中国の兵書「孫子」には…

 中国の兵書「孫子」には戦争に勝つための技術が満載されているので、さぞ好戦的な内容だろうと思う人が多いかも知れない。しかし実際には「非戦論」こそ、この書の中心思想だ◆冒頭「戦争は国家の一大事であり、国家、国民の生死と存亡がかかっている。軽々しく考えるべきではない」という戒めから始まる。「戦わずして勝つことが最善」と強調し、戦争に至る前の段階で、敵の戦意をくじけさせるべきだと説く◆こうした老獪(ろうかい)な部分だけは、現在の中国にも受け継がれているようだ。尖閣問題では、中国政府要人が日本への恫喝を繰り返し、尖閣周辺海域では中国公船が「パトロール」と称して圧力をかけている◆この状況に、日本側では早くも尖閣を守る決意がくじけ「平和を守るためなら」と譲歩を言い出す人がいる。地元の八重山でさえ、そんな人は少なくない◆しかし現在の中国と違って「孫子」の非戦論は本物だ。圧巻は次の文章だろう。「政府は怒りのように一時的な感情で戦争を起こすべきではない。やむを得ない状況でなければ、戦ってはいけない。怒りは喜びに変わる日もあろう。しかし滅んだ国はもとに戻らず、死んだ人を生き返らせることはできない」。安易に「戦争」を口にする隣国に、肝に銘じてほしい一文だ。