本当の意味での「観光立市」を目指すために⑥ 辻 維周

 今年の沖縄県は台風の当たり年と言ってもよいほど、多くの台風に襲われている。特に今まさに沖縄本島を襲っている台風15号は、中心気圧が910ヘクトパスカルまで下がり、最大瞬間風速も70mオーバー(時速換算で約250キロ以上)と、最悪の記録を残そうとしている。


 台風は原則として北緯10度以上の地域かつ水温が27℃以上で発生し、28℃以上で発達してゆくとされている。海は荒れる事によって海水を撹拌し、夏の太陽によって熱せられた水温を下げたり、多くの酸素を取り込んだりしながら生物たちの命を育んでいるので、台風や低気圧は無くてはならないものである。


 しかし近年の温暖化と思われる海水温の上昇(8月26日現在、本島~先島地域で29℃)により、年々大型化、強力化してきている。特に沖縄県は島しょ部であるため、台風のエネルギー源である海に囲まれており、衰弱する前に直撃してしまうケースが多い。これは内地では通常考えられない事であり、観光客は島の台風をついつい甘く見てしまう。

 

 その結果、長時間欠航してしまう飛行機や船舶によって予定が大きく狂ってしまったり、帰れなくなり仕事に支障を来してしまったりすることも多々ある。空港や港は運航再開を待つ旅客で溢れ、いつまでも運航を再開しない事に腹を立てて、職員を怒鳴りつけているシーンにも時々遭遇する。また暴風雨の中でも走り回るレンタカーが後を絶たず、冠水している箇所に突っ込んで、立ち往生している車を私自身が救出したこともある。


 このような事を防止するために、県や市町村は観光客に対して、島の台風は内地の台風とはレベルが違う事をきちんと説明した上で、台風情報を細かく伝える努力が必要である。また航空会社や船会社、旅行会社、宿泊施設は台風がこちらに向かうと予測された時点で、台風の中を来島するリスクを強く訴え、予約客や出発空港のカウンターを訪れる客に対しては、予定変更や旅行中止を勧めるべきであろう。

 

 またレンタカー会社も暴風雨の中を走行する危険性を、貸し渡し前にきちんと説明しなくてはならないのではないだろうか。売りっぱなし、貸しっぱなしをした挙句、客に文句を言われてもそれは仕方がないが、きちんとしたリスク説明を行っていれば、理不尽な文句を言ってくる客に対して毅然とした対応ができるはずである。


 観光客は八重山にとって大切ではあるが、彼らに気を使うあまり肝心な部分を隠してしまうと、現場で応対するスタッフを疲弊させてしまう。我々島民は優秀な現場スタッフもまた「島の宝」であると認識し、大切にしなくてはならないのではないだろうか。(本紙論説委員)