2017年

11月

22日

「いばったところがなく…

 「いばったところがなく、とても自然で聡明だった」―。世界的チェロ奏者のパブロ・カザルスは、ホワイトハウスでの演奏会に招かれ、41歳年下のケネディ米大統領と面会した時の印象をこう回想している◆母国スペインの独裁政権を批判し、自由と平和を訴え続けたカザルスは、ケネディこそ世界のために力を尽くす大統領だと直感し、大きな期待を抱いた。わずか2年後の1963年、ケネディが暗殺された際は「これまで多くの人の死を見てきたが、これほど衝撃を受けたことはない」と語った◆尊敬する政治家としてケネディを挙げる人は日本でも多い。史上最年少の43歳で大統領に就任し、外交ではキューバ危機などを乗り越えソ連との平和を模索、内政では黒人の人権問題などに取り組んだ。3年足らずで暗殺されたため大きな業績は少ないが、その理想主義は現在でも称揚されている◆暗殺事件は謎が多く、オズワルド容疑者の単独犯行説が公式見解となっているものの、陰謀説がいまだに根強い。その生き方だけでなく、死によってもいまだに全世界に影響を与え続けている稀有な政治家だと言える◆今年はケネディの生誕100年であり、きょう22日で暗殺事件から54年。まだ「現代史」の範ちゅうに入る人物である。

2017年

11月

09日

あまりに感情的な…

 あまりに感情的なコメントにびっくりした。米軍普天間飛行場の辺野古移設工事で、沖縄防衛局が新護岸の工事に着手したことを受けた翁長雄志知事の反応である◆「政府は、なりふり構わず既成事実を作ろうと躍起になっているが、工事が進んでいるように見せかけているだけだ」。現場で抗議する反対派を鼓舞するリーダーのようで、これが行政の長とは、にわかに信じ難い。「あらゆる手法を適切な時期に行使し、これからも全力で戦う」。知事がこんな文書を発表すれば、海外なら「地方政府が中央に反旗を翻した」と大騒動になりかねない。折しもスペインでは自治州の独立問題が起きている◆ここまでの覚悟で阻止しなくてはならないという辺野古移設ではあるが、知事が誰のために、何のために戦わなくてはならないのか、いま一つ分からない◆移設が阻止されても沖縄を取り巻く脅威は去らず、沖縄の平和には何も寄与しない。あるいは、このコメントにあるように、大浦湾の環境保全が目的なのか。移設阻止の戦いとは、環境保護活動だったのか。移設阻止のメリットは、実は曖昧模糊(あいまいもこ)としている◆デメリットは明確だ。宜野湾市民の悲願である普天間返還が遅れる。「移設阻止」の光と影を、今こそ真剣に考える時だろう。

2017年

11月

06日

沖縄への誘致運動が進む…

 沖縄への誘致運動が進む国立自然史博物館だが、誘致が実現した場合、建設場所は沖縄本島北部(やんばる)と八重山へ分散配置する案が有力のようだ◆昨年7月に石垣市で開かれたシンポジウムでも琉球大の関係者が、複数拠点という意味の「ネットワーク型」を明言していたが、4日に国頭村で開かれたシンポジウムのタイトルは、ずばり「ネットワーク型博物館がめざす地域との連携」だった。県内の有識者が強力に推す案のようである◆分散配置も悪くはないが、本島北部と八重山が誘致で綱引きをしていることを踏まえた「妥協案」に過ぎないなら、そもそも誘致の趣旨から揺らぎかねない◆分散配置が難しいのは、下手をすると施設を分散することで、魅力も分散させてしまうことだ。むしろ魅力を倍加させるような工夫をしなくてはならない。両地域の住民ぐるみで施設のあり方を論議する必要がありそうだが、簡単な話ではなく、ハードルは高そうだ。あるいは二カ所に拠点を置き、一方が本館、他方が分館という位置づけも考えられるが、誘致活動してきた住民はなかなか納得しづらいだろう◆今後予想されるさまざまな難問を考えると、大きな勇気が必要になるが、やはり一カ所に決めてしまったほうがベターではないかとも思える。

2017年

11月

02日

リスクを取って果敢に…

 リスクを取って果敢に挑戦し、結果として失敗した人を、安全地帯にいて何もしなかった人たちが「お前はしくじった」と言って非難する。そんな見苦しい光景が、民進党両院議員総会で繰り広げられた◆希望の党との合流計画を進めたが、政権奪取できなかった前原誠司代表(当時)。「即刻辞任すべきだ」「国民は前原氏を嘘つきだと思っている」。党所属議員たちに容赦なく責めたてられ、前原氏は「これまでの経緯を説明したら、言い訳にしか聞こえないかも知れない」と責任を認めて辞意表明した◆政治は結果がすべて。前原氏の浅慮は否定できないが、批判する資格があるのは有権者であり、政権を託されるに足る政党を作り上げてこなかった議員たちではない◆新党結成という一世一代の賭けに出た小池百合子東京都知事、その賭けに乗った前原氏。勝敗はともかく、政治家としての決断力には評価すべきものがある◆一方、勝者でありながら罵倒され続ける政治家も。「自公の勝利は選挙制度が悪い」「野党が自滅したから勝てた。首相への信任ではない」。新聞やテレビは、このたぐいの論評であふれている。特に沖縄で甚だしい。そんな中、誰もが褒めるのは「漁夫の利」を得たに過ぎない立憲民主党の枝野幸男代表。妙なものだ。

2017年

10月

25日

希望の党が衆院選で…

 希望の党が衆院選で伸び悩んだ理由が、小池百合子代表の「排除」発言だとされているが俗説だろう。一時、保守二大政党制の幕開けと政権交代の期待を一身に集めた党としては、希望はあまりにも準備不足、力不足だった◆小池代表の街頭演説から、既に希望ではなく失望を誘った。ニュータイプの野党として、どのような国家像を語るのか耳を澄ませたが、衝いて出た言葉は旧態依然とした「安倍一強」「モリカケ」批判。これでは従来の民進党などと何も変わらない◆公約も「ユリノミクス」などの言葉だけが先行。具体的なイメージが感じられず、何がしたいのかよく分からなかった◆そして何より、急ごしらえの候補者たち。一方では民進党からの移動組、他方では知名度も実績もない「風頼み」の新人。沖縄では推薦を出したが、独自候補は立てられなかった。問題は急な解散で、じっくりと腰を据えて新党を構築する時間的余裕がなかったことだろう。勝負に出るタイミングが誤算だったのか。それでも野党第二党の座は確保しており、今後の実績しだいで希望は持てる◆以前に本欄でも触れたように、小池氏の政治家としての優秀性は疑う余地はない。だが、いかに天才でも準備不足のまま、勝負勘だけで百戦百勝は無理ということだろう。

2017年

10月

07日

小池百合子東京都知事が率いる…

 小池百合子東京都知事が率いる「希望の党」が一躍脚光を浴びている。「勝負師」のイメージがある小池氏。しかし都知事選からわずか1年余で新党を結成し、一気に国政へ歩みを進めようとは、自身、夢にも思っていなかったのではないか◆政治家としての優秀性は疑いない。小池氏の自民党時代、東京でインタビューする機会があった。沖縄担当相の経験を持つ小池氏は、米軍基地問題で閉塞感を強める沖縄の現状について鋭い「分析眼」を示し、凡百の政治家とは違うオーラを漂わせた◆都知事選でのブレイクが政界に与えた衝撃波は、本人の思惑をはるかに超えていたと推測する。その才能ゆえに政界再編の期待を一身に集め、衆院解散後は奔流に押し上げられるような状況だったろう。希望の党は民進党を呑みこみ、事実上の野党第一党になってしまった。首相の座さえ見てきた◆しかし希望の党はあまりに急造だ。離合集散の末に決まった候補者といい、「ユリノミクス」など名前やイメージばかり先行する公約といい、いかにも準備不足の感は否めない◆もっと時間をかけ、じっくりと実力を蓄えて国政に挑戦すべきではなかったか。あるいは、今こそ一世一代の勝負時なのか。小池氏の姿が、誰にでもある人生の決断とだぶってしまう。

2017年

9月

24日

国連総会でトランプ米大統領が、核開発を…

 国連総会でトランプ米大統領が、核開発を続ける北朝鮮の金正恩委員長を「ロケットマン」と呼び「自殺行為の任務を進めている」と糾弾。北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相がトランプ氏を「こけおどしや詐欺などの手段を選ばない老いたばくち打ち」と罵倒するなど、〝舌戦〟が激化している◆日本では両者の攻防を「まるで子どもの口げんかのようだ」と批判する声も聞かれる。しかし、お上品な言葉で何事も丸く収めようとする日本流のやり方が「大人」と言えるのかも疑問だ◆日本は武力で他国を威嚇することを憲法で禁止したが、世界はいまだに力こそ正義という状況が続いている。国際社会は国益と国益のぶつかり合いであり、激しい言葉の応酬もまた戦略の一つ。米国も北朝鮮も、そのことはよく理解した上で発言している◆日本も戦国時代史をひもとけば、驚き呆れるほどの裏切りや詐術の連続だ。弱肉強食の時代を生き抜くしたたかさこそ、かつての日本人の身上だったことが分かる◆強い言葉は強いインパクトを与え、当事者たちを行動に駆り立てる。言葉づかいが激しいことを「失言」のように受け止める現在の風潮は、かえって日本の幼さを際立たせているのではないか。弱々しい言葉が世界を動かしたという話は聞かない。

 

2017年

9月

15日

ある企画で、基地反対派として…

 ある企画で、基地反対派として著名なメディア関係者と対談した際、米軍の新型輸送機オスプレイの安全性が話題になった。「軍用機であるオスプレイは通常の航空機より過酷な環境下で訓練しているため、事故が多くなる。それを考慮せず『欠陥機』と呼ぶのは当たらない」と話すと「それも含めて事故率が高いと言うんですよ」と反論された◆この反論はちょっと変だ。「危険な任務に就く航空機は、通常の航空機に比べ危険な状況にさらされることが多いから危険だ」という堂々巡りの論理になるからだ。だが、それを基地反対派自身が認めてしまっている◆「開発段階で事故が多発した」とも言われるが、新技術の開発段階で失敗が相次ぐのは、ある意味当然だ◆オスプレイがかくも憎まれるのは、米軍が運用する軍用機だからだろう。民間の航空機も、たびたび緊急着陸や不時着を繰り返すが「飛行を禁止しろ」という声が起こるのはオスプレイだけだ。オスプレイがもし民間機だったら、基地反対派の反応はどうだったか、想像してみる価値はある◆米軍は昨年12月の事故について「操縦ミスだった」とする報告書をまとめた。米軍に徹底的な再発防止策を要求するのは当然。しかし「欠陥機」呼ばわりは、長い目で見て誰の得にもならない。

2017年

9月

04日

北朝鮮が日本上空を通過する…

 北朝鮮が日本上空を通過するミサイルを発射し、さらに核実験を強行しているが、この地域の将来を左右する二つの大国は、いずれも日本に対して冷淡なようだ◆中国国営テレビのニュース番組は、北朝鮮情勢よりも3日から始まった新興5カ国(BRICS)首脳会議を大きく報道し、ミサイルの日本上空通過などはごく小さな扱いだ。もともと中国は「日本は北朝鮮の脅威を誇張して、自国の軍事力を拡大しようとしている」と主張。むしろ北朝鮮を擁護しており、日本の懸念などどこ吹く風だ◆日本の頼みの綱は米国だが、こちらは米南部テキサス州を襲った大型ハリケーン「ハービー」の被害で手いっぱい。トランプ大統領は被災地で懸命に復興をアピールしている。北朝鮮などは、かつてのソ連のように恐るべき敵ではないのだろう◆韓国は相変わらず慰安婦や徴用工問題を持ち出し、日本とのぎくしゃくした関係が続く。こうなると、いざという時に日本が頼める相手は結局、自分自身しかいない◆国際社会の現実を見るたび「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」して作られたという憲法9条の空文化を痛感せざるを得ない。こうして嘆息する間もなく、今度は中国公船が、尖閣諸島周辺海域の領海を荒らしに現れることだろう。

 

2017年

8月

29日

東京都港区から教育長や…

 東京都港区から教育長や高輪台小学校関係者らが来島し、校歌の「酷似」問題で揺れる石垣中を訪問した。高輪台小側からは一時、石垣中の校歌を変更するよう求める強硬意見もあったが、これを機に石垣市との自治体間交流を深めることを確認したという◆ただ今回の問題は、あくまでも石垣市側に非がある。創立当時の校長が戦前に高輪台小で勤務していたことが明らかになり、校歌の流用が「確信犯」だったことが確実になった◆当事者が郷土の大先輩であることは事実だ。また、当時は著作権という概念が薄かっただろうし、終戦直後の混乱という事情もあるかも知れない。しかし現在に至るまで、この問題が多くの関係者に波紋を広げている現状を見ると「昔のことだから」で済む問題ではない。高輪台小側の寛大さがなければ、大きなスキャンダルになっていた◆石垣市側は「迷惑を掛けた」という意識をしっかりと持つべきだし、校歌を歌い継ぐことができるのは、あくまでも高輪台小側の好意によることも自覚しなくてはならない。学校側としては今後とも、真の作詞、作曲者が誰であるか、きちんと生徒に指導すべきだ◆「雨降って地固まる」とは、石垣市側の猛省が先にあって言えること。そこを忘れるべきではない。

2017年

8月

20日

2011年に起きた「八重山教科書問題」の…

 2011年に起きた「八重山教科書問題」の教訓が何一つ生かされていない。来年度から使用される小学校道徳教科書の採択をめぐり、那覇地区で起きている騒ぎである◆那覇市、浦添市、久米島町、北大東村、南大東村の5市町村でつくる那覇地区の採択協議会は、教育出版の道徳教科書を選定◆しかし市民団体「子どもと教科書全国ネット21」は同社の教科書を「国旗・国歌を大きく扱っている」「安倍首相の写真を掲載している」「子どもに型にはまった礼儀を強制している」などと批判。これを受けて沖教組那覇支部が、那覇市教育委員会に採択撤回などを求めた。正当な教科書採択の手続きに対し、イデオロギー的な理由から介入しようというのである◆八重山でも、育鵬社の公民教科書に対する不当な誹謗中傷キャンペーンが展開され、公正公平であるべき教育行政がゆがめられる危機に陥った。あの過ちが再び沖縄で繰り返されようとは、あきれ返るほかない◆教科書に対する批判や反論は大いにあっていい。しかしルールにのっとって採択された教科書の排除を認めれば、法治国家は崩壊である。反基地の抗議現場を見ても分かるように、沖縄ではしばしば、権力ではなく「反権力」を称する人たちによって、民主主義の根幹が揺り動かされる。

2017年

7月

29日

「今、島尻安伊子沖縄担当相、仲井真弘多知事のコンビだったなら…」。

 「今、島尻安伊子沖縄担当相、仲井真弘多知事のコンビだったなら…」。先日、ある自民党関係者がつぶやいた。米軍普天間飛行場の辺野古移設で、政府と堂々巡りの対立を繰り返す翁長雄志知事の姿に、ついため息が出てしまったようだ◆島尻氏は大臣時代、子どもの貧困問題に尽力。各地に続々と支援施設をオープンさせた。仲井真氏は知事として政府との交渉に長け、巨額の振興予算を勝ち取った◆ところが参院選、知事選はさながら「辺野古移設の県民投票」と化した。両氏は辺野古移設を容認したため、基地反対派から目の敵にされ、ともに大敗。政界の表舞台から姿を消した◆しかしそのあと、沖縄に何が残されたのか。自民党でなくとも首をかしげたくなる。移設は止まらず、むしろ昨年の最高裁判決で工事の合法性が確定。翁長知事は再提訴に踏み切ったが、敗訴は必至との見方が強い。「オール沖縄」勢力は政界を席巻したが、基地の県内移設に反対するだけで、現在に至るまで県民の基地負担を1ミリたりとも軽減できていない。米軍北部訓練場の大規模な返還を実現したのは「オール沖縄」ではなく安倍政権だった◆来年は名護市長選がある。辺野古は確かに争点だが、辺野古「だけ」が争点か。そろそろ有権者が見極めるべき時期だ。

