マグロ好漁場「行けない」 漁業者、トラブル恐れ自粛 日台協定きょう発効

 マグロ好漁場に「行けない」―。日台漁業協定が10日発効するが、八重山のマグロはえ縄船には、石垣島北方のマグロ好漁場への出漁を見合わせる動きが広がっている。協定で台湾漁船の進出が認められたため、はえ縄を切断されたりするトラブルが起こるのを恐れているためだ。「漁獲高の減少は避けられない」という声もあり、水産業への影響が深刻化する可能性がある。

 

 協定では尖閣諸島周辺や石垣島北方、久米島西のマグロ好漁場で、台湾漁船の操業を認めた。


 マグロはえ縄船の船主、上地肇さん(55)は「操業ルールのない中で漁場に行って、トラブルが起こったら引き合わない」と石垣島北方の好漁場では操業しない考えを示す。


 漁業者によると、同海域では従来から台湾漁船が日本漁船の漁具を壊したり、盗んだりするトラブルが多発。7~8年前からは水産庁が取り締まりを強化して台湾漁船を締め出し、漁業者の「安全操業」がようやく確保された経緯がある。


 協定によって、台湾漁船が再び進出する。「昔の二の舞になる」と上地さんは憤る。


 船主の名嘉全正さんも「台湾に海を譲り渡したようなもの」と吐き捨てる。
 第8みちたけ丸の玉城浩行船長(52)は、同海域で一本釣りするため9日午前、出漁した。「はえ縄は仕事ができないので一隻も行っていないが、一本釣りなら操業できるだろう。あの漁場がないと生活できない」と話す。


 台湾漁船の進出については「台湾は船が多いから、漁獲高は目に見えて減るはず。不安はある」と表情を曇らせた。


 水産庁は台湾漁船が協定海域を超えた場合の取り締まり強化、トラブルで漁具が損壊した場合の復旧支援を打ち出している。


 石垣市の岩下幸司農水部長は「漁業者にどういった支援があるのか、最前線の行政として、水産庁と漁業者をしっかりつないでいきたい」と強調した。


 尖閣諸島周辺でも台湾漁船の進出が認められたが、領海外側の接続海域では中国の海洋監視船が連日航行して日本漁船の操業を妨害しており、ただでさえ不穏な空気が漂う。


 八重山の漁業者からは、台湾漁船の操業を支援するため、台湾の海保が姿を現す可能性を懸念する声がある。協定水域を超えて操業する台湾漁船を日本側が拿捕した場合、日本の漁船が報復される恐れも指摘されている。