島の光 辻維周

 新空港が開港してから3カ月が経過したが、観光客は比較的順調に増えており、市内の宿泊施設は満室の事も多くなってきたと聞くが、少し郊外の宿泊施設は苦戦しているところもあると言う。


 ところで、観光客が八重山に来る目的となると、今一つはっきりしないことも多い。「ゆったりとした島時間を満喫したい」と言う割には、せかせかと動きまわり、「豊かな自然を見に来た」と言う割には、島の希少生物について理解している観光客は、ごく稀である。


 つまり「この島の売りは何か」が今一つはっきりしていないために、観光客は観光地と言われる「点」を求めてあちこち動き回るしかなく、道中をゆっくり見ようという気持ちも芽生えない。さらに石垣島を取り上げるテレビ番組も、もったいない事に多くがグルメ番組に終始してしまっている。そのような傾向が強くなると、わずか1回石垣に来ただけでもう満足してしまい、リピートをしなくなってしまう。


 観光客により多くきてもらうためには、リピーターを増やすことであるが、そのために何をすればよいのだろうか。それはまず、島民自身がこの島の魅力を改めて見直してみることだろう。八重山には他にはない奥深い自然があることは理解していても、実際にどのような貴重な生物がどれだけ生息しているのかをきちんと把握している島民はほとんどいないのではないだろうか。と言うより、その自然がある事が当たり前となってしまっており、その貴重さに気づいていないだけなのかもしれない。


 ここ八重山にはトキと同じ、国の特別天然記念物であるカンムリワシ、西表にしかいない国の特別天然記念物イリオモテヤマネコ、国の天然記念物セマルハコガメ、カラスバト、リュウキュウキンバト、キシノウエトカゲ、オカヤドカリ、ナキオカヤドカリ、ムラサキオカヤドカリ、県の天然記念物コノハチョウ、アサヒナキマダラセセリ、石垣市指定のイシガキニイニイなど、天然記念物だけで何と12種類も生息する。これに宮古・八重山だけに生息するヤエヤマイシガメやサキシママダラ、サキシマスジオやサキシマヒラタクワガタなどの昆虫まで加えると、相当な数になっていく。


 国の特別天然記念物が平気で国道を横切ったり、道路に降りていたりするような「市」が他にどれほどあるだろうか。この重要な観光資源となり得る生物多様性を、なぜもっと積極的に本土の観光客や新規の移住者に知らせようとしないのだろう。彼らの多くはカンムリワシの名前すら知らずに来ているのである。


 そのような事をまず島民が理解し、観光客や新規移住者に伝える事によって、点(観光地)と点との移動ではなく、線(道中)を意識した移動を行うようになる。つまり次の点に移動するのみではなく、点と点とをつなぐ「線」の存在を理解するようになるはずである。するとおのずから「どこかで天然記念物が見られるのではないだろうか」という期待から、ゆっくり運転をするようになり、結果、事故や違反も減少する。また、その時目に入った地元の商店や食堂にも足を向けるようになってくる。さらに市街地にある立派な宿泊施設だけではなく、自然の中に建っている小規模な宿泊施設にも「天然記念物に遭えるかもしれないから泊まりたい」と思うようになるのではなかろうか。


 今一度我々島民自身が「島の光」とは何か、考えてみる価値はある。