2017年

7月

07日

陸上自衛隊沿岸監視部隊が配備されて1年余が…

 陸上自衛隊沿岸監視部隊が配備されて1年余が経過した与那国島を訪れると、配備反対や賛成ののぼりや横断幕はすべて撤去されていた。両派が政治的パフォーマンスに憂き身をやつしていた時代は遠い過去のようで、自衛隊と共存する島としての歩みが始まっていた◆隊員と家族250人の転入で、島が突如「にぎわいを増した」というほどの状況ではなかったが、小学校周辺では以前より若い母親と子どもの姿が目立つような気がした◆いわゆる「十五の春」で中学を卒業した子どもたちが島を出ていく流れがある中、一定数の若者が島に居続ける仕組みが存在することの意義は大きい◆自衛隊駐屯地の庁舎は赤瓦屋根で、ごく自然に島の一角に溶け込んでおり、どこにでもある公共施設のよう。一般の町民が気軽に立ち寄れるような場所ではないことは確かだが「自衛隊駐屯地」という言葉からイメージするほど威圧的ではない◆自衛隊配備問題をめぐり「島を二分」「住民を分断」という表現はメディアで好んで使われるが、政治的な意見の対立はどこにでもあり、決着がつけばいずれ平穏な日常が戻る。紆余曲折を経た新石垣空港建設問題も結局はそうだった。石垣島も自衛隊配備問題の渦中にあるが、健全な議論は何ら恐れるべきものではない。

 

2017年

6月

29日

「戦争につながるあらゆるものに反対する」。…

 「戦争につながるあらゆるものに反対する」。インタビューを受けた高齢者の男性はそう言い切った。「辺野古の座り込みには、沖縄戦を体験した多くの高齢者が参加しています」。その男性が辺野古移設反対運動に加わる理由を、アナウンサーが説明した。「慰霊の日」特集で、ある民放テレビが放送した番組だ◆見ていて非常に違和感があったのは、辺野古での座り込みがなぜ反戦平和につながるのか、何一つ説明がなかったからだ。辺野古移設は県民の基地負担軽減に向けた政府の施策であり、戦争準備の新基地建設ではない。そう主張するのは一部の政治勢力である◆沖縄県民が歴史を振り返る時、重い教訓とすべきは1609年の島津侵攻、1945年の沖縄戦だ。平和を願う住民ばかりなのに、現実には他国から二度も侵略された。沖縄ほど有事の備えを真剣に考えなくてはならない地域はないはずなのに、「戦争につながるあらゆるものに反対する」だけでは、思考停止だ◆ひるがえって石垣島でも「自衛隊が配備されると島が火の海になる」という流言飛語が広がっている。一時期、中央や地方で流行したが、今や顧みる人もない「非武装中立論」「無防備地域宣言」のニューバージョンだ。石垣島を破綻した思想の実験場にしようというのか。

 

2017年

6月

01日

日本では、各国の利害を…

 日本では、各国の利害を調整する公正公平なジャッジというイメージが強い国連。しかしその実態は、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の巣窟だと思ったほうがいいかも知れない◆例えば、国連を日本への「外圧」に利用しようとする人たちがいる。沖縄の米軍基地問題では、反基地派が舞台裏で動き「沖縄県民は先住民族」という珍妙な勧告が繰り返し出され、波紋を呼んだことは記憶に新しい。米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を訴える翁長雄志知事の演説を実現させたのも「先住民運動」の関係者だった◆6月には反基地派のリーダー、山城博治被告が国連で日本政府の弾圧を訴え、国連特別報告者も沖縄問題を盛り込んだ報告書を国連に提出するというから、沖縄の実態がゆがんだ形で国際社会に伝えられかねない深刻な局面といえる◆国連は第二次大戦の「戦勝国」グループが日本など「敗戦国」グループと比べ特権的な地位を持つことで知られる。関係者によると「戦勝国」である中国の人権問題などはタブー視されているという◆国連という組織そのものにいかがわしさを感じざるを得ないが、それでも反論、発信は丁寧に続けなくてはならない。国際社会では忖度(そんたく)などという美徳はなく、黙っていれば負けだからだ。

 

2017年

5月

25日

「テロ等準備罪」を…

 「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案に対し、県内の基地反対派から「基地反対運動も取り締まりの対象になる」などと批判の声が出ているが、的外れと言えよう◆民主主義社会で、基地反対を訴える権利も最大限尊重されるべきなのは当然だ。しかし辺野古のように、基地の移設工事を妨害するため座り込む行為となると、これを表現の自由の範囲内と呼べるか、限りなくグレーゾーンだ。往来する車や座り込む当人たちを危険にさらす行為だからだ◆しかし警察は、恐らく表現の自由を尊重する観点から、座り込みそのものは検挙対象にしておらず、権力の行使はかなり抑制的だ。グレーゾーンの行為に警察がどう対応するかは、選挙によって選ばれる時の政権が最終的に判断し、テロ等準備罪の新設とは関係ない◆基地反対運動がエスカレートし、現場で何らかの破壊活動が計画される事態になれば、同罪で共謀者が摘発される可能性はあるかも知れない。だが、そのような反対運動はそもそも法的保護には値しない◆先日、辺野古で開かれた反対派集会の決議文では、基地に反対する県民全員が「共謀罪」の対象になるかもしれないとなどという荒唐無稽な文言も盛り込まれた。このような冷静さを置き忘れた議論こそ戦前回帰の道だろう。

 

2017年

5月

18日

日本語が変だ。反基地運動に…

 日本語が変だ。反基地運動に絡む傷害罪などで起訴され、保釈中の山城博治被告が国連人権理事会で日本政府の「過剰な弾圧」を訴えて演説するとのニュースを読み、直感的に思った◆弾圧とは政府が強権的に国民を圧迫する行為であり、どのような弾圧も国民から見れば過剰な力の行使だ。「過剰でない弾圧」なんてあるのだろうか◆また弾圧とは、権力の主体が独裁者である場合に使われるのが普通だ。民主主義国家が法律に従って行う取り締まりは弾圧とは呼ばれない。権力の行使が究極的には国民の意思で担保されているからだ。隣の軍事大国が国民に対してやっていることは「弾圧」だろうが、日本での反基地運動の取り締まりや、山城被告の逮捕を同じ言葉で呼んでしまうと、大きな誤解を生むことになる◆記者として人一倍、日本語の使い方には敏感なだけに、反基地運動で使われる言葉には座りの悪さを感じる。辺野古移設が「新基地建設」、反基地運動の根拠が「沖縄の自己決定権」、辺野古の警備が「過剰警備」と呼ばれたりするたぐいである◆特に「過剰警備」は「厳重な警備」の言い間違いであり、ひところはやったが、今やどのマスコミも使わない。基地反対派は国連演説の前に、母国語たる日本語能力から磨くべきかも知れない。

 

2017年

5月

16日

復帰っ子も今年で45歳。今や…

 復帰っ子も今年で45歳。今や復帰を知らない世代が社会の中堅に立ちつつあることを示す◆故郷沖縄に対する自己イメージには、復帰前の世代と現代っ子との間で大きな認識のギャップがあるようだ。復帰前の沖縄人は、日本人でありながら日本人としての権利を制限された。本土への渡航にはパスポートが必要。沖縄人にはアパートを貸さないなど、無理解からくる差別も横行し、いまだに本土への複雑な思いが残る◆復帰後、マスメディアの発達がそうした旧弊を押し流す。今や沖縄は全国随一のリゾート地であり、移住希望者が殺到する憧れの南国だ。多くの県出身者が芸能界や経済界などで活躍している◆復帰前の世代は、現在の華やかな沖縄を見てもなかなか心の傷が癒えないが、生まれながらに豊かな現代っ子には先人たちの苦労がピンと来ない。そうした世代間を橋渡しできるのが「復帰っ子」の世代だろう。親の痛みを受け継ぎ、子の誇りを理解できる。いわば双方の世代に片足を突っ込んでいる。終戦直後に生まれた「団塊の世代」と一脈通じ、ともにベビーブーム世代という共通点もある◆いよいよ「復帰っ子」の時代を迎える沖縄。伝統にしっかりと根を下ろしつつ、変革の荒波に耐える、強い故郷をつくってほしい。

 

2017年

4月

27日

米軍普天間飛行場の…

 米軍普天間飛行場の辺野古移設を阻止するために反対派が連日続けているキャンプ・シュワブ前での座り込みは、もはやセレモニー化している。埋め立て工事開始直前、24日に現地を訪れ、改めてそう実感した◆工事車両が搬入される直前、男性が一人進み出てマイクを握り「逮捕された場合はこうして」とか「機動隊員ともみ合いになるからこうして」などと指示。座り込む反対派も穏やかに聞いている◆機動隊員たちが登場し「来たぞ」と身構える反対派。機動隊員たちは反対派に対し、ゲート前から移動するよう説得し、拒否されると、実力で排除を始める。すると反対派の一人が、離れた場所でマイクを握り「憲法で保障された私たちの人権が踏みにじられています」などと演説を始める◆しばらく経つと座り込んでいた反対派は無事、けがもなく全員排除され、工事車両はゲートをくぐっていく。工事車両の搬入が終わると、現場は波が引いたように静かになり、排除された反対派メンバーはおもむろにゲート前に戻ってきて、また座り込みを始める◆こうした抗議行動で一日に数十分は工事を遅らせることができるかも知れない。その積み重ねは大きいだろう。しかし同じ時間だけ、普天間飛行場と同居する宜野湾市民の負担も長引く。

 

2017年

4月

02日

安慶田光男前副知事の…

 安慶田光男前副知事の教員採用試験口利きや人事介入疑惑をめぐり、自民党が県議会に提出した百条委員会設置の動議が否決された。設置に反対した与党の発言が驚きだ。「動議の目的は、辺野古新基地に反対する翁長県政を攻撃することにあるのではないか」と言い切ったのだ◆県議会では、安慶田氏が八重山病院院長を務めた伊江朝次病院事業局長の進退や、八重山教育事務所の所長人事にも介入したとの証言が飛び出した。疑惑は八重山住民にとっても大きな関心事になりつつあるのに、議会が早々に追及を放棄したように見えることは納得できない◆しかも疑惑とは全く無関係な米軍基地問題を持ち出して野党を逆批判するのは、与党として県民の信頼に応える態度ではないだろう◆与党は、安慶田氏と諸見里明前教育長の法廷闘争が展開されていることや、県が第三者委員会を設置したことを百条委の設置を回避する理由に挙げている。しかし病院事業局長人事の問題などは訴訟の範囲外だし、第三者委員会と議会の調査が重複してはいけない理由はない◆辺野古移設を止めるためなら県政の問題にも目をつぶるという「オール沖縄」の論理が問われている。

2017年

3月

18日

2009年、米軍艦船が…

 2009年、米軍艦船が石垣港に入港した際、集結した反対派の先頭に立っていたのが沖縄本島から乗り込んだ山城博治被告だった。拡声器を手に「米軍が来るとレイプが起こるぞ」などと叫び、市民を鼓舞する姿は、典型的な扇動家に見えた◆メディアで「反基地のヒーロー」として大きく取り上げられる山城被告だが、米軍ヘリパッド移設工事に絡み、傷害、公務執行妨害、威力業務妨害、器物損壊の罪に問われ、逮捕・起訴された。全国が裁判の行方に注目している◆しかし理解し難いのは、山城被告を政府に弾圧されている思想犯のように扱うメディアや反対派の論調だ。彼は刑法犯として起訴されているのであり、問題は犯罪があったかどうかという事実の検証であるべきだ◆ところが背後にある米軍基地問題だけが過度にクローズアップされ、反基地運動さえ絡めば、多少の罪は許されるといった風潮が存在するように感じる。それは法律論ではなく感情論だ◆石垣市は自衛隊配備問題を抱え、市民の賛否は割れている。幸い沖縄本島の反基地運動のような過激な反対運動は見られないが、賛成であれ反対であれ、運動はルールにのっとらなくてはならない。冷静さを失っているように見える沖縄本島の人たちの姿を「他山の石」にすべきだ。

2017年

3月

07日

インターネット上で…

 インターネット上で「ナレ死」という言葉が最近よく使われる。NHK大河ドラマで、登場人物の死を直接的に描かず、ナレーションだけで済ませてしまうことを揶揄(やゆ)した表現だ◆現在放送中の「おんな城主直虎」は先日、織田信長が今川義元を倒す「桶狭間の戦い」の回を迎えたが、チャンネルを回してびっくり。ドラマの重要人物である義元の戦死が「ナレ死」で片づけられていたからだ◆戦国時代を舞台にした大河ドラマといえば、武将の壮烈な討ち死にシーンがつきものだと思っていたが、どうも最近、そんなシーンを見た覚えがない。前作「真田丸」も、主役の真田幸村が戦死する場面はなく、暗示的に描かれただけだった◆大河ドラマは一家団らんの時間帯に放送される。ひょっとすると制作側に、血なまぐさいシーンを自主規制しようという動きがあるのかと勘ぐってしまう◆しかし人の死が描写されないドラマはリアリティを欠く。その意味で、最近の大河ドラマは演出だけでなく、脚本も含め「お子様向け」という印象が何となく否めない。制作側に、リスクを引き受ける気概が感じられないからだろうか。安全は退屈と紙一重ではないか。「ナレ死」という言葉は、視聴者のそんな物足りない気持ちを代弁している。

2017年

3月

02日

人事とはしょせんパワーゲームなのか。

 人事とはしょせんパワーゲームなのか。安慶田光男前副知事が在職中の昨年、県病院事業局の伊江朝次局長や県教育委員会の諸見里明前教育長に辞職を強要していたことが判明した◆2人とも前県政時代に任命されており、安慶田氏は、自らの息のかかった人物に差し替えたかったのだろうか。諸見里氏は実際に辞職し、伊江氏も今年1月、「安慶田氏との約束」で辞表を提出した◆新しい首長が誕生した場合、幹部が一新されるのは珍しいことではない。法律で身分が保障されている病院事業局長や教育長についても「意思確認」程度なら有り得る◆ただ翁長雄志知事は、伊江氏について「継続すべきとずっと話していた」と議会で答弁。辞職強要をめぐるやり取りも「初めて聞いた」と述べた。それが事実なら安慶田氏は、知事の意に反し、独断で「人事」を強行していたことになり、県政の人事のあり方が問われる◆伊江氏は八重山病院院長として医師確保に奔走するなど、離島医療に精通。医師会や現場の職員からも続投を望む声が寄せられたという。新八重山病院が着工したばかりの時期に局長が交代すれば、事業に何らかの支障が出た可能性も否定できない。「八重山出身」を自称する安慶田氏は、そこまで思い至らなかったのだろうか。

2017年

2月

17日

訪米した安倍晋三首相に…

 訪米した安倍晋三首相に対するトランプ大統領の厚遇ぶりが話題になっている。ホワイトハウスで出迎えたトランプ氏は「握手だけしようと思ったが、安倍首相を見て思わず抱きしめたくなった」とハグ。さらに日米首脳間では史上最長といわれる19秒の握手をしたが、潔癖症のトランプ氏は、実は握手嫌いで有名だ。そして異例の「ゴルフ外交」◆伏線はトランプ氏の大統領就任前にニューヨークで実現した初会談時の好印象にあったようだ。安倍首相は徹底してトランプ氏の人柄を調査し、好きな話題や嫌う話題などを把握した上で会談に臨んだという。ビジネスマンのトランプ氏は、入念に準備した安倍首相の姿に感銘を受けたのだろう◆立場は変わるが、記者の取材にも似たような場面はある。ある著名人にインタビューした際、のっけから「ぼくの著書は当然、読んできたよね」と言われ、著書に全く目を通さなかった筆者は目を白黒させた経験がある◆記者になりたてのころ、先輩に口を酸っぱくして言われたことは「段取り」の大切さだった。それが、いつしか忙しさにかまけて、危うい「出たとこ勝負」になってしまっていた◆政治もビジネスも同じで、一番大事なのは準備だ。偉大なビジネスマンは、偉大な政治家になる条件も備えている。

2017年

2月

07日

訪日したマティス米国務長官は…

 訪日したマティス米国務長官は安倍晋三首相、稲田朋美防衛相と会談し、尖閣諸島が米国の日本防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用範囲となることを明言した。尖閣諸島を行政区域に抱える石垣市民としては心強く、評価できる◆ただ今後も米国で政権交代があるたび、尖閣に日米安保が適用されるかどうか一喜一憂を続けなくてはならないのだろうか。複雑な気持ちになる◆こんな不安定な状況が続いている原因は、尖閣が日本の領土であることを、米国がしっかり認めていないためだ。そのため時の政権の意向によって、尖閣が日米安保の適用外とみなされる可能性がある◆中国からすれば「米国の保証を取り付けなければ、小さな島一つ守ることができない日本」と見えるだろうし、現在の公船侵入のように、軍事手段によらない挑発行為はさらに激化する可能性がある。「米国頼み」ではない安全保障の再構築が求められるゆえんだ◆ところで訪米した翁長知事は、辺野古移設で合意した日米会談を「県民に失礼だ」と批判する一方、尖閣に日米安保が適用されることに一言の謝意もなかった。尖閣が沖縄の行政区域であるという意識はあるのか。八重山住民としては、これでは知事の「辺野古反対」にそのまま賛同はできない。

