視点

2017年

11月

18日

日米共同使用と負担軽減

 沖縄の基地負担軽減に向けた具体的な一歩となるかも知れない。在沖米軍の海兵隊撤退後、防衛省が来年3月に創設する水陸機動団(日本版海兵隊)を沖縄に配備する可能性について、在沖縄米軍トップを兼ねるニコルソン在日米海兵隊司令官(中将)が16日、「理解できる」との認識を示した。
 小野寺五典防衛相は17日、「まだ何も決まっていない」と述べたが、ニコルソン氏は私案としながら、キャンプ・ハンセンかシュワブへの配備を示唆しており、現実性は高いと言える。
 米軍撤退後の沖縄に自衛隊を配備することは、沖縄を守る実力を維持しながら県民の負担軽減を進める一つの現実的方策だ。日米両政府は、将来的な実現に向けて積極的に検討を進めるべきだ。
 基地負担には2種類ある。一つは基地そのものから派生する騒音や危険性などの問題、もう一つは米兵が絡む事件・事故だ。前者の負担を軽減するためには日米両政府の関与が不可欠である。米軍普天間飛行場の辺野古移設をはじめ、両政府の合意に基づいた作業が進んでいる。基地周辺住民の救済策も必要だ。
 後者の問題は、事件・事故を起こした米兵が不当に保護される可能性があるという日米地位協定の欠陥が引き起こしている。配備されるのが米軍ではなく自衛隊であれば、米兵の「逃げ得」はなくなる。この意義は極めて大きい。
 今月、与那国島に配備された陸上自衛隊沿岸監視隊の隊員が、大阪府の温泉で女児を盗撮したとして大阪府警に書類送検された。今後は自衛隊の内部でも厳しい処分が下るはずだ。
 これが米兵であれば、犯行の態様によっては日米地位協定で日本側の捜査が阻まれていた可能性があった。
 現在、元米軍属による女性殺害事件の裁判員裁判が那覇地裁で進んでいる。この事件では、日米地位協定による大きな影響はなかった。しかし県民からは「米軍基地あるがゆえの犯罪」と激しい憤りの声が上がっている。米軍絡みの事件・事故は、日本人の国民感情として到底容認できない。
 自衛隊員の事件も言語道断だが、米兵と違い、自衛隊員の事件・事故はいかなる場合も国内法によって厳正に処断されることを改めて示した。自衛隊員の綱紀粛正や、さらなる事件・事故の抑止力につながることは間違いない。日本人にとって「ブラックボックス」化している米軍との大きな違いだ。
 県民の間でも自衛隊の役割に対する理解は進んでいる。与那国島では、配備に伴って行われた住民投票で、配備賛成が多数を占めた。石垣島への配備計画をめぐっては反対運動も起きているが、推進派も「島を守るために自衛隊は必要」と誘致を訴えており、衆院選での得票は推進派が反対派を上回った。これが自衛隊ではなく米軍であれば、いかに安全保障のためとはいえ、地元の理解を得るのは不可能である。
 米軍に代わって自衛隊を配備するのは基地負担軽減にならないという批判の声もある。だが、そうした意見は自衛隊と米軍の本質的な違いに関する理解が足りない。
 ニコルソン氏は米軍基地の日米共同使用にも期待感を示した。これも自衛隊の役割強化に向けた前向きな動きだ。

2017年

11月

16日

支持される野党の「条件」 

 希望の党の小池百合子代表(東京都知事)が辞任の意向を表明した。自公に代わる政権交代の受け皿を目指して9月に党代表に就任したが、わずか2カ月足らずでの退陣となる。一時は国民的な期待を一身に集めた小池氏が国政から距離を置く姿勢を示したことは、希望の党の党勢にも影響を与えかねず、野党の混迷に一層拍車が掛かる可能性がある。
 巨大与党の自公に対し、野党は小勢力が乱立する状況で、しかも野党間に政策の大きな隔たりがあり、軸となる勢力が育たない。米国のような2大政党制を期待する国民も多いが、当分は、自民党党内の有力者が総裁選で競い合う「疑似政権交代」の可能性しかないようだ。
 小池氏が失敗した要因は準備不足に尽きる。衆院選まで時間がない中で、練り上げた公約や魅力ある候補者を提示できず、民進党の丸のみで乗り切ろうとした姿勢が失望につながった。自公に対する「保守・中道」の対立軸という小池氏の目標は妥当なものだったが、希望の党が受け皿になるのは時期尚早だったということである。
 立憲民主党が野党第一党になったが、安全保障政策で安保法廃止を訴えるなど、共産党や社民党との相違が今ひとつ不鮮明で、今後、どこまで党勢を拡大できるかは未知数だ。
 野党の混迷が続くことは、沖縄にとっても望ましい状況ではない。
 10月の衆院選でも米軍普天間飛行場の辺野古移設が争点の一つになったが、移設に反対する「反自公」票はほとんど、極端な「反基地」を掲げる共産党や社民党支持に向かった。
 結果として選挙区では共産党や社民党の候補が勝ち抜き、選挙後、辺野古移設問題にとどまらず、内政、外構のさまざまな課題で自公政権と鋭く対立している。一般的に言われる「沖縄対本土」の対立とは、実は「自公対共産・社民」の対立にほかならず、両者の妥協点は、ほとんど見いだせない。もし沖縄で「保守・中道」の対抗軸が育っていれば、違った展開になっていたかも知れない。
 自民党の政治家として長く活動してきた翁長雄志知事も「オール沖縄」を名乗り、もともと自公に対する保守・中道の対抗軸として期待を集めたはずだが、この3年、ほとんど独自色を発揮できていない。後ろ盾となる勢力が「革新」政党しかないためで、自民党からは「翁長革新県政」と揶揄されるに至っている。
 本土、沖縄にかかわりなく、国民に支持される野党をつくるには、従来の政権とは異なる明確な世界観に基づいた公約を示し、力量のある候補者を掘り起こさなくてはならない。
 公約はデスクワークで生まれるものではなく、それは日々の生活から切実な実感として沸き上がる国民の声だ。声なき声を拾うためにも、政治家は常に地域と接点を持たなくてはならない。
 実業家から転身した米国のトランプ大統領のように、政治経験の有無は必ずしも抜きん出た政治家の条件ではない。さまざまな分野から、候補者をうまくスカウトする仕組みづくりも野党の課題になってくる。これも、まさに希望の党の「失敗」を教訓にすべき点だ。

