何が「正しい」かという疑問は・・・

 何が「正しい」かという疑問は、一見単純明快なようでいて、実際にはなかなか難しい問題をはらむ。時代を支配する価値観は時間とともに変化するのが常だ。50年後、100年後には全く逆の価値観がまかり通るかも知れない。現在の「常識」が未来の「非常識」となる可能性は十分ある◆音楽の世界にも、こうした問題が存在する。古今を通じて最大の名曲とされ、年末には誰もが耳にするベートーヴェンの「第9交響曲」。近年の自筆譜の研究によって、この曲の第1楽章に登場するあるメロディは、実は後世の出版社によって音程の一部が改ざんされていたことが分かった◆最近はオリジナルに戻した演奏のCDも登場しているが、実際の演奏会を含めて、現在も改ざんされた楽譜を使用するのが一般的だ。演奏家も聴衆も、改ざんされた楽譜に「慣れ」てしまい、オリジナルのほうに違和感を抱いてしまうのである◆同じく有名なモーツァルトの「トルコ行進曲」も、楽譜の読み方によっては、私たちが聞きなれているメロディが全くの「間違い」である可能性がある◆あえて音楽を例に取ったが、歴史とか政治の世界では、こうした状況は言わずもがな。自分の考えを持つのは当然だが、それを絶対だとは考えず、常に一歩引く冷静さも必要だろう。