2017年

2月

03日

トランプ米大統領が…

 トランプ米大統領が難民の受け入れを一定期間停止するなど、入国審査を厳格化する方針を打ち出し、波紋が広がっている。日米メディアは「宗教・人種差別」と感情的な報道が大勢だが、世論調査によると米国民は大統領令に49%が賛成し、反対の41%を上回っている◆そもそも入国審査の厳格化はトランプ氏が大統領選の選挙公約として掲げており、トランプ氏は「有言実行」ぶりを示したに過ぎない。是非はともかく、米国民の民意を受けて政策を実行しているという事実が、多くの報道では見過ごされている◆9・11テロの実行犯も外国からの入国者であり、トランプ氏が過去の事件の「教訓」を口にしたことも一定の合理性はある◆日本にも公約をそのまま実行に移し、国の安全保障を混乱に陥れている政治家がいる。辺野古移設阻止を掲げる翁長知事だ。独自に米国を訪問し、二重外交を繰り広げる行為は、国と県の深刻な対立を助長するだけだ。しかし県内の報道は、知事の問題点にはほとんど触れず、民意を背に毅然とした姿勢を崩さない翁長知事への賞賛一色である◆同じ「民意」を実行しているのに、なぜトランプ大統領は非難され、翁長知事は評価されるのか。二重基準だとすれば、日本も米国の迷走報道を笑えない。

2017年

1月

29日

県の離島医療政策を…

 県の離島医療政策を心配する声が八重山住民から出始めている。県が策定する地域医療構想で、八重山地区の病院で2025年に必要とされる病床数が56床削減されることが判明。宮古も248床の減床とする方針が盛り込まれる。一方で沖縄本島の病床数は1774床の増床となる◆必要病床数の推計は一定の計算式に基づいているが、八重山の関係者は「陸続きの本島と離島では事情が違う」と指摘。「本島の医師会の政治力が、離島との差を生んだのではないか」という憶測まで飛び出しているから穏やかではない◆建設中の新県立八重山病院をめぐっては、建設費が当初の予定を上回る見通しとなり、不発弾磁気探査費を含む追加予算が起債でまかなわれることになった。将来的には県の一般財源ではなく、八重山病院の会計から償還されるため、八重山の医療を守る郡民の会が「八重山住民へのツケ回しだ」と反発している◆県は「住民の医療費が上がることはない」と説明するが、病院の財政悪化は経営不安に直結しかねない問題だ◆最近はトランプ米大統領や小池百合子都知事の影響で「何とかファースト」という言葉が流行だ。「本島ファーストの県政」と揶揄(やゆ)されぬよう、県にはきめ細かい離島医療政策を求めたい。

 

2017年

1月

24日

安倍晋三首相は今年の…

 安倍晋三首相は今年の施政方針演説で、昨年に続き石垣市に言及した。外国人観光客が増加している現状を紹介し、新石垣空港国際線の施設整備を支援する方針を表明した◆昨年は大型クルーズ船の接岸が可能な石垣港の岸壁整備を約束したほか、石垣牛も紹介していた。首相の施政方針演説に2年連続して石垣市が登場したことは地元を喜ばせている◆市関係者は「昨年は香港からの直行便が就航するなど、インバウンド(外国からの観光客)が好調だ。石垣市は全国的にも好事例ということではないか」との見方を示す◆安倍首相と石垣市の関わりは意外と深い。2013年には選挙の応援で、現職首相として復帰後初めて石垣島を訪問。安保法案をめぐる昨年の国会審議では、市議会が法案可決を求める意見書を可決したことを引き合いに「石垣市の意見を真摯に受け止める必要がある」と答弁していた。米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり県との対立が先鋭化する中、翁長雄志知事に批判的な石垣市との関係強化を図る戦略も見え隠れする◆「離島苦」の克服が至上命題の石垣市にとって、国との良好な関係は千載一遇のチャンスになる。インフラ整備を着実に進め、離島の「不利性」を離島の「魅力」へと転換する足掛かりにしたい。

2017年

1月

17日

米国の次期大統領…

 米国の次期大統領、トランプ氏に関する報道の多くには、首を傾げざるを得ない。「メキシコ国境に壁をつくる」という発言を引き合いに「過激な反移民で差別主義者」などとレッテル貼りする報道もその一例だ◆発言内容を詳細に見ると、トランプ氏は移民にではなく、不法移民に反対し「国境を守れない国家は国家でない」と訴えている。中国の万里の長城を挙げ、壁の建設は不可能ではないと指摘する◆「壁の建設費用をメキシコに支払わせる」という発言も嘲笑されることが多いが、直接取り立てるのではなく、関税引き上げやメキシコへの支援の減額などといった方法を提案。なかなかの戦略家であることは明らかだ◆「反トランプ」ありきで彼を過小評価するような報道を見ると、沖縄をめぐる「反基地」ありきの報道を連想してしまう。問題を極端に単純化すると、大局を見失う◆「イエス、ウィキャン(私たちはできる)」と叫んだ現大統領は、実行力が伴わなかった。「オバマケア」をはじめとする政治的遺産は、早くも無に帰そうとしている◆一方「米国を再び偉大に」と訴えて勝利したトランプ氏。日本にとっていいのか悪いのかは分からない。だが、そのスローガンを実行するポテンシャルを持つ人物であることは間違いないだろう。

2016年

12月

28日

沖縄周辺で、中国の…

 沖縄周辺で、中国の侵略的行動がとどまるところを知らない。空母が沖縄本島と宮古島間を通過し、初めて太平洋に進出。中山義隆市長が石垣島への自衛隊配備を容認した当日の26日には、中国公船3隻が尖閣周辺で領海侵犯した。中国の脅威を訴えてきた配備推進派から見ると絶好のタイミングであり、反対派からは「まるで中国が配備を後押ししているようだ」と嘆き節が聞こえる◆推進派は「自衛隊は抑止力になり、攻撃のリスクが減る」、反対派は「自衛隊が配備されることで標的になる」と、正反対の主張を展開してきた◆そこで思い出すのが「弱い犬ほどよく吠える」という格言だ。威圧的な人間は弱者には強いが、自分より強い相手には手出しできない◆中国が無防備な島に襲いかかる可能性は将来にわたって存在する。しかし当面、中国政府には、自衛隊が配備された石垣島を攻撃するほどの度胸はないと見るべきだ◆ただ70年前に戦争マラリアの惨禍を体験した住民にとって、自衛隊配備は非常にデリケートな問題でもある。何が何でも数や権力で押し切るのではなく、住民の不安を一つひとつ丁寧に解消していく努力が求められるのは当然だ。政治は結果がすべてだが、政治家の人間性が表れるのは、むしろプロセスだろう。

2016年

12月

08日

日本が「奄美・琉球」の…

 日本が「奄美・琉球」の世界自然遺産登録を目指していることに絡み、中国紙が「琉球は日本固有の領土ではない」とする専門家の論文を掲載した。世界遺産登録の範囲が将来、尖閣諸島に拡大されることを警戒する中国の妨害工作だ。石垣市が2013年の海洋基本計画で尖閣の世界遺産登録を打ち出したことへの「意趣返し」と見られる◆しかし県は6日の県議会代表質問で「一専門家の論文に過ぎない」と問題視しなかった。反論しないということは黙認したも同然だが、そんな安易な姿勢でいいのか◆尖閣を抱える石垣市もトーンダウンが目立つ。海洋基本計画の策定から3年、尖閣の世界遺産登録に向けた具体的なアクションが全く見られない。「奄美・琉球」登録への悪影響を懸念していると見られるが、そうしたリスクは最初から認識すべきだった◆尖閣を守る最大の対抗策は石垣島への自衛隊配備だが、防衛省の打診から1年、市はいまだに賛否を明らかにしていない。この問題は中山市長の就任以前から浮上しており、市長も当然、政治家としてそれなりの考えを持っているはずで、これほど時間をかける理由が不可解だ◆中山市長が年内に表明する可能性が取り沙汰されているが、受け入れるにせよ拒否するにせよ、遅過ぎの感は否めない。

2016年

11月

18日

「今度○○さんを紹介するから」と…

 「今度○○さんを紹介するから」と言われ、何気なくインターネットで○○さんの名前を「ググって」みたところ、フェイスブックのページが出現。写真やら出身地やら学歴やら、さらには日々の生活ぶりまでアップされていて、会う前から○○さんをすっかり分かったような気になってしまった◆つい20年前だったら、これだけの個人情報を収集するには、それこそ探偵でも雇わなくてはならなかったろう。40代以上の世代は、インターネットや携帯電話が普及する前の世界を知っている。意思疎通は手紙、緊急連絡は固定電話かポケベルという時代である。今や写真も動画もリアルタイムで送れるスマホというものがある。技術は加速度的に進歩しているのだ◆ネットは人生も変える。個人的な話になるが、学校を卒業後、就職のため本土に出ながら、結局は沖縄に帰ってきたのには理由がある。ネット環境さえあれば、東京でも石垣島でも、情報格差はほぼ皆無だと知ったからだ◆島々の離島苦も今後、遠隔医療や遠隔授業などの技術革新によって、徐々に克服されていくだろう◆私たちのライフスタイルは、この20年ですっかり変わった。今、スマホに顔をくっつけて歩く人の波を眺めながら「見えざる革命が起きていたのだ」と改めて思う。

2016年

11月

10日

「変化」を求める大きなうねりが…

 「変化」を求める大きなうねりが、実業家トランプ氏を大統領へ押し上げた。世界が注目した米大統領戦。トランプ氏は日本などに対し、米軍駐留の経費負担を増額するよう要求しており、沖縄にも大きな影響が出るかも知れない◆3年前に米国を訪れた際、ジャーナリストや安全保障の専門家と言われる人たちでさえ、尖閣諸島問題をほとんど重要視していないことに衝撃を受けた。新大統領のもと、外交や安全保障政策で、米国がこうした「本音」を露骨に打ち出すようになれば、東シナ海、南シナ海問題で日米の連携は覚束ない。混迷の時代が始まるかも知れない◆八重山住民も当然、無関係ではいられない。米軍撤退や日米同盟の希薄化が現実味を帯びれば、日本は「自分の国は自分で守る」という原則に立ち返らざるを得なくなる。石垣島への自衛隊配備計画もいっそう重要性を増す◆今回の米大統領選は、戦後70年間続いた「米国頼み」の終わりの始まりになる可能性もある。停滞している憲法改正の動きに拍車が掛かることも有り得る◆この選挙結果が「核なき世界」「イエス、ウィ、キャン(私たちはできる)」といった空虚な言葉だけが先行したオバマ政権に対する反動であることは間違いない。政治家の神髄は政策の実行にある。沖縄の政治家も心すべきだろう。

2016年

10月

25日

米軍北部訓練場の…

 米軍北部訓練場のヘリパッド移設工事で、反対派に「土人」と暴言を吐いた大阪府警の機動隊員が処分された。経験上、巻き舌で威圧的な関西人はよく見かけるが、公務員という彼の立場を考えると許されない一言であり、処分は当然だ◆だが工事現場周辺の動画などを見ると、反対派のガラの悪さも尋常ではない。政府職員、警察官、作業員への威嚇や挑発、罵詈雑言も相当なものだ。「けんか両成敗」ではないが、この機動隊員にも情状酌量の余地はあろう◆「土人」発言をめぐる数々の論評の中で飛び出した「沖縄差別」という批判には違和感がある。本土による沖縄差別が存在したのは事実だ。復帰前後まで、本土で多くの先輩たちが苦闘した歴史は忘れない。しかし21世紀の現在、「本土から蔑視されている」などと感じる県民はどれだけいるか◆東京や大阪の人が地方の人を「田舎者」と見下す意識が「土人」発言を生んだ可能性はあるが、逆に言えばその程度の話でしかない。基地問題の背景に、その種の差別意識を持ち出す論理は強引過ぎるし、事実、多くの県民はそこまで拡大解釈はしていない◆辺野古や高江の混乱には、全国の人たちが心を痛めている。「差別」という言葉まで持ち出し、この問題をさらに煽るのは不適切だろう。

2016年

10月

22日

日本が南シナ海問題に…

 日本が南シナ海問題に関与するのは、尖閣諸島への中国の圧力を下げるためだ―。国営放送でこう日本を非難していた中国だが、どうやらその南シナ海問題で有利な立場を獲得しそうだ。フィリピンのドゥテルテ大統領が、領有権問題を棚上げし、中国と和解する意向を示しているからだ。中国は南シナ海問題が片付けば、いよいよ尖閣攻略に本腰を入れてくる可能性がある◆犯罪容疑者の大量殺害で国際的な非難を浴びているドゥテルテ大統領だが、中国は一切問題視せず、巨額の経済援助で同大統領を懐柔。同大統領の「米国と決別する」という発言まで飛び出した◆石垣市議会はフィリピンにならい、尖閣問題を仲裁裁判所に提訴するよう国に要請したばかりだ。しかし肝心のフィリピンが早々と腰砕けになり、愕然としている市議も少なくないだろう◆中国は海洋だけでなく、宇宙やサイバー空間でも勢力を急拡大。現在のペースで成長を続ければ、少子高齢化と人口減少が続く日本は国力の差を広げられる一方だ。強大化する中国の圧力に、尖閣を抱える国境の島々が、どこまで持ちこたえられるか◆県民はもっと視野を広げ、到来する危機に備える必要がある。辺野古や高江をめぐり、延々と内向きの議論を続けている場合ではないだろう。

2016年

10月

18日

東村高江では…

 東村高江ではヘリパッド移設工事への激しい抗議運動が続いているが、反対派も陣取る高江周辺の県道70号線をめぐり、県議会で興味深い質問があった。「オスプレイ配備から4年余り、一度の人身事故もないが、県道70号線沿いでは何件の死亡、重傷事故が起きているのか」。質問者は又吉清義氏(自民)だ◆池田克史県警本部長によると、2011年から5年間の事故数は今年8月末で人身事故34件。内訳は死亡事故6件、重傷事故14件、軽傷事故14件。「他の県道に比べて事故率は非常に高い」(池田本部長)という◆翁長雄志知事は、ヘリパッド移設が条件となっている米軍北部訓練場の部分返還について推進の立場。しかしヘリパッド移設については、オスプレイが運用されることを理由に反対姿勢を示す。だが事故率を見る限り、県がやるべきことはオスプレイ反対ではなく、県道70号線での安全運転を呼び掛けることでは◆そもそもオスプレイは危険な輸送機なのか。米軍は既に運用開始しているし、自衛隊も導入の方針を固めている。熊本地震では被災者支援で活躍した◆そろそろ冷静なデータに基づいて安全性を評価すべき時期に来ている。「オスプレイが運用されるからヘリパッドに反対」という県の論理は、このままでは苦し紛れだ。

2016年

10月

10日

八重山の政財界リーダーと…

 八重山の政財界リーダーと話すたび感じることがある。40代以下の若者世代は柔軟性と行動力に富む反面、いかにも言動が軽く、どこまで信頼していいのか迷う。50代以上のシニア世代は鈍重だが、強い信念を持ち、他人を包み込むような人格力や品位がある◆特に政界は近年、全国的に若返りが進んだ。その余波は八重山にも及び、40代の市長や20代、30代の市議が相次ぎ誕生。6月の県議選も3人の候補者のうち2人は40代で、シニア世代はずいぶん存在感が薄くなった◆しかし役場移転問題の混乱や職員の不祥事が相次いだ竹富町では、8月の町長選で68歳の西大舛高旬氏が初当選。ベテランの復権を印象づけた。混迷の時代を乗り切るには若者の突進力だけでは無理で、長年の経験に裏打ちされた的確な判断力が不可欠だ◆石垣市は今月、「生涯活躍のまち」をテーマにした「石垣版CCRC基本構想策定委員会」を発足させた。若者に加えシニア世代の移住を促進し、新たな雇用を誘発しようという取り組み。長年、一つの分野に打ち込んできた人材を、定年を理由に引退させるのはもったいない。貴重な戦力として地域振興に活用すべきだ◆必要なのは世代間の適材適所。誰もが年輪の数だけ輝きを増すまちづくりに期待したい。