2017年

11月

11日

中国、太平洋支配の野心あらわ

 中国の習近平国家主席は9日、トランプ米大統領との首脳会談後、共同記者会見で「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言した。
 中国軍関係者は、かつて米国の太平洋軍総司令官に対し「ハワイから東は米国、西は中国で分割管理しよう」と持ちかけていた。今回の発言もこの趣旨に沿ったものであることは明白だ。
 言うまでもなく太平洋の西側には尖閣諸島を含む八重山諸島があり、沖縄があり、日本本土がある。太平洋への進出加速を予言するかのような習氏の発言は、沖縄に対する領土的野心を改めてあらわにしたも同然だ。尖閣諸島奪取を目指す中国の狙いが、局地的な資源争奪などではなく、究極的には太平洋の支配権獲得であることも暴露した。
 問題なのは、習氏の発言が米大統領の面前だったことだ。米国との直接交渉で日米を切り離し、米国の不干渉を確約させた上で、尖閣を奪取したいという思惑が透けて見える。
 中国は米国との関係を「新型大国関係」と名付け、いわば米国と一対一の場で中国主導の新国際秩序を承認させようとした。米国はオバマ前政権時代、この考えを事実上拒否したが、訪中したトランプ氏への厚遇ぶりは、中国がこうした思惑をまだ捨てていないことを意味するようだ。
 日本政府が2012年に尖閣諸島を国有化して以降、中国の尖閣奪取に向けた戦略はほぼ一貫している。公船を頻繁に領海侵入させ、尖閣が中国の領土であることを内外にアピールするというものだ。
 しかし日本側は海保の巡視船がガードを固めており、八重山の漁業者が尖閣周辺海域に出漁する際は警護に当たるなど、実効支配を死守している。
 ところが今月5日からのトランプ氏の訪日期間中、中国公船は尖閣周辺の接続水域に姿を見せなかった。しかしトランプ氏が7日午前に離日すると、その日の午後には、すかさず4隻が接続水域に入っている。米国の顔色をうかがうような動きである。
 中国にとって気がかりなのは日米同盟だ。日本から最終的に尖閣諸島を奪取できるかどうかは、米国の意向しだいだと中国が考えている可能性を示唆している。
 安倍晋三首相とトランプ大統領は、両国共通の外交方針として「自由で開かれたアジア太平洋戦略」を打ち出した。自由と民主主義の価値観を共有する国々の連携で、中国主導の新国際秩序を阻止しようというものだ。これに対し、中国は自国中心の経済圏構想「一帯一路」を「人類共同体構想」などと宣伝している。
 20世紀に続き、21世紀の世界も、自由主義の国々と独裁国家群がせめぎ合う場となるかも知れない。
 尖閣諸島そして沖縄は、いやおうなしにその最前線に位置することになる。尖閣諸島を守れるかどうかは、単に日本の領土にとどまらず、戦後日本が信奉してきた自由や民主主義といった価値観を守れるかどうかにも関わってくる。
 ただ武力衝突は誰も望まない。沖縄では、地方自治体や民間レベルで日中交流を促す動きが盛んだ。翁長雄志知事は福建省との友好締結20周年で訪中しており、石垣市でも日中友好締結40周年、世界平和の鐘設置30周年を記念して中国大使を招へいする動きがある。友好の努力は尽くすべきだ。
 それとは別に石垣島への自衛隊配備計画は、領土を守る国民の決意を示す上で重要だ。早期配備を実現することが、無用な紛争を防ぐ手立てとなる。

2017年

11月

07日

平和と繁栄支える同盟

 来日したトランプ米大統領と安倍晋三首相は共同記者会見で「日米両首脳が、これだけ緊密だったことはない」と強調した。日米両首脳は前代未聞とも呼ぶべき蜜月ぶりをアピールした。
 特に安全保障面で、日米同盟の堅固さを示した。日本にとって最大限の外交的成果だったはずだ。
 一方でトランプ氏は、米国製の武器を購入するよう安倍首相にクギを刺した。ビジネスマンの横顔を持つ大統領ならではである。外交は一筋縄ではいかないことを改めて実感させたシーンだった。
 安倍政権のトランプ氏に対する厚遇ぶりは、一つの仮借なき現実を浮き彫りにしている。それは、日本の平和と繁栄は日米同盟によって支えられているということだ。
 ゴルフ外交まで行って親密さを演出した2人の視線の先には北朝鮮、さらには中国がある。日本への核攻撃すら示唆する北朝鮮、沖縄に対する領土的野心を公言する中国といった国々が日本を取り囲んでいる。こうした危機に、日本は単独で対処できない「弱い国」である。
 日本が将来にわたって民主的で自由な政治体制を維持していくには、同じ価値観を共有する超大国である米国と共同歩調を取るほか、生き残る道はない。安倍政権の外交はそのことを徹底的に熟知した上で展開されているようだ。
 米国に対する上目遣いのような外交には「対米追従」という批判の声もある。将来的には米国頼みでない安全保障体制を確立しなくてはならない。それには大前提として憲法改正論議が欠かせないだろう。
 日米首脳会談では従来、沖縄に関し、日米安保条約が尖閣諸島に適用されること、米軍普天間飛行場の辺野古移設を推進することを慣例のように確認してきた。共同記者会見で今回は言及がなかったが、両国間で当然のことという認識が共有され、改めて言及する必要性もなくなったということだろう。
 トランプ大統領の来日期間中、中国公船は尖閣諸島周辺の接続水域に一度も姿を現していない。中国に対する牽制(けんせい)効果が表れた可能性がある。
 中国は特に尖閣問題で、日本に無遠慮とも言える態度を示す。しかし、軍事力に勝る米国に対しては、常に一歩引く姿勢だ。日本は、まさに「米国に守ってもらっている」。これも現実である。
 辺野古移設をめぐっては、6日、沖縄防衛局が新たな護岸工事に着手した。翁長雄志知事は「辺野古に新たな基地を造らせないという県民との約束を実現する」と徹底抗戦の構えを見せている。
 しかし、基地反対派は普天間飛行場の撤去だけでなく、自衛隊の増強にも反対している。米海兵隊の沖縄撤退後、誰がどのように沖縄を守るのかという将来展望に欠けている。
 移設工事を阻止するため、基地反対派は県民に対し、工事現場への集結を呼び掛けている。しかし現実には、呼応する県民は少ない。ただ基地に反対するだけという訴えの非現実性を、県民は見抜いているからだ。
 辺野古移設をはじめ、現行の日米合意に基づいた基地負担軽減策を着実に完了させた上で「第二段階」としての基地負担軽減策を模索すべきだ。

