明和の大津波痕跡巡りに参加して⑤ ~石垣市の防災計画にみる想定内の津波について~ 本紙論説委員 徳松信男

▼津波防災のためになすべきこと
 6月24日の津波痕跡めぐりに続いて7月23日には八重山明和大津波研究会の主催の講演会が健康福祉センターで行われた。講師の後藤和久先生(千葉工大)の説明は明快で、島袋永夫氏、正木譲氏、島袋綾野研究員のご助力で質疑応答共に充実した講演会となった。何より講義室に入りきれないほどの聴衆で市民の津波に対する関心の高まりを感じた。講演では主に明和の大津波の遡上高の議論に多くの時間が割かれた、GPS測定では白保地区では最大30メートルと報告した。もっとも留意すべきことは石垣島では150~400年周期で大地震が起きており先島地震津波の常襲地帯であるということであった。また埋立地の地盤強度なども問題になった。


 さて八重山での大津波の可能性は1000年に一度と言われた東日本大震災より確率が高いことになる。もういつ起きるかもしれないという危機感がなければならない。東海地震の危機意識の強い静岡県で東海地震の発生による津波による死者は400~1400人である(内閣府防災情報ページ)。 

 

 また県内の人的被害は死者5851人でその内津波による死者は227人という想定もある。(静岡県防災センター) 人口370万人の静岡県での5851人の死者は5万人あたりにすれば、79・1人である。これに対し人口5万人の石垣市で、南方沖地震津波による想定死者数2932人がいかに深刻な被害想定であるかがわかる。


 石垣市の災害に強い街づくりは喫緊の課題であろう。最近でも本紙で桃原用氏が、また八重山毎日新聞紙上で破名城英介氏や田島信洋氏が防災の観点からの街づくりに警鐘を鳴らしている。市役所、博物館、病院、小学校、幼稚園、保育所などの20メートル以上の高台への移転などは確かに重要なことであろう。市役所など公共施設の移転については市の空洞化、市民生活での不便さや市の発展の見地から反対する方も多いであろう。市の発展とのバランスを考えた移転先を議論するべきである。市の重要情報、文書のコピーなどは姉妹都市などと協力して共同で保管するのも大事である。


 幼稚園や保育所の移転は困難ではないが小学校の移転などは容易ではないだろう。もっとも危険と思われるところは移転、津波タワーや避難ビルが合理的であると判断されたらそれも考慮すべきであろう。


 石垣島東方沖、南方沖地震の場合には島の北部地域で3分市街地でも7分程度で津波が到達するといわれている。指定されている避難地まで子供や高齢者はとても逃げきれないであろう。それに高台に移転したから絶対安全というものでもない。子供たちが学校や幼稚園などにいる時間は年間通じてみれば生活時間の4分の一から五分の一程度であり、学校にいるときに限り地震が起きるものでもない。子供のいる家庭は高台や高層住宅に移り住むほうがより合理的といえる。

 

▼現空港の活用は緊急時、災害時にも重要である
 高台移転というと海抜24メートルの現空港跡地を考える方も多いがそれより、現空港より高台の農振地域の一部解除するとか、市内の耕作放棄地(破名城氏によれば226Ha)の活用を先に考えたほうが合理的である。新石垣空港は海抜30メートルにあるが海岸に極めて近く明和の大津波級の東方沖津波地震の時には被災地になると考えられている。東北大震災で仙台空港は津波が押し寄せて破壊された。


 補助滑走路があったがそれでも全面復旧までに33日もかかっている。仙台の場合は本土他府県から陸路で救援物資が運べたのでいいが、石垣市の場合は空港が使えなくなれば完全に孤島となって孤立してしまう。


 明和の大津波でも助かった場所にある現空港は何より市街地に近く、時間的、経済的に有利なところにある。傷病者の搬送、食料やその他の資材の輸送など緊急時に威力を発揮する貴重な空港になるであろう。平素は観光用の遊覧空港、航空学校、セスナなどの個人飛行機基地、ドクタープレーン、離島空路用などいくらでも有効活用が可能である。石垣市では新空港の位置決定に24年位も要している。如何に空港建設が困難で空港が貴重な資産であるかがわかる。


 何より市民の防災教育が重要であろうと思う。そのためにいくつか提案したい。
 第一に学校や公共機関、会社、町内会などでの防災訓練を徹底して行うことである。次に明和の大津波の教訓を生かすために毎年4月24日におこなわれる慰霊祭には、市内の小、中、高の多くの児童、生徒が参加できるようにすることである。


 (毎年でなくても、学年別にしてもいい) 今年私も参加したが感動的なものであった。今年は3人の小、中、高の生徒代表が参加して作文朗読と献花をした。


 最後に6月24日に行われた明和の大津波痕跡めぐりを毎年行うことを推奨したい。最初に市会議員諸氏はじめ、関心ある一般市民を対象に見学ツアーを行ったらいい。将来的には今回のスタッフのような学者、研究者、民謡を三線で弾き歌う人がいれば津波学習が観光ツアーとして石垣市の有意義な企画となると確信している。(おわり)