2016年

9月

06日

渦中の…

 渦中の東村高江を訪れた。米軍北部訓練場の部分返還に向け、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設工事が本格化し、多数の反対派が工事の妨害行為や警察官などへの挑発行為を繰り返している◆よく言われるような「機動隊や警察官が市民を弾圧している」光景は見られない。むしろ機動隊や警察官は、車両の近くに座り込んだり、通行中のトラックの前に飛び出しそうな様子を見せる反対派に対し、けが人が出ないよう現場の秩序維持に努力していた◆民主主義の政権に抵抗するなら民主主義のルールに則るべきで、実力行使で工事を妨害するような行為は、むしろ民主主義に対する挑戦でもある。独裁政権の中国に対し、香港の民主派がやむを得ず実力行使で抵抗するような行為とは、本質的な意味が異なる◆反対派は、県議選や参院選で、辺野古や高江の工事に反対する「沖縄の民意」が示されたと主張する。ただ基地問題や安全保障問題は沖縄だけの問題ではなく、日本全体で考えるべき問題だ。県民負担の軽減や日米同盟の必要性といった広い視野の議論も必要で、イデオロギー闘争だけでは何も前進しない◆県民なら、平和を願う心は誰でも同じだ。高江の抗議行動がさらに過激化し、いたずらにけが人が出るような事態は避けてほしい。

2016年

8月

30日

「大統領が町長に」…

 「大統領が町長に」。竹富町長選の結果が伝えられると、関係者からこんな言葉が飛んだ。「西表島の大統領」の異名を持つ西大舛高旬氏の初当選である◆八重山でも政治家の世代交代が進み、最近はドライな考え方を持つ若い政治家が多いが、西大舛氏は「義理と人情」を重んじる世代の68歳。町議会の最多当選者で、大浜長照元石垣市長、大盛武元竹富町長と同年齢、むしろ旧世代に属する。八重山を代表する政治家を輩出した世代の最後の一人が、真打ち登場のようにようやく表舞台に躍り出た◆町議の経験が長いが、初挑戦時には落選の苦杯もなめた。のちに実力者になったあと、落選の経験が人間の幅を広げたと自認する◆事あるごとに「自民党」を強調する保守派で、携帯電話の着メロが「君が代」なのは有名だ。歯に衣着せぬ物言いと地鳴りのような声が他人を驚かせることもしばしば◆町民の人気が高かった川満町政だが、相次ぐ職員の不祥事、先の見えない議会との対立が停滞感を招いた。破天荒な西大舛氏に町民の期待が集まり、現職優位の下馬評を覆した◆米大統領候補2人も西大舛氏と同世代である。混迷の時代には若さより、経験や実績といったベテラン力が求められるようだ。「大統領町長」の新たな船出に期待したい。

2016年

8月

21日

「人が足りない」―。…

 「人が足りない」―。最近、多くの職場で嘆き節を聞く。沖縄の有効求人倍率は6月、復帰後初の1倍台となる1・01倍を記録。労働市場は好調に推移しているが、企業側からは悲鳴が聞こえる◆特に深刻なのは建設業だ。若者に敬遠され、現場では若い作業員が不足。そのため人件費が高騰し、公共工事の入札不調が相次ぐ一因となっている。業界のイメージアップが急務で、石垣市では、県建設業協会が若者の就職を促す方策を関係機関と話し合った◆建設業界の人手不足は庶民のマイホームの夢も直撃している。もともと離島はコスト高だが、近年は資材の値上がりなども加わり、一軒家の建設費は天文学的な数字に膨れ上がった。これでは、住民がおいそれと家を新築できないだけでなく、他地区から八重山への移住を促す「地方創生」の戦略にも影響が出かねない◆好景気と言いながら、建設業では人手不足、農水産業にも依然として力強さが感じられず、商業もさほど元気ではない。観光産業の伸びを他産業に波及させる取り組みを欠いているのではないか◆観光客が百数十万人に達しようという千載一遇の好機を生かし、自立経済構築への道を歩めるか。八重山は岐路に立っていると言えるが、現状では見通しは明るくない。

2016年

8月

16日

新聞で…

 新聞で沖縄の選挙を報道する際は「保守対革新」と表現されることが多いが、竹富町は違う。全県に先がけ、十数年前に保革を乗り越えているのである◆保守派だった那根元・元町長の初当選時までは「保革対決」だった。しかし那根町長時代に市町村合併の波が到来。次の町長選は合併反対派の那根氏と推進派の大盛武氏の対決となり、対立軸が「合併の是非」に移った◆大盛氏が町長に就任したが、町議会の反対で合併が頓挫。次の町長選の対立軸は「役場移転の是非」に移り、移転推進派の川満栄長氏が勝利した◆しかし役場移転の手法をめぐり対立が持ち上がり、町長選で野党は山田耕治氏を擁立したが、川満氏が圧勝、久しぶりに現職が再選された◆今選挙に出馬する西大舛高旬氏は保守の大物政治家であり、川満氏は、かつては革新のリーダー格だった。世が世なら保革の最終決戦と呼ばれてもおかしくない戦いだが、もはや、誰もそう見ていないところが面白い。対立軸は役場移転の手法や行財政改革などになりそうだ◆沖縄本島では保革を乗り越えた反基地の候補を「オール沖縄」と呼ぶが、その実態は革新であることが明らかになっている。沖縄の政治が、真に保革を乗り越えるのはいつの日か。竹富町こそモデルケースになり得るかも知れない。

2016年

8月

02日

台湾の…

 台湾の李登輝元総統を迎える石垣島の関係者は、冗談半分に言い合っていた。「李氏が来島したら、中国が反発して領海侵犯するのでは」。まさに李氏が石垣島に降り立った日、中国公船3隻が尖閣周辺で領海侵犯した。偶然とは考えにくい◆気に食わない相手には実力行使で嫌がらせをする。中国の指導者は子どものように単純で、分かりやすい。大人の話ができる相手なのか疑問だ◆尖閣周辺を「パトロール」と称して航行する中国公船の活動は息が長い。中国は「超大国」への道を突き進んでおり、東シナ海方面への野心は肥大化する一方だ。ある識者は尖閣問題について「21世紀を通じ、ずっと存在し続ける」と予測する。事なかれ主義で黙っていれば平和が維持される時代は過ぎたと見るべきだろう。八重山の将来を考えるとき、自衛隊配備は必須になる◆世界は数年前には予想もしなかった方向へ進んでいる。安全だと思われていた欧州で相次ぐテロ、在日米軍の撤退を匂わせるトランプ氏の米大統領候補指名獲得、英国のEU離脱。極言すれば誰が敵で誰が味方なのか分からない時代になりつつある◆臨機応変さが求められる時代に「ぶれない」ことは必ずしも美徳ではない。配備反対派も、虚心坦懐に八重山の将来を見据えてほしい。

2016年

7月

27日

八重山商工の…

 八重山商工の衝撃的な春夏連続甲子園出場から10年。沖縄の高校野球に偉大な足跡を残した伊志嶺吉盛監督が退任を表明した◆10年前は八重山にとって「天の時、地の利、人の和」の三拍子がそろった千載一遇の機会だった。伊志嶺監督という名将、その薫陶を受けた優れた選手がいて、市民も一丸となって選手の島外流出を防いだ。当時のような熱気を、現在の八重山で感じることはできない。この10年間、八重山勢の甲子園出場がかなわなかったことは、ゆえなしとしない◆離島の八重山は、本島の高校に比べると大きなハンディを抱えている。お隣の宮古島からも、いまだに甲子園出場校は出ていない。生半可な覚悟では甲子園にたどり着けないことを、10年間の空白が教えてくれる◆それでも今年の八重山勢は健闘した。八重山高校が県王者となり、九州大会でも1勝して21世紀枠候補に初めて選ばれた。八商工も夏の大会で4強入りを果たした。しかし八重高は夏の大会で初戦敗退し、最大のライバルだった興南も早々に姿を消して、頂点に立ったのはダークホースの嘉手納だった◆沖縄の高校野球界は戦国時代に入っており、誰もが天下を狙って切磋琢磨している。勝負の世界で生き抜く厳しさを、改めて実感させられた1年でもあった。

2016年

7月

13日

参院選は…

 参院選は翁長雄志知事を支える「オール沖縄」の新人、伊波洋一氏が自民現職で沖縄担当相の島尻安伊子氏に圧勝した。当選後のインタビューでは「国政で離島の課題にも取り組みたい」と離島振興に意欲を示した。有言実行に期待したい◆と言うのも、基地反対を訴えて当選した国会議員は、概して基地のない離島には関心が薄いからだ。「オール沖縄」の国会議員が選挙以外で八重山を訪れた姿を見たことがない◆有権者との触れ合いがないため、中央政界で離島振興に向け、どのように活動しているのかも見えてこない。伊波氏には同じ轍(てつ)を踏まないようクギを刺したい◆伊波氏の当選直後、翁長知事が「県民の良識の勝利だ」とコメントしたことも納得し難い。確かに伊波氏と大差はついたが、島尻氏が約25万票を獲得した事実も重い。県議選からの「オール沖縄」の連勝で、知事が慢心したような印象を受ける◆中央政界では「安倍一強」が批判されるが、沖縄ではまさに「翁長一強」の状況が出現している。県議会で与党が圧倒的な多数を占め、衆参選挙区の自民党議員がゼロになったのは、県政のチェック機能が大幅に低下したことを意味する。県民が一定の警戒心を保ち続けなければ、予想外の「暴走」が始まりかねない。

2016年

7月

05日

石垣市の総務部長…

 石垣市の総務部長、當真政光さんが55歳で急逝した。中山市政の番頭役として存在感を発揮していただけに、當真さんの死は市役所の一職員の死にとどまらず、市政運営にも大きな波紋を広げている◆當真さんと取材を通じて個人的に知り合ったのは10年以上前。当時、教育委員会の係長だった當真さんに個人的な悩みなどを相談したが、嫌がらずに真摯に対応してくれたのを覚えている。公私混同せず、多少親しくなっても常に発言には気を使い、滅多に軽口を叩かなかった◆中山市長の就任とともに抜擢され、総務課長、総務部長を歴任した。温厚な性格だったが、議会などで市長の「盾」となるべき時には毅然として立ち上がり、論敵に妥協しなかった。「プレッシャーも大きかっただろう」と周囲は推測する◆プロの行政マンとして着実に仕事を進めていたが、珍しい一面をかいま見たのは今年、市議会で、議案の文面の誤りを議員に指摘された時。「本当に恥ずかしい」と身を縮めていた謙虚さが印象的だった◆八重山で、この20年ほどの間に、政治や行政の第一線で活躍していた人が突然亡くなったのを何人か目にした。石垣市の大浜永造元助役、後原保一元市議、尾辻吉兼元与那国町長など。當真さんもその一人に加えていいだろう。

2016年

6月

16日

尖閣諸島周辺の…

 尖閣諸島周辺の接続水域に中国軍艦が初めて侵入し、八重山住民に不安が広がっている。これまでは中国公船「海警」が頻繁に領海侵入を繰り返してきたが、軍艦の出現は、中国が尖閣強奪に向け、実力行使をエスカレートさせる第一歩という見方が支配的だ◆同時にロシア軍艦も接続水域に入ったことから、中ロが連携して日本を揺さぶっているという分析もある◆八重山住民の間では、台湾の李登輝元総統が7月に石垣島を初訪問することから「中国が石垣市民に反発している」という珍説も流れている◆今、沖縄本島では米軍普天間飛行場の辺野古移設が進み、石垣島では陸上自衛隊の配備計画が浮上している。反対派は「基地は要らない」と訴えるが、中国の脅威が現実化すると、その論拠は足元から崩れてしまう。中国が今回の行動で何を意図したのかは不明だが、中国が挑発を強めれば強めるほど、辺野古移設や自衛隊配備の追い風になるだけという皮肉な結果に終わっている◆それにしても不可解なことに、当事者であるはずの翁長雄志知事の顔が全く見えてこない。米軍関係者の事件には饒舌にコメントする知事が、中国の軍艦航行には沈黙を続けている。県議選勝利の余韻にいまだ浸っているのだろうか。八重山住民としては寂しい。

2016年

6月

08日

県議選が…

県議選が5日投開票され、石垣市区では現職、砂川利勝氏と元市職員の新人、次呂久成崇氏が当選した。今後4年間、県議会の場で八重山住民の声を代弁する◆「有言実行」をモットーとする砂川氏はたばこ農家でもあり、農業政策を中心に掲げ、現場主義を徹する姿勢が評価された。次呂久氏は若さと豊富な行政経験を併せ持ち、青年会やPTAなどの地域活動で人脈を築いてきた。八重山振興に向けた両氏の活躍に期待したい◆選挙イヤーはまだ始まったばかりだ。県議選の硝煙もまだ残る7月には参院選が行われ、砂川氏を支えた自公勢力と、次呂久氏を支えた「オール沖縄」が再対決。米軍普天間飛行場問題だけでなく、沖縄振興の方向性も左右される重要な選挙である◆参院選後の8月は息つくひまもなく、竹富町長選に突入する。竹富町は八重山の観光を支える要石であり、石垣市や与那国町も無縁ではない◆竹富町長選が終わっても選挙イヤーは終わらない。八重山住民は直接関係ないが、11月には米大統領選がある。共和党候補のトランプ氏は、日本に在日米軍の駐留費を全額負担するよう求め、応じられなければ米軍を撤退させる可能性を示唆。日米安保のあり方が大きく転換すれば、沖縄の運命も変わってくる。今年はまさに「決断の年」だ。

2016年

5月

31日

八重山住民を置き去りに…

 八重山住民を置き去りにした決議という印象が強い。米軍属の女性死体遺棄事件を受け、県議会は26日、県政与党の主導で、在沖海兵隊の撤退要求と普天間飛行場の県内移設断念を決議した◆石垣市は尖閣諸島を抱え、日常的に他国の圧力にさらされている。海兵隊の撤退後、国境の島々をどう守るか、真摯な議論はなかった。一般県民が事件への怒りをぶつけるのは当然だが、政治には責任が伴う。一緒になってこぶしを振り上げるだけでは物事は解決しない◆石垣市議会は県内で最初に抗議決議を可決したが、海兵隊撤退や普天間飛行場問題には触れていない。事件を無理に政治問題に結びつける必要はないのである。県議会の決議は県議選や参院選を意識しているとしか思えず、政府批判を繰り返す翁長雄志知事の発言も、そうした雰囲気が濃厚だ◆一方の野党側にも「選挙前のこの時期になぜ」と事件に頭を抱える人がいる。しかし事件のタイミングが問題なのではない。人としての誠実さが問われているのだ。もっと遺族に寄り添い、真摯に事件と向き合い、再発防止策の議論を深めるべきだ◆県議選の街頭演説や集会でこの事件が持ち出されるたび、聞いていて、やるせなさや虚しさが増す。政治家は「分かっていない」と感じるからだ。

2016年

5月

22日

被害者と遺族の恐怖や…

 被害者と遺族の恐怖や苦痛は想像を絶する。慰めの言葉も見つからない。米軍属によるうるま市女性の死体遺棄事件で、沖縄の隅々まで怒りと悲しみが広がっている◆日米両政府に求められているのは事件の徹底究明と実効性ある再発防止策、遺族に対する可能な限りの償いだ。どこまで県民の思いを受け止められるか問われる◆「基地があるから事件が起こる」と言われても、被害者のことを思うと一言の抗弁もできない。「全基地撤去」という訴えも分かる。しかし、県民が感情だけに流され、政治が引きずられてしまうと、最悪の事態がさらに増幅されてしまう。殺人事件と安全保障は別の問題であることも理解しなくてはならない。普天間飛行場の移設反対のような特定の政治問題と事件を、直ちに結びつけるべきではない◆石垣市の中山義隆市長は、事件に強く抗議した上で「基地があろうがなかろうが、こんな犯罪を起こしてはいけない。犯罪があろうがなかろうが、基地の整理縮小に頑張らなくてはならない。それが政治だ」と述べた。政治は政治として冷静さを保ち、沖縄の基地負担軽減に向けた取り組みを着実に進めるべきだ◆事件は、自国の安全保障を他国に依存しているゆえに起きた悲劇でもある。国の根本的な在り方に対する問題も提起している。

2016年

5月

15日

13日に開かれた幼稚園…

 13日に開かれた幼稚園教諭研修会では、預かり保育の人員不足を訴える声が相次ぎ、予定していたプログラムが中断される異例の事態になった。公立保育所の保育士も不足していることが報じられており、市が掲げる、来年度中の「待機児童ゼロ」に黄信号が灯っている◆中山義隆市長は、初当選した2010年の市長選から子育て支援を政策の目玉に掲げ、全幼稚園での預かり保育実施などを推進。さらに国の子育て支援新制度が追い風となった。ところが保育現場では人員体制や待遇面で十分な手当てがなく、政策のスピードに追いつけないまま、不満がうっ積している◆しかし、行政内部のゴタゴタが市民に露呈する形になったのは市の大きな失態だ。保育人員不足の報道に接した母親からは「安心して石垣市に子どもを預けられるのか」と懸念の声も上がる◆そもそも、市が乏しい予算で公立保育所や幼稚園を運営する必要性が疑問だ。「安心安全」は行政の専売特許ではなく、現に民間保育園と公立保育所で保育の内容に大差があるわけではない◆特別な事情がある地域は別だが、市があまりに多くの保育所や幼稚園を抱えている現状が、かえって待機児童ゼロの障害になってはいないか。何でも行政任せはダメで、市民の厳しい視線も必要だ。

