無謀な琉球独立論 賛同者は歴史に学ぶべき 吉崎 富士夫

 現在、沖縄県の周辺海域、とりわけ尖閣諸島周辺の接続水域と領海に置いて、多数の中国監視船や原子力潜水艦までもが連日のように航行する異様な事態となり、漁業権すら脅かされ、日本全体の安全保障環境も含めて、いままでになくきわめて重大かつ深刻な局面を迎えていると言える。


 そのような中で、あろうことか沖縄県から「琉球民族総合研究学会」なる学術団体が発足し、公然と「琉球独立論」が宣言され、現地賛同者もいることを5月13日の紙面上で知り、正直驚きを禁じ得なかった。歴史上、琉球王国として沖縄が存在したことはだれも異論はないであろうが、現時点で沖縄県として日本の47都道府県の一つであり、しっかりと主権国家としての日本の行政権の中で、政府からの補助金も受け取り、運営が成り立っている地方自治体である事は否定し得ない事実である。


 とりわけ、看過できない重要な点は、財政面の確立も含めて地方自治体として今後の主体性の在り方を考えていく事と、国家の主権を放棄して独立することは似て非なるものであると言うことだ。主権国家として日本国民の生命と安全と財産を護る使命を持つ現時点での日本国の帰属を自ら放棄することは、当然、安全保障における地域の自殺行為と言ってもよいであろう。


 前述の通り、明らかに領土的野心を持っているとしかいいようのない中国からの軍事的圧力が常態化している中で、国家主権の放棄を言うのは無謀な行為でしかない。「独立すれば島が平和になる」は、むしろまったく反対の現実に直面する事は創造に難くない。


 何事も歴史から学ぶべきだが、17日紙面投稿欄にも、中華人民共和国に於けるチベットや新疆ウィグル(元は東トルキスタン)各自治区の歴史の話が紹介されていたが、内モンゴル(元は南モンゴル)自治区も含めて、ほぼ軍事力によって半ば強制的に併合された歴史は否定しがたいものがあり、いまだに全世界で抗議行動が行われている。


 また、東アジア全体に目を向ければ、南沙諸島、西沙諸島等で起きている中国とフィリピンやベトナムとの島嶼部の領有権抗争は、まさに現実に起きていることであり、明日の沖縄の現実ともなり得るのだ。


 中華人民共和国は、その政治体制はご存知の通り、中国共産党という革命政党の一党独裁体制であり、6月4日の天安門事件を批判し、自主憲法(零八憲章)制定を唱えたノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏がいまだに国家転覆の罪で投獄されているような、およそ近代国家の常識である基本的人権を無視した実質的な三権分立が確立していない国と言ってもよい。


 そして、その注視すべき外交方針は、表向きは関係国との「戦略的互恵」という言い方をしているが、その領土的野心を裏付けする考え方は、古くから「戦略的辺疆(せんりゃくてきへんきょう)」と呼び、国際的な国境線とは関係なく軍事的に実効支配できる範囲までを自国の領土とする基本的な考え方にあるからこそ前述のような高圧的行動に出るわけだ。


 このような隣国が存在しているなかでの琉球独立論がいかに無謀であるかは、冷静に考えれば本来は誰にでもわかることであり、それこそ学問領域の自由として、出来れば細々と非現実的な学説としてだけ存在していてもらいたいものだと思う。やはり最後は同じ日本国民として日本政府を信頼し、今後も平和に暮らす多くの心ある沖縄県民の良識を私は信じたいと思う。
     (千葉県市川市)