「本来のあるべき姿に戻した教科書選定」 金城 竜郎

 2012年度以降4年間、石垣市と八重山郡の中学校で使用する教科書が選定されました。八重山採択地区協議会の玉津会長はじめ、委員の皆様は、想像を絶するご苦労をされたことと思います。淡々と子どもたちにとって必要だと確信する教科書を選択して下さったことに、心より謝意を表したいと思います。本当にお疲れ様でした。


 私は今回の改革を含んだ教科書の選定によって、従来の教科書採択の闇の部分に光を当てることができたと思います。「教科書は誰がどう選ぶのか」という問いに見事に答えることになったからです。義務教育において教科書は無償で配布されています。税金で購入されているのですから、既得権益を守りたい一部の人たちの都合で選ぶことは許されません。


 私は、複数の知り合いの教員に、「教科書は誰が選んでいるのか」と問うたことがあります。そのときは「教員が選んでいます」と誰もが応えました。


 実際の採択権者は教育委員会(臨時に開催される採択協議会が選定する)のはずですが、事実は調査員(教員)が教科書を1点だけに絞り込んで報告していたため、事実上、調査員が選定することとなっていました。知り合いの教員が言っていたのは、そのことだったのでしょう。まず玉津会長はその点の改革を行い、調査員の意見を十分吸い上げつつも、決定権者としての責任を果たす決断をされました。これは県の教育庁義務教育課の指導にも沿った改革でもあります。


 過去の事例ではありますが、ある自治体の教科書採択地区における、教科書選択の実態を紹介したいと思います。


 M県各地の協議会は、各教科ごとに数名の調査員を任命していました。各調査員は教科書採択の資料を作成しその採択地区の教育委員会に答申し、各地区の教育委員会は、ほぼそれにしたがって教科書を決定していました。教科書採択の実質的な権限を調査員がもっていた点、八重山地区と同じでしたが、M県においては、各地区での採択作業の前に、すでに県のレベルで「調査資料」が作成・配布されており、各地区での採択作業は、それを参考にして行われていました。


 「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」には、県教委などが、各地区の協議会へ「指導・助言又は援助」を行うさいには、「あらかじめ教科用図書選定審議会」の意見を聞かなければならないともあります。「指導、助言又は援助」の実務は、教育委員会から選定審議会に委任されるのです。ところで、M県の「教科用図書選定審議会規則」には「審議会に、教科用図書の選定に関する事項を調査するため、調査員をおく。」とあります(沖縄県の規則にもある)。つまり、県の「調査資料」の作成は、実際には県の「調査員」が行っており、各地区における教科書採択の作業は、実はここが出発点であり着地点でもあったのです。しかも、「調査員」は全員現場の教員でした。


 「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令」には、「教科図書の採択に直接の利害関係を有する者は、選定審議会の委員となることができない」とあります。「直接の利害関係を有する者」とはどのような立場の方なのでしょうか。ここで連想されるのはやはり現場の教員なのではないでしょうか。「使い勝手のよい今までと同じ教科書を使いたい」と思う、それこそが利害そのものだと思います。


 玉津教育長は「今後は地域の意見を入れることもやりたい」と述べられ調査員に教員以外の一般人の任命を検討する考えを示されました。これは今必要な改革の精神なのではないでしょうか。今後全県にこの改革の機運が高まることを切に願いたいと思います。