2016年

5月

07日

八重山青年会議所が…

 八重山青年会議所があす8日、県議選の予定候補者3人による公開討論会を開催する。有権者に投票の判断材料を提供しようという若者たちの情熱には敬服するが、運営方法には大きな疑問がある◆予定候補者が互いに疑問をぶつけ合う「クロストーク」が省略されている点だ。同会議所が4年前に開催した討論会の際、クロストークで「制限時間内に立候補予定者の考えを来場者に伝えきれなかった」という反省点があったため省略したという◆討論会は3人がそれぞれ所見を述べたあと、主催者側があらかじめ準備した質問に答えていく方法になるようだ◆八重山では過去にも県議選のほか石垣市長選、竹富町長選で公開討論会が開かれたが、クロストークは常に「目玉」だった。相手の急所を突く鋭い質問、それをとっさにかわして反論する瞬発力。予定候補者の政治家としての資質が最も試されるスリリングな瞬間だからだ。テレビ番組で言えば最高視聴率を記録する場面であり、そこを省略した討論会は「画竜点睛を欠く」としか言いようがない。主催者側の決定は不可解だ◆とはいえ、予定候補者が一堂に会する、恐らく最初で最後の機会である。予定候補者の貴重な生の声を脳裏に刻み、6月5日の投票日には、しっかり投票所に足を運びたい。

2016年

4月

28日

地震体験車に乗ってみた…

 地震体験車に乗ってみた。震度7。天地がひっくり返るのではないかと思われる激しい揺れ。座っていても、何かにつかまらないと姿勢を維持できない。心の準備をしていても、かなりきつい。家でくつろいでいる時間に突然、こんな揺れに襲われたらパニックになってしまうだろう。熊本の人たちは、想像もつかないほど怖い思いをしたはずだ◆東日本大震災で高まった日本人の防災意識も、時間とともにやや薄れつつあったような気がする。そこへ発生した熊本地震は、東北に続き九州が被災地となったことで、日本全国、どこにも安全な場所はないことを改めて印象づけた。24日の石垣市防災訓練では、参加者数が昨年を大きく上回り、住民の危機感が高まっていることを示した◆地震が来たらどうするか。津波や竜巻に襲われたら…。普通の生活を送っている今だからこそ、多少なりともイメージする時間を持ちたい。いざ「その時」が来た時、対応は全然違ってくるだろう。防災の基本は、自分の身は自分で守る「自助」だ◆それでも地震体験車に乗って気づいたことは、実際の災害は想像以上であること。まさに「想定外」のことが起こるのだ◆想定外の状況を想定し、その上で自分や家族の命をどう救うのか。「防災」とは口で言うほど簡単ではない。

2016年

4月

15日

冷戦を生き抜いた…

 冷戦を生き抜いた元米大統領のニクソンは「戦争が起こりやすいのは2国が軍拡競争している時ではなく、防御しようとする勢力が、攻撃しようとする勢力との軍拡競争に敗れた時だ」と指摘する◆現在、攻撃しようとする勢力は東シナ海への勢力拡大を図る中国、防御しようとする勢力は石垣島に自衛隊を配備しようとする日本だ。双方の立場はまるで違い、現状ではまともな外交交渉は難しい◆中国が関係改善の対話に応じるのは、日本の防衛体制が堅固になり、八重山に触手を伸ばすのはとても無理だと知った時だけだろう。だから、反対派が主張するように、自衛隊配備は八重山の安全を脅かすのではなく、かえって中国に対話を促し、住民の安全度を高めることになる◆「自衛隊が配備されれば有事の際に標的となる」というのは反対派の常套文句だが、有事ともなれば、全国どこでも標的になり得る。軍事基地がなければ安全だという保障などなく、中国の脅威を自衛隊に責任転嫁すべきではない◆配備予定地周辺の住民が反対しているという事実は重いが、安全保障に関わる問題は、もとより一地域の意思だけでは決められない。配備計画をめぐり、防衛省が開く住民説明会の日程もようやく22日に決まった。冷静に耳を傾けたい。

2016年

3月

29日

明治維新の元勲、大久保利通の…

 明治維新の元勲、大久保利通の言葉である。「過ぎたるは及ばざるに如かず」。やり過ぎてしまったら取り返しがつかないが、やらないうちなら、まだ熟慮の余地がある、とさとす◆就職、進学、進級の春を迎え、世には若者へのはなむけの言葉が氾濫している。筆者が若いころ、バイトの先輩に教えられたのは「やらずに後悔するより、やって後悔せよ」だった◆しかし、さまざまな人生経験を積んだ今になって振り返ると、これは全くの誤りだった。自分の能力を過信し、しなくてもいい失敗を重ね、人生の大事な時間を山ほど無駄にした。悔恨の思いは深い◆「失敗を恐れるな」という言葉は、一般論としてはその通りだが、これが当てはまるのは、人並み以上の才能や幸運に恵まれた人ではなかろうか。そういう人なら最初から成功の見込みは立っているし、未来を恐れる必要もない。大多数の人間に当てはまる言葉は、孫子の兵法も指摘するように「勝算がなければ勝負に出るな」ということに尽きると思う。失敗というのはたいてい、自分一人の問題にとどまらず、めぐりめぐって周囲に迷惑を掛けることもあるからだ。甘く見てはいけない◆老境に達した今、筆者が若い友人に真心を込めて贈る言葉は「失敗を恐れよ」である。

2016年

3月

24日

さわやかに晴れ、まだ日差しも…

 さわやかに晴れ、まだ日差しも強くない午前中に街を歩くことは楽しい。20日に石垣市民憲章推進協議会が実施した「健康づくりウォーキング」。参加者の生き生きした表情を見て、久しぶりに歩きたくなった◆体調が悪くなると足取りが覚束なくなり、病が重くなると、もう歩けない。軽やかな歩行こそ、健康のシンボルだ◆歩くと考えがはかどる人は多い。沈思黙考する精神と、活発に手足を動かす肉体とのバランスが取れるからだろう。有名な推理作家にも、歩きながらストーリーやトリックを組み立てるという人がいた。それに歩く仲間がいれば会話も弾む。車を持たなかった学生時代、目的地まで友人と長い道のりを歩き、話題が尽きなかったことを思い出す◆しかし社会人になると、歩きたくても歩けないことに気づいた。仕事は時間厳守だから、車に乗らないわけにはいかない。昼間はとにかく忙しい。それならと涼しい夜に歩くと、道路には猛スピードの車がうようよして、危険極まりない。ダイエットでウォーキングやジョギングに励む人は多いが、痩せるために本当に必要なのは運動ではなく食事制限だ◆しかし、そう言って歩くことを億劫がるのは、老化が進んだ証拠だろう。渋る気持ちを叱咤激励して、スニーカーを履こう。

2016年

3月

22日

民主党政権は「失政」と…

 民主党政権は「失政」と同義語のようなイメージで語られることが多い。実際、振り返るとさまざまな醜態が思い浮かぶ◆東日本大震災と原発事故では、菅首相の言動が混乱を助長したとして問題視された。消費税をめぐっては、不況下にもかかわらず、野田首相がよりによって「増税に政治生命を懸ける」と公言、政治センスの欠如をさらけ出した◆鳩山首相は、無鉄砲な「最低でも県外」発言が名高い。現在に至る普天間飛行場移設問題の混迷がスタートした。菅政権時代、尖閣諸島周辺では、中国漁船が海保の巡視船に衝突する事件を起こしたが、ただちに船長を釈放した「弱腰対応」が批判された◆東京都の尖閣購入計画を阻止するため、野田首相が尖閣国有化に踏み切ったが、中国はこれを口実に反日活動を活発化させた。あのまま都に尖閣を購入させ、船着き場などを迅速に整備させていたら、衰退する八重山漁業は今ごろ違った展開をたどっていたかも知れない◆民主党が政権を奪取したころは、日本ブランドが大きく揺らぎ始めた時代だった。その動揺は今でも続き、不透明で混沌とした時代が到来している。「あの時自民党だったら、もっとうまくやれたはず」とも一概に言えない。民主党は、悪い時代に政権を担ってしまったのだろう。

2016年

3月

13日

「議会で急転直下の出来事が…

 「議会で急転直下の出来事が起こることがある。やわらかい言葉で言うと、根回しとか裏取り引きという」。あるベテラン議員が、政治の仕組みを分かりやすく解説してくれた。双方が対立し、八方塞がりのように見えた状況が突如動き出す。その背後には、政治の達人であるベテラン議員たちの影がある◆最近は全国的に政治家の若年化が進んでいる。20代、30代の国会議員も珍しくなくなったし、沖縄でも40代の首長が続々誕生。優秀な政治家の条件として、若さを挙げる声さえ出始めた◆ルックスも良く、弁舌も巧みな若者が理想論をぶつ姿は確かに心地いい。しかし若者は、往々にして口だけ達者だ。ルックスだけで投票すると、育休不倫議員のような未熟者が当選してしまう◆ベテラン議員はどこで、誰と、何を、どのように交渉すれば物事が前に進むかを知っている。建前と本音を使い分け、時には妥協もいとわない。「ゼロか100か」という完全主義者ではなく、五割一分以上の成果が得られれば良しとする。「過ぎたるは及ばざるがごとし」である◆米軍基地問題も、ともすれば「全基地撤去」のような理想論がもてはやされるが、大切なのは目の前の現実を改善していくことだ。沖縄が抱えるさまざまな政治課題に「ベテラン力」が求められている。

2016年

3月

03日

石垣市民憲章推進協議会が…

 石垣市民憲章推進協議会が石垣第二中と大浜小の児童生徒を集めて「子どもまちづくりワークショップ」を開き、石垣市の将来像について夢を語ってもらった。「住みたいまち」のアイデアを投票したところ「どこでもWi―Fi(ワイファイ)が使える」が圧倒的な得票でトップになった◆10年前なら予想もできなかった答えだが、子どもたちの本音を知ることができ、興味深い。スマホの爆発的な普及が背景にあるのだろう◆インターネットが自由に使える環境はもちろん魅力的だが、これを「石垣市のあるべき将来像だ」と前面に出されると、正直なところ、ちょっと違和感がある。「コーラ専門店、遊園地、映画館、ライブハウス、ショッピングモールがあるまち」というアイデアも出たが、もっと思い切って大風呂敷を広げても良かったのではないか◆個人的には「街灯が多いまち」「年配者を気遣うまち」「自然がある美しいまち」といったアイデアが、少数意見にとどまったことも気になる。豊かな自然や人情こそ八重山の最大の魅力であることに気づいてほしい◆どんな破天荒な夢を語っても、笑って受け入れてもらえるのが子どもの特権だ。「あらゆるがんを治療する医者になり、ノーベル医学賞を受賞する」。筆者が小学校の卒業文集に書いた夢だ。

2016年

2月

22日

米軍普天間飛行場の…

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で、本土の住民から「沖縄で冷静な議論ができているとは思えない」という声をよく聞くようになった。「移設反対があたかも正義のように語られている現状は、県民自身の目から見ても正常とは言えない」と答えている◆共同通信が1月末に実施した全国的なアンケートでは、移設賛成47・8%、反対43%で、国民の意見は大きく割れている。当事者である沖縄の感覚は尊重されるべきだが、県民にも自らを客観視する冷静さが求められる。移設反対だけが正義ではないのは客観的な事実だ◆沖縄に対する中国の脅威が増す中で「普天間飛行場を抱える宜野湾市民の危険性除去と抑止力の維持を両立させる」ことが辺野古移設の理由とされてきた。反対派は県内移設では県民の負担軽減にならないとする。だが抑止力の維持に関してはどうか。特に尖閣問題に関しては、反対派からは「米軍は抑止力にはならない」というたぐいの曖昧な答えしか聞けないのが現状だ◆米軍が抑止力にならないのなら、自衛隊を増強するのかと問いたいところだが、石垣島への自衛隊配備にも反対だという◆米軍基地のない八重山から基地問題について意見を言うのは困難だが、言葉遊びのような議論では離島住民の理解は得られない。

2016年

2月

11日

石垣市の新庁舎建設位置を…

 石垣市の新庁舎建設位置を問う住民投票で「旧石垣空港跡地」が圧倒的多数を占めたことを受け、市は新庁舎を高台移転すると発表した。初の住民投票が巻き起こした「民意」の波動は、市の方針を大きく揺り動かした◆いくつか課題は残った。まずは現地建て替えを求めた新庁舎建設基本計画策定委員会の答申とは何だったのかという疑問だ◆行政機関の求めに応じ、意見を答申する「第三者委員会」は、中立性や専門性を建前とする。策定委も第三者委員会だが、当初から「委員の人選が現地建て替え派に偏っている」という批判が上がっていた。策定委が必ずしも市民の多数意見を代表する必要はないが、今回の答申が、あまりにも民意とかけ離れていたことは認めなくてはなるまい◆第三者委員会は、往々にして行政機関の意に沿ったアリバイ作りの組織になりがちだと言われている。市民の疑念を招かぬよう、人選のあり方を再度見直す必要はないのか◆もう一つの課題は39%にとどまった投票率だ。当初から50%には届かないと見られていたが、40%にも届かないというのは大方の予想外だった。投票所にわざわざ足を運ぶのは、確かにエネルギーが要る。「それでも1票の重みを自覚してほしかった」と残りの6割の市民に言いたい。

2016年

2月

09日

「ミサイルが発射された模様です」―。…

 「ミサイルが発射された模様です」―。防災無線のスピーカーから流れる音声に「まるで空襲警報のようだ」と感じた市民や観光客も多かったのではないか。北朝鮮が2012年に続き、先島諸島方向に向けミサイルを発射した。八重山を取り巻く厳しい国際環境が改めて浮き彫りになった◆関係機関の対応で一つ疑問に思ったのが翁長雄志知事の言動だ。発射から約3時間半後、報道陣の質問に「心臓が凍る思い」と答えた上で、ミサイルを迎撃する自衛隊のPAC3(地対空誘導弾パトリオット)について「一体全体、どんな精度があるのか、素人には分からない」と語った◆自衛隊に反対する勢力を含む「オール沖縄」に配慮した発言だという。しかしミサイルが県民の頭上を通過した非常時であり、支持者に気を使い、わざわざ自衛隊に嫌味を言っている場合なのか、首を傾げる◆石垣市の中山市長は、ミサイル発射とほぼ同時に報道陣の前に姿を現し、防衛省のPAC3配備については「迅速な対応に感謝したい」と語った。非常時、首長が市民、県民へどう存在感を示すかというアピール力も含め、両者の危機管理能力の差を感じざるを得ない◆沖縄の首長には、北朝鮮の暴挙にも中国の領海侵犯にも、きちんと対峙する姿勢が求められる。

2016年

1月

31日

年明けから尖閣諸島を…

 年明けから尖閣諸島をめぐるニュースが相次いでいる。フジテレビの報道によると、中国が尖閣周辺で常駐させている「海警」の甲板上で、尖閣を背景に、モデルのような女性にポーズを取らせて撮影を行う様子が何回か確認されたという。中国が何らかの広報に尖閣を利用しようとしている可能性がある◆米シンクタンクは、尖閣をめぐり日中間で戦争が起きた場合、中国が5日間で勝利するという分析を明らかにした。米国が日中間の戦争に巻き込まれることを防ぐため、米軍は介入を回避すべきと提言している◆すると、これを否定するかのように、ハリス米太平洋軍司令官はワシントンでの講演で「中国からの攻撃があれば、われわれは必ず(日米安全保障条約に基づき)防衛する」と述べ、米軍の軍事介入を言明した◆尖閣周辺では昨年12月から機関砲を搭載した改造軍艦の「海警」が航行するようになり、武装船による領海侵犯が日常化している。八重山住民は強く平和を希求しているが、中国に妥協の意思は一切ないようだ◆中国や米国が発信する情報に振り回され、一喜一憂する日本の現状を見るとき、物悲しい気分にさせられる。「自分の国は自分で守る」。こんな当然なことの意識がここまで希薄な国は、ほかにそうないだろう。