2017年

11月

03日

トランプ米大統領が初来日へ

 トランプ米大統領が5日から就任後初めて来日し、安倍晋三首相との首脳会談で北朝鮮問題などを協議する。日米同盟は日本の平和と繁栄を外交的に担保する役割を果たしている。両国の強固な絆を再確認する場にしてほしい。
 米軍基地問題を抱える沖縄では、トランプ氏来日への期待感がさほど高いとは言えない。両国ともに、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を推進する方針を堅持しているが、県内では辺野古移設が新たな基地負担であるという誤解が根強いからだ。
 実際には、辺野古移設は基地負担軽減策の一環であり、普天間飛行場の撤去に向け、両国が現時点で唯一、合意している「解決策」でもある。
 トランプ氏は大統領選で、日本に対し米軍駐留経費の全額負担を要求し、日本が応じない場合の基地撤去をほのめかしたことがあった。沖縄でも基地反対派を中心に期待感が高まりかけた。
 しかし、トランプ氏が大統領就任後にトーンダウンするや、たちまち話題にする人もいなくなった。沖縄の安全保障を真剣に再考する好機だったと思うが、「熱しやすく、冷めやすく」では、沖縄から実のある提案はできまい。
 日米首脳会談の大きなテーマとなる北朝鮮問題について、安倍晋三首相は「国際社会と共に圧力を最大限まで高め、北朝鮮から対話をしてほしいと言ってくる状況をつくらなければならない」と強調した。日米で認識を共有したい。
 トランプ氏は、北朝鮮による拉致被害者の家族にも面会する。国連総会でトランプ氏が拉致問題に触れたことも意義深かった。面会が拉致問題に対する国際的な関心喚起への一歩となることが期待される。
 米国内では支持率低下などの問題が報じられているトランプ氏だが、自由闊達(かったつ)な言動を見ていると、現在のところ「政治家ずれ」していないことがプラスに働いているのではないか。
 対北朝鮮では、大統領がツイッターで過激な脅し文句を連発する一方、閣僚たちは繰り返し平和的解決の必要性を強調し、鮮やかとも言える硬軟の使い分けを見せている。
 テロ対策で打ち出した国境の壁建設、経済活性化に向けた法人税減税など、実現に向けたハードルは高いとはいえ、有言実行の姿勢も崩していない。
 自身に批判的なメディアを「フェイクニュース」と呼ぶのは勇み足の感もあるが、日米を問わず、トランプ氏に対しては必要以上にネガティブなニュースばかり氾濫しているのも事実だ。
 トランプ氏の日本滞在中、日米首脳の「ゴルフ外交」が展開される。安倍氏とトランプ氏は、個人的関係の良好さが何かとクローズアップされがちだ。ゴルフ外交は、他国に向けて親密さをアピールするパフォーマンスの意味もあるだろう。
 外交は国益を懸けたせめぎ合いの場であり、首脳の個人的関係だけで全てがうまくいくわけはない。米国の一方的なTPP脱退など、日本側がトランプ政権に振り回されている現実もあり、過大な期待は禁物だ。
 とはいえ、両首脳の関係が深まることが、日本外交にとって大きなチャンスであることに変わりはない。ゴルフといえども、日本の国益につながる重要なツールである。

 

2017年

10月

27日

改憲、沖縄から議論発信を

 憲法改正の議論が現実味を帯びてきた。衆院選で、安倍政権下での憲法改正に賛同する与党や希望の党、日本維新の会などの改憲勢力が、憲法改正の発議に必要な衆院定数の3分の2以上を獲得したためだ。
 沖縄は米軍基地問題や尖閣諸島問題に悩まされ、日本の安全保障が抱える矛盾を体現している。沖縄の視点から、憲法9条改正に向けた潮流を起こしていく好機だ。
 残念ながら沖縄では、9条をめぐる論議が活発化しているとは言えない。むしろ9条改正は「平和憲法」の破壊につながるとの誤解が横行しているのではないか。
 一部の政治家やメディアが言うような「戦争のできる国」を目指す乱暴な改憲論議は存在しない。そうではなく、沖縄に象徴される安全保障体制のひずみを解決するための知恵こそ改憲である。
 言うまでもなく9条は、戦争放棄と戦力の不保持を定めている。そのため日米安保条約に基づき、日本を他国の侵略から守る役割は実質的に在日米軍が担い、自衛隊は補完勢力でしかなかった。
 しかし、在日米軍専用施設の70%が集中する沖縄では、米軍絡みの事件・事故が絶えない。しかも日米地位協定によって日本側の捜査権は制限され、日本人に比べ米軍が優遇されるという不条理な状況が続く。
 日米同盟が日本の平和と安全に貢献してきたことは事実だが、他国に自国を防衛してもらう「いびつ」な体制のツケを、戦後一貫して沖縄県民が支払わされてきたのである。
 9条改正によって自衛隊を憲法に明記し、自国を守る戦力として位置付ける。米国だけに頼らない安全保障体制を目指す。それが米軍の整理縮小を進める上で画期的な第一歩になる。県民が将来、米軍基地負担のくびきから逃れたいと願うならば、改憲は最終的に避けて通れない道だ。
 9条の理念を「実行」し、沖縄を「非武装地帯」とするよう求める声も県内では根強い。翁長雄志知事も「沖縄を平和の緩衝地帯にしたい」と強調している。
 しかし歴史を振り返れば、沖縄戦だけでなく、近世には薩摩侵攻の被害もある。沖縄が繰り返し戦禍に踏みにじられてきたのはなぜか。備えが無力であれば、犠牲になるのは結局、住民であることを歴史の教訓は示している。
 改憲に強く反対している外国が中国だ。中国外務省の耿爽(こう・そう)副報道局長は23日の記者会見で、改憲勢力が国会発議に必要な衆院3分の2の議席を確保したことに関し「日本が平和発展の道を引き続き歩むことを望む」と述べ、9条改正の動きを牽制(けんせい)した。
 中国は石垣市の行政区域である尖閣諸島周辺海域への公船派遣を継続し、沖縄に対する領土的野心を公言している唯一の国でもある。現憲法のほうが中国にとって都合がいいということだろう。その意味で改憲は遅まきながら、中国に対し、尖閣への手出しを控えるよう求める強力なメッセージになるはずだ。
 ただ改憲のプロセスは、日本の軍事的台頭を警戒する中国や韓国の理解を得る努力と並行して行うべきである。改憲はあくまでも国内問題だが、中韓の対応によっては国際問題に発展する恐れもあるからだ。
 恒久平和をどう実現するか。9条のあり方を今一度考え直すことで、実行可能な道筋をつけたい。

