密猟から島を守れ 辻 維周

日本には屋久島と南西諸島にしか生息しない、チュウダイズアカアオバト=これも採取の対象となっている
日本には屋久島と南西諸島にしか生息しない、チュウダイズアカアオバト=これも採取の対象となっている

 いよいよGWも始まり、島にも多くの観光客が訪れる季節になったが、我々自然公園ふれあい推進員にとっては頭の痛い季節になって来た。それは陸生生物の密猟である。ここで言う密猟とは天然記念物に指定されている蝶や爬虫類などを、勝手に採取して持ち帰ることである。


 八重山では天然記念物に指定されているものだけでも、カンムリワシ(鳥)、リュウキュウキンバト、カラスバト、セマルハコガメ(亀)、キシノウエトカゲ(トカゲ)、アサヒナキマダラセセリ(蝶)、ヨナグニサン(蛾)、コノハチョウ、イシガキニイニイ(蝉)、オカヤドカリなど多岐にわたり、その中でもアサヒナキマダラセセリとイシガキニイニイは出現する期間が非常に短いため希少価値が高く、高額で売れるせいか密猟者たちがこっそりとやってくるのである。


 沖縄県では環境省と市の教育委員会などと協力してGWからパトロールを強化しているが、プロ集団である密猟者たちも、あの手この手で採ってゆく。アサヒナキマダラセセリはアワユキセンダンソウの蜜を吸いに於茂登岳周辺に降りてくるので、車の助手席側から捕虫網を出し、花が咲いている所を一網打尽にして行くケースが多く、こういったケースを阻止するために我々もチェックポイントを通った車両を全てチェックしたり、林道内をくまなく走りまわったりしている。しかしあの広いエリアを限られた人数でパトロールする事には限界があり、相手もその隙を狙ってやってくる。


 また指定物件だけを守ればいいと言うわけではなく、マニアは指定外のサキシマヒラタクワガタの雄やヤエヤママルバネクワガタ、カミキリムシ、キノボリトカゲの類いを生きたままごっそりと採っていく。自分の飼育のために数匹なら許されるだろうが、販売を念頭に置いて、根こそぎ持って行かれると知らぬ間に絶滅していたなどと言うことにもなりかねない。また間違って他地域で逃がされてしまった場合、国内外来種と言うことにもなりその地域の生態系を乱しかねない。さらに指定物件であるセマルハコガメもカニカゴを使って大量に密猟され、販売されるときには外見から産地までを判別する事は困難であるため、タイワンセマルハコガメとして取引されると言う。実際にネットを見てみると、ありとあらゆる八重山の生物が、驚くほどの高値で売買されており、その商魂のたくましさには呆れ返るばかりである。


 西表島が世界自然遺産に登録されるのではないかという話もちらほら聞かれる今日この頃であるが、石垣も早急に動植物採取に対する規制を掛けなければ、この島の自然は密猟者や業者によってボロボロにされてしまい、後に残るのは外来種ばかりと言う最悪の事態になってしまわないとも限らない。


 生き物に興味がない方も、これだけは知っておいていただきたい。「天然記念物は文化財」なのである。
     (桃山学院大学兼任講師)