本当の意味での「観光立市」を目指すために③ 本紙論説委員 辻 維周

 八重山を訪れる多くの観光客は八重山も「沖縄」であるとひとくくりにしてしまう。しかし「沖縄」と「八重山」とは生態系も文化も相当違っていることを予習してくる観光客はほとんどいないと言っていいだろう。ではなぜ本島から高い航空運賃を支払ってまで八重山に来るのだろうか。何人かの観光客にインタビューしてみたところ、「きれいな海と未開発の自然」という答えが返って来た。ところが「ヤンバルクイナはどこで見られるのか」とか「イリオモテヤマネコは石垣でも見られるのか」と言った、信じられないような回答もあった。つまり観光客の多くはヤンバルクイナやイリオモテヤマネコの生息域すら知らずに石垣にやってくるのである。さらに残念なことにカンムリワシを知っている観光客は百人中一人と、はなはだ情けない現状が浮き彫りにされてしまった。


 これはひとえに行政のPR不足であると言っても過言ではないであろう。今この八重山に必要なものは「どこにでもあるような」ゴルフ場ではなく、「ここにしかない」自然である。せっかくカンムリワシやキシノウエトカゲと言った国の天然記念物がこの石垣に生息しているのであるから、ガイドブックに「石垣の貴重な生物たち」というページを設けてもらい、その保護育成に協力を呼び掛けることが急務であると考える。


 また文化面でも石垣の観光施設で「琉装体験」や「エイサー体験」を行っているところもあるが、両者とも八重山のものではなく「沖縄」のものである。これではせっかく八重山に来ても沖縄との差別化は図ることができないし、内地~沖縄の運賃に二万から五万も上乗せをさせて、わざわざ来てくれた観光客に申し訳ない。文化はその土地に根付いている者が継承してゆくことは当然であるが、それを外来者に発信し、理解してもらう事も大切なことである。その視点に立ってみると那覇で体験できる琉装やエイサーではなく、八重山でしかできない八重山の民俗衣装を着用した上でのトゥバラーマ教室のようなものを開催する事も、島の文化を継承する上において大切なことではないだろうか。


 今まで書いてきた「観光」の本当の意味とは何かを知っている人は少ないはずである。それは中国の易経と言う書物にある、「観国之光(国の光を観る)」から取られており、「光」とは「宝」の意味である。ここ八重山の「宝」は何なのかを今一度立ち止まって考えていただきたい。


 自然も文化も原点にかえってこそ、その真の意味が見いだせることにそろそろ気づく必要があるだろう。そうでなければ、八重山郡民を琉球王朝の重税から救おうと、西暦1500年にオヤケアカハチが起こした、「オヤケアカハチホンガワラの乱」が無駄になってしまうのである。ウイングキッズリーダーズの演じる、「オヤケアカハチ太陽の乱」のテーマとなっている「道標」の意味を考えてみれば、おのずと八重山の進む道が見えてくるように思える。(首都大学東京大学院 観光科学領域 講師)