唐人墓に関する対応について㊦ 八重山歴史研究会

 もう1つ例を挙げますと、刊行物に関することです。田島氏は、「誤った記載の刊行物が多いから、行政が指導して改めさせるべき」と主張しています。さて、当会でも、会誌を発刊しています。読者の皆さまの中にも、様々な形で出版に関わった方もいらっしゃるでしょう。

 

 もしも、掲載された内容について、行政から、「この部分は誤りだから書き直せ」と指示されたら、どうしますか? 出版には多額のお金がかかります。正誤表程度で済むのならまだしも、冊子の根幹を揺るがすような誤りでない限り、簡単に改訂版は出せません。

 

 それでも、「必ず指示した文章に直せ」というのであれば、出版の自由を主張し、再版・改訂にかかる編集費用及び印刷費用の負担を行政側に要求します。改訂の目途が立たず、絶版にしなくてはならないのなら、在庫処理費用も要求します。民間企業なら、さらにシビアでしょう。

 

 なぜならば、日本国憲法第21条第2項前段に象徴されるように、一部の例外を除き、行政にも、出版の自由を認められた刊行物の内容をチェックして、書き直しを求める権利はないからです。

 

 もちろん、義務もありません。そして、法に基づいて業務をしているわけですから、行政側は、越権行為によって生じるリスクを、重々承知しているはずです。それで、石垣市からは「行政の立場では言えない」とした回答もあったと思いますが、田島氏は、その法的根拠をもった行政の対応でさえ認めません。

 

 なお、余談ではありますが、当研究会員の得能氏の発言についても、故意に発言の一部のみを切り取って批判しています。石垣市の職員になる前に民間の大手出版社勤務だった彼は、このリスクを身を持って知っていました。「記事の内容にまで行政が口を挟めるものではなく、個々の出版社の対応に任せるしかない」、という流れでの発言が、「元行政職員の無責任な暴言」のように、繰り返し責め続けられているのです。


 このことに関連いたしまして、内容に、研究そのものへの評価ではなく、特定人物の人格や名誉、団体の名誉を傷つける表現が含まれていたのに、その部分を編集することなく掲載した八重山日報社の内部では、「細かな文言のチェックや、事実確認をするという意見が出なかったのか」と、悲しく思います。私たちの研究会と所属する会員は、ここに至る経緯を一切無視した、一方的な主張の掲載により、読者にあらぬ誤解をされてしまいました。


 田島氏の要望書の中身に踏み込んだ内容ではありませんでしたが、ここまでお読みいただいた皆さまには、当研究会が、この問題について、あえてコメントしてこなかった理由がご理解いただけたのではないかと思います。


 以上を踏まえた上で、ご提案させていただきます。


 管見ではありますが、図書館等の検索で田島氏の「論文」を探しましたが、学会誌等への投稿はないように思います。本気で「専門家の意見」を求めているのであれば、学会誌へ投稿してみてはいかがでしょうか。特に、査読付(レフェリー制)のものであれば、なお、良いと思います。それは、掲載前に原稿はくまなくチェックされ、場合によっては、添削されたり、掲載拒否として返却されるなど、確実に意見をいただけるからです。


 2冊もあるせっかくの著書ですが、残念ながら、論文・論集という体裁ではなく、一般書としての扱いになっていると思います。つまり、田島氏は、研究者レベルでの議論を望まれているにも関わらず、未だ、実際に研究者が議論を交わすための「論文」がないのです。

 

 ぜひこの機会に、一般書籍や地域限定の新聞という媒体ではなく、論文という形で学会に発表なさって、まずは、専門家たちが議論できるステージに、ご自身の考えを乗せてください。一般的な学会・研究者の考え方では、専門誌に発表した上で反論がなければ、その時に初めて、ひとつの学説と認められます。換言すれば、本を出版したからと言って、田島氏が求めている「必ず読んで、必ず感想を述べる義務」は、誰も負っていません。


 長文となってしまいましたが、今回は、当研究会の立場をお知らせするために、投稿させていただきました。田島氏の投稿の中に数行で書かれた研究会等への批判に、どのようなことが隠れていたのかが、少しでも伝わり、誤解が解けたのなら幸いです。当会はこれまで述べてきたような経緯から、この問題に積極的には関わらないことを、会員の総意として決めました。他の個人・団体のお考えとは異なる部分もあるかもしれませんが、ご了承いただければと思います。


 最後になりますが、私たちは、これからも、研究スタイルを変えるつもりはありません。現在は、楽しみながら、石垣島四ヵ村の家号・屋号調査を実施し、時にはフィールドワークも行っています。「歴史の専門家」などにはこだわらず、敷居を低くして、自由に会を運営し、地域に密着した研究活動を続けていく所存です。


 なお、本文及び当研究会の活動等に対する批判を続けることは、今後、一切お断りいたします。地元新聞2紙の関係者様も、どうか実情を把握し、ご対応くださいますことを切に願います。