石原都知事の突然の辞職 山下 勇

 東京都知事の石原氏が突然辞職し、新党の代表者になると報じられ、ご本人の記者会見も部分的ではあるが視ることが出来た。


 石垣市にある尖閣諸島を、都有地にするという構想を発表して実現向け努力されていたので、この彼の動向には、関心を持たざるを得ない。


 言うまでもなく、いま日本と中国との関係が悪化しているのは、石原都知事の構想に端を発している。その構想には、尖閣の武装も含まれていたので、これを阻むために急速政府が国有地化した、といわれているが、それがさらに火に油を注ぐ結果になり、連日、中国の公用船が尖閣の周囲を航行し、日本の領有に圧力を加えている。


 石原氏が今回の会見で行なった発言によって、彼がどのような国際政治思想を持っているかが明らかになった。オリンピックの誘致に、三度も立候補しているのに、原爆によって漸く終結した、第二次世界大戦のサンフランシスコ講和条約を、否定するというのは、驚くべきことである。日本はこの講和条約によって国際社会に復帰したのであるから、これが敗戦後の日本の原点である。そこから東京オリンピックが開かれ、再びオリンピックの開催に立候補することもできるのであるから、諸国との友好を否定するのは、矛盾もはなはだしい。


 この支離滅裂な国際感覚から出た中国への敵対的な姿勢のために、中国からの観光客は激減し、銀座、秋葉原などの売り上げ不振は、深刻な状況と伝えられる。


 しかし観光収入の減少は、瑣末とも言ってよいほどに日本経済にとって中国が占める大きさは非常に大きい。それはいまや、アメリカも上回ると言う。
 そのアメリカも、またヨーロッパ諸国も、ロシアも、将来に亘っての中国との関係を、いかに太く強いものにするかを、国家の重要課題にして懸命になっており、各国の首脳が次々と中国を訪問し、関係を密にしている。


 その成果は、今後数十年にわたって、世界経済における諸国の前途を決定すると言われているほど、中国の存在は大きなものになっている。


 もちろん中国は、軍事的にも大国となっており、その圧力は東アジア諸国の外交に大きな影響を与えている。それが軍事的に諸国を支配するものとなるとすれば、世界の平和に大きな脅威になるであろう。昨今の米国の動きは、それを意識したものであるに違いない。


 とは言え、米国は中国との経済関係で、もはや敵対は不可能にまでなっており、平和的な競争関係を確かなものにすることが追及されている。アメリカは日本が中国と事を構えることを、許すことはないであろう。


 そのような国際状況のなかで、終りの無い日中対立を続けることがいかに愚かなことかは、言うまでもない。


 オリンピック誘致の旗を振りかざしていたのに、任期半ばでそれを放り出し、衆議院議員に復帰してタカ派の第3極勢力を構築する姿勢を見せている石原氏は、いま掲げている憲法否認を始めとする過激な政治課題を、放り出さないで完遂する覚悟があるのか甚だ疑問である。


 政治家としての責任感が問われるが、もし目論見どおりタカ派勢力が支配勢力になると、何と言っても最大の問題は、日本経済の今後をどうするかである。中国との関係を修復できない日本が停滞する間に、諸先進国は中国経済における自国の地位を拡大し、固めるに違いない。


 これに対して、軍事力で対抗する、というのが昨今右傾化の著しい保守政治家の姿勢であるが、それがこのグローバリズム経済の世界に、通用する政策ではないことは誰の目にも明らかである。


 八重山の経済においても、中国、台湾との友好が続いてこそ、繁栄があるのであることを、再確認することが求められている。(石垣市石垣)