〝慰霊の木〟倒れる 台風被害、遺族ショック 戦争マラリア

防風目的で設置されたネットと共にアカキナノキが倒木した
防風目的で設置されたネットと共にアカキナノキが倒木した

 慰霊の木が倒壊―。3日、石垣市バンナ岳Aゾーンにある八重山戦争マラリア犠牲者慰霊の塔の裏手にあるアカキナノキが、根元から折れ、網の囲いとともに倒れているのが確認された。幹には何かに擦られた跡が残り、痛々しい姿となっていた。11年間生育してきた木だった。台風17号の襲来は9月28日で、5日間気づかれなかったことになる。


 八重山戦争マラリア遺族会会長の篠原武夫氏は、「植えたアカキナノキ17本(後に3本追加)が、ほとんど枯れた中、奇跡的に花を咲かせ、実もつけた貴重な木。路地で生育する木は日本にこの一本しかないのに、沖縄県はこれを守れないのは、実に情けない」と、激しく憤っていた。


 沖縄県福祉援護課は、「アカキナノキが台風で倒れたという連絡は受けていない。慰霊塔の清掃はこちらだが、管理は平和・男女参画課が担っている」と述べた。


 県の財産ではないことから、管理部署がどこかは不明確なままで、どこも対応していないようだ。植物に詳しい西表島の林木育種センターの尾坂尚紀(27)係員は「キナノキは生命力が強く挿し木などに向いており、折れた木があるなら、早い時期、挿し木にすれば、復活はある」と述べていた。


 路地のアカキナノキは、日本では一本しかない樹木だ。造園会社に樹木医の資格もつ人もおり、資格所有者管理を任せる手もある。 2001年6月23日に八重山戦争マラリアで犠牲となった御霊を慰めるため、マラリア特効薬キニーネの原料であるアカキナノキ17本を遺族会が植栽。これがあれば助かったかもしれないとの思いで、太平洋戦争終結56年目の慰霊の日に植樹祭で植えられた。


 塩害で次々に枯れた中、最後の一本が2009年に突如開花。実をつけて遺族を喜ばせた。同遺族会から県へアカキナノキの保護の要請があり、昨年、黒い網で塩害から守るための囲いを設置した。