伝統と文化 辻 維周

 先日、八重山古典民謡の大功労者である大濱安伴師の生誕100周年顕彰碑除幕式と、川平の結願祭に参加して来た。


 大濱安伴師は復帰より前の昭和41年に、各島バラバラであった八重山古典民謡を、何とか形にして八重山に残しておきたいと思い、工工四を考案、発刊したという。もし安伴師の存在がなかったとしたら、八重山の民謡が現在まできちんとした形で残っていなかった可能性もある。観光客は琉球民謡も八重山民謡も、ひとかたまりのものとして見ているようであるが、実際は琉球民謡の力強さとは全く違った、しっとりとした節回しが聴く人の心を魅了する。


 また石垣の中でも古い歴史を持つ川平の結願祭では、伝統的な棒や、約500年の歴史を持つという獅子舞が奉納されたが、その獅子舞では当初から使われ続けていた由緒ある獅子頭が老朽化したために新調されることが決まり、最後のお披露目となった。この川平の獅子舞は他地域よりも浄めの意味合いが強く、非常に厳かな空気を感じることができた。さらにこの獅子頭は顎を外側から手で支えるという、非常に古い形式をとっているが、この形式がかえって見るものに新鮮な驚きを与えてくれる。


 現代は伝統文化や伝統芸能を軽んじ、新しい形に流れてゆく傾向があるが、やはり人の営みは「歴史」の上に成り立っているものであるので、新旧の共存が必要であろう。そしてそれをきちんとした形で全国に広く知ってもらうという試みも大切なのではないだろうか。八重山の民謡居酒屋で琉球民謡だけを演奏することは、自らの伝統文化を否定していることになるということを、観光に携わる人々は肝に銘じておく必要がある。(本紙論説委員)