石垣市台湾訪問団の「漁業権めぐり日台交流」の危うさ 徳松 信男

 11月14日(水)付八重山日報、また八重山毎日新聞でも石垣市からの台湾訪問団11人の一行の出発式の様子が両紙とも第一面に定期便就航要請と日台間の漁業権交渉の環境づくりという目標を伝えている。同日の日報の4面には早くも「漁業権めぐり日台交流、尖閣諸島領海侵入漁民と市長ら意見交換継続へ」の大見出しの記事が踊っている。

 

 そして宜蘭県蘇澳区漁会で意見交換会終了後に手をつなぐ中山市長と、同漁会の陳春生理事長が日台の国旗をおいたテーブルでにこやかに手をつないでいる。陳理事長は9月に中国漁船団が尖閣諸島沖の日本領海に侵入した際に、一方で漁業権保護を訴えるために同漁会が漁船団を組織して、陳氏が率いて領海侵入を行ったという。

 

 この記事を見て異様に感じたのは私だけではないので一筆書いたのである。蘇澳鎮の首長か宜蘭県の首長が相手なら話はわかりやすい、しかし領海侵入をした不法者と石垣市長が対等であるはずがない。


 さらに陳氏が「領有権争いと言う政治的問題により蘇澳と石垣の友好が損なわれてはならない。争いを棚上げにして資源を共有できるようにして欲しい」と挨拶したに対して中山石垣市長は「信頼関係を基に意見交換を重ねれば必ず問題は解決できると信じている」と応じている。

 

 尖閣諸島の領有権については日本領であることは国際的に確定していて領有権問題は存在しないと言うのが日本政府の公式の立場である。この問題で市長が意見交換を重ねることは出来ないのである。ここで陳氏は領海侵犯をしたことで八重山に多大の迷惑をかけたことに対し一言の侘びもないばかりか領有権の棚上げ論と資源の共有を求めている。

 

 中山石垣市長は、「尖閣諸島は私の町内である石垣市登野城に所属している。今後わが石垣市の領域である尖閣諸島の領海内に侵入しないように」と毅然たる態度で抗議すべきであった。その上で尖閣の領有権は日本にあるが漁業権の問題については別途話し合いをかさねたい、と応じるべきであったろう。

 

 今尖閣問題が争われるようになった経緯で中国の鄧小平が1978年に記者会見の席で尖閣の領有権棚上げ論を述べた。これに対して日本側は友好関係を重視して特に強力な反論をしていない。このことが後々禍根を残すことになったのである。国際社会では特に反論しなければ黙認したと受け取られるのだ。台湾の陳春生氏は老獪なしたたか者であろう。石垣市はそうした海千山千の連中を相手に市益を超えた国益に関わる問題を話し合えるであろうか。多くの市民がこの危うさを憂慮しているに違いないのである。