本当の意味での「観光立市」を目指すために⑤ 辻 維周

 以前にも書いたが、「観光」という言葉は易経にある「観国之光」から取られたものである。この「光」とは「宝」の意味でつかわれているが、この八重山の「光」とは一体何だろうか。


 ある人は「青い海」であると言い、ある人は「手つかずの原生林やそこに生息する様々な生物たち」と言うだろう。しかし最近、その「光」が急速に失われてしまっている。原因は傍若無人に走りまわり、貴重な野生動物をひき殺したり、砂浜に乗り入れたりする車であり、下水道未接続地域の汚水であり、豪雨後の赤土流出などである。特に川平湾の海底には厚さ二メートル以上あろうと思われるヘドロ(赤土と珊瑚砂が混ざったシルト状の泥)が堆積し、海底十七メートル付近の透明度はほぼゼロと言ってもよいだろう。


 中山義隆氏が市長になって二カ月ほど経ったある日、市長室で市長に面会し川平湾海底の窮状を訴えた。すると市長は「潜ってこの目で確認してみたい。いつ頃にしましょうか。」とおっしゃるので、「では七月ごろはいかがでしょうか。」と答えたところ、市長は快諾してくださり、全国でもおそらく初めての試みとなった市長自らの潜水視察が実現し、その結果として川平湾再生のための調査もまもなく開始されようとしている。


 また今春には於茂登親水広場が七~八年前に作られたまま、市民にもほとんど知られることなく放置されていると言ったところ、市長は即日視察をし、翌週には当該部署に於茂登親水広場の整備を命じて、この夏は少しずつ市民や観光客が訪れるようになってきた。


 ところがせっかく整備された親水広場の流水は外来種天国となっており、ブルーギルやティラピア、グッピー、カダヤシ、オオヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)などで溢れ返っている。そしてカダヤシ(特定外来生物=採取や飼育は当然のこと、移動も禁じられている)をメダカと思いこんで採取し、持ち帰ってしまう人が後を絶たない。

 

 この親水広場は安全に水遊びができる絶好な場所であるが、逆に外来種を他地域に広めてしまう交易所にもなってしまったのである。本来は於茂登山系の生物多様性を楽しめる場所であるので、従来の生態系を少しでも取り戻すために早急な外来種除去ならびに訪れる人々への注意喚起を促す必要がある。少しでも自然に興味がある人ならば、どこでも見られる外来種など見たいはずはなく、その土地独特の生態系を観察したいものである。外来種天国から本来の生態系を取り戻すことができるようになれば、おのずと観光客は集まって来るのではないだろうか。


 それができるのは、実行力のある中山市長しかいないと思っている。
 ※オオヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)は真っ黒な色をしており、この時点でも毒を持っている。成体になると強い毒を持ち、雑食性で貪欲、天敵もいないため生態系を荒らしまくる。カダヤシは卵ではなく子供を産むために繁殖力が旺盛であり、攻撃性も強く在来種を駆逐してしまう。オオヒキ、カダヤシともに採取したり他の地域に持って行ったりすることは、法律で禁止されている。(本紙論説委員)