本当の意味での「観光立市」を目指すために⑦ 辻 維周

ヤエヤマハラブチガエルのロードキル死体をくわえて、意気揚々と引き上げるサキシママダラ
ヤエヤマハラブチガエルのロードキル死体をくわえて、意気揚々と引き上げるサキシママダラ

 毎晩八時頃から午前一時頃までロードキル(小動物の交通事故)のパトロールで島を巡回していると、思いがけないシーンと遭遇することがある。半年ほど前の雨上がりの夜中、車に潰されたオオヒキガエルの幼体と、ヤエヤマハラブチガエルの幼体とが並んで落ちていた。

 

 そこにサキシママダラと言うヘビがやって来て、毒のあるオオヒキガエルには目もくれず、無毒のハラブチガエルの死体を道路からひきはがして飲み込み、実に得意そうに歩道に上がって行った=写真。また、ある冬の日の夜十時半ごろ吉原付近の道路上に、世界で一番小さいリュウキュウコノハズクが蹲っていたので、車から降りて見に行くと、どうやら車と接触して脳震盪を起こしている様子だった。

 

 そこで石垣市環境課の職員に電話をして事情を話すと夜中にもかかわらず駆けつけてくれ、相談した結果、我々が緊急避難として一晩保護して、翌日獣医のところに運ぶことになった。数日後には運よく回復したため放鳥することができた。放鳥と言うとカンムリワシしか知られていないが、実は有名な動物以外でも、獣医はきちんと治療して野生に返していると言う事を知ってほしいものである。


 またある時は天然記念物のキシノウエトカゲが轢かれて死んでいたため、道路から歩道に移動し、教育委員会に運ぶための保護ボックスを手に戻って見ると、ハブがそのトカゲの死体を食べているというきわめて稀な場面に遭遇した。


 もちろんそのように珍しいシーンを見るだけではなく、時には悲惨な現場に遭遇することもある。中でも我々が憤りを感じた二つの事例がある。一つ目はバンナ北口より少し嵩田よりの路上に天然記念物のセマルハコガメが轢かれ、しかもまだ動いている。路上には亀の体内から出てしまった卵が複数個産卵し、豊かな自然があるバンナの路上は修羅場と化していた。このセマルハコガメが轢かれていたのは車線の中央であり、故意に轢かない限り決してこのような事にはなり得ない場所であった。

 

 二つ目は県道79号線の名蔵湾沿いで固有種のヤエヤマイシガメが何台もの車に轢かれてバラバラにされていたため、我々は蛍光ベストを着用して処理を始めた。しかし我々が路上で処理をしているにもかかわらず、レンタカーを含めて速度を落とす車がほとんどいなかった。


 今日も台風の中、一台の公用車が制限速度で走っていた我々を猛然と追い上げてきて、またも平然と追い越し違反までするという現場に遭遇した。前にも書いたように市民の模範となるべき公用車が、このような酷い運転をしている間はロードキルも無くならず、「観光資源」のはずの野生動物の中には人知れず絶滅してゆくものもあるはずである。


 もし全市民が本当に自然は観光資源と考えるなら、路上には野生動物が出てくるものと予測したうえで、安全運転をしていただきたいものである。


 昨年一年間のロードキル件数は我々の調査した範囲内で三六八件、今年はまもなく五百件になろうとしている。なおこの数字にはカエルやカニは含まれていない。