中国、太平洋支配の野心あらわ

 中国の習近平国家主席は9日、トランプ米大統領との首脳会談後、共同記者会見で「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言した。
 中国軍関係者は、かつて米国の太平洋軍総司令官に対し「ハワイから東は米国、西は中国で分割管理しよう」と持ちかけていた。今回の発言もこの趣旨に沿ったものであることは明白だ。
 言うまでもなく太平洋の西側には尖閣諸島を含む八重山諸島があり、沖縄があり、日本本土がある。太平洋への進出加速を予言するかのような習氏の発言は、沖縄に対する領土的野心を改めてあらわにしたも同然だ。尖閣諸島奪取を目指す中国の狙いが、局地的な資源争奪などではなく、究極的には太平洋の支配権獲得であることも暴露した。
 問題なのは、習氏の発言が米大統領の面前だったことだ。米国との直接交渉で日米を切り離し、米国の不干渉を確約させた上で、尖閣を奪取したいという思惑が透けて見える。
 中国は米国との関係を「新型大国関係」と名付け、いわば米国と一対一の場で中国主導の新国際秩序を承認させようとした。米国はオバマ前政権時代、この考えを事実上拒否したが、訪中したトランプ氏への厚遇ぶりは、中国がこうした思惑をまだ捨てていないことを意味するようだ。
 日本政府が2012年に尖閣諸島を国有化して以降、中国の尖閣奪取に向けた戦略はほぼ一貫している。公船を頻繁に領海侵入させ、尖閣が中国の領土であることを内外にアピールするというものだ。
 しかし日本側は海保の巡視船がガードを固めており、八重山の漁業者が尖閣周辺海域に出漁する際は警護に当たるなど、実効支配を死守している。
 ところが今月5日からのトランプ氏の訪日期間中、中国公船は尖閣周辺の接続水域に姿を見せなかった。しかしトランプ氏が7日午前に離日すると、その日の午後には、すかさず4隻が接続水域に入っている。米国の顔色をうかがうような動きである。
 中国にとって気がかりなのは日米同盟だ。日本から最終的に尖閣諸島を奪取できるかどうかは、米国の意向しだいだと中国が考えている可能性を示唆している。
 安倍晋三首相とトランプ大統領は、両国共通の外交方針として「自由で開かれたアジア太平洋戦略」を打ち出した。自由と民主主義の価値観を共有する国々の連携で、中国主導の新国際秩序を阻止しようというものだ。これに対し、中国は自国中心の経済圏構想「一帯一路」を「人類共同体構想」などと宣伝している。
 20世紀に続き、21世紀の世界も、自由主義の国々と独裁国家群がせめぎ合う場となるかも知れない。
 尖閣諸島そして沖縄は、いやおうなしにその最前線に位置することになる。尖閣諸島を守れるかどうかは、単に日本の領土にとどまらず、戦後日本が信奉してきた自由や民主主義といった価値観を守れるかどうかにも関わってくる。
 ただ武力衝突は誰も望まない。沖縄では、地方自治体や民間レベルで日中交流を促す動きが盛んだ。翁長雄志知事は福建省との友好締結20周年で訪中しており、石垣市でも日中友好締結40周年、世界平和の鐘設置30周年を記念して中国大使を招へいする動きがある。友好の努力は尽くすべきだ。
 それとは別に石垣島への自衛隊配備計画は、領土を守る国民の決意を示す上で重要だ。早期配備を実現することが、無用な紛争を防ぐ手立てとなる。