竹富町教科書問題 「共同採択」制度〝崩壊〟 東書版「寄贈」で決着  無償給与 例外は全国初

公民教科書の寄贈を受ける方針を決めた竹富町教育委員会の臨時会=22日午後、石垣港離島ターミナル
公民教科書の寄贈を受ける方針を決めた竹富町教育委員会の臨時会=22日午後、石垣港離島ターミナル

 竹富町教育委員会(竹盛洋一委員長)は22日、臨時会を石垣港離島ターミナルで開き、国が町に無償給与しない方針を示している東京書籍の中学校公民教科書について、一般人から現物寄贈を受けて生徒に配布する方針を決めた。昨年から迷走が続いた公民教科書問題は、石垣市、与那国町が育鵬社版を採択する一方、竹富町が東京書籍版の採択を貫くことで最終決着する。文科省によると、教科書の無償給与が受けられない自治体が出るのは全国で初めて。

 

 

 臨時会で竹盛委員長は「あくまで無償給与を受けるまでの暫定措置として教科書を頂く」と述べ、今後も東京書籍版の無償給与を訴える考えを示した。


 慶田盛安三教育長は、東京書籍版を採択した昨年9月8日の全教育委員による協議が有効だという考えを改めて示した上で「教科書の公費負担はしない。結論は、篤志家の支援を受けるということ」と述べ、現物寄贈を受け付けたい考えを示した。委員から異論は出なかった。


 町教委事務局は、現物寄贈や現金寄付をしたいという問い合わせが「電話で多々ある」と報告した。ただ、現金の寄付を受けると町の公金として支出することになるため「現金の授受は行なわない」とした。


 臨時会終了後、慶田盛教育長は「公費を使えば簡単に済むが、何のため無償を求め続けてきたのかということになる。4月から新学期も始まるし、いくら大人の論理を言い張っても、教科書が子どもに届かなくては何のためか分からない」と説明した。


 東京書籍版は1冊736円のため、町内の全生徒に必要な購入金額は約1万5000円。

 

 

 「方針通り東京書籍版を採択する。寄贈の話が出て、多くの方々の激励や協力の声が広がっている」(委員)。

 

 教科書問題が議題になった22日の竹富町教育委員会臨時会。5人の委員は、一様に思いつめたような表情を崩さなかった。東京書籍版を最後まで貫くことを決めた瞬間だった。

 

 信念を通したという点では一種の美談だが、法律的には大きな問題も残した。八重山地区内では協議して同一の教科書を採択するという「共同採択制度」の事実上の崩壊を意味したからだ。

 

 共同採択制度は、教科書の無償給与を受けるための条件として、教科書無償措置法で定められている。現行法が改正されない限り、八重山では「教科書無償措置法に反する状態」(文科省)が来年度から4年間続く。

 

 八重山地区では、採択教科書は採択地区協議会で選定するという明文化されたルールがある。協議会は昨年8月23日、育鵬社版を選定した。

 

 これに対し昨年9月8日に開かれた3市町の全教育委員による協議では、多数決で新たなルールを作り、東京書籍版の採択を決めた。いずれの結論が有効か、現在まで当事者の見解は分かれる。

 

 文科省は「育鵬社版の選定が有効」としながら、採択権は各教委にあるため、竹富町に採択を強制できないとする見解。東京書籍版の採択を変えない場合は自費購入するよう求めてきた。町教委は無償給与を求める建て前上、自費購入を拒否した。

 

 ただ、文科省が自費購入と引き換えに独自の教科書採択を容認した時点で、すでに共同採択制度は崩壊に向かったと言える。今後、「全国で竹富町のような事例が広がる」(崎原用能与那国町教育長)という懸念の声が出ている。

 

 町教委によると、一般人からすでに寄贈の申し出が寄せられており、新学期が始まる4月に「子どもの手に教科書が届かない」という事態は避けられる見通し。しかし、法律上の根拠がない寄贈に頼り続けることの当否も問われそうだ。

 

 教科書問題を受け、共同採択制度を見直し、自治体ごとの教科書採択を認めるべきだという声も出始めている。文科省の担当者は「制度の見直しは将来的な課題。各地の現状を見ながら検討する」としている。      (仲新城誠)