本当の意味での「観光立市」を目指すために⑪ 辻 維周

 いよいよ新石垣空港開港まで秒読みに入った。そして全日空が念願の中型機ボーイング767―300(270人乗り、プレミアムクラス付き)を、JTAが懐かしい南西航空塗装のボーイング737―400を復刻運航することになり、さらにLCCの中では一番定評のあるピーチアビエーションも就航することになり、巷では観光客100万人も夢ではないと言う声まで聞かれるようになった。一方で観光客数が激増すると言うことは、それだけ秩序を乱す輩も入り込んでくると言うことを忘れてはならない。


 先日も、とある有名な牧場の売店に仕事で行ったところ、10人ほどの若者のグループが入って来た。ところが、その中の数人が水着のような半裸スタイルをしていたのである。確かにその日は最高気温が28度になるという夏日ではあったが、夏でもなければ、海水浴場でもない場所にそのような格好で入り込んでくる神経には呆然とした。


 確かに今までも非常識な観光客は少なからずいたのだが、航空運賃が安くなり、敷居が低くなると、そのような観光客の割合も上がり、島が荒れてしまうことはほぼ確実であろう。


 いい例がグアムである。グアムは石垣とほぼ同じ広さの島であるが、低価格ツアーのせいか、年間の観光客数は100万人に届く勢いである。しかし日本人観光客御用達のホテルロードと言われるタモン付近(先日痛ましい事件があった場所)には、面妖な格好をした日本人の若者が闊歩したり座り込んだりして、ローカルたちの顰蹙を買っていることは、イメージダウンになると言うことからか、あまり報じられない。さらに土地も高騰し、20年前のグアムでは想像もできなかった価格で売買されている。


 また急増する観光客に対処しきれず、宿泊施設の質は低下し、サービスホスピタリティーが急落してしまったホテルもある。さらに本来免税の島(グアムは島の大きさが小さいために、アメリカでありながら州にはなっておらず、住民にはアメリカ大統領選の投票権もない。その代償としてフリーポート、つまり免税の島になっている)にもかかわらず、堂々と「免税店」などと看板を掲げている怪しげな店まで出る始末である。


 逆の例としてはタヒチがあげられる。特に首都パペーテから飛行機で1時間ほどのボラボラ島は、世界的なリゾート地として有名であるが、そうなった裏には住民たちが一体となった最高のサービスホスピタリティーがあったからこそである。どこに行っても住民たちの暖かな笑顔があり、治安も抜群。ホテルスタッフのフレンドリーな中にも緊張感あふれる態度、朝食のカヌーサービスやアクティビティ、水上コテージというアコモデーションは当然のこと、ベッドメイク一つにまで、細かい気配りがなされていることを関係者はきちんと勉強しておく必要があろう。


 石垣も国際的なリゾートを目指すのならば、まず宿泊施設を始めとする観光関連の意識改革を図る事である。ある有名ホテルのマネージャークラスと話をした時、「ホテルは公器である」という事すら理解していなかったという事実、そして石垣は田舎だから今のままでいいという言葉には、愕然とさせられた。ちなみに先に述べたタヒチのボラボラ島は、石垣など比べ物にならないほどの田舎である。


 もちろん、すべてのホテルを高級志向に持ってゆく必要はなく、客のニーズに合わせた様々なスタイルのホテルがあっていい。しかし、せっかく経営者が新しい風を入れようと考え、国際的な感覚を持ったスタッフを採用しても、変化を嫌う古参の従業員がいびり出してしまうという実例も多く聞く。このような事が無くならない限り、この島が国際的なリゾート地になることなどあり得ない。


 先ほども書いたとおり、観光客はただ増えればいいというものではなく、質の悪い観光客を放置すれば島が荒れてしまう。一方、質の高い観光地にするためには、質の高い観光客がどれだけリピートしてくれるかにかかっているが、そうなるためには関係諸機関スタッフの意識改革が必須であるということに、関係者はいい加減気付く必要がある。(公立大学法人 首都大学東京 大学院 観光科学領域 非常勤講師)