LCC参入① 辻 維周

 新石垣空港にもLCC(ローコストキャリア)であるピーチアビエーションの参入が決まり、航空運賃の低減によって島民の移動が楽になったり、観光客の増加が見込めたりと、いいことずくめのように見える。しかし安いには安いなりのリスクがつきものであるということを忘れると、相当に困惑する事もある。つまりLCCは従来の大手航空会社(LCCに対してFSC=フルサービスキャリアと言う)とは対極にある航空会社だと言うことを、利用者はまず理解しておかねばならない。また搭乗日によっては必ずしも大手より大幅に安くなるとも限らない。


 LCCにはいわゆる「乗り継ぎ」という概念はなく、あくまでも「A地点とB地点とを結ぶ直行便」という考え方に基づいている。一例をあげると関空~石垣のピーチ直行便が満席だったため、関空~沖縄~石垣とピーチを乗り継いだとしよう。大手航空会社の場合には「乗り継ぎ割引」が設定されており、機内預け荷物もスルーチェックインができるため、関空で預ければ、たとえ那覇で乗り継ぎになったとしても、荷物は最終目的地で引き取れば済む。しかしLCCの場合には、たとえ同一航空会社に乗り継ぐ場合であっても、那覇で一度荷物を引き取り、再びカウンターで荷物を預けなくてはならない。さらに格安運賃の場合には、1個手荷物を預けると1050円の手荷物料金が徴収されるが、このルートをたどった場合には関空で1050円、那覇でも1050円が徴収される。また座席指定をする場合にも、指定する座席によって400円~840円の手数料が徴収され、決済も原則としてクレジットカードが基本で、1区間ごとに決済手数料が315円徴収される。


 例えばピーチの沖縄~石垣便が飛び始める9月13日に、関空~那覇~新石垣を荷物1個預けて、最前列のシートを指定して飛ぶ事にしたとしよう。利用者はまずピーチのWEBページを開き、第一区間である関空~沖縄線の搭乗便(MM213便)を探し出して一つ一つ項目を埋めて行く。予約完了後はその場でクレジットカード決済し、再び同じ手順を繰り返して第二区間の沖縄~新石垣便を予約しなくてはならない。そして運賃+料金は関空~沖縄(運賃¥7590+空港利用料・税金¥400+座席指定¥840+荷物預け¥1050+カード決済手数料¥315=¥10195)、沖縄~新石垣(運賃¥6390+税金¥0+座席指定¥840+荷物預け¥1050+カード決済手数料¥315=¥8595)で、合計¥18790を支払うことになる(1月22日現在)。(関空~新石垣直行便はすべて込みで¥13780)


 一方同じ区間で大手航空会社の28日前まで発売されている乗り継ぎ割引を利用したとすると、多少の増減はあるにしても、大まかなところ関空~沖縄¥12600+沖縄~新石垣¥8500=¥21100(直行便は¥22000前後)となる。このように乗り継ぎの場合には大手のほうが約¥2000程度高くはなるが、仮に搭乗便が遅延して、乗り継ぎ便に乗れなかった場合でも、自社便もしくは他社便への振り替えがある。運悪く最終便であったとしても、宿泊の手配まで行ってくれる。


 ところがLCCの場合には、自社便にのみ振り替え可能という規定があるため、関空~那覇が大幅に遅延した時、那覇~石垣のように1日1便しか飛ばない路線の場合には、原則として他社便を改めて買い直すか、自腹での宿泊を余儀なくされてしまう。LCCを利用する場合には、①遅延はつきものと割り切る②多くが「自己責任」③出来る限り乗り継ぎは避け、直行便を使う④利用者が航空会社の規則に合わせるというように、客自身の意識改革を図る必要がある。図らずも記者会見でピーチの社長が発言していた、「旅客機の電車化」とはそういうことである。


 今後は石垣でもLCC顧客と大手顧客との「住み分け」が明確になるだろう。LCCに関して言うならばそれなりのリスクはあるものの、格安で搭乗できるため、今まで価格面で石垣旅行に踏み切れなかった人々にとっては福音であり、石垣にとってもその部分の客がプラスオンされると考えればよい。


 一方大手は運賃が高い分、リスクを覚悟する必要もなく安心して搭乗することができる。つまり客層が全く違うため、大手の顧客がLCCに流出することは、あまり考えなくてもよいはずである(初めは物珍しさから、LCCを利用してみる顧客もいるかもしれないが)。


 以上の事からLCCはより安く、より安全に、そして大手2社は誇りを持って自分の道を進んで行って頂きたいと切に望む次第である。