2017年

10月

24日

もはや「オール」名乗れぬ

 「沖縄で自民全敗」との観測を覆した。4区の自民前職、西銘恒三郎氏(63)=公明推薦=が、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を掲げる「オール沖縄」の無所属前職、仲里利信氏(80)に競り勝ち、選挙区の議席を奪還した。
 「オール沖縄」は、辺野古移設が県民の総意であると主張する名称だ。しかし、翁長雄志知事が誕生した2014年の知事選以来、辺野古を容認する候補者が初めて国政選挙で勝利した。「オール沖縄」に風穴が開いたのだ。野党は今後「オール」を名乗る資格はなくなるのではないか。「オール沖縄」を称する以上、野党にとっては全選挙区を取ってこその勝利であり、1~3区の候補者が当選したとはいえ、「オール沖縄」は事実上の敗北と言えるだろう。
 翁長知事は23日、「1区から3区までは明確に大差でしっかりと方向性が出てきた」と述べ、辺野古移設反対の民意が示されたとの見方を示した。強気だが、敗北を糊塗(こと)する発言とも取れる。
 普天間飛行場を抱える2区の宜野湾市、移設先に3区の名護市では野党が勝利しており、当事者の自治体から辺野古反対の意思は示されている。しかし4区が普天間問題の当事者ではないから、4区の選挙結果が移設の論議に影響しないということはない。今選挙で、移設容認の意見も県内に根強く存在することが浮き彫りになったからだ。
 知事や、知事を支える勢力の問題点は「移設反対は民意」という大義名分を掲げ、こうした声を一方的に封殺してきたことにあった。今後は移設容認の意見にも配慮した丁寧な県政運営に心を配るべきだ。
 共産党が全国で唯一、選挙区の議席を守った1区も、非「オール沖縄」候補の得票合計が当選した赤嶺政賢氏(69)を上回っている。翁長知事支持、不支持という対立軸で見ると「オール沖縄」が崩壊しているのは4区だけではない。既に首長選や那覇市議選で「オール沖縄」は退潮傾向が鮮明に表れており、今選挙もそうした流れがいっそう強まったことを示している。
 4区には米軍基地問題以外にも大きな争点があった。宮古、八重山への陸上自衛隊配備計画である。宮古島市、石垣市とも配備に賛成する西銘氏の得票が仲里氏を上回った。陸自配備計画に対しては、両市とも住民から一定の理解が示されたと見るべきだろう。
 特に宮古島市では、西銘氏が仲里氏に約8千票差で圧勝した。4区全体で約6300票差だったから、宮古島市での大量得票が西銘氏勝利に貢献したと言える。
 仲里氏は2014年の前回衆院選で初当選して以来、選挙区の離島にほとんど足を運んでおらず、宮古、八重山の有権者からは縁遠い存在だった。市町村と国政のパイプ役としてしばしば離島を訪れ、汗をかく機会が多かった西銘氏とは対照的で、それが勝敗の差につながった可能性は大きい。
 米軍基地問題に時間を割くことが多い「オール沖縄」の議員だが、離島には米軍基地がないせいか、選挙が終われば離島で姿を見かける機会はほとんどないのが実態だ。これでは離島の有権者から見放されるのも、ゆえなしとしない。沖縄本島に比べ、有権者数が少ない離島は軽視される傾向があるが、今選挙は、離島の選挙結果が勝敗を左右することもあるという好例だろう。

2017年

10月

21日

最大決戦いよいよ大詰め

 今年最大の政治決戦も、いよいよ大詰めを迎えた。安倍晋三政権の是非、憲法改正、消費増税などが問われ、沖縄では米軍基地問題も争点に、与野党が激しい集票合戦を繰り広げた。衆院選は投開票まであと1日に迫っている。
 台風の影響による投票率の低下が懸念され、県選管は期日前投票の活用を促す異例の呼び掛けを行っている。投票所には確実に足を運びたい。
 選挙期間中に東村で発生した米軍ヘリ炎上事故は、各陣営に衝撃を与えた。県議会は直ちに与野党の全会一致で抗議決議を可決した。しかし米軍は日本政府の飛行自粛要請にもかかわらず、具体的な事故原因や再発防止策を示さないまま、一方的に同型ヘリの飛行を再開した。
 米軍の事故とその後の対応は県民感情を硬化させ、選挙で与党・自民党に不利に働くことは否めない。与党が日米の連携を重視し、日米合意の履行による着実な基地負担軽減を訴えてきたことを考えれば、米軍の行為は自らの首を絞めるに等しい。逆に野党は「米国は約束を守らない」などと勢いづいている。
 4選挙区には12人が立候補した。前回2014年衆院選では野党が全勝し、自民党候補は辛くも比例で復活したが、同じ顔合わせとなる今選挙も、自民党候補が優勢と伝えられる選挙区はない。選挙区で敗れた場合、比例復活が二度続く保証はなく、選挙結果によっては沖縄から政府とのパイプ役がいなくなる事態も現実味を帯びる。
 必死なのは野党も変わらない。米軍普天間飛行場の辺野古移設反対で足並みをそろえ、県民の民意を体現する存在として「オール沖縄」を名乗る。しかし4選挙区のうち一つでも落とせば「オール」を称し続ける根拠が問われるのは間違いない。来年の名護市長選や知事選で勝利するためにも、前回に続き全選挙区を制することが至上命題になる。
 全国的には、辺野古移設の是非は争点になっていない。移設工事は適法とする昨年の最高裁判決で、国と県の対立は最終的な決着を見たとの認識が一般的だからだ。そこに全国と沖縄の大きなズレがある。移設工事は進んでおり、移設の是非が争点であり続ける沖縄の選挙のあり方も今後、問われざるを得ない。
 4区では陸上自衛隊配備の賛非も争点になっている。与党は推進、野党は反対の立場であり、特に石垣市での与野党の得票数は、来年3月の石垣市長選を占う材料になる。
 沖縄では1区の維新候補が唯一、希望の党の推薦で戦っているが、報道各社の世論調査では希望の全国的な伸び悩みが指摘されている。フレッシュさを売り物にした希望だが「安倍一強」打破を叫ぶ小池百合子代表の政権批判が、民進党など従来の野党と大差ないこと、公約の現実性、さらには急ごしらえの候補者擁立といった問題点がある。
 希望が躍進すれば、現実的な安全保障政策を採用する保守二大政党の流れが日本で根付く可能性が高いだけに、今選挙は大きな岐路と言える。
 民進党「ハト派」で結成した立憲民主党が支持を伸ばせば、保守二大政党の流れは阻止される方向になるだろう。
 衆院選後は政界再編の可能性も予想されており、沖縄もいずれは中央政界のうねりに巻き込まれていくことになる。沖縄が今、どのような意思を示すのか。まさしく地域の盛衰に直結する重要な選挙である。