2016年

1月

27日

石垣島の自衛隊配備候補地周辺の…

 石垣島の自衛隊配備候補地周辺の3公民館が、配備反対を決議した。当初は防衛省に説明を求める姿勢だったのが、一転して説明も拒否することを決めた。配備に関する具体的な情報がないまま、なぜこのような重要な判断が可能だったのか。性急な決議という印象は否めない◆地域住民としての意見表明は当然あるべきだ。しかし自衛隊配備は一地域だけではなく、八重山、さらには沖縄全体の安全保障にもかかわる問題であり、本来「聞く耳を持たない」では済まされない。それに反対だからと最初から対話の扉を閉ざしてしまうと、情報を得る貴重な機会を失い、かえって地域の利益を損なう恐れもある◆3地区は「現在の候補地に反対。石垣島への自衛隊配備計画そのものには意見を表明しない」というが、配備反対派は3地区の決議を「追い風」として勢いづいている◆先日開かれた反対派の集会では、自衛隊を「憲法違反」と公言する参加者もいた。3地区の決議は、自衛隊の存在そのものを否定する運動に政治利用されているのが現状だ◆一方で防衛省の説明不足も否めない。住民生活にどのような影響が出るのか、あるいは出ないのか。八重山を取り巻く国際情勢の厳しさも、住民に十分理解されているとは言えない。丁寧な対話を求めたい。

2015年

12月

16日

記者泣かせなのが…

 記者泣かせなのが、読めない名前だ。パソコンで入力してもなかなか出ず、悪戦苦闘する。常識的な音読みや訓読みでは読めないのである◆珍名奇名かというと、必ずしもそうではなく、何となく意味は分かるのだが、年寄りには、やはり読めない。こうした名前は「キラキラネーム」と呼ばれることもある◆駆け出しの記者だった当時に比べ、八重山でこうした名前は明らかに増えている。感覚として、最近の20代以下の名前は、特に女性の場合、半数近くが読めない。可愛らしい漢字が並んでいたりするので「ご両親はたぶん、こんなイメージで命名したのだろう」と想像はできるのだが、とにかく、読めないものは読めない。記者としては困るというほかない◆「キラキラネーム」は、漢字本来の持つ意味よりも、漢字の持つイメージを重視した命名であることが多く「漢字文化を軽視している」という批判の声もある。ただ現実に「読めない名前」がこれだけ増えた以上、一過性の社会現象として見過ごすことは、もはやできないように感じる◆名前は親が子どもに与える最初で最大のプレゼントだ。凝りすぎて子どもの重荷になるくらいなら、平凡なほうがはるかにいい。今の若者には「昭和世代の遠吠え」と笑われそうだが。

2015年

12月

13日

世界的指揮者のニコラウス・アーノンクールさんが…

 世界的指揮者のニコラウス・アーノンクールさんが、86歳の誕生日を前に引退を表明した。体力の限界が理由だという。30年来、彼の演奏に親しんできたファンとしては、衝撃的で辛いニュースだった◆バッハやモーツァルト、ベートーベンなどの演奏に、作曲当時のスタイルを応用する画期的な演奏法を導入した。世界各地のオーケストラで本格的に活動を開始した1980年代には無理解な評論家が多く、特に日本では「音が汚い」「あざとい」などと毛嫌いされた◆既成の権威は常に新しいものを叩きたがる。しかし時間は厳正な審判者だ。アーノンクールさんが幾多の名演を積み重ねた結果、現在のクラシック音楽界では、むしろ彼が切り拓いた演奏法こそスタンダードとして定着。彼は現在、日本を含め、世界で最も尊敬される音楽家の一人となっている◆まだまだ世界中から期待されながら、燃え尽きるように第一線を去るアーノンクールさんの姿は、夕映えのように美しい。長くかつ充実した音楽生活を羨む◆人間にはさまざまな生き方がある。しかし筆者にとっては、他人の評価など気にせず、自分の信じた道をひたすら進み、何かをつかみ取った人生ほど価値あるものはない。「誰からもほめられる」と「つまらない」は、実は紙一重だから。

2015年

11月

25日

 「いかなる死も、それを犬死と呼ぶことはできないのである」。…

 「いかなる死も、それを犬死と呼ぶことはできないのである」。1970年11月25日に自衛隊の市ヶ谷駐屯地で自決した作家、三島由紀夫の言葉だ◆憲法改正を促す演説をしたあと割腹した三島の姿は、国や故郷のために命を捨てた特攻隊とどこか重なる。2013年、石垣島出身の特攻隊長、伊舍堂用久中佐の特集を本紙で連載した際、結びに、三島のこの言葉を引用せずにはおれなかった◆今年は三島没後45年、生誕90年の節目に当たり、各メディアで盛んに三島特集が組まれている。自決当時の世論は「有名作家がクーデターまがいの事件を起こした」と非難一色だったというが、現在、各メディアの特集を見ると、驚くほど三島に肯定的な論調が多い。「三島事件」が歴史の一部となり、ある程度評価が固まってきたということかも知れない◆三島を知る人は誰もが「天才だった」と口をそろえる。早熟で、30代にしてノーベル賞候補。わずか45年の生涯にもかかわらず、彼の作品は膨大な量を誇る。圧倒的な「生」を駆け抜けた三島だが、なお貪欲に「死」によっても何事かを成し遂げようとした◆彼の思想に対する賛否は別として、45年前の衝撃は今なお色あせていない。11月25日には、人間の生や死の意味を改めて考えさせられる。

2015年

11月

11日

米軍普天間飛行場の辺野古移設問題は…

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題は、政府と翁長知事が法廷闘争に突入する見通しで、泥沼化の様相を呈してきた。そんな折、八重山住民に新たな視点を与えてくれたのが今月4日に石垣市で講演した名護市民の我那覇真子さんだ◆移設先の名護市は移設に反対しているが、辺野古区民は移設容認が多数を占めていると紹介。米軍キャンプ・シュワブ前は県内外の移設反対派が連日の抗議行動を繰り広げているが、辺野古区民と米軍は伝統的に友好関係を築いてきたと強調した。こうした「地元の地元」の実情を知る機会は少ない◆普天間飛行場を抱える宜野湾市議会は、同飛行場の固定化に反対する意見書を9月に採択し「(普天間問題の)議論は移設先だけに終始してしまっている感があり、当事者である宜野湾市民として不安、危惧を抱かずにはいられない」と指摘した◆普天間問題の原点は「宜野湾市民の危険性除去」であり、県外であれ県内であれ、まずは同飛行場を動かすことが喫緊の課題だ。移設先うんぬんは本来の問題ではないという宜野湾市民の焦燥感も浮かび上がる◆「新基地建設反対」という扇情的なスローガンの陰で、真の当事者である辺野古区民や宜野湾市民の声がかき消されていないか。県民は謙虚に耳を澄ます必要がある。

2015年

10月

26日

高校野球の九州大会で…

 高校野球の九州大会で、八重山高校がきょう、4強入りを懸けて秀岳館(熊本)と対戦する。八重山勢にとっては、2006年の八重山商工以来、9年ぶりにめぐってきた甲子園出場のチャンスだ◆八商工が出場した春の甲子園には同行取材した。日本最南端からの出場ということで注目度は高く、選手が甲子園に姿を見せると、報道陣が「あっ、八重山だ」と色めきたった。同じ八重山から来た記者としてうれしかったことを覚えている。甲子園出場となれば、八重高も全国の話題をさらうことだろう◆それにしても9年間は長かった。若い人は、当時の地元の熱狂ぶりをリアルタイムでは覚えていないかも知れない。八商工の春夏連続出場のあと、すぐにでも実現しそうだった3回目の甲子園は思った以上に遠く、住民の熱気も徐々にさめていった◆しかし、県の新人大会、秋季大会を連覇した今年の八重高の力強さ、落ち着きを見ると、9年前に八商工がまいた「種」が、確実に息づいていたことが分かる。離島勢であっても、甲子園が十分に手の届く夢であることは、今や全国の誰もが知っているからだ◆故郷の熱い視線を一身に浴び、大舞台で躍動できる選手は幸せだ。結果にかかわらず、実力を出し切って悔いのない試合をしてほしい。

2015年

10月

11日

沖縄と米国ハワイ州の…

 沖縄と米国ハワイ州の姉妹都市提携30周年を記念し、ハワイからデービッド・イゲ知事が来沖している。10日には那覇市内のホテルで記念式典・祝賀会が開かれ、翁長雄志知事は「30周年を契機に、ハワイと沖縄の友好の歴史に新たな一歩が生まれた」などと交流の深化を誓った。知事は、来年10月に開かれる第6回世界のウチナーンチュ大会への参加も呼び掛けた◆節目の年を契機に、県とハワイの間では、人材育成や学術交流、新エネルギー分野での協力促進などが検討されているという◆ハワイと沖縄がお祝いムードに包まれた今年は、奇しくも石垣市と台湾・蘇澳鎮の姉妹提携20周年でもある。沖縄本島ではハワイの陰に隠れて目立たなかったが、八重山と台湾の交流も歴史は長い◆9月には中山義隆市長を団長とする訪問団が台湾・蘇澳鎮に入り、協力関係をさらに強固なものとするための覚書を交わした。農林漁業の特産品生産販売に向けたコミュニティ立ち上げ、学校現場での教育と相互訪問による文化交流の促進、観光産業の促進と交通産業の連携が主な内容だ◆国境に接する沖縄は諸外国に対する日本の玄関口でもある。ウチナーンチュは、世界の多様な文化や価値観を受け入れる包容力を持っている。交流拠点としての期待は大きい。

2015年

10月

08日

7日の内閣改造で…

  7日の内閣改造で、県選出の島尻安伊子参院議員が沖縄担当相に就任した。島尻氏は八重山に何度も足を運び、離島の課題を熟知している数少ない政治家の1人でもある。離島住民としては手腕発揮に期待が高まる◆島尻氏は米軍普天間飛行場の辺野古移設容認を明確に打ち出しており、本島では反基地派の憎悪を一身に浴びている。マスコミでも槍玉に挙げられることが多く、当選2回での大抜てきは、苦戦が予想される来年の参院選対策との見方が強い。しかし「オール沖縄」の大逆風が吹き荒れる中、女性ながら果敢に信念を貫く「男らしい」姿勢こそ安倍首相に評価されたと見ていい◆それにしても、インターネットの掲示板などを覗くと、反基地派が島尻氏に浴びせる罵詈雑言の数々に驚く。宮城県仙台市出身の島尻氏のせいで「仙台出身者のイメージが悪くなった」などというたぐいである◆島尻氏が他県出身ながら、沖縄で地歩を固めた努力に感心しこそすれ「本土出身者には沖縄人の心は分からない」などという物言いは、沖縄の品位をおとしめてしまう。政治家は政策で評価されなくてはならない◆八重山住民が最も望むのは離島振興だ。新大臣には女性ならではの目配り、気配りで離島の隅々まで光を当て、離島苦の解消に努力してほしい。

2015年

10月

03日

台風15号は10年に…

 台風15号は10年に1度の大型台風だと思っていたが、わずか1カ月ほどで、それをさらに上回る21号が襲来した◆災害は忘れたころにではなくて、記憶がまだ生々しいうちに立て続けでやって来る。台風銀座と称される八重山だが、改めて油断している暇などないと感じる◆電力、電話、水道といったライフラインの寸断は住民生活に大きな影響を及ぼす。離島の離島である八重山では、復旧のため、電力会社の作業員らを本島から呼び寄せなくてはならないが、民間の航空機は満席や欠航だった。代わりに自衛隊機が作業員の輸送で活躍した。与那国島や石垣島への自衛隊配備は住民の安心のためにも必要だ◆電柱の倒壊が停電などの被害を拡大させていることを考えると、電線類地中化は喫緊の課題だ。今回と同様の大型台風だった2006年の台風13号襲来時から、既に指摘されていたことだが、10年近く経った現在でも目に見える進展が少ないのはなぜだろう。予算の大きさや工事の複雑さを考えれば、確かに一朝一夕に進む事業ではないとはいえ、過去の教訓がうまく生かされていない◆被害が特に大きかった与那国住民のニーズを的確に把握することも必要だ。責任ある政治家には早期に来島して生の声を聞いてほしい。

2015年

9月

15日

中秋の名月である…

 中秋の名月である旧暦8月13日の今月25日、「とぅばらーま大会」が開かれる。石垣島の方言で、切ない思いが夜空に歌い上げられる。伝統文化である方言継承も大会の重要な目的の一つだ◆しかし最近「歌詞の部」の応募作を見ると、石垣島の方言と沖縄本島の方言(ウチナーグチ)が混同されている例が多く見られるという◆マスコミで方言の復興が叫ばれているが、宣伝される機会が多いのはほとんどがウチナーグチで、八重山の住民でさえウチナーグチと地元の方言の区別がつかなくなっているのだ。関係者は「ウチナーグチが八重山の島言葉を侵食している」と嘆く◆沖縄の人々は方言に対して複雑な意識を抱いてきた。方言を使った者が罰としてぶら下げたという「方言札」のエピソードが示すように、戦前、戦中は標準語が奨励され、方言は排除すべきものとされた。方言しか使えない沖縄人は本土で差別を受け、飲食店への出入りを禁止されたり、軍隊でいじめにも遭った◆実際には、沖縄方言は言語学的に日本語の一種であることが判明している。しかし、それを強調するまでもなく、方言とは日本文化の多様性を示す国民の貴重な財産だ。現在、八重山の方言は消滅寸前だが、それは八重山だけでなく、日本全体の損失でもある。

2015年

9月

04日

70年前の戦勝国とは…

 70年前の戦勝国とはそこまで偉いのか、というのが八重山住民の率直な感想だろう。「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」式典で習近平国家主席は「日本軍国主義の侵略者を徹底的に打ち負かした」「この偉大なる勝利によって、中国は再び、大国としての地位を手に入れた」と胸を張った◆歴史を忘れず、貴重な教訓として胸に刻むのは当然だ。だが70年前の感覚で現代を語られても困る。習主席の演説では、日本に対する融和の言葉は一言もなく、一方で国民に対し、共産党指導下での「中華民族の偉大な復興」を呼び掛けるなど、独善さだけが目立った◆「平和発展の道を歩む」と宣言しながら、200機もの軍用機やミサイルを披露する軍事パレードを実施する神経が、そもそも不可解だ◆ミサイルの登場時には、国営テレビのアナウンサーが「殺傷能力が高い、優れた兵器だ」と称賛。習主席が車で閲兵を行うシーンも、どこかの国の独裁者を見ているようだった◆習主席がこの日、世界に要求した「正しい歴史観」は「日本が尖閣諸島を領有するのは戦後の国際秩序に対する挑戦だ」という身勝手な主張を含む。八重山住民としては、習主席の粗雑な演説より、安倍談話のほうがよほど未来志向で、格調高く感じる。

2015年

8月

31日

個人的な体験になる…

 個人的な体験になる。小学校に入学したばかりの筆者はクラスで最も背が低く、ガリガリに痩せて、ひ弱な印象を与えた。体格の大きな子どもたちに目をつけられ、何度もいじめられた◆そこへ駆けつけたのが担任の女性教諭。いじめっ子たちを厳しく叱りつけると、彼らは別人のように大人しくなり、全く手を出して来なくなった◆ここから学べる教訓は2つある。一つは、残念ながら弱い者いじめは人間の習性だということ、もう一つは、強い者は、もっと強い者に対しては刃向えないということだ◆人間社会の法則は、広く国際社会にも適用できる。いじめられっ子が日本、いじめっ子が中国、教師が米国だと考えると、そのまま現代の縮図だ。戦後70年、なぜ日本が平和を保ち続けられたかは、人生の実体験から即座に理解できる。日米同盟があるからだ◆国会で審議中の安全保障関連法案は、その日米同盟を強化することが目的であり、日本の平和や安全に寄与することはあっても「戦争法案」ではないだろう。石垣市議会は同法案の今国会成立を求める意見書を可決しているが、石垣市民の声が本土まで届いていない現状がある。それどころか沖縄本島にさえ届いていない。反対派には大声で気勢を上げる前に、小さな声に耳をすませてほしい。

2015年

8月

27日

ゆがんだフェンス、倒れた街路樹…

 ゆがんだフェンス、倒れた街路樹、空っぽの商品棚…。台風15号の爪痕は各地に残っている。改めて大自然の脅威を実感せずにはおれない◆今回の台風被害に遭った多くの住民から「2006年の台風13号を思い出した」という言葉を聞いた。あの時の被害も凄まじく、市街地では電柱があちこちで倒壊し、トタン小屋などが吹き飛ばされ、長期間の断水もあった。当時、被害を取材していて「こんな台風は二度とないだろう」と思ったものだが、認識が甘かった◆石垣島地方気象台によると、当時の13号と今回の15号は、ともにフィリピン周辺から北上し、西表島と石垣島の間を通過するコースをたどっており、類似性があるという◆台風から見て東側は特に風が強くなる傾向があり、ちょうど石垣島がそこに位置する。被害が大きくなるわけである。13号との比較で考えても、今回の15号は八重山にとって10年に1度の超大型台風だったと見ていいだろう◆東日本大震災以来、災害というと地震や津波に目が行きがちだったが、八重山にとって最も身近な災害はやはり台風である。八重山は台風銀座なのだから、新たな13号、15号は今後も必ずやって来る。今回の台風襲来を受け「防災」「減災」のキーワードを改めて噛みしめる機会にしたい。

