽減を求めてきた住民が学んだのは、住民にとって「適正」な価格を実現できるのは市場の競争原理だけ、という現実だった。県が巨額の一括交付金をつぎ込んでも、住民が負担する運賃は現在ほどは下がらず、観光客の運賃に至っては全く軽減できなかった◆現在の低廉な航空運賃は新空港開港で自動的にもたらされたものではなく、一企業のチャレンジの上に成り立っている。何もかも「当然」と思い込んでしまわないことが大切だ。

2014年

7月

30日

マレーシア機の撃墜事件は…

 マレーシア機の撃墜事件は、日本にとって「人ごとではない」と指摘するマスコミも出始めている。問題は昨年11月、中国が東シナ海に一方的に設定した防空識別圏だ。中国はこの空域を航行する航空機すべてに事前通告を求めており、通告なしの場合は戦闘機を緊急発進させるという◆当事者のわずかな誤算や意地の張り合いが大惨事につながりかねない。しかも防空識別圏は尖閣諸島とその周辺空域に設定されており、直接の脅威を受けるのは八重山住民だ◆日中対話による緊張緩和を望む声が多いが、中国の姿勢は強硬だ。その証拠に八重山近海でも中国公船の派遣が続いており、中国としては一歩も退く気配がない。恐らく中国の現政権が続く限り、平和的解決は望むべくもない◆逆に尖閣問題の「棚上げ」など、日本側が譲歩すべきだと求める声も、国内の一部にはある。しかし、それは八重山の生命線を断ち切られることにつながり、八重山住民が許さない◆「核なき世界」を掲げるオバマ米大統領が誕生するなど、21世紀は平和の世紀になるという楽観論が日本でも大勢だった。しかし現実は逆方向に進んでいるようでもあり、10年後、20年後を考えると笑ってばかりはいられない。子どもたちの未来を思いやる大人の勇気が今必要だ。

2014年

7月

25日

今年は名指揮者の訃報が…

 今年は名指揮者の訃報が相次いだ。まず1月にイタリアのクラウディオ・アバド、今月は米国のロリン・マゼールである。ともに80代の老巨匠だが、芸風は正反対だった◆アバドの演奏はオーソドックスで、決して極端に走らない。何を演奏しても安全運転で一般的な音楽ファンには好かれたが、反面で物足りなさも感じた◆マゼールは時に曲のテンポを大きく揺らしたり、特定の楽器を異常に強調したりと、かなり個性的な演奏をすることがあった。人によっては好き嫌いが激しかっただろう◆2人は大指揮者カラヤンの後任としてベルリン・フィルの指揮者の座を争い、楽団員から支持が多かったアバドが勝利者になった。しかし在任期間はカラヤンのような黄金時代を築くことはなく、退任後の評価も地味である◆マゼールは相変わらずユニークな活動を続け、日本でベートーヴェンの全交響曲を一晩で演奏するコンサートを開いたりした。アバドもマゼールも音楽に捧げた人生を完全燃焼させたと言えるだろう◆音楽界では次々と新しい才能が芽吹いている。大樹へと育っていく才能を見守るのは楽しみだが、私たちを楽しませてくれた満開の花々が散っていくさまは淋しい。オールドファンには複雑な心境の日々が続く。

2014年

7月

21日

19日から長い44日間の夏休みが…

 19日から長い44日間の夏休みがスタートした。子どもたちが自主的に時間の使い方を決め、遊びだけでなく勉強やスポーツに全力投球できるチャンスだ。1学期の通知表をもとに一人ひとりが反省し、自分の能力に合った計画を立て、充実した時間を過ごしてほしい◆夏休みをどう過ごすかで、他の子どもと大きく差がつくケースがある。目標を持って一つのことに集中すれば長足の進歩が期待できるし、遅刻する心配がないからと言って毎日ダラダラと朝寝坊するようでは、逆に怠けぐせがついてしまう◆旅行や自然に親しむ活動など、夏休みでなければできない体験も多い。学校での指導をもとに、保護者も子どもたちに適切な助言を与え、時には叱り、時には温かく励ましてほしい◆もう一つ心がけなくてはならないのは子どもたちの安心安全だ。今月16日、八高P連など3団体は①夜10時以降の外出はしない②危ない場所に近づかない③有害サイトや脱法ハーブの誘惑に惑わされない―よう子どもたちに呼び掛けた。このうち脱法ハーブは全国的に問題化している。離島の離島だからと言って油断せずに大人が目を光らせる必要がある◆子どもの非行とは大人社会の反映でもある。反省を込めて非行防止に取り組まなくてはならない。

2014年

7月

18日

竹富町の川満栄長町長が辞職する見通しになった…

 竹富町の川満栄長町長が辞職する見通しになった。不透明な専決処分の経緯をめぐり、町議会の百条委員会設置を避けるためだという。議会の辞職勧告を拒否した直後だけに、多くの住民が驚きを隠さない。現職町長の辞職は町政史上初である◆川満氏は2008年、当時の現職を大差で破って初当選。川満氏を支持した町議たちは、自らを「チーム川満」と呼び、献身的な選挙運動を展開した。与党の力強い支持で1期目をスタートさせたのが、今では遠い昔である◆当時の報道は、誰からも好かれる川満氏の人柄を称賛する内容であふれていた。町長になった川満氏が島のターミナルで重い荷物を持っている老人と出会い、気軽に荷物を引き受けた、というエピソードが議員の間で好意的に語られていたこともある◆行政手腕とは政策を実現する能力だけでなく、時には自他に対する厳しさも含む。今回の混乱が示すものは、人柄だけで政治の荒波は乗り切れないという難しさだろうか◆教科書問題で竹富町は「独善的で法を守らない町」というイメージを全国に広げた。今回の混乱も含め、最近は不祥事続きという印象は否めない。9月に予想される出直し町長選を機に混乱を収束させ、町長がまちづくりに専念できる環境をつくってほしい。

2014年

7月

14日

記者になったばかりのころ…

 記者になったばかりのころ、先輩から「八重山の地元紙は県紙とは違う」と教わった。「隣の家でヤギに子どもが生まれた」「その隣の家で長男が大学に合格した」―。県紙にはなかなか載らない小さな話題でも、積極的に拾って載せる。ごく普通の住民の声を丹念に拾い、名前とともに活字にする。そこに地元紙の特色がある、と先輩は何度も強調した◆スポーツ面で、地元の少年サッカーや草野球の結果が、まるで全国紙のスポーツ面のように華々しく載る。取材する方は意識していないが、実際にプレーした選手たちにとっては、この上ない喜びだ。新聞に載る側の人たちの気持ちに配慮を忘れないように、というのが、今は会社を去った先輩が残した大きな教訓だった◆かえりみると今、その教訓を正しく受け継いで取材活動できているのか、反省させられることが多い。県紙と同じ感覚で「この程度の話題」という先入観で取材の手を抜いたり、全国のスポーツばかりに気を取られて、地元のスポーツをほとんど紙面で扱わなかったり―◆本当に住民の気持に沿った紙面づくりをしているのか、県紙の物まねに終わっているのではないか―と自問自答することがある◆地元紙には地元紙にしかできない仕事がある。今後とも「原点」を追求していきたい。

2014年

7月

11日

発達障害は決して珍しい障害ではなく…

 発達障害は決して珍しい障害ではなく、2012年度に文部科学省が実施した調査によると、40人学級なら2~3人は、そうした児童がいる可能性があるという。自閉症や落ち着きがないなどの症状を伴うことはよく知られているが、よく誤解されるように、知的発達の遅れを伴っているとは限らず、標準を上回る知的能力を持つ人もいる◆石垣市でも2013年度に生まれた666人の子どものうち、約10%は発達障害の可能性があると見られており、市議会でも支援策の拡充を求める声が上がっていた◆市が9日、庁内各課や関係機関の担当者を集め、支援システムの構築に向けた初の意見交換会を開いたのは、画期的な一歩と言えそうだ。従来の支援策は保護者などから「縦割り」という批判が出ていたからだ◆人間には保育所、幼稚園、小学校、中学校、高校といった「ライフステージ」がある。しかし進学するたびに行政の担当部局が変わり、情報のやり取りがうまくいかないという不満が出ていた。さらには同じメンバーによる似たような支援対策会議があちこちで開かれ、方針の統一が図られないという問題点もあったようだ◆今回の意見交換は「ライフステージに応じた切れ目ない支援」の提供に向けた取り組みだ。一般住民にも、発達障害に対する理解を深めてもらう契機にしたい。