2017年

10月

13日

米軍事故、安全保障再考を 視点

 米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリが11日、東村の民間地に緊急着陸し、大破、炎上した。最も近い民家から数百㍍の距離だという。許し難い事態である。地域住民や乗員に死傷者が出なかったのは奇跡的だったが、繰り返される米軍機の事故に県民の怒りは増すばかりだ。

 翁長雄志知事は「とんでもない話だ」と憤った。安倍晋三首相は「大変遺憾だ。安全第一で考えてもらわなければ困る」と述べ、米側に原因究明と再発防止を申し入れるよう指示した。12日には自民党の岸田文雄政調会長が来県するなど、政府・与党挙げて対応に追われている。

 米軍は安全を確認するため、当面、同型機の運用を停止する方針を表明した。米軍には厳重に抗議し、明確な安全対策を要求すべきだ。

 沖縄にとって悲劇的なのは、事件・事故の繰り返しが日米両政府への県民の不信感を強め、ひいては両政府が進める県民の負担軽減策にブレーキが掛かってしまう悪循環が存在することだ。

 普天間飛行場の辺野古移設は、まさに今回のような事故が市街地の宜野湾市で起こることを防ぐため計画された。しかし現実には、米軍の事件・事故が辺野古移設反対の理由に使われることが多い。政治的思惑が、沖縄の基地負担軽減をむしろ遅らせているのである。

 衆院選の候補も相次いで事故現場に駆けつけているが、これこそ与野党を超えた「オール沖縄」で県民の声を訴えるべき事案だ。しかし翁長知事は11日、報道陣の質問に対し、今回の事故が衆院選に影響するとの認識の上で「新辺野古基地を造らせない、オスプレイ配備撤回、普天間閉鎖撤去を求める候補者を勝たせることで、民意を改めて示さないといけない」と述べた。

 記者とのやり取りとはいえ、事故の抗議にかこつけた政治的アピールにしか見えず、さらには、さまざまな政治的立場を持つ県民の分断を誘発させる可能性すらある。自ら「オール沖縄」を否定するような言動ではないか。

 米軍の事件・事故が起きるたび、日本側の捜査権を制限した日米地位協定の問題が指摘される。日本で起きた事故なのに日本側が独力で究明できない。米軍の「ブラックボックス」化が県民の不公平感を増幅させてきた。

 米軍の事件・事故は、過去、どの政権にとっても頭痛の種だった。日本の「対米追従路線」や、安倍政権の外交政策を批判しても始まらない。問題の根源は、自国の防衛を米軍に全面的に委ねるという、戦後一貫した安全保障のあり方にある。

 現在の国際情勢下、沖縄で非武装または一的な軍備縮小を進めることは非現実的だ。では沖縄にとって最もリアリティの高い解決策は何か。

 日米同盟の堅持は今後とも基本線だが、県民の負担軽減を進めるには、米軍基地や、米軍の活動縮小を求めるほかない。一方で脅威に対応できる体制を維持するには、米軍に代わる存在として、自衛隊の役割強化が不可欠である。

 事故が衆院選に影響するというのなら、各党が提唱する、自衛隊を憲法にどう位置づけるかという憲法改正の問題まで、県民には踏み込んで考えてもらいたい。

 

2017年

10月

11日

「辺野古」以外に何を語るか 視点

 衆院選が10日公示され、沖縄の4選挙区には計12人が立候補した。翁長雄志知事を支える「オール沖縄」勢力と安倍政権の継続を訴える自民の対立を軸に、1区では希望の推薦を受けた維新前職も加わる構図となった。
 沖縄で最大のテーマは安全保障だ。全国的に危機感が高まる北朝鮮問題に加え、石垣市の行政区域である尖閣諸島は日々、中国の脅威にさらされている。米軍基地の重い負担を軽減しながら、同時に脅威に即応できる体制を構築する。沖縄にはそうした現実的な政策が求められている。
 どの候補、あるいはどの政党が現実的な政策を打ち出しているのか、注視しなくてはならない。
 憲法9条の改正をどう考えるかは、各候補や各党の安全保障政策を象徴している。自民、維新は賛成、「オール沖縄」勢力は反対であり、違いは明確だ。
 自衛力の強化を将来的な米軍縮小につなげるのか、9条の堅持で米軍だけでなく自衛隊の縮小も要求していくのか、両者の理念は根本的に異なる。
 前回2014年の衆院選は翁長知事が誕生した知事選の直後に行われ、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題が最大の争点とされた。辺野古は今選挙でも依然、争点の一つとされるが、しかし当時とは社会状況が違う。それは昨年の最高裁判決、今年の埋め立て工事着工、さらには増す一方の中国、北朝鮮の脅威である。こうした中で、単なる「反対」だけでは責任ある態度とは言えない。
 候補者が辺野古に言及するのであれば、最近の状況の変化について何を語るのか、あるいは語らないのかにも耳を澄ませたい。
 辺野古移設をめぐっては自民が容認、「オール沖縄」が反対という姿勢が固定化しており、そのこと自体にことさら耳新しさはない。今選挙の第一声では「オール沖縄」候補が改めて辺野古反対を強調したのに対し、自民候補はあえて触れようとはしなかった。既に与野党の議論が噛み合っていない。これをどう見るか。
 有権者は、各候補者が「辺野古」以外に何を訴えるのかも、厳しくチェックすべきだ。
 沖縄の課題は多い。一括交付金など、国による沖縄振興策をどう評価するか。全国最低水準の所得をどう引き上げ、経済的な自立につなげるか。農業、観光、商工などさまざまな分野で、候補者それぞれに信念や主張があるはずだ。国境を守る大事な役割を果たしている離島の振興策も、なおざりにしてほしくない。
 候補者のうち9人は前職であり、実績が問われるのは当然だ。
 全国的に最大の争点は安倍政権継続の是非である。しかし疑問なのは、事実上の野党第一党である希望の党が、首相候補を明示していないことだ。
 過去にも細川政権や村山政権のように、選挙後の離合集散で突如として誕生した政権は存在したが、いずれも短命に終わっている。
 野党の首相候補が不明というのは、有権者にすればびっくり箱を差し出されているようなものだ。安倍首相さえ打倒すれば、後任は誰もいいのだろうか。希望の党は今からでも首相候補を明らかにすべきであり、現状のままでは「政権選択選挙」とは言い難いのではないか。