2015年

8月

18日

「沖縄の高校球児はプレッシャーに弱い」と…

 「沖縄の高校球児はプレッシャーに弱い」とレッテル貼りされていた時期があった。象徴的だったのが現ヤクルトの新垣投手を擁した1998年の沖縄水産。メジャーでも活躍した松坂がいた当時の横浜に対し「西の横綱」と称され、甲子園で県勢初優勝の期待が高まっていた◆しかし春、夏とも実力を発揮できず、ともに初戦で敗退。当時の新聞は「西の横綱が、もろくも崩れた」と評した。確かに「優勝候補」の呼び声は、選手には重圧だったのかも知れない◆しかし、沖縄球児が脱皮するのは早かった。沖縄水産が初戦敗退した翌99年には沖縄尚学が春の選抜で悲願の県勢初優勝を果たす。以後、沖尚の2度目の優勝、興南の春夏連覇が続く。2006年に離島から初の出場を果たした八重山商工も、夏の初戦では9回に追いつき、延長戦に持ち込んで逆転勝ちした。むしろ精神力の強さこそ、沖縄球児の真骨頂ではないかと思える時代が到来している◆今年の夏も、興南は接戦を次々と制して準々決勝まで進んだ。石垣市出身の高良選手も、勝負どころで代打として起用され、大舞台のグラウンドで躍動した◆人間に「レッテル貼り」は無意味だ。たくましく成長する子どもたちの姿から、大人が学ぶべきものは少なくない。

2015年

8月

16日

八重山では沖縄戦末期…

 八重山では沖縄戦末期、「戦争マラリア」と呼ばれる悲劇が起こり、住民の心に深い傷を残した。石垣市の新栄公園には「世界平和の鐘」があり、慰霊の日や終戦記念日などには必ず打ち鳴らされる。住民の平和への強い願いを発信している◆安倍首相の戦後70年談話には、広島や長崎への原爆投下などと並んで「沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲になりました」と沖縄戦に言及した。村山談話や小泉談話では触れていなかった点で、沖縄県民としても感慨深い内容になった◆談話が「(日本は)進むべき進路を誤り、戦争への道を進んで行きました」などと誤りを率直に認め、国内外のすべての犠牲者に哀悼を捧げたことも評価できる◆不可解なのは談話に対する中国の反応だ。中国メディアは「日本が心からの反省と謝罪をしないのならば、国際社会の信頼を得ることもできないし、世界平和に貢献することもできない」と相変わらず厳しい調子で日本を非難している◆中国は現に八重山周辺の平和をかき乱している張本人であり、むしろ八重山住民こそ中国に「おわび」を要求しなくてはならない立場にある。中国の謝罪要求とは八重山に対する領土的野心の正当化ではないか、という疑念がぬぐえない。

2015年

7月

31日

米軍普天間飛行場の…

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で、仲井真弘多前知事の辺野古沿岸埋め立て承認に「瑕疵がある」と判断した有識者委員会の報告書が公表された。前知事の承認には「論理の飛躍がある」と批判している◆報告書では、埋め立て申請の適正な審査のためには、在沖米軍基地の「歴史と現状の理解が不可欠」として、米軍の土地接収に始まり、普天間飛行場の県内移設反対派が勝利した直近の知事選、衆院選までの経緯を長々と記述している◆前知事は基地の過重負担軽減や県内移設反対を求める県民の声を考慮に入れ、不承認の政治判断をすべきだった、と暗に主張しているのだ◆しかし、尖閣諸島海域で中国の領海侵入が相次ぐなど、沖縄、八重山をめぐる国際環境が厳しさを増していることについては一言も触れていない。沖縄に米軍基地が存在することの是非は別に考えなくてはならないが、尖閣問題が深刻化する現状で、米軍基地の位置は「沖縄より熊本のほうが地理的に優れている」などと言い出すのは、それこそ論理の飛躍だと感じる◆翁長雄志知事はこの報告書をもとに、8月にも前知事の埋め立て承認を取り消す意向だという。国との法廷闘争に突入すれば、対立の泥沼化が懸念される。大口を開けて笑うのは尖閣を狙う隣国だろう。

2015年

7月

27日

大相撲は今場所も横綱・白鵬が…

 大相撲は今場所も横綱・白鵬が盤石の強さで優勝回数を35回に伸ばした。白鵬の偉業に虚心坦懐に拍手を送りたい◆しかし、昭和の時代から大相撲を見続けているファンとしては、いつまで経っても国内出身力士の優勝が見られないのは不満だ。記録をさかのぼると、2006年1月の栃東を最後に途絶えているというから「空白期間」はもうすぐ10年になる◆大相撲の外国人力士というと米国ハワイ州出身の高見山や小錦が懐かしいが、曙が史上初の横綱に昇進。当時は各界のタブーを破ったと騒がれた。その後はモンゴル出身者勢が破竹の勢い。今や、モンゴル出身者でなければ優勝できないのではないかと思われる時代になった◆こうした現状について、ファンからは外国出身力士の「強さ」より、国内出身力士の「弱さ」を指摘する論調も多い。豊かな環境に育ち、少子化で競争相手の兄弟も少ない「いまどきの若者」はハングリー精神に欠けることが多いとされる。いわゆる「ゆとり世代」はその典型例か。テレビで国内出身力士のもろさを見ていると、果たして大相撲だけの問題なのか不安になる◆国際化時代、子どもたちに伝えるべき重要な要素は協調と競争だ。前者だけに偏った教育になっていないか、改めて問い直してみることも必要だ。

2015年

7月

22日

「野党の反対を押し切って強行採決した」…

 「野党の反対を押し切って強行採決した」「多くの国民が集会を開き、戦争法案に抗議している」―。安保法案の衆院通過をこう報道したのは日本の新聞ではない。中国の国営テレビである◆日ごろ、自国民の「民意」をないがしろにしている一党独裁政権が、この時ばかりは「国民が反対している法案」と安保法案を非難している。滑稽というほかない◆先日、石垣市で自衛隊配備の是非をめぐる高校生のディベートがあり、聴衆の一人として参加した。一番印象深かったのは、賛成派、反対派とも「中国の脅威」を口にしたこと。10年ほど前までは、特定の国名を挙げて安全保障の議論をするなど、大人のディベートでさえタブーだった。それが今や高校生まで尖閣諸島問題を懸念している。「時代は変わった」と実感した◆石垣市議会は県内で唯一、安保法案の今国会成立を求める意見書を可決した。沖縄というと基地問題がクローズアップされるが、意見書の可決は、国境の島から尖閣問題の重要性を改めて訴える意義があった◆米ソの冷戦時代、国際協調のポスト冷戦時代が終わり、現在は中国の軍事的台頭という従来とは全く異質の時代に突入している。安保法案の反対論者は、思考が冷戦時代のまま停止しているように思えてならない。

2015年

7月

13日

翁長雄志知事が…

 翁長雄志知事が米国ハワイ州と県の姉妹都市30周年記念式典に参加するため、10日からハワイを訪れているが、県紙と全国紙で報道が全く違っており、興味深い◆まず県紙。12日付の報道を見ると「沖縄とハワイ 新たな絆」「交流拡大に意欲」などと明るく希望に満ちた記事で、同行した記者は、知事が沖縄とハワイの交流機関設置に意欲を見せたと報告。笑顔の翁長知事がカチャーシーを踊る写真を掲載している◆一方、産経新聞は11日付で「沖縄の危機管理に批判も」という記事。台風9号の襲来で多数の重軽傷者が出ているにもかかわらず、知事はハワイ、職務代理者の浦崎唯昭副知事は東京出張中でともに不在だと指摘。秘書課は安慶田光男副知事が県内に残っているため「問題ない」としているが、県ОBの「職務代理を置く意味がなく、県民の生命・財産を守る本分もわきまえていない」という辛らつな批判を掲載している◆同じニュースでも、どの側面に光を当てるかで全く違う結論が導き出される好例だろう◆米軍普天間飛行場移設問題も、辺野古移設反対を訴える知事は県紙から高く評価されているが、保守系の全国紙はシビアな視線を送っている。多面的な物の見方を養うため、新聞を読み比べる姿勢も大事だ。

2015年

7月

05日

3月の自民党政策審議会で…

 3月の自民党政策審議会で、放送番組の過去のデータを蓄積する「放送アーカイブ」を議論した際、島尻安伊子参院議員が「先日の選挙では私の地元のメディアは偏っていた。あの時どうだったか調査するのは大事だ」と述べたとして、県紙が「放送アーカイブ、報道監視に利用、島尻氏が意向」と報じた◆島尻氏はホームページで「(報道監視などとは)一切発言していない」と反論。しかし県紙は社説で「自民党に不利な放送内容があるという前提に立ち、事後検閲の制度化を求めるものだ」と重ねて批判した◆マスコミの権力批判は民主主義の根幹を成すが、当のマスコミが批判から超越していいわけはない。報道がさまざまな角度から検証されるのは当然で、島尻氏の「発言」は「報道監視」とは違う話ではないか◆「事後検閲」という言葉も理解し難い。検閲とは報道などを事前に差し止める行為である。政権が報道内容を事後にチェックし、恣意的に罰則を課す行為を想定しているのかも知れないが、いずれにせよ表現の自由の侵害であり、憲法が禁止している。「制度化」など有り得ない◆そもそも島尻氏の「発言」は審議会に出席していない野党国会議員が伝聞で告発したという。県民としては、あげ足取りより政策論争に専念してほしい。

2015年

6月

24日

厳かな慰霊の場に…

 厳かな慰霊の場に政治的主張を持ち込んでいいのか。糸満市で開かれた沖縄全戦没者追悼式で朗読された翁長知事の「平和宣言」に懸念を感じた八重山住民も多かったはずだ。翁長知事が宣言で、政府に米軍普天間飛行場の辺野古移設中止を要求した◆会場からは、翁長知事に対しては拍手、安倍首相に対してはヤジが飛び、さながら政治集会だった。これも県の「平和宣言」が発端だ。こんな騒然とした追悼式で、果たして御霊は安らかでいられるだろうか◆八重山で開かれた追悼式は対象的だった。参列者はあらゆる政治的対立を超え、静かな雰囲気で戦争の悲惨さを語り、平和への思いに心を一つにした。主張の違いは何ら問題にならなかった◆最近、辺野古移設阻止を訴える知事の言動はエスカレートの一途をたどっているように見える。先月には「抑止力のために(辺野古移設が)必要だと日米両国が決めても止める」と述べ、今月は辺野古移設阻止を目的とした「辺野古新基地建設問題対策課」を県庁に新設した◆辺野古移設に向けた作業が進む中、県に苛立ちがあることは理解できる。しかし「反基地」の最も過激な主張が、そのまま県民の声として発信されているような現状では、県民の1人として不安を感じずにはいられない。

2015年

6月

19日

 石垣市出身のジャーナリスト、三木健さんの…

 石垣市出身のジャーナリスト、三木健さんの資料展が17日まで市立図書館で開かれた。著書の原稿用紙も見学でき、ます目を一文字づつ埋めていく作業の膨大さに圧倒される思いがした◆20年ほど前までは新聞社の原稿も手書きが普通だった。ワープロの登場もさほど昔の時代の話ではないと記憶しているが、今ではあらゆる原稿がパソコンへの入力になり、社内はもちろん、県外や国外からも文字データを瞬時に受け渡しできる時代になった◆分厚い原稿用紙の束を見ると息をのむが、パソコンの画面上に延々と続く文字データを見てもさほどの感慨はない。文豪の文学館などでは、手書きの原稿や万年筆が展示されるのが常だが、将来の文学館には何が展示されるのだろうか。便利さと引き換えに、手書き文化の衰退が確実に進んでいるのを感じる◆資料展では、三木氏が琉球新報記者時代に書いた取材メモも多数並び「よくも丹念に保存したものだ」と感嘆させられた◆使い終わった資料はごみ箱へ投げ込むのが当然のように思っていると、10年後、20年後にしっぺ返しが来る。「あの時の資料をもう一度見たい」「あの状況をちゃんと記録しておけば良かった」。若いころはさして気にならないが、年老いた今は悔悟が尽きない。

2015年

6月

04日

会議の運営は…

 会議の運営は楽な仕事ではない。テンポよく進み、十分に意見交換ができ、実りのある結論を得る―という会議が理想的だ。いろいろな会議を取材したり、自ら参加したりしてきたが、理想的な会議に出会えた経験はほとんどなかった◆ありがちなパターンの一つは、配布された資料の説明が延々と続くというものだ。ひどい会議になると、担当者が「説明」とか「報告」と称し、資料の全文を棒読みしたりする。資料は参加者の目の前にあるのだから、時間の無駄というほかない◆出席者の自己紹介や資料の説明に時間の大半を費やし、3時間近い会議なのに、意見交換が最後の15分だけだったというコメディのような会議もあった◆意見交換の時間は十分でも、一部の出席者が話題を独占し、大半の出席者にとって関心の薄いテーマでひたすらおしゃべりが続くというパターンもある。そういう時に議長の役割は重要だ。うまく交通整理をして話を本題に戻し、出席者の意見を調整し、とにかく何らかの結論に導く手腕が求められる◆大事なのは会議後の行動だ。会議そのものは座って話をするだけの場であり、かける時間は短いに越したことはない。しかし、会議そのものが目的になっているような会議が何と多いことか。行政しかり、民間しかりである。

2015年

5月

04日

言葉の乱れは世相の乱れが…

 言葉の乱れは世相の乱れが背景にあるようだ。最近の沖縄で飛び交う奇妙な日本語を聞いていると、沖縄の将来に危惧を抱かずにはおれない◆まずは「粛々と」という言葉。「やるべきことを淡々とやる」というプラスイメージの言葉だったはずだが、最近はなぜか「上から目線」を意味するようになった◆米軍普天間飛行場の辺野古移設を「粛々と進める」という政府を翁長知事が批判したことに端を発するが、反対派をはじめ周囲が一斉に知事の言葉尻に乗った。八重山でも「粛々と」という言葉を「使いにくくなった」とこぼす人がいる◆「過剰警備」という言葉もよく耳にするようになった。辺野古埋め立ての海上作業を阻止すべく船を繰り出す反対派に対し、警備に当たる海上保安官に投げつけられる言葉だ。だが過剰警備なるものは「過剰抗議」の裏返しではないか。プラカードを持ちデモ行進する程度ならともかく、辺野古の海に身を投げ出す行為が常識的な抗議活動とは考えにくい◆辺野古移設を「辺野古新基地」と言い換えるのもおかしい。移設は負担軽減であり、新基地は負担増なのだから、意味は全く逆ではないか。「新基地」という言葉が既に特定のイデオロギーを示唆しており、責任ある立場にある人が軽々に使うべきではない。

2015年

4月

26日

明和大津波の日である…

 明和大津波の日である4月24日を前に、突如、与那国島を襲った震度4の地震。20日に宮古、八重山地方に発表された津波注意報は住民を震撼させた◆幸い与那国島に被害はなく、津波の到達も観測されなかったが、使い古されたはずの「災害はいつ来てもおかしくない」という言葉が、改めて住民の胸にズシリと響いたはずだ。石垣市は24日に津波避難訓練を行い、26日にも全島一斉の防災訓練があるが、図らずも本番と訓練の順序が逆になってしまった◆八重山は太古から津波の常襲地帯であることが考古学的な証拠で指摘されているが、もし再び大津波に襲われることがあれば、被害は家屋の浸水や倒壊などにとどまらない。八重山は離島の離島であり、空港や港湾が破壊されれば、物資や援助隊が島に入らなくなり、住民は大海の真ん中で孤立化してしまう危険性がある◆停電や断水で住民生活は混乱。地割れや土砂崩れなどによる道路の寸断も懸念される◆住民自身が日ごろから「自助」「共助」「公助」の流れを把握し、役割分担の意識を持つことが必要だろう。とりわけ自助と共助は日ごろからの防災訓練が実際の行動に直結する。訓練が惰性的なイベントになってしまっては意味がない。大切な命を守る真剣勝負という意気込みで参加したい。

