今年は名指揮者の訃報が…

 今年は名指揮者の訃報が相次いだ。まず1月にイタリアのクラウディオ・アバド、今月は米国のロリン・マゼールである。ともに80代の老巨匠だが、芸風は正反対だった◆アバドの演奏はオーソドックスで、決して極端に走らない。何を演奏しても安全運転で一般的な音楽ファンには好かれたが、反面で物足りなさも感じた◆マゼールは時に曲のテンポを大きく揺らしたり、特定の楽器を異常に強調したりと、かなり個性的な演奏をすることがあった。人によっては好き嫌いが激しかっただろう◆2人は大指揮者カラヤンの後任としてベルリン・フィルの指揮者の座を争い、楽団員から支持が多かったアバドが勝利者になった。しかし在任期間はカラヤンのような黄金時代を築くことはなく、退任後の評価も地味である◆マゼールは相変わらずユニークな活動を続け、日本でベートーヴェンの全交響曲を一晩で演奏するコンサートを開いたりした。アバドもマゼールも音楽に捧げた人生を完全燃焼させたと言えるだろう◆音楽界では次々と新しい才能が芽吹いている。大樹へと育っていく才能を見守るのは楽しみだが、私たちを楽しませてくれた満開の花々が散っていくさまは淋しい。オールドファンには複雑な心境の日々が続く。