2017年

10月

05日

改憲、消費増税、基地争点に 視点

 10日公示、22日投開票の衆院選は、全国では自公、希望の党、立憲民主党、社民、共産の戦いとなる構図が固まった。沖縄では、米軍普天間飛行場の移設問題を対立軸に、「オール沖縄」勢力、自民、維新がしのぎを削る。
 ここへ来ていくつか大きな争点が浮上した。政権選択の選挙として、まず安倍政権の是非が問われる。与党は「アベノミクス」や安全保障法制、緊迫する北朝鮮問題への対応などの実績を掲げ、自公政権の安定感を強調。野党は森友、加計学園問題などを追及し、首相は説明責任を果たしていないと指摘、「大義なき解散だ」と批判している。
 憲法改正も重要なテーマだ。自民、希望、維新は前向きな姿勢を示したが、立憲、共産、社民は消極的だ。特に戦力不保持を定めた9条が争点になる。日本を取り巻く厳しい安全保障環境、今後勃発する大規模災害の可能性を考えると、自衛隊の存在感は、将来にわたり高まる一方だ。自衛隊が「違憲」と解釈される余地を残す条文のままでいいのか問われる。
 沖縄の米軍基地負担軽減に向けた方策として、在沖米軍を縮小し、米軍施設を自衛隊が使用できるようにするのも一つの案だ。辺野古移設をめぐり、開会中の県議会で興味深い発言があった。自民県議が翁長雄志知事に対し「移設を容認し、30年後には(代替施設を)自衛隊が活用するという落としどころを考えるべきではないか」と提案した。「米軍に代わる自衛隊」という考えを推し進めるならば、いずれ9条の改正は不可避になるだろう。
 消費税増税をめぐっても各党の考えは割れている。自民は2019年10月の消費税率10%への引き上げを予定通り実施し、幼児教育の無償化などに振り向けたい考えだが、希望や立憲は増税凍結を訴える。
 過去最多の観光客が来県し、空前の活況とも言われる県経済だが、観光と直接関連のない業種や、中小零細企業まで好景気の恩恵が行き渡っていない。その意味では多くの県民が依然、経済的な苦境にあえいでおり、その上、少子高齢化や人口減少で将来に不安を感じている。消費増税は、こうした状況も考慮に入れた上で検討されなくてはならない。
 沖縄では4つの小選挙区に12人が立候補する。前回2014年衆院選と同じ対立の構図となっており、基地問題、特に辺野古移設は依然、一つの争点だ。候補者や政党間で堂々とした論議が望まれる。ただ前回と違い、辺野古だけが争点という雰囲気はだいぶ薄れている。
 改憲や消費増税はもとより、県民生活に密着した福祉のあり方、地域活性化の方策、離島では尖閣諸島問題や自衛隊配備問題も大きなテーマだ。
 予定候補者のうち9人は現職であり、この3年間の実績も厳しくチェックしたい。

2017年

9月

20日

意義深い米大統領国連演説

 米国ニューヨークの国連本部で、トランプ米大統領が19日、就任後初めて国連総会の一般討論演説を行い、もし北朝鮮への軍事攻撃に踏み切る事態となれば「北朝鮮は完全に破壊される」と警告。横田めぐみさん=失踪当時(13)=の拉致事件にも触れ「北朝鮮は凄まじい人権侵害を行っている」と非難した。
 米大統領の国連演説は、日本上空を通過する弾道ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮への力強い牽制になったはずだ。
 米大統領が国連で日本人拉致問題に言及するのは異例で、日本にとっても意義深い。産経新聞によると、横田めぐみさんの母、早紀江さん(81)は「トランプ大統領が拉致問題にも思いを寄せ、発言してくださったことは大きな意味がある」と述べた。安倍晋三首相とトランプ氏の良好な関係を受け、日本政府による水面下での働き掛けが功を奏した可能性もある。
 北朝鮮の脅威は沖縄から見ても現実的だ。沖縄本島には有事の際、米軍の活動拠点となると見られる米軍基地がある。北朝鮮の人工衛星と称する弾道ミサイルは2012年と16年の2回、宮古、八重山諸島の上空を通過した。中山義隆石垣市長は直ちに北朝鮮に抗議したが、北朝鮮は馬耳東風だった。
 北朝鮮との交渉を指す場合に使われる「対話と圧力」という言葉は常套句だが、日米は対話の積み重ねの果てに北朝鮮に裏切られてきた経緯がある。「北朝鮮の破壊」という言葉は人を驚かせるが、実業家として「ディール(取り引き)」の重要性を強調してきたトランプ氏であれば、北朝鮮の核放棄に向けた交渉にあたり、さまざまな「口撃」を繰り出すのは当然のことだ。
 現に国際社会で繰り広げられているのは国益と国益のぶつかり合いであり、日本としても、いかなる事態にも対応可能な即応性と柔軟性が求められる。
 トランプ氏が国連改革に前向きな姿勢を示していることも評価できる。
 トランプ氏は大統領就任前の昨年12月、国連について、ツイッターに「おしゃべりして楽しい時間を過ごす仲良しクラブ」と投稿。大統領に就任後の4月に国連安全保障理事会メンバー国の国連大使らをホワイトハウスに招いた際、米国の国連拠出金の負担は「不公平だ」と不満を表明、批判を繰り返した。
 国連では、沖縄県民を「先住民」と認めるよう求める勧告が繰り返されたり、翁長雄志知事が欧州国連本部の人権理事会で「沖縄県民の自己決定権がないがしろにされている」と演説するなど、沖縄県民から見ても、首をかしげたくなるような事態が繰り返されている。組織が一部の政治勢力に利用されているのではないかという疑惑を拭えない。
 安全保障理事会の常任理事国が自ら国際秩序を乱す行動を取るなど、国連の存在意義そのものが問われるような状況も出現している。国連本来の理想である平和維持や人権擁護の機能が十分に発揮されているとは言い難い。その意味で、米大統領の発言は良識を反映している。

