本当の意味での「観光立市」を目指すために8 辻 維周

 いよいよ石垣市民待望の新空港開港の年になり、この開港が島の経済再生の起爆剤になると考えている島民が相当数いるはずである。しかし、新空港開港は島民にとっては30年来の悲願であるが、一部の航空マニアを除き、ほとんどの観光客にとっては、今まで空港が無かった島に新しく空港ができるわけではなく、「単に移転するだけ」であると捉えられているということを、知っておかねばならない。つまり島民と観光客の感覚には相当の温度差があり、単に開港すれば、すぐに観光客が激増すると言うわけではない。「八重山観光新春のつどい」で石垣市観光協会会長の宮平康弘氏も発言されたとおり、新空港開港はゴールではなく出発点である。従って、新空港が開港するまで行った血のにじむような努力を、今度は島民全体でしていかなければ、単に空港が遠くなっただけで終わってしまうことになる。


 そのためには「沖縄本島に行けば得られるサービスや自然の美しさ」ではなく、「八重山にしかない(できない)サービスや自然の美しさ」を持つ必要があり、また、そうでなくては、わざわざ石垣にまで足を延ばしてくれるはずもなく、いつまでたっても本島止まりとなってしまう。それは宿泊・観光施設のサービス然り、自然然りである。


 例えば節分の企画として、市販の鬼の面を買ってきて、ホテルにチェックインする家族連れに、それを配ったとしよう。しかしそれを喜ぶ客がどれほどいるだろうか。おそらくゴミにはなっても、喜ぶ客などほとんどいないはずである。観光客は、ありきたりのものではなく、八重山でなくては、また、そのホテルでなくては受けられないサービスを望んでいる。要は宿泊施設に限らず全ての観光施設が、常に客の立場に立った八重山ならではのサービスを企画して行き、同時に豊かな自然をアピールして行かなければ、独自の魅力がある観光地にはなり得ないということである。


 そのためには、石垣に来る観光客が何を求めているのかを正確に把握する努力と、それを満たすための高い企画力とが必要になってくる。思い付きの企画は通用しない。最近の観光客は、団体・個人を問わず、非常に眼が肥えているため、ありきたりなものでは、到底満足しないからである。


 また、お世辞にもいいとはいえない交通マナーは、早急に改善されなくてはならない。日常的に行われている追い越し禁止区間における追い越し違反、一時停止無視、ながら運転、ペットや子供を膝に乗せたままでの危険運転など、枚挙にいとまがないほどである。石垣島マラソンやトライアスロンの練習をする人が多数道路を走っている上に、新空港開港によって交通量が増加することも予想される中で、そのような運転を続けて行くならば、死亡事故も増加することは明白であるので、警察当局にも取り締まりの強化をお願いしたい。観光客の多くは「のんびりとした島時間」を望んでくる。そのような観光客に対して、全島民が温かい気持ちで彼らを迎え、ニーズにこたえて行かない限り、ハード面ばかり充実して行っても、魅力的な観光地にはなり得ないということを理解しておく必要があろう。(首都大学東京 大学院 観光科学領域講師)