誰にでも仕事に疲れ果てる時が…

 誰にでも仕事に疲れ果てる時がある。骨身を削る思いで作品を生み出す芸術家は特にそうだ。作曲家のハイドンは晩年、「肉体も精神もともに力が失せてしまって、自ら足を踏み入れた道を歩み続けることがどうしてもできないように感じた時」があったと書いた◆しかしハイドンは続けた。「(そんな時)私の内部の秘められた思いがしばしば、こうつぶやいた。『きっといつの日が、お前の仕事が悩み疲れた人々に束の間の休息を与え、力をよみがえらせる泉となる日が来るだろう』」と。ハイドンの確信通り、200年後の現代に至っても、多くの人々がハイドンの音楽に救われている◆ハイドンの弟子、ベートーヴェンも若くして聴覚を失う悲劇に見舞われて絶望し、いったんは自殺を決意した。しかし彼を生に引きとどめたのは「芸術」だったとのちに書いている。彼が本当に死を選んでいたら、まさに人類の損失だったろう◆誰かを幸福にする能力が自分には備わっている、という確信ほど自らを勇気づけることはない。だからどんなに辛くても人は頑張れる。あるいはそうした確信こそ、真の幸福の源泉なのかも知れない。哲学者ニーチェは誇らしげにこう書いた。「人生がわれわれに約束してくれたことを、われわれこそ人生に対して果たそう!」