2017年

9月

18日

衆院解散へ 政局風雲急

 衆議院の解散がにわかに現実的になり、政局は風雲急を告げている。安倍政権は10月10日公示、同22日投開票を軸に日程調整を本格化させているという。2014年12月以来、約3年ぶりの衆院選で、自公連立政権が国民の審判を受けることになる。
 沖縄の4選挙区は、いずれも現職が出馬すると見られている。1区は赤嶺政賢氏(共産)、国場幸之助氏(自民)、下地幹郎氏(維新)、2区は照屋寛徳氏(社民)、宮﨑政久氏(自民)、3区は玉城デニー氏(自由)、比嘉奈津美氏(自民)、4区は仲里利信氏(無所属)、西銘恒三郎氏(自民)で、新人は幸福実現党に立候補の動きがある。
 前回14年衆院選では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する「オール沖縄」と呼ばれる勢力が小選挙区で全勝した。しかし自民候補と下地氏はいずれも比例で復活し、結局、立候補した9人全員が当選する「敗者なき選挙戦」となった。今選挙も「オール沖縄」勢力と自民の対決が軸になる。
 辺野古移設の是非は争点の一つになるが、移設をめぐる状況は当時とは一変した。2016年12月の最高裁判決を受け、辺野古沿岸の埋め立ては適法性が確認され、今年4月には埋め立て工事が始まった。移設阻止は現実的に困難という見方も広がりつつあるが、反対派は徹底抗戦を叫んでいる。
 自民党は移設容認、「オール沖縄」は移設反対の立場で再び干戈(かんか)を交える。移設のメリット、デメリットに関し、双方とも正面から論戦してほしい。
 米軍基地と並んで沖縄が抱える重要な安全保障問題が尖閣諸島問題だ。中国の身勝手な領有権主張は依然として変わらないが、中国公船が領海に侵入して八重山の漁船を追い回すなど、国有化当時に見られた強引な行動は影を潜めた。しかし中国公船と日本の巡視船が尖閣周辺海域でにらみ合いを続ける緊張状態は3年前と比べても改善されていない。
 こうした状況を受け、政府は南西諸島に陸上自衛隊を配備し、守備を固める動きを進めている。石垣島への配備は来年度から本格化する予定で、特に宮古、八重山を含む4区で争点の一つになる。
 現職9氏に関して言えば、この3年間でどれだけ沖縄振興に手腕を発揮したか、有権者が改めて実績をチェックする好機でもある。
 国会議員は市町村議会議員や県議会議員に比べ、住民と接する機会は必ずしも多くない。大所高所から国政の問題に取り組むことが求められるためだが、一方で地域と国政のパイプ役としての機能も果たさなくてはならない。それぞれの政治家が日ごろからどの程度、選挙区に足を運び、地域の要望を吸い上げてきたか問われる。
 沖縄は来年、名護市長選、石垣市長選、県知事選などの大型選挙が相次ぐ。衆院選は事実上の前哨戦として、県内政局を大きく左右する。

2017年

9月

08日

「中華台北」の悲哀

 「台湾人に生まれた悲哀」という言葉がある。日本人にとっては、ピントこない人がほとんどで、馴染みがない言葉である。
 1994年、作家の故司馬遼太郎氏が台湾台北市で李登輝元総統と対談した際、李氏から飛び出した発言だ。この言葉は日本人が台湾を理解する際の、一つのキーワードになりうる。
 李氏のいう悲哀の解釈は様々あるが、戦前の日本統治時代に日本人の下に置かれた待遇や、戦後、国民党政権が起こした2・28事件(1947年に起きた暴動事件)の犠牲、長期間続いた同党による戒厳令下の圧政などが入るだろう。
 最近、この「台湾人に生まれた悲哀」を感じさせる出来事が台北市であった。
 台湾では初となる、学生スポーツの祭典「ユニバーシアード夏季大会」(8月19日から30日まで)で、台湾の選手団が「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」と表記されていたことである。ユニバーシアードは五輪に準じる運営となっているためだ。
 台湾内で開催されている大会であっても、台湾選手は台湾の呼称は使えず、中華台北の下、参加したのだ。自らの国(台湾は国際的には中国の地域とされている)の名前を名乗って出場できないとは、かなり屈辱的な扱いである。李氏の言葉を思い出した。
 なぜ、五輪で台湾は中華台北と呼ばれているのか。1971年、中国が国連に加盟した際、台湾は追放され、次第に国際社会で孤立を深めていったところまで遡らなければならない。
 その当時、中国つまり中華人民共和国を意味する「一つの中国」の原則の下で、中華民国(台湾)は国際社会から事実上、無視されたのも同然だった。
 そこで政治的な妥協策として1979年英文名称を「Chinese Taipei Olympic Committee」とし、89年には英文名称を中国語名称「中華台北」とすることで、中国側と合意した。その後、経済協力機構(OECD)、アジア太平洋経済協力国際機関(APEC)でも中華台北が使用されている。
 この扱いについて多くの台湾住民は表面的には甘んじてきた。日本統治移前はオランダなど、常に外国勢力に抑圧されてきただけに、台湾人の忍耐強さには脱帽させられる。
 しかし今回は中華台北を海外で使用するならともかく、台湾内での扱いともなると、さすがに反発が出た。市民団体が台北市内で、中華台北でなく台湾の呼称をすべきと訴える集会を開いた。
 また在日台湾同郷会が東京五輪での中華台北表記を「台湾と訂正せよ」と、日本オリンピック委員会に要求し、独立派グループが同五輪で台湾名義での参加を求めて市内で座談会を開くなど、中華台北を巡って不満が続出。東京五輪にも飛び火しそうで、日本人も今後、無関心ではいられないはずだ。
 昨年7月、石垣島を訪問した李氏が「日台は運命共同体だ」と発言したことからも分かるように、台湾蘇澳鎮と姉妹都市関係にある石垣市は台湾との結び付きは強い。石垣港には海外からのクルーズ船が多数寄港しており、多くの台湾人を運んでおり、乗客の大多数を占める台湾人が市内を闊歩(かっぽ)する。
 その姿からは「台湾人に生まれた悲哀」は想像できないが、その裏側に潜む悲哀を知ることによって、双方の理解をさらに進める時が到来している。

