「どうして自分を否定する憲法に…

 「どうして自分を否定する憲法にペコペコするんだ。これがある限り、諸君は永久に救われんのだぞ」。自衛隊の市ヶ谷駐屯地で総監を人質に取り、バルコニーに立って憲法改正を訴えた三島由紀夫。しかし訴えに同調する自衛官はなく、部屋に戻った三島は同志と自決した。1970年11月25日の出来事だ◆あれから47年。今や、首相が国会で憲法9条に自衛隊を明記する改憲論議を呼び掛けている。ようやく時代が三島に追いついたということか◆三島は自衛隊に体験入隊し、大学生に呼び掛けて民間防衛組織の「盾の会」をつくるなど、国防のあり方に強い関心を抱き続けた作家だ。米ソ冷戦の最中で、共産革命が現実味を持って語られていた時代、共産主義は日本の伝統文化を破壊すると考えた三島は、国の将来に強い危機意識を抱いていた◆三島が現在生きていたら、その関心は当然、尖閣諸島問題や北朝鮮危機に向けられていたろう。右往左往する日本の病根は、いずれにせよ憲法9条だと結論づけたかも知れない◆沖縄では「非武装を定める9条の理念を実現すべきだ」との声が根強いが、実現したくてもできないような理念を掲げる条文の非現実性こそ問われる。その論議はあるのだろうか。自衛隊を明記すれば済む話ではない。