非常事態宣言 辻 維周

濡れた衣服をドアに挟み、乾かしながら走るレンタカー。もちろん乗っている人間たちは全員上半身裸か水着だった。彼らには「レンタカーは借り物」、「道路は公共のもの」という意識が無いのだろうか
濡れた衣服をドアに挟み、乾かしながら走るレンタカー。もちろん乗っている人間たちは全員上半身裸か水着だった。彼らには「レンタカーは借り物」、「道路は公共のもの」という意識が無いのだろうか

 危惧していたイリオモテヤマネコの事故が、過去最悪の6件(死亡は5件)となってしまい、環境省はとうとう非常事態宣言まで出す事態になってしまった。ロードキルは住民も観光客も、意識を持たなければ根絶することはできない。しかし残念ながらその意識を持って運転している人は、非常に少ないと言わざるを得ないのが現状である。


 新空港開港以来、観光客はうなぎ上りに増えていると言う。そのおかげで観光産業は潤い、島には活気が戻って来ているように見受けられる。これはこれで結構なことなのではあるが、観光客の分母が増えると、その分、質の悪い観光客も増えてくるのはどこの観光地でも同じこと。


 上半身裸でコンビニに寄る観光客、海で濡れた衣服をドアに挟んで乾かしながら走るレンタカー、タトゥーを見せびらかして歩く若者、ゴミを平気でポイ捨てする者、レンタカーを暴走させて重大事故を起こすもの、人間や天然記念物が道路にいる事など意識せずに、身勝手な追い越し違反や速度違反を日常的に行うもの等々、枚挙にいとまがないほどである。先ほど書いたように、この現象は石垣だけにとどまらず、富士山や三陸海岸など、観光客が急増したところでは、同じ問題が噴出してきている。


 しかし特にLCC就航で敷居が低くなってきた石垣の観光客の質の低下は目を覆わんばかりであり、このまま行くと、本当に島を楽しもうとしている良質の観光客がリピートしなくなる懸念がある。


 さらに島自体のインフラが観光客の急増に追い付かず、ガイドブックや口コミで評判の良いレストランや食堂などは、「客で溢れていて入れない。もう二度と来ない」とか、リピーターや市民からは「以前の味とは全く違ってしまい、まずくなった。忙しすぎて手が回らないのか」などと言う手厳しい声も聞こえてくる。


 また市街地の渋滞も常態化し、交通事故も急増しており、市民生活にも影響が出始めている。海難事故も昨年の3倍を超え、このまま行くと過去最悪を記録することは間違いないだろう。


 もういい加減、数字だけを追いかけるのは止めて、質の良いリゾート地を目指さそうではないか。そのためには顧客満足度の調査を、可及的速やかに実施したほうが良いのではないだろうか。