2017年

9月

04日

学力低下の惨状打開を

 夏休みを終え、いよいよ2学期がスタートした。八重山の最高気温は30度を超え、猛暑はまだ和らぐ気配を見せないが、季節は着実に秋へと移ろい始める。年末まであと4ヵ月、そろそろ今年の総決算も視野に入れた準備を考える時期だ。
 児童生徒の一番の「仕事」は勉学だ。小学6年生と中学3年生を対象に国語A・B、算数A・B、数学A・Bで実施される2017年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が発表された。沖縄は小学校でほぼ全国平均並みとなったものの、中学校は全教科で全国平均を下回った。
 小学校はやや改善の兆しが見られるが、問題なのは依然として中学校だ。全国47都道府県別に見ると、全教科で全国最下位と低迷している。
 学力上位県と沖縄の格差は圧倒的だ。例えば国語Aでは、全国1位の秋田、石川、福井が82点なのに対し、沖縄は72点。数学Aは全国1位の福井が73点なのに対し、沖縄は58点で、15点もの大差がついた。総括すると、沖縄では小学校段階で徐々に学力向上の取り組みが奏功していると言えるが、中学校段階の取り組みは、真剣に見直すべき時期に来ている。
 八重山でも石垣市の調査結果が先日発表されたが、中学校は全国最下位の県平均をさらに下回る結果となった。学力低迷の覆うべくもない惨状と言える。
 2010年、中山義隆市長の就任時に登用された玉津博克元教育長が、学力向上を最大の目標に据え「冠鷲プロジェクト」と名付けたプランを打ち出したのはまだ記憶に新しい。ところがこの結果を見ると、とても学力向上どころではない。小学校はともかく、中学校に関しては「道半ば」どころか「一歩たりとも進んでいない」のではないか。
 現状打開に向けた一手は競争原理の導入だろう。テスト結果を学校別にランキングし、上位校を公表するなどの取り組みである。下位校にとっては上位校が目に見える目標になるし、参考にもなる。上位校にとってはさらなる励みになるはずだ。
 しかし全国学力テストが2007年にスタートして10年、都道府県別、学校別での成績数値化が可能になるというメリットが、県全体でも八重山でも、うまく生かされているとは言い難い。
 八重山では小規模校が多く、個人情報保護の面から学校別の公表が難しいという事情もあるが、県レベルでこうした施策が検討されたことはあるのだろうか。
 こうした提案に対し、「過度な競争を招きかねない」として、ランキングに反対する動きがあることは理解できない。県内でも中学校が全国最下位であることを意図的に報じないメディアがある。これでは改善は進まない。
 学力向上を実現するには、子どもの貧困問題、沖縄の夜型社会の改革、教員の資質向上など、一筋縄ではいかない難問が横たわっているのも事実だ。
 資源を持たない沖縄にとって、人材こそ宝だとよく指摘される。人材育成の基礎は学力向上だ。優秀な人材を他地区に流出させるのではなく、逆に全国から吸い寄せるほどの魅力ある「高学力都市」になってこそ、沖縄の将来は開ける。

2017年

9月

03日

学力低下の惨状打開を

 夏休みを終え、いよいよ2学期がスタートした。八重山の最高気温は30度を超え、猛暑はまだ和らぐ気配を見せないが、季節は着実に秋へと移ろい始める。年末まであと4ヵ月、そろそろ今年の総決算も視野に入れた準備を考える時期だ。

 児童生徒の一番の「仕事」は勉学だ。小学6年生と中学3年生を対象に国語A・B、算数A・B、数学A・Bで実施される2017年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が発表された。沖縄は小学校でほぼ全国平均並みとなったものの、中学校は全教科で全国平均を下回った。

 小学校はやや改善の兆しが見られるが、問題なのは依然として中学校だ。全国47都道府県別に見ると、全教科で全国最下位と低迷している。

 学力上位県と沖縄の格差は圧倒的だ。例えば国語Aでは、全国1位の秋田、石川、福井が82点なのに対し、沖縄は72点。数学Aは全国1位の福井が73点なのに対し、沖縄は58点で、15点もの大差がついた。総括すると、沖縄では小学校段階で徐々に学力向上の取り組みが奏功していると言えるが、中学校段階の取り組みは、真剣に見直すべき時期に来ている。

 八重山でも石垣市の調査結果が先日発表されたが、中学校は全国最下位の県平均をさらに下回る結果となった。学力低迷の覆うべくもない惨状と言える。

 2010年、中山義隆市長の就任時に登用された玉津博克元教育長が、学力向上を最大の目標に据え「冠鷲プロジェクト」と名付けたプランを打ち出したのはまだ記憶に新しい。ところがこの結果を見ると、とても学力向上どころではない。小学校はともかく、中学校に関しては「道半ば」どころか「一歩たりとも進んでいない」のではないか。

 現状打開に向けた一手は競争原理の導入だろう。テスト結果を学校別にランキングし、上位校を公表するなどの取り組みである。下位校にとっては上位校が目に見える目標になるし、参考にもなる。上位校にとってはさらなる励みになるはずだ。

 しかし全国学力テストが2007年にスタートして10年、都道府県別、学校別での成績数値化が可能になるというメリットが、県全体でも八重山でも、うまく生かされているとは言い難い。

 八重山では小規模校が多く、個人情報保護の面から学校別の公表が難しいという事情もあるが、県レベルでこうした施策が検討されたことはあるのだろうか。

 こうした提案に対し、「過度な競争を招きかねない」として、ランキングに反対する動きがあることは理解できない。県内でも中学校が全国最下位であることを意図的に報じないメディアがある。これでは改善は進まない。

 学力向上を実現するには、子どもの貧困問題、沖縄の夜型社会の改革、教員の資質向上など、一筋縄ではいかない難問が横たわっているのも事実だ。

 資源を持たない沖縄にとって、人材こそ宝だとよく指摘される。人材育成の基礎は学力向上だ。優秀な人材を他地区に流出させるのではなく、逆に全国から吸い寄せるほどの魅力ある「高学力都市」になってこそ、沖縄の将来は開ける。