〝OMOTENASHI〟 辻 維周

 ある夕方、米原キャンプ場前を通りかかったところ、終バスが出た後のバス停で、バスを待っていた外国人観光客がいた。そこで私は車を止め、行く先を聞いたところ街まで行きたいとのこと。彼に、この時間にはもうバスはないこと、タクシーも呼ばなければ来ないことなどを告げ、自分も街まで帰るので乗せてゆこうと言うと、喜んで乗ってきた。


 彼は4月から半年間、埼玉大学に短期留学しているポーランド人で、石垣には2週間滞在の予定で来たと言う。ただし日本語は片言しか話せず、車内ではお互い不慣れな英語での会話となった。


 石垣の印象を聞いてみると、「自然景観が美しい。ヨーロッパにはない風景なので飽きずに滞在できるし、その自然の中には人工的な建造物もあまりないため、自然好きの自分には堪えられない魅力がある。ヨーロッパの人間はこういった手付かずの自然が好きな人が多いので、これから訪れる人は増えてくると思う。ただ、観光施設ではなかなか英語が通じず困っている。日本一星がきれいな場所だということも、あなたの言葉で初めて知った。滞在中に星を見に行ってみるよ」と言っていた。


 彼は図らずも、①自然の中に人工的な建造物が少ないことが魅力②西洋人はそのような場所が好きなので、今後マーケット展開ができる③観光施設で英語が通じない場所が多い④重要なセールスポイントにもかかわらず外国人向けの発信には、まだ不十分なものがあるという4つのポイントを、外からの目で教えてくれた。


 まず①の手付かずの自然に関しては、宮平康弘石垣市観光交流協会会長が常々言われている、「環境なくして観光なし」の言葉を裏打ちしてくれたものであり、②の西欧人好みの場所という言葉の裏には、近隣諸国のみならず、西欧諸国にもセールスプロモーションがかけられる可能性が残っていることを教えてくれた。③に関してはどこの観光施設かは具体的に教えてくれなかったが、少なくとも空港や離島桟橋などの公共施設だけでなく、ガイドブックに載っているような観光地では、英語対応が可能な人間や案内板、パンフレットなどを設置する必要がある。もはや英語は外国語ではなく、共通語であるという認識を持って対応してゆかないと、海外から来てくださったお客様に申し訳ないという意識が必要であるということを教えてくれた。また④の外国語によるセールスポイントの発信が不十分という部分に関しては、早急に行う必要があろう。


 五輪招致の場で、一躍世界的に脚光を浴びた「OMOTENASHI」は、英訳すると〝Hospitality〟であるが、ニュアンスとして「おもてなし」という言葉には、「ホスピタリティ」という英単語では表現しきれない、日本語だけが持つ奥深い何かが含まれている。


 そこで思い出したのが、東バスの前津文一社長の「私どもでは、市街地~空港の40分間、極力お客様をお立たせすることがないよう、お客様が多い時は続行便・臨時便を出しています。せっかく遠くから来ていただいた方をお立たせすることは失礼になりますから」という一言だった。大都市圏のバスでは考えられないその気配りこそ、「おもてなし」の真髄なのではないだろうか。この気配りが全島に行き渡ったとき、初めて世界的な観光地になり得るのではないだろうか。