年末になると全国各地で…

 年末になると全国各地でベートーヴェンの「交響曲第9番」が演奏される。こういう風習は世界でも日本だけのようだが、西欧文明を自己流に昇華してきた国民性ならではだ◆石垣島でも、音楽ファンの佐久川広海さんが主宰する「プロデュース海」が「年の瀬レコードコンサート」を開いている。今年は21日午後7時から桃林寺で「第9」の世界最古の録音の一つ、フェリックス・ワンガルトナー指揮ロンドン交響楽団のレコード(1927年録音)が披露される◆第9の「歓喜の歌」は、ドイツの詩人、シラーの歌詞にもとづく。原文はかなり哲学的かつ難解で、いろいろな解釈が成り立つようだが、ベートーヴェンは歌詞の順序を入れ替えたり、冒頭に自作の歌詞を追加したりして「自分流」にアレンジしている。その結果「苦悩を乗り越えて歓喜に至る」という彼の信念がより明確になり、現世で苦闘する人たちへの応援歌という色合いが濃くなっている◆さらに歌詞の後半では、星のかなたに存在する偉大な存在(神)が語られ、宗教的な色彩さえ帯びていく。単純な「喜び」だけの音楽でないことも念頭に置いて聞けば、より感動が深まるだろう◆レコードの音には独特の深みがある。今年の年末も「第9」とともに贅沢な1時間を過ごしたい。