「辺野古」以外に何を語るか 視点

 衆院選が10日公示され、沖縄の4選挙区には計12人が立候補した。翁長雄志知事を支える「オール沖縄」勢力と安倍政権の継続を訴える自民の対立を軸に、1区では希望の推薦を受けた維新前職も加わる構図となった。
 沖縄で最大のテーマは安全保障だ。全国的に危機感が高まる北朝鮮問題に加え、石垣市の行政区域である尖閣諸島は日々、中国の脅威にさらされている。米軍基地の重い負担を軽減しながら、同時に脅威に即応できる体制を構築する。沖縄にはそうした現実的な政策が求められている。
 どの候補、あるいはどの政党が現実的な政策を打ち出しているのか、注視しなくてはならない。
 憲法9条の改正をどう考えるかは、各候補や各党の安全保障政策を象徴している。自民、維新は賛成、「オール沖縄」勢力は反対であり、違いは明確だ。
 自衛力の強化を将来的な米軍縮小につなげるのか、9条の堅持で米軍だけでなく自衛隊の縮小も要求していくのか、両者の理念は根本的に異なる。
 前回2014年の衆院選は翁長知事が誕生した知事選の直後に行われ、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題が最大の争点とされた。辺野古は今選挙でも依然、争点の一つとされるが、しかし当時とは社会状況が違う。それは昨年の最高裁判決、今年の埋め立て工事着工、さらには増す一方の中国、北朝鮮の脅威である。こうした中で、単なる「反対」だけでは責任ある態度とは言えない。
 候補者が辺野古に言及するのであれば、最近の状況の変化について何を語るのか、あるいは語らないのかにも耳を澄ませたい。
 辺野古移設をめぐっては自民が容認、「オール沖縄」が反対という姿勢が固定化しており、そのこと自体にことさら耳新しさはない。今選挙の第一声では「オール沖縄」候補が改めて辺野古反対を強調したのに対し、自民候補はあえて触れようとはしなかった。既に与野党の議論が噛み合っていない。これをどう見るか。
 有権者は、各候補者が「辺野古」以外に何を訴えるのかも、厳しくチェックすべきだ。
 沖縄の課題は多い。一括交付金など、国による沖縄振興策をどう評価するか。全国最低水準の所得をどう引き上げ、経済的な自立につなげるか。農業、観光、商工などさまざまな分野で、候補者それぞれに信念や主張があるはずだ。国境を守る大事な役割を果たしている離島の振興策も、なおざりにしてほしくない。
 候補者のうち9人は前職であり、実績が問われるのは当然だ。
 全国的に最大の争点は安倍政権継続の是非である。しかし疑問なのは、事実上の野党第一党である希望の党が、首相候補を明示していないことだ。
 過去にも細川政権や村山政権のように、選挙後の離合集散で突如として誕生した政権は存在したが、いずれも短命に終わっている。
 野党の首相候補が不明というのは、有権者にすればびっくり箱を差し出されているようなものだ。安倍首相さえ打倒すれば、後任は誰もいいのだろうか。希望の党は今からでも首相候補を明らかにすべきであり、現状のままでは「政権選択選挙」とは言い難いのではないか。