おもてなしの心 辻 維周

台風7号であらぬ方向を向いた信号機
台風7号であらぬ方向を向いた信号機

 12日に島を襲った台風7号は、先島に甚大な被害を残して大陸方面へと去って行った。台風が来るたびに思うことは、本土に台風が来る時には数日前からマスコミが大騒ぎし始めるにもかかわらず、沖縄に接近してはいても、本土に影響がないと思われる台風の場合には、事前の報道はほとんど無いという状態が今もって続いていると言うことである。


 こちらにやってくる観光客の多くは、まさか先島に向かっている台風があるとは夢にも思っておらず、直前にならないと出発空港の航空会社カウンターでも案内することはないため、石垣空港到着後に台風接近を知り、慌てふためくことになる。


 今回もまったく同じ事が起こっていた。台風通過前日の11日朝、石垣空港で空席待ちをしていた観光客(35)に話を聞くと、「9日に着いて12日まで滞在しようと思っていたが、12日は全便欠航だろうと聞いてあわてて空港にやって来た。東京では台風が接近すると予想されるときには、数日前からニュースや天気予報で言ってくれるのに、今回はほとんど何も言ってくれなかった。もちろん航空会社のカウンターでも何も案内はなかった。だから大したことは無いと思っていたのにこの有様。初石垣だったのに、どこに怒りをぶつけていいのやら。海外ならまだしも、同じ日本なのにこれほど情報量が少ないところがあるとは思ってもいなかった」と困惑していた。


 また大きな台風の後にはしばらく船が入らず、船便が復活するまで店頭から弁当などの食料品が消える事が多いが、やはり観光客はそのような事情をわかるはずもない。


 1997年12月、グアムがスーパータイフーン・PAKA(台風28号)に襲われ、最大瞬間風速107.5mを記録し、3000世帯が半壊もしくは全壊した。その暴風により、グアム国際空港の管制塔のガラスが全損し、管制機器が水をかぶったため空港は3日間閉鎖、当然船も来ることができず、グアムは孤立。食料品もガソリンも底を尽きだした。


 そこでグアム政府は空港再開後も数日間は日本など諸外国からやってくる便に原則として乗客を乗せず、回送便としてグアムまで来させ、折り返し救援フライトとしてグアムから脱出する人のみを乗せると言う思い切ったプランを実施した。そのおかげで生活物資が枯渇せずに済んだ。


 八重山の台風シーズンは始まったばかりである。次回も本土のマスコミに期待することができないのであるから、先島に影響を与えそうな台風が発生したならば、3市町が率先してネット上に台風情報を流した上で、島の台風のすさまじさを本土の人間に示してみてはどうだろう。島のセールスポイントのみならず、台風に遭遇した時の心構えなども一緒に流しておけば、今回のようなクレームも少なくなり、却ってリピーターが増えるのではなかろうか。


 観光客が欲しい情報を、その時その時で的確にキャッチして流す、それも「おもてなし」のひとつであると考える。