2015年

4月

14日

自民党県連の新会長に…

 自民党県連の新会長に就任した島尻安伊子参院議員が、あいさつで米軍普天間飛行場の辺野古移設反対運動に触れ「反対運動は責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治として対峙(たいじ)していく」と述べ、移設反対派から激しいバッシングを受けている◆島尻氏の真意を推測すると、たぶんこういうことだろう。責任がある反対運動であれば、問題解決に対する何らかの対案を示すはずだ。基地をどこへ移設するのか、基地を全撤去したあとの沖縄の安全保障をどう考えるか。その答えもなく、ただ反対の拳を上げるだけでは事態は前進せず、責任ある政治家としては反対運動と対峙するほかない、と◆沖縄本島と一定の距離を置く八重山住民の視点からすると「島尻氏は政治家として、自らの信念を正直に語ったのだ」という感想しかなく、賛同するしないは別にしても、特に不適切な発言とは思われない◆むしろ「反基地」の旗印だけで、移設に前向きな発言に対し、過剰な言葉狩りに走るような風潮はまずい。私たちは政治家から本音を聞きたいのであって、政治家が委縮して何も言えなくなるような社会になってしまっては、民主主義そのものが脅かされてしまう◆重要な問題であればあるほど、賛否両論に耳を傾ける謙虚さが大事だ。

2015年

4月

07日

4月はフレッシュマンの…

 4月はフレッシュマンの季節でもある。名蔵小中学校の石垣校長が新採用の教員などを対象に講話した記事が6日付本紙に掲載されたが、手抜きの方法ではなく、難儀することを教えるのが本物の先輩だと語っていたのが印象的だった◆自分自身の過去を振り返ると、きつい仕事を次々と押し付けてくる先輩には閉口させられた記憶がある。しかし新人時代に楽をすることを覚えてしまったら、仕事が長続きすることはなかったろう◆新人時代には、先輩や同僚からの助言や忠告を、当たり前のようにやり過ごしてしまうことが多い。最近は政治も企業も若返りが進み、40代でトップに立つ人も少なくなくなった。そうなると、若いからと言って、周囲もおいそれと忠告などしない。50代ともなると言わずもがな◆江戸時代に武士の心得を説いた「葉隠」に至っては、30歳を過ぎると忠告してくれる人もいなくなると指摘する。いずれにせよ他人から親身にアドバイスを受けられるのは、20代のフレッシュマンだけの特権だろう◆それに、年老いて気づくのは、20代の体力がいかに驚異的かということ。大いに仕事に励めるのも今だけ、大いに先輩に叱られるのも今だけだ。そして桜の花が散るように、その季節はあっという間に終わってしまうのである。

2015年

3月

30日

大学時代に「21世紀の中国」を…

 大学時代に「21世紀の中国」をテーマにした講義を受け、教授や参加者と意見交換したとき、出席者の誰もが「21世紀は中国の世紀になる」と断言した◆人口の多さや人民の潜在能力の高さから、いずれ米国をも抜き、世界一の大国に成長する―と誰もが予想した。「そんなものか」と思いながら話を聞いていた記憶があるが、予想より早く、その時が訪れようとしているようだ◆中国が主導して設立する国際金融機関、アジアインフラ投資銀行に日米を除く主要国がこぞって参加を表明しており、従来の日米主導に代わり、中国を中心とした新たな金融秩序がアジアで誕生しそうだ。中国が名実ともに「アジアの盟主」として影響力を拡大させることになる◆ただ経済面での躍進とは裏腹に、中国の軍事的、独裁的な体質は強まる一方だ。本来なら隣国の経済成長は大きなチャンスだが、尖閣問題を抱える八重山にとっては、逆に脅威が増す一方だと受け止められる。順調に伸びる八重山観光も、外国人からの誘客は台湾や香港がメインターゲットとなっており、中国本土との民間交流が活発化する兆しはない◆東アジアの玄関口を目指す八重山にとって、相互理解が深まらないまま、隣国の存在感だけ増していく現状は不幸としか言いようがない。

2015年

3月

12日

タイの貧困街で育ちながら…

 タイの貧困街で育ちながら、子どものころに日本の支援団体がつくった図書館で学ぶ喜びを知り、現在は外交官として活躍している女性が10日付の本紙で紹介されている◆彼女の周辺には麻薬がはびこり、彼女の幼なじみには刑務所に収容された人もいて「本に出会わなかったら、私も犯罪に手を染めていたかも」と述懐している。一つの図書館、一冊の本が彼女の人生を変えた◆石垣市でもエーデルワイス会長の比屋根毅さんや、産経新聞顧問の桃原用昇さんが、郷土の後輩のため各学校に熱心に本を贈っていることが知られている。本がそろったからと言って、その年からすぐ学力が向上するわけではない。しかし、その本と出会った一人の子どもの運命が変われば、世界の運命が変わることも有り得る。本を贈る行為は地味かも知れないが、その効果は計り知れない◆新潟には「米百俵」という有名な逸話がある。戊辰戦争に敗北し、窮迫していた長岡藩の小林虎三郎が、周囲の反対を押し切り、支援米百俵を学校設立の資金に充てた。「米は食べてしまえば終わりだが、人材が育てば必ず故郷は復興できる」と周囲を説得した◆国も地方も人材が浮沈のカギを握る。胸を張って「教育立市・立町」を内外に宣言できる八重山になってほしい。

2015年

3月

09日

「勧酒」という有名な漢詩がある…

 「勧酒」という有名な漢詩がある。友人に酒を勧め「花発(ひら)けば風雨多し/人生別離足る」と別れを惜しむ場面だ。「サヨナラだけが人生だ」とも訳された。進学や異動などで別れの季節といわれる3月は、この名文句を思い出す人も多いだろう◆若いころは別れの寂しさを噛みしめながらも、新たな出会いへの期待に胸を膨らませることができた。しかし年老いてくると、人生は別ればかりのような気がしてしまう。老年になると活動範囲も限られ、出会いも少なくなってくるせいだろう◆固い絆で結ばれてきた家族、友人たちが徐々に身辺から消え、最後にはかく言う自分もこの世に別れを告げる。どんなに愛する人であっても、永遠に一緒にいることはできない。仏教では愛する人との別れを「愛別離苦」と呼び、人生の苦悩のうちでも特に大きなものの一つに挙げる◆しかし逆に考えると、いつかは別れなくてはならないからこそ、大切な人と過ごす今が、かけがえのない時間だと知る。「あんな冷たいことを言わなければよかった」「感謝の気持ちを素直に伝えたかった」と、あとで後悔しても始まらない。つまらないけんかや、意地の張り合いに費やす時間はない◆今を誠実に生きたい。「勧酒」を口ずさむたび、そんな思いが胸をよぎる。

2015年

3月

02日

石垣市の小学校教諭が…

 石垣市の小学校教諭が飲酒運転で飲食店従業員の男性をはね、男性は昨日亡くなった。子どもたちの模範となるべき教諭の行為として言語道断で、空いた口が塞がらない。20代の若さで将来を奪われた被害者の無念、遺族の憤りは想像するに余りある◆教諭は同僚と酒を飲んだ帰りだったという。運転席に乗り込んだとき「飲んだら乗るな」というスローガンは頭をよぎらなかったのだろうか。県の飲酒運転根絶条例が石垣市の辻野ヒロ子元県議の主導で制定されるなど、八重山は飲酒運転の防止に人一倍熱心に取り組んできたはずだった◆教諭の今後を考えても暗澹たる気持ちになる。被害者が亡くなったことで、県教育委員会からは厳しい処分が予想される。今後の捜査によっては刑事責任を問われる可能性もある。被害者への賠償責任ものしかかる。教諭はまだ働き盛りの年齢だが、今後の人生を贖罪とともに送らなくてはならない。飲酒運転の恐ろしさが改めて痛感される◆最近も石垣市の臨時教諭が強制わいせつで逮捕される事件があったが、こうした教諭たちは一体、現場でどのような指導を受けてきたのか。自分の仕事を普通のサラリーマンと勘違いしていないか。この事故を八重山の住民すべての問題と受け止めて再発防止に努めるべきだ。

2015年

2月

15日

中国公船「海警」は今年に…

 中国公船「海警」は今年に入っても執拗に尖閣諸島周辺を航行し、領海侵犯も繰り返している。昨年の日中首脳会談で日中は融和ムードにあると期待されたが、八重山住民にすれば、見事に期待を裏切られた形になった◆昨年12月の朝日新聞の報道によると、中国の軍艦や公船は習近平国家主席の直属組織のもとにあり、組織のメンバーが無線やテレビ電話を使って現場に指示を出すこともあるという。海警の動きが中国政府上層部の意向を直接的に反映しているのは間違いない◆海警が「配慮」らしきものを示すこともある。石垣市が「尖閣開拓の日」式典を開いた1月14日、海警は尖閣周辺の接続水域を航行していなかった。直前の1月12日、日中は尖閣周辺などの海上で不測の事態を避けるため「海上連絡メカニズム」構築に向けた実務者協議を2年ぶりに東京で開いており、海警は前日の11日から接続水域を出ていた。協議中に不測の事態が起きるのを避けたのだろう◆しかし結局、海警が接続水域で姿を見せない期間が1週間を超えることはなかった。そのメッセージは「中国は尖閣をあきらめない」の一言に尽きる◆沖縄本島では米軍を「悪しき隣人」と呼ぶことがあるそうだが、八重山で「悪しき隣人」と言えば、間違いなく中国だ。

2015年

1月

28日

翁長知事は米軍普天間飛行場の…

 翁長知事は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、埋め立てを承認した仲井真前知事の判断に法的な瑕疵(かし)がなかったかを検証する有識者委員会を設置した◆予想されていたこととはいえ、委員は辺野古移設に強く反対してきた知識人や弁護士といった顔ぶれ。「仲井真前知事の承認には瑕疵があった」という「結論ありき」が露骨という印象は否めない◆首長の政策実現に向けたレールを敷くため「アリバイ作り」の有識者委員会が組織されるのは珍しくない。しかし県民の圧倒的信任を獲得し、従来の県政を刷新する意気込みを見せていた新知事にして、旧態依然とした行政手法に依存する姿は物悲しい。公平な人選で堂々と白黒を問う気概を見たかった気もする◆辺野古周辺では移設工事に対する激しい反対運動が展開されており、反対派が海保に強制排除されている。反対の意思表示は民主主義社会で当然の権利だが、工事を実力行使で妨害することまで許されるのか。誰が被害者で、誰が加害者なのか。冷静な判断が必要だ◆八重山近海では、日本の国境線を実力行使で変更しようとする他国の公船が連日のように航行している。法を無視した反対運動は、やっていることの本質が他国の公船と同じではないか。

2014年

12月

30日

八重山商工野球部を…

 八重山商工野球部を甲子園に導いた伊志嶺吉盛監督の「派遣事業」が今年度で終了する。同事業は2003年、「八重山から甲子園に」という市民の気運盛り上がりを受け、当時の大浜長照市長が決断。少年野球の指導者だった伊志嶺氏を地元高校に派遣し、月々の謝礼を市が負担するというものだった◆当初は監督の厳しい指導について行けず、部員が次々と脱落。一時はついに3人だけという事態に陥った。当時、最後まで頑張り、野球部を存続させた部員たちは、のちの甲子園出場の隠れた功労者だろう◆伊志嶺監督が少年野球で指導した大嶺祐太選手らが入部し、ようやく同校は実力を発揮。06年に県内離島初となる春夏連続甲子園出場を果たす◆あれから8年。甲子園出場がいかに難事かを考えれば、再々出場が果たせない現状を一概に責められない。当時に比べると市民の気運も薄れてしまった。派遣事業の終了も、やむを得ない面があった。市民の税金が投入されている以上、結果が出ないのに10年も事業を継続することは不可能だろう◆しかし8年前にまかれた種は、まだ芽を出す可能性を残している。伊志嶺監督は今後も指導を継続するからだ。派遣事業の終了を奮起の材料に、3度目の甲子園に向けた「再起動」を果たしてほしい。

2014年

12月

24日

香港で民主化を要求する…

 香港で民主化を要求する学生たちの姿を、中国メディアは冷たく突き放して報道した。国営テレビは、学生たちが秩序を乱していると非難する市民のインタビューだけを繰り返し流し、ニュースキャスターは必ず「(学生は)違法だ」と強調した。ニュースでは、政府の公式見解が延々と垂れ流された◆公平な報道とは、何か意見が割れる大きな問題があるときに、両方の意見をバランスよく紹介することだ。この意味で中国メディアの報道が完全に失格なのは、国営テレビのニュースを数分も見ていれば気づく◆最高指導者である習近平氏を礼賛するニュースが10分近くも続き、日本に関する報道と言えば「アベノミクスの失敗で衰退している」「右傾化で軍事力の強化が進んでいる」などと金太郎あめのような内容ばかり◆さらには、新空港が開港したばかりの石垣島を「中国海軍が太平洋に進出する際の通り道だ」と言い放つニュースキャスター。こうした報道姿勢には人間性が感じられない。八重山からわずか数百㌔先の隣国では、こんな報道が堂々とまかり通っている◆客観性を保ちながら、なおかつ人間的な報道。これは民主主義社会であっても難しい。しかし民主主義社会に住んでいるからこそ挑戦でき、可能でもあるテーマだ。

2014年

12月

19日

日本では年末の風物詩とも…

 日本では年末の風物詩とも言われるベートーヴェンの「第9」が12月13日、石垣島でも生で響き渡った。「日本最南端の島から第9の調べで平和を発信しよう」をキャッチフレーズに、この演奏会に向け「石垣フィルハーモニー管弦楽団」が結成され、関係者の意気込みは並々ならぬものがあった◆10年ほど前にプロのオーケストラが招かれ、地元の合唱団と「第9」全曲を共演したことがある。今回のオーケストラは島外からの応援も仰いでいるが、主体は地元であり、その意味でも画期的な取り組みだったと言える◆演奏されたのは「第9」の最終楽章のみだったが、アマチュアとは思えないほど情熱的で、難しいパッセージにも果敢に挑戦しているのが聴き取れた。合唱はオケに負けない圧倒的な声量で、広い会場を「歓喜の歌」で包み込んだ◆シラーの「すべての人が兄弟になる」という歌詞は、人類の融和を歌い上げたものとして有名だ。しかしそれだけではなく、苦難を乗り越えて力強く生きた作曲者自身の人間ドラマでもある。それは「第9」全曲を聞かないと伝わりにくい◆千里の道も一歩から。たとえ時間がかかっても「石垣フィル」で「第9」のすべてを聴ける日を楽しみにしたい。沖縄の音楽史に残る金字塔になるだろう。

2014年

12月

16日

米軍普天間飛行場の辺野古移設に…

 米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する候補に投票した有権者は、勝利の美酒に酔いしれて床についたあと、翌朝の新聞を見て仰天したかも知れない。打倒したはずの自民党候補4人がそろって比例で復活当選していたからだ。結局、沖縄では小選挙区に立候補した全員が国会議員のバッジをつける◆知事選では、確かに県内移設反対の「民意」が示された。しかし衆院選では、辺野古移設を容認した自民党の4人も、小選挙区で勝利した4人と同じ発言権を持ち、今後の国会活動に臨むことになる。辺野古反対派の国会議員は増えたが、容認派も減っていない◆こうなると「知事選に続き衆院選でも辺野古移設反対の民意が示された」とは、一概に言いにくい。「小選挙区の結果が民意だ」と言う人もいるが、では比例の結果は民意ではないのかということになる◆重複立候補という選挙制度を疑問視する声もあるが、結局、県民は辺野古移設反対、容認の候補をバランス良く国会に送り出した、という見方が妥当なところだろう◆ともかくも、小さな沖縄から衆参合わせて11人もの国会議員が生まれた、というのは朗報だ。11人には、辺野古移設反対ではなく、離島振興という、より大きなテーマで「オール沖縄」を構築し、沖縄の明るい未来を開いてほしい。

2014年

11月

21日

映画スターの高倉健さんが…

 映画スターの高倉健さんが亡くなった。昭和のスターというと、現在の若い人にはほとんど残像しかイメージできないが、高倉さんは現在もなお輝きを失わないスターだった◆高倉さんが石垣市を訪れた際、たまたま見かけた富野小中学校の運動会に感動し、同校に手紙やプレゼントを贈ったという逸話もある。死後になって、東日本大震災被災地の少年と文通していたことも報道された。温かい人柄をしのばせる数多くのエピソードを残したのも、高倉さんが特別な存在だったゆえだろう◆現在の八重山では映画館はなくなってしまったが、かつて映画は住民にとって最大の娯楽だった。ある年代であれば、八重山にも、リアルタイムで高倉さんが出演する映画の数々を楽しんだ人は多いだろう◆昭和の文豪、三島由紀夫は映画好きで、高倉さんも好きな俳優の一人だったという。1970年の壮絶な自決直前、三島由紀夫が同志の若者と最後に口ずさんだ歌が、高倉さん主演映画の主題歌「唐獅子牡丹」である。2人の没年は44年離れているが、ともに男の美学を貫いた同時代人だった。1人は穏やかに、1人は鮮烈に。2人の最期は対照的だが「男らしさ」という点で一致する◆三島由紀夫25日、高倉健10日。奇しくも命日は同じ11月である。