2015年

12月

13日

世界的指揮者のニコラウス・アーノンクールさんが…

 世界的指揮者のニコラウス・アーノンクールさんが、86歳の誕生日を前に引退を表明した。体力の限界が理由だという。30年来、彼の演奏に親しんできたファンとしては、衝撃的で辛いニュースだった◆バッハやモーツァルト、ベートーベンなどの演奏に、作曲当時のスタイルを応用する画期的な演奏法を導入した。世界各地のオーケストラで本格的に活動を開始した1980年代には無理解な評論家が多く、特に日本では「音が汚い」「あざとい」などと毛嫌いされた◆既成の権威は常に新しいものを叩きたがる。しかし時間は厳正な審判者だ。アーノンクールさんが幾多の名演を積み重ねた結果、現在のクラシック音楽界では、むしろ彼が切り拓いた演奏法こそスタンダードとして定着。彼は現在、日本を含め、世界で最も尊敬される音楽家の一人となっている◆まだまだ世界中から期待されながら、燃え尽きるように第一線を去るアーノンクールさんの姿は、夕映えのように美しい。長くかつ充実した音楽生活を羨む◆人間にはさまざまな生き方がある。しかし筆者にとっては、他人の評価など気にせず、自分の信じた道をひたすら進み、何かをつかみ取った人生ほど価値あるものはない。「誰からもほめられる」と「つまらない」は